あらすじ
漫画家として行き詰まった〈私〉は、他人の目にはろくでなしに映るかもしれない。ろくに働かず稼ぎもなく、妻子にさえ罵られ、奇天烈な空想に耽りながら、無為な日々を過ごしているのだから……。甲斐性のない漫画家の悶々とした日常を描く「無能の人」、競輪場の車券売り場窓口越しに仄かに通い合う夫婦の愛「日の戯れ」など、滑稽かつ哀切な人間存在に迫る〈私〉漫画の代表作12編集成。
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Posted by ブクログ
最後の「無能の人」を除けば、短編の漫画集。
【退屈な部屋】
日常と離れるために、偽名を使って、外にアパートを借りる。が、妻に気づかれる。妻は怒るでもなく、部屋を掃除してくれ、また、住むことが出来るように、整えてくれる。
それは、新たな、退屈な日常となる。
【魚石】
つげ義春の、旅行記によく出てくる、相模原のT君から譲り受けた、いかにもインチキくさい石の話。
【日の戯れ】
これも、つげ義春の随筆旅行記によく登場する、妻がでてくる。随筆旅行記には、妻は写真でも登場するが、小さい写真なので、顔までは分からない。この漫画に描かれている妻は、なかなか魅力的。つげ夫妻は、仲が良かったのだろう。
【散歩の日々】
これも、なんの変哲もない日常。この作品には、つげ義春の子供が登場する。随筆にも登場する、正助君だろう。
【池袋百点会】
近くの喫茶店の看板娘の福ちゃんの話。
本当に、何でもない話なのだけれども、つげ義春の絵と共に描かれると、ついつい読み進めてしまう。福ちゃんが魅力的なのは、つげ義春が、そう感じていたから。
【隣りの女】
安保闘争の話が物語の中に出てくるので、1950年代の後半の話か?つげ義春は、1937年生まれということなので、おおよそ20歳近辺の時の話。
【無能の人】
生産的であることを拒否しているような暮らし方。つげ義春本人に、こういう要素があり、それを自分で分かっていて、こういう作品を描いたのだろう。
Posted by ブクログ
つげ義春についてはよく知らないのだが、何とも言えない画風と陰鬱とした世界に引き込まれる。どの物語の主人公も貧乏で仕事をするでもなく、怠惰の極致だ。そして全編において妙なエロさがある。その辺の石を売る男、ただただ病人のふりをして働こうとしない男など、いずれも世俗の最底辺にいる人たち。しかしどこか憎めない。
Posted by ブクログ
いましめとして。
つげさんの作品は読む人それぞれの解釈があって、
独特の表現がすごく好き。
毒々とした皮肉をスマートに語る人だなぁと思います。
息子の顔がブラックジョーク(ひどいか)
Posted by ブクログ
久々に読み反してみた。
今、様々なコトが上手くいっていないのかな?少しだけ、現実と距離を置きたい時期なのかな?
たぶん、「ユトリ世代」が読んでも、特に何も感じないのでは(?)と思う。
行きつけの喫茶店でコーヒーのツケが出来たり、近所の米屋の支払いが滞っても何とかなった時代の話。
やらなきゃならないコト、やるべきコトは解っているのに、他人、特に奥さんや、知人といった、近親者に言われると天の邪鬼になってしまう。
学生時代、テスト前に
「勉強しなくてイイの?」
「今しようと思ったんだよ」
しかし、机に向かって、漫画を読む。
結果、テストの成績は……。
コレと同じコト。
つげ義春作品は「芸術漫画」などといった括りがなされているが、そんな敷居を高くする必要などないのでは。
言うなれば、ちょっと、文学チックなトコロがある、昭和エロス漂う、マイナー良質漫画でしょう。
などと言う自分、アフターつげ世代、『ガロ』誌は最後期数年の読者だったりする。
Posted by ブクログ
今の時代こそ・・・つげ義春。
「無能の人」の主人公に共感できる所がある自分って・・・。
商業主義丸出しのマンガが多い昨今、つげ作品は受けないかもしれないけど、永遠に読まれていくべき作品だと思います。
Posted by ブクログ
落ちぶれた人たちの侘しくて虚しい淡々とした話。でも、所々に出てくる台詞、コマがめちゃくちゃ心に刺さる。
つげ義春先生の描く後ろ姿の哀愁の漂い方が半端無い。この漫画ほど効果線の垂れ線(どんより線)が魅力的な作品もないんじゃないかと思う。
心に刺さる台詞、傍にメモして心に留めておきたいくらい、良い。
★…4.5
Posted by ブクログ
漫画を読むのは久しぶり。正直に言うと気持ちが悪い絵なのだが、これがなかなかどうして奥が深いのだ。
主人公はまともな仕事を持たない、さえない中年男性(妻子持ち)。短編はそれぞれ、オチすらない。なのにこの奇妙な心地よさはなぜか。
主人公の本職は売れない漫画家だが、川原で拾った石を売ろうとし、奥さんのパートで養ってもらっている。著者本人を描いたものではないかともいわれる。
