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Posted by ブクログ
代表作とされる「紅い花」「李さん一家」「もっきり屋の少女」を含む13編を収録。
’影’の表現が素晴らしい。
直接的に感情を口にする場面はほとんど見られないが、陰影や微妙な表情のゆらぎ、情景で心模様を描き分けている。
表題作「紅い花」は夏の陽が注ぐ深緑、川や滝の流水音・蝉の声が耳目に鮮やか。そして現れる紅い花。初潮を迎えたサヨコと、それを目の当たりにしたシンデンのマサジの心の変化が描かれる。
「李さん一家」はただただ怖い。どこからともなく鳥語を話せる李さんが現れ、いつの間にか家の二階に住み着き、特に何をするでもなくそこにいる。最終的にどうなるかと言えば「実はまだ二階にいるのです」で終わり。いや、怖すぎる。
「通夜」はブラックジョークと不謹慎の塊のような作品。死んでしまったら尊厳も何もない、おしまい。という事かな。
「海辺の叙景」は大人の男女のささやかな恋模様を表情・情景と影の表現で描いた作品。心情を直接的にはセリフに一切出さずとも繊細な心の揺れまでが伝わってくる。ボート小屋の対比で恋の始まりの予感と終息の気配を。ラストシーンの曇天、雨の中暗い海で泳ぐ男の表情は伺えないが、別れに落胆する寂しさを見開きの構図で描写。女の「いい 感じよ」というセリフが余韻を残す。
「西部田村事件」「ニ岐渓谷」「ほんやら洞のべんさん」は旅先の土地で暮らす人々の風土・習俗を生き生きと描いている。
続く「女忍」は一転、時代劇。復讐の緊張感や昏さ、忍びの動きが余す所なく活写されている。
50〜60年代の学生青春劇「古本と少女」。主人公があれこれ悩む様子を俯瞰・バックショット等多彩なカメラワークで捉えている。
「もっきり屋の少女」は貧しい農村に暮らす「みじめ」な少女・チヨジの姿があんまりにも切なすぎる。闇に吸い込まれる男のエールも虚しい。
「やなぎや主人」「庶民御宿」は闇が濃い作品。人間の業や欲を抉る。どちらかと言えば後期の作品か。
「近所の景色」には画風や線にはっきりと変化が見られる。今ひとつテーマがとらえにくいが、時代の移ろい・街並みの変化により「貧しげでいずれは朽ち果ててしまいそうだが、自然のぬくもりが感じられ」(p292)た風景が失われていくことへの述懐のような気持ちが込められているのではないか。
読み応えがすごい。
濃密かつ風化知らずの名作品集。
26刷
2021.9.18
Posted by ブクログ
つげ義春は外れなく全短編がよいなー。
特に「海辺の叙景」は解説で糸井重里が絶賛するとおり、大傑作。
言葉で語られることのない「愛」や「恋」や「憧れ」が、まさに絵で、漫画で、描かれていた。
またそれとは逆に、好色な男女(特に顔つきや太めの体)を描かせると天下一だ、とも改めて思う。
つげ義春って実は色ものではなくものすごく絵が巧いのではないか、と今回にしてようやく気付く。
▼第1話/紅い花▼第2話/李さん一家▼第3話/通夜▼第4話/海辺の叙景▼第5話/西部田村殺人事件▼第6話/二岐渓谷▼第7話/ほんやら洞のべんさん▼第8話/女忍▼第9話/古本と少女▼第10話/もっきり屋の少女▼第11話/やなぎや主人▼第12話/庶民御宿▼第13話/近所の景色
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