伏見威蕃のレビュー一覧
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ネタバレラストまでテンポは落ちることなく、グレイマンvs中国特殊部隊vsタイギャングの闘いが続く。
相変わらず映画のワンシーンの様な視覚的なアクションシーンは読みごたえがあるし、2重3重の捻ったプロットも完成度が高い。
ただ、今回は三つ巴の一端であったSVRがそうそうに殲滅され、生き残りのゾーヤとグレイマンの、刹那的とはいえロマンスが発生するというのが意外。
他の小説と違って孤高の立場を貫いてきたのに…。
ま、今後の強力なパートナーとしてグレッグ・ルッカのキーパーシリーズみたいになればそれはそれで面白いかな?
そして早くもCIAとの不協和音、今後の展開が楽しみ。 -
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著者はニクソン大統領の大統領補佐官、レーガン大統領の国務長官を務めたキッシンジャー。本書は古代ローマ時代から現代まで世界秩序どのように形作られてきたのかキッシンジャーによる壮大な歴史書である。
本書からはキッシンジャーの徹底的なリアリズムがうかがえる。現在の国際法はヴェストファーレン的な原則が基礎となっているが、ヴェストファーレン体制は戦争の抑止力とはならない。ここで矛盾が生じてくる。第二次大戦後の冷戦は長期化し、国連は無力であった。アメリカは中東など世界の警察の役割を果たしてきたが、さらなる混乱を生むだけであった。アメリカの正義を世界に売り込む時代は終焉したのである。
新たな国際秩序の枠組みが必要に時代に於いて、まさに中国が世界の覇権を握ろうと拡大主義をとろうとしている。地政学的に日本の果たす役割は大きくなってきているのだ。 -
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「ラザフォード家の娘の行方がわからなくなってから八日が過ぎて、ラリー・オットが家に帰ると、モンスターがなかで待ち構えていた」
いかにもミステリらしい謎めいた書き出しに興味は募るが、正直なところ犯人はすぐわかってしまう。なにしろ<おもな登場人物>に名前が出ているのが11人。ミステリのお約束として、犯人は必ずこの中にいるはず。そのうち二人の被害者は除外して、残りは九人。その中の三人が捜査関係者で一人は視点人物のサイラス。警察官が犯人というのもあるが、ここは南部のスモールタウン。みな顔見知りだ。仕事以外につきあいのない都会とは訳がちがう。
もう一人、ラリーという視点人物がいる。登場するなり何者かに撃たれて昏睡状態ということでやはり除外。これで残りは五人。ラリーの父親とサイラスの母親はすでに故人なので、当然除外。ラリーの母親は施設で寝たきりだから物理的に不可能。これで残るはサイラスの恋人とラリーの友人の二人だ。つまり、犯人あてミステリとして読むのは構わないが、はじめから、その種の読み物として書かれてはいない、と言いたいのだ。
ラリーは、自動車整備工場をやっているが、毎日工場まで足を運んでも客は誰も来ない。十代のころ、デートに誘った少女がその晩から行方不明となり、その容疑者と考えられたことがあるからだ。自白も取れず証拠も挙がらなかったので釈放されたが、狭い町のことだ。それ以来、おっかない(スケアリー)ラリーと陰で呼ばれるようになり、家にも工場にも人が寄り付かなくなった。
二十五年たった今、また別の少女が行方不明になる事件が起きた。ラリーの仕業と考えた者がいたとしても不思議ではない。ずっと家に石を投げられたり、郵便箱を叩き壊されたりされてきた。父が死に、母が施設に入ってからは、独りで生きてきた。朝起きると鶏に餌をやり、作業着に着替えて工場へいき、ブック・クラブから送られてくる本を相手に時間をつぶし、また家に帰ってくる。マクドナルドかフライドチキンを食べたら、「フロントポーチにつくねんと座っている。どの日もちがう、どの日もおなじ」。
サイラス・ジョーンズは人口五百人前後のミシシッピ州シャボットのたった一人の法執行官。かつては名遊撃手として鳴らしたが、肩を壊して引退。当時の背番号から、今もみなに32と呼ばれている。この日、パトロールの最中、いつも工場に止まっているラリーの赤いフォード・ピックアップがないことに気づき、救命救急士のアンジーに様子を見に行ってもらう。自分は別件で身動きが取れなかったからだが、顔を出したくなかったからだ。