この男性は人生に対するモチベーションも全くなく、当然貧乏なのだが、嫌味が無いので共感できたりする。他の登場人物も痛々しくむなしい。時代は昭和だと思うが、八王子の描かれ方には笑った。
役に立たない人でもこうして暮らしていかれたというのは、悪くない世の中だったのかもしれない。
Posted by ブクログ
人生の不安、やるせなさ、後悔、八つ当たりの吐け口。言葉では言い表せない内なる感情。登場人物を通して心が揺さぶられる。名作「無能の人」は読後膝を抱えて、ため息をつき、何もしたくなくなる。そしてまた読み返したくなる。答えなどない。あるのは逃避願望とやるせない気持ちばかり。
Posted by ブクログ
つげ義春の作品は忘れた頃に思い出しては頁をめくっている。 なかでも『無能の人』の連作は最高傑作だと思う
。著者を投影した主人公には、先が見えない虚無で退廃的なやるせなさの中に、流されながらも生きていくしたたかさが見える。
この“やるせなさ”を感じとることが私にとって、一連のつげ作品に共通している魅力だと思う。
Posted by ブクログ
入り口はゴンチチのサウンドトラックであった映画、無能の人が気になったからであったけど
こういった作風であったとは。
無能の人も短編シリーズも良くできている。
シュールで物悲しさが漂うが、ふっと頬を緩めるシーンが出てきて和んでいたりする。漫画なので何度となく読み返してみていると細かなところまでよくできていることに気がつく。
味のある絵も好きだなぁ。
クセになって夢に出てきそうな作品。
Posted by ブクログ
読み直し。
おかしみのある作品が多い。
無能な人間の並べる屁理屈に笑える。
「無能の人」の連作もいいが、「退屈な部屋」に代表される連作も傑作。
【退屈な部屋】【魚石】【日の戯れ】【散歩の日々】【池袋百点会】【隣りの女】【無能の人】
Posted by ブクログ
何度でも読み返したい。書店で働いていて文庫の補充をしていたら、どうしても買わなきゃいけないような気がしてきて購入。電車の中で読んで落ち込みさえもした。他の作品も買おう。
Posted by ブクログ
虫けらってどんな虫?役に立たない虫のことだよ。なんでそんなことを聞くんだ。母ちゃんが父ちゃんのことを虫けらだって言ってたよ。そうだね父ちゃんは虫けらだね。
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大学の授業で取り上げられ、興味を持って読んでみた。わくわくして第一話を読むと「なんと退屈な!」と肩透かしを食らったようだった。現代漫画に浸かった人間からすれば、違和感がするのも無理ない。それでも少し我慢して読み進むにつれ、じわじわとつげの世界にハマっていった…。
1960年代の日本、それも地方田舎の風景、人間…すべてが泥臭く、洗練されず、未完成である。現代なら、全国どこへ行っても同じような風景がコピーされているが、この漫画には、かように便利で整理整頓された風景など、ない。つげが恐らく自分で旅をして出会ったであろう風景は、生々しくも、大変風通しがいい。「著者の主張やテーマ」云々が押し付けられることもない。「無能の人」だからこそ、再読のたびに発見がありそうだ。
Posted by ブクログ
なんだか読んでいるともの悲しくなってしまいました。
作者自身の人生を漫画にされているようですが?優しさはあるけれども夢ばかり追いかけているような昭和のお父さん。
でも昭和の懐かしい景色が描かれていてほっこり出来ました。
作者の現在が気になり少し調べてみましたが幸せに暮らされているようで良かったです。
Posted by ブクログ
再読ですけれども、個人的には無能の人より前に入っている短編のが好みだったかもしれません! いや、無能の人も確かに傑作には違いないのですけれども、個人的に石の説明とかね…そんなに詳しく説明されても石などにまるで興味のない者からしたらその部分が苦痛でして…でもまあ、全体を通してみれば「映画:無能の人」のことなんかを思い出させるシーンとかもあったりして楽しめましたよ!
↑ということを言いたいんですねぇ…また数年後かに読み返そうかと思います。さようなら。
ヽ(・ω・)/ズコー
Posted by ブクログ
「無能の人」のみ再読。無能というか、才能の使いどころを間違えているというか。そのためか、本当に悲惨な感じはせず、どこか救いがある。全体的な虚無感はつげ作品ならでは。
Posted by ブクログ
生活に密着した「どうにもならない感」が全編に満ち溢れている。
退廃的だったり、ダメってたり。
でも、どこかしら愛着を感じさせるような描き方に感じられて何だか不思議な読後感。