町屋良平のレビュー一覧

  • 1R1分34秒(新潮文庫)

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     小心者の駆け出しボクサーの心情の推移を描く。
              ◇
     自分の才能への懐疑や負けることへの恐怖を小手先でごまかそうとしていた小心な「ぼく」だったが、ある日、先輩ボクサーのウメキチが「ぼく」のトレーナーに就任する。
     半信半疑でウメキチの組んだメニューをこなしていったところ……。
     2019年芥川賞受賞作品。

          * * * * *

     小心者のボクサーだったはずの「ぼく」が、ウメキチという先輩ボクサーとの出会いによって変わっていく様子が面白い。

     トレーナー・ウメキチのトレーニングメニュー。「ぼく」用に考えられたものではあるのだけれど、がむしゃらに取り組む気になれ

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    2022年01月18日
  • 1R1分34秒(新潮文庫)

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    自分を見失ってしまっていたボクサーが自らを掴み直す。
    何もないように見えるほどカラになっていたようで、その実、閉ざし、なにものかを抱えこみ過ぎていた主人公。
    おかしなトレーナーの出現で、自らを取り巻く色々なものを捉え直す。

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    2022年01月03日
  • ショパンゾンビ・コンテスタント

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    淡い色の金平糖を常温の水に入れて優しく転がしたような、物足りない甘美さのある一冊。小説ってこういうのだよなぁと思った。意味分からんところとストーリー性の比率が自分にとってはちょうど良かった、なんというか曖昧さとか不明瞭さが邪魔になってない、ちゃんと余韻になっている。登場人物のすべてを簡潔に説明しなくたっていい。そのバランス感覚が肌に合う。

    恩田陸の「蜜蜂と遠雷」を思い出したけど、ピアノってほんと小説に向くなぁ。どちらもピアノ奏者を介して、あらゆる表現のスペースを獲得しているというかなんというか…誰かや何かを宿らせたり人格憑依させるの、RPGにおける魔法のエフェクトみたいなもんで、何か引き込ま

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    2021年03月31日
  • ぼくはきっとやさしい

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    文章がとても好み。感覚が共感できる。そして可愛らしい恋。
    鬱々とした主人公の晴れていく様子もわかる。

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    2020年03月23日
  • 青が破れる

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    ネタバレ

    「1R1分34秒」と同じくボクサー志望者が語り手。
    なかなかよい中編。

    ピザデリバリーを喰っちゃう有閑マダムとか、悪い意味で漫画的。
    「serial experiments lain」を連想。奥さん米屋ですとかも。
    また村上春樹も連想。つまり男性作家の悪い意味での女性幻想。
    そして難病美女がタバコを吸って、というのも、また。

    なのに、いいんだなあ。やはり、文体だなあ。
    そして「人が関連するという事象」が、この小説においては、なんだか、いいんだなあ。
    語り方が好きになるから、作者が好きになって可愛く見えてくる。この作風、得だなあ。

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    2020年03月04日
  • 青が破れる

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    『青が破れる』
    斉藤壮馬さんのおすすめということで読んでみた。
    平仮名多めだったのにはどういう意図があったのか掴めなかったのが哀しい…

    他の短編たちも独特の雰囲気を感じれて、読後には爽快感を感じました。

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    2020年01月05日
  • 青が破れる

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    前から少し気になっていた作家さん。
    好き嫌いが分かれる作品だな、と読んでみて思った。独特とも言えないが少し癖のある文体と平仮名と漢字の絶妙な使い分け。そのせいで読みづらいな、と最初は感じるけれど、私は読み進めていくうちに慣れていった。どっぷりハマったという感覚はなかったけどこういう本もあるんだ、というような、新しい音楽のジャンルを発見したときのような喜びがあって、それがこの本への抵抗感を薄めてくれた。文章自体も小難しさがなくて分かりやすいから物語もすんなり流れ込んできて、いつの間にか読み終わっていた。
    ボクサー志望の秋吉、友達のハルオ、ハルオの彼女のとう子、ボクシング仲間の梅生、そして夫子のい

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    2019年11月17日
  • 愛が嫌い

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    おだやかな日常の中に確かに存在する、寂しさや、言い様のない不安、暗さ、ねじれとも呼べないくらいのねじれ。日向と日陰のあわいを読む印象。

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    2019年09月08日
  • ぼくはきっとやさしい

