つげ義春のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレアックスの特集でコメントを書くように20年ぶりくらいで読み返した。『ねじ式』は改めてとても変でめちゃくちゃなのだが、めちゃくちゃなりに筋が通っていて、凄みがあり、何より絵にも凄みがみなぎっている。蒸気機関車の見開きがすごい。黒で描いた後にホワイトでヒッチングをしていて面倒な車輪のシャフトまで丁寧に書き込まれている。暗闇を走っているようだが、明暗が変で昼か夜かも分らない。どんな気合でこの絵を描いたのだろう。最後のモーターボートに乗って腕をかざしている堂々たる感じもかっこいい。そのコマの海原の波の書き込みもすごい。わずか22ページで世界をひっくり返してやろうとしているかのようだった。
他の漫 -
Posted by ブクログ
初めて読んだときは、ねじ式の世界に何か意味があるのだろうと思って何度も読み返した。単に不安で不快にさせるための描写だとは思えなかった。そして、不自然に出てくる多くの看板や海に浮かぶ軍艦など意味を求めて細部を読み返した。
でも、ようやく最近になってそれらには特に意味がないのだろうと気が付いた。男はメメクラゲに触れて、血管をやられ、医者を探して(眼医者ばかりで)手術してもらって、ボートで帰る。ねじ式の世界ではこのストーリーは合理的に完結しているようだが、読者にとっては何一つ理解の点で解決していない。
そして、今の自分がねじ式を通して抱く感情は日常における異世界の近さだ。日常におけるボタンの掛け違え -
Posted by ブクログ
久々に読み反してみた。
今、様々なコトが上手くいっていないのかな?少しだけ、現実と距離を置きたい時期なのかな?
たぶん、「ユトリ世代」が読んでも、特に何も感じないのでは(?)と思う。
行きつけの喫茶店でコーヒーのツケが出来たり、近所の米屋の支払いが滞っても何とかなった時代の話。
やらなきゃならないコト、やるべきコトは解っているのに、他人、特に奥さんや、知人といった、近親者に言われると天の邪鬼になってしまう。
学生時代、テスト前に
「勉強しなくてイイの?」
「今しようと思ったんだよ」
しかし、机に向かって、漫画を読む。
結果、テストの成績は……。
コレと同じコト。
つげ義春作品は「芸術漫画」など -
Posted by ブクログ
全編、何ともまったりとした侘びしさ。いや、でも暗くはないのだ。
それは著者が、自分で自分を面白がってしまうようなユーモア性を隠し持ち、淡々としながらもどこか魅力的な文章を書くせいなのかもしれない。
知る人ぞ知る山奥の鉱泉で出会う不便で粗末な作りの宿屋や、陰々滅々として絶望的な景色の中にこそ、著者は心の底から幸福感を得るようだ。
大自然を目の前にして、自分自身がケシつぶのようなちっぽけな存在であることを実感する旅。自由とは自分からの自由にほかならない。
つげ義春の旅は、まさに”自分なくしの旅”なのだろう。
また奥さんや子供と一緒に、所謂名所や観光地などにも出かけている。(鎌倉随歩)
中でも、鎌