町屋良平のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ好き嫌いと言えば、嫌いではない。
凝った文章で小説が進む訳ではなく、伸びやかに静かに物語は進行していく。「青が破れる」というタイトルから、夜が明け太陽が臨む際の色彩を感じられた。とても静かな朝焼け。そんな印象の一編である。
嫌いなところは、主要人物の死による退場。作者が登場人物の作品からの退場に「死」を多用することで、死の事柄や儀式性が薄っぺらいものにしてしまい、登場人物のキャラクターや異化効果を低減させてしまう。この点がこの作品の難点に思う。
あと、小学生でもわかる漢字をひらがなにて表記している点も気になるところだ。
ストーリーの運びが優れているのに、難もある作品に思えた。
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Posted by ブクログ
「私の文体」「私の労働」「私の推敲」「私の批評」「私の大江」と続く連作短篇集。「書かれる私」と「書く私」のズレに意識的な「私」が、各作のタイトルに書き込まれた概念や固有名をめぐって思考を紡いでいく様子が語られる。あえて社会と文学をつなぐ「問題」を脱臼させて/迂回しつつ、それぞれの作品で架空のテクストを仮構して、それと対話するかたちで語りを展開させていくスタイルは「春琴抄」や「盲目物語」で谷崎潤一郎が採用したそれと通じるが、谷崎は他者の謎を書くためにそのスタイルを採ったのに対し、町屋はむしろ「私」を透明化させず、自明なものとはさせないためにその戦略を採用しているように見える。
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Posted by ブクログ
刊行当時、出版社の営業から珍しく営業がかかったことを覚えている。私はウェブマガジンの編集者だった。
町屋良平の過去作と比べることが許されるなら、この作品は、なんというか当人の「湧き上がる文学的な衝動」(という嘘くさくて軽薄な言い方は極めて失礼と承知)とか、だいたいそれに類する、有り体に言えばモチベーションの種類が異なっていてで、外的要因によって企画され、細やかな取材やリサーチによって固めあげられた作品なのかな、という印象をなんとなく、だかしかし強く受けた。なんでこの作品はこんなに固有名詞が多いのだろうか。
『しき』にあった福原鈴音のピアノコンクールの場面や、描かれなかったプロセスを、拡大し