十代のころ、シカゴから転校してきたサイラスと母は、ラリーの父カールの土地に建つ狩猟小屋に住んでいた。ラリーとサイラスは、よく一緒にインディアンごっこをやって遊んだが、二人きりで遊ぶ場所はカール所有の森や草地に限られていた。ラリーは白人で、サイラスは黒人。学校では黒人と白人は別のグループに属していたし、何より二人が一緒に遊ぶことをカールは喜ばなかった。
二人は皮膚の色だけでなく対照的だった。夜逃げ同然に家を出てきたサイラスは住む家だけでなく着る物もラリーのお古をもらうほど貧しかったが、運動神経は抜群で野球の力で進学しようとしていた。対するラリーは、幼い頃から病弱で、吃音や喘息のせいで遊び友だちもなく、一人で本を読んだり、虫や蛇を集めて遊んだりする子だったが、整備工場を営む父のところにはいつも人が集まってきて賑やかだった。
ある日、サイラスに打ち据えられたラリーは、つい「二ガー」と言ってしまう。その日を最後に、サイラスはラリーと口をきかなくなり、やがて別の学校へ進学し、シャボットを去る。肩を壊して野球人生に見切りをつけたサイラスは、軍隊を経て警察学校に進み、治安官となって町に戻ってきたが、ラリーの家にも工場にも顔を出さなかった。サイラスはラリーに会いたくなかったのだ。
現在の事件と二十五年前の過去の出来事が、交互に当事者二人の視点で語られる。『ねじれた文字、ねじれた路』という表題は、直接的にはサイラスの頭文字<S>を指すが、アメリカ南部の子どもがミシシッピ(Mississippi)の綴りを覚えるときに教わる言葉遊びの文句からきている。「エム、アイ、ねじれ文字、ねじれ文字、アイ/ねじれ文字、ねじれ文字、アイひとつ/こぶの文字、こぶの文字、アイひとつ」。二人の男の関係をねじれた形を持つ字で表したのだろう。クリスティーやヴァン・ダイン以来、ミステリとマザーグースのようなナーサリー・ライムは相性がいい。
南部のミシシッピ州を舞台に、小さな町の濃密な関係の中で、誘拐殺人犯の疑いをかけられ、たった一人の友だちにも見捨てられたラリーの二十五年間の来る日も来る日も変わらない生活が冒頭に描写されている。小さな町の中で無視され続けているのに、誰を責めるでもなく、自暴自棄に陥るでもなく、実直に誠実に日々を過ごしている。責められるべきは自分だと思い込んでいるのだ。
一方、サイラスは仕事上での付き合いも、毎日食事に立ちよるダイナーでの付き合いも卒なくこなし、誰からも愛され、信用されている。アンジーという恋人とも相性はぴったりのようだし、愛車のポンコツのジープだけはいただけないが、町にとって欠くことのできない人物と見なされている。
この二人の関係が、娘の死体が狩猟小屋の床下から発見されることで大きく揺らぐ。二十五年前、少年だった二人が目にした事実の中にすべては明らかにされていた。ピューリタニズムに抑圧された性的情動のはけ口。支配被支配の関係からくる性的関係の強要。人種差別、とどれも今でも残る社会悪だが、当時のそれは男性優位の支配的な社会にあって、今とは比べようもなく強かった。二人がねじれた路を歩くようになったのは、それらが複雑に絡んでいる。
小さな町だけに登場人物の数は知れている。それだけに、端役に至るまで、性格付けがしっかりされていて読みごたえがある。一つ一つの描写がリアルで手を抜くことがない。だから、出来事が生き生きと立ち上がってきて、読む者の五感を刺激する。それは南部ならではの土地や動植物の描写でも同じだ。「背後の山は熱帯のようで、雨とミミズのにおいがして、木から水が滴り、雷が落ちた直後のように空気が電気を帯びていた。樹幹の隙間の空をリスたちが跳び、頭上の木の虚でキツツキがスネアロールを打つ。サンカノゴイが叫ぶ」ディープサウスへようこそ。 -
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輸送トラックを警護中にイラクで行方不明になった傭兵、
ジョン・コーテという魅力的なアメリカ青年の生い立ちとイラクでの生活を中心に、
セキュリティ会社とは現実になにを目的として活動しているのか?