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    最近、こういう主人公みたいなやつが増えている気がする・・・。付き合いづらくてめんどうくさい。現実にいたらこいつにも周りで付き合ってあげているやつにもイライラしてしまいそう。

    どういった思いで、こういうひとを主人公にしたんだろう。

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    2019年06月17日
  • ショパンゾンビ・コンテスタント

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    主人公がたんたんとしているせいか、曇りガラスからのぞいてるようなきもちで読んだ なんかすこし幸せでいい

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    2025年11月24日
  • ショパンゾンビ・コンテスタント

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    今ちょうどショパンコンクールが開催されているから、何か関連した本がないかな、と思ったらこんな面白い本が。
    音大でピアノを学んでる源元と、音大を辞めて小説家を目指してる主人公。
    いつも源くんはショパコンの配信を見てる。17回大会。
    そんな2人を軸に源くんの彼女潮里ちゃんと、同じバイト仲間の寺田くんの奇妙な毎日。
    読みやすかったし、なんか面白かった。

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    2025年10月17日
  • ほんのこども

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    ネタバレ

    野心作。熱量に酔った。
    あべくん、小説、町屋良平、暴力‥‥それぞれのトピック毎に溺れてみたかった気もする。

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    2025年09月20日
  • 青が破れる

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    淡々とした文体で非常に読みやすい。それ故に多くは語らないので、登場人物の心情を考えながら読み進めました。しかし私には分からなかった。
    その後見た書評で斉藤壮馬さんが「考えるな感じろ(意訳)」と仰っていたので、頭を空っぽにしながら2周目は読みたいです。

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    2025年06月15日
  • 生きる演技

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    誰目線なのか分からず、読むのに苦労した。登場人物の心情に共感するのが、なかなか難しい。演じることで、自我が解けるのか。

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    2025年05月06日
  • 生きる演技

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    ネタバレ

    なぜか集中できなくて読むのにすごく時間がかかった
    終盤で生崎がある程度セリフでまとめてくれるシーンがあったので助かった われわれって誰だったんだろう 霊たち?生きている人々が演じているのを霊たちが観客のように見ているんだろうか ヒロケンがいつから霊だったのか掴めなかったのでもう一回読まないとだめかも

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    2025年03月22日
  • 生きる演技

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    2人の少年の話。重い。文章はなめらか。
    境遇に恵まれず生きる演技をすることで本音が言える。結末に驚いた。

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    2025年01月26日
  • ぼくはきっとやさしい

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    女性とは解せぬ生き物ながら、主人公の視点というフィルターをかけて見ると、なおのこと難解に見える。きっと「フィネガンズ・ウェイク」を読解するより難しい。

    主人公の感覚も一般的なものから乖離しているので、彼の辿る結末はそうなって仕方ないと思え、同情するとともに失笑してしまう。

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    2024年11月13日
  • 青が破れる

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    「青が破れる」は文章が平易で、奇を衒った表現もなく、すんなり読めるのに、登場人物のセリフや地の文が心に引っ掛ける。
    他二編は文芸作品らしく、読みごたえが出てくるが、やはり表題作のさらりとかわいた秋風のような悲しみが心に沁みる。

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    2024年11月07日
  • 1R1分34秒(新潮文庫)

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    ヒリヒリするボクサーのはなし。
    男の物語。
    『人生クライマー』をみたばかりなんだけど、それも、誰も登ってない崖を登りたい。
    クライマーをやめられない。
    ボクサーをやめられない。

    町田康の解説がよかった。

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    2024年09月12日
  • 1R1分34秒(新潮文庫)

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    主人公は21歳のプロボクサー。デビュー戦をKOで飾るが、その後の戦績は思わしくない。やたらと内省的で、彼の思考がぐるぐると、あえての(多分)わかり辛い文章によって、延々と続いていく。

    ボクサーってもっと野心家というか、「成り上がってやるぜ」「絶対勝つぜ」みたいなギラギラした目付きの人たちだと思っていたが、もちろんそれは勝手なイメージで、彼のような内省的、考えすぎなキャラだって居るのだろう。負けが込んで、自らの能力の限界が見え始めたら尚さら。

    しかし、3敗目を喫し無力感に陥っていた彼の前に新しいトレーナーのウメキチが現れる。このウメキチの関わり方が心地よい。本人を否定しないし、よく見ている。

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    2024年08月27日