つげ義春のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
朝目が覚めると
今日は外がひどくふくらんでいるようだった
外が家のなかに侵入してくる
5歳で父親を亡くしたつげ義春。
「がまんしてくれよな タクワンしかないんだよ」
すざましい貧しさで、さらには母親の再婚相手が作中では
本当に酷い人で、
とても不幸な環境で育ったのだなと感じました。
さらにひどい赤面恐怖症だったつげ義春は、
小学6年生の時、運動会で多くの観客の前で走るのを恐れ
足の裏をカミソリで切ったそうです。
今の時代なら、
きっと心の病気だ、と病院にいけたのでしょうけど、
小学校卒業後メッキ工場で働き、
ろくなものも食えず、
おまけに外は空襲が頻繁に起こるような環境で -
Posted by ブクログ
漫画を読むのは久しぶり。正直に言うと気持ちが悪い絵なのだが、これがなかなかどうして奥が深いのだ。
主人公はまともな仕事を持たない、さえない中年男性(妻子持ち)。短編はそれぞれ、オチすらない。なのにこの奇妙な心地よさはなぜか。
主人公の本職は売れない漫画家だが、川原で拾った石を売ろうとし、奥さんのパートで養ってもらっている。著者本人を描いたものではないかともいわれる。
この男性は人生に対するモチベーションも全くなく、当然貧乏なのだが、嫌味が無いので共感できたりする。他の登場人物も痛々しくむなしい。時代は昭和だと思うが、八王子の描かれ方には笑った。
役に立たない人でもこうして暮らしていかれたという -
Posted by ブクログ
つげ義春『新版 貧困旅行記』新潮文庫。
社会に縛られることを好まず、それでいてあり得ない妄想を抱く臆病で小心者の著者が昭和の時代に主に温泉地を巡った貧乏旅行記。
多数のレトロな写真と共に様々な所を訪れた旅行の顛末が味わい深い文章で綴られる。
漫画や小説を書くということは自身の身と心を削る大変な仕事なのだろうか。昔の漫画家や小説家には突然失踪したり、蒸発したりという例が、まま有ってように思う。
昭和の旅行と言ったら鄙びた温泉。東京ネズミーランドもリゾート地も無い時代で、海外旅行も庶民には高嶺の花。そんな時代に鉄道やバスを使って誰も知り合いの居ない土地に行き、ゆっくり過ぎる時間を過ごすのも