傭兵とはどういった人物像でイラクに行く目的とはなにか?
当時のイラクの治安状態は実際のところどうだったのか?
セキュリティ会社と傭兵を取り巻く法整備の実態についてなど幅広く書かれている。
また残された家族についても丹念に取材されていてる。
残された家族が、安易に戦争反対と唱えることもなく、
すべての登場人物が「戦争」という行為についての受け止め方がそれぞれ興味深い。
ちなみに登場人物が「ニーバーの祈り」を唱える箇所があり深く感動しました。
自分はヴォネガットの『スローターハウス5』に載っている方の訳の
「ニーバーの祈り」のほうが、馴染んでいることもあるので好きかも。
『スローターハウス5』のニーバーの祈り
神よ願わくばわたしに
変えることのできない物事を受けいれる落ち着きと
変えることのできる物事を変える勇気と
その違いを常に見分ける知恵とをさずけたまえ -
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ネタバレグレイマンがついに本土決戦?
自分が殺しのターゲットにされた理由を探るためにアメリカに戻ってくる。しかし、CIAも事前にその情報を知り、圧倒的に物量で暗殺を謀る。
すごくシンプルな構成で、ある意味、一作目の続編のような感じか。しかし、筆者の実力は格段に上がってていて、テンポのいいアクションも健在だが、ドラマ部分も多彩な人物を配しながらしっかり描きこまれていて読みごたえがある。武器や軍事兵器・組織に関しての描きこみも嫌味にならない程度にしっかりあってうまく読者の興味をそそる。
ワシントンだけを局地戦の舞台としたので、若干アクションが少なめだけど、極上のアクション映画を見てるように楽しめた。後半どう展開するか、そしてここまで引っ張ったんだから、しっかり暗殺指令の理由も描き切ってほしいな。 -
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グレイマンシリーズの第3弾。今回はメキシコが舞台となり、麻薬カルテルと戦う。過去に命を助けられたメキシコ人が殺されたのをきっかけに、故人の墓参りから巻き込まれていく。今回もグレイマン(コート・ジェントリー)のタフさに目が奪われる。特に拷問シーンはかなり酸鼻な光景だ。絶対に生き残れないような場面であるが、外部というか自分の前から敵だったやつを利用してサバイブする。少し強引なストーリー展開ではあるが、エンタテインメントとして楽しめた。このような小説は主人公がピンチに陥ってから、ピンチを切り抜けるのを楽しむのが醍醐味なので、多少の強引さには目をつぶろう。
次作品も早く読みたい。 -
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「暗殺者グレイマン」の続篇。前作と同様、これでもかって感じで主人公のジェントリー(グレイマン)が暴れまくる。文字だけなのにクリアな景色が頭の中で想像され、時にえげつない描写もあるが、そこを含めて楽しめる。
政治的状況で作戦遂行者のとるべき行動が変わっていくのは、ドキドキものだ。味方が敵に、敵が味方に、生き延びるため(世界をややこしい状況に陥れないため)に知恵と体を最大限に使う物語はある種の爽快感を覚える。もちろん自分はジェントリーのような立場にはならない場所で生きているので、この物語の世界をフィクションとして楽しめる。でも、世界情勢を鑑みると、今でもこのような物語が地球のどこかで起こっているのではなかろうかと錯覚する。そんなリアルさも本書にはある。
それにしてもグレイマンはタフだ。今回は前作と比べてマッチョ感は減った感じだが、相変わらず死なない奴である。男の理想像かもしれない。