ダイアナ・ウィン・ジョーンズのレビュー一覧
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クリストファーは幼いころから不思議な夢を見ていた。岩場を抜けてさまざまな谷におりていくと、谷ごとにちがう世界がある、という夢。クリストファーが別世界へ旅することのできる強い魔力を持っている、と気づいた伯父の魔術師ラルフは、クリストファーをだまして、利用しはじめる。でも、目覚めているときのクリストファーは、いっこうに魔法が使えなかった。心配したお父さんに、探知能力者ポーソン博士のところへつれていかれたクリストファーは、意外なことを聞かされる。おまえは命が九つある特別な大魔法使いで、次代のクレストマンシーになる身なのだ、と…。だが、老クレストマンシー・ゲイブリエルの城に引き取られたクリストファーは、孤独だった。唯一心を許せるのは、別世界で出会った、やはり強い魔力を持つ少女「女神」と、ラルフ伯父の使いだという謎の青年タクロイだけ。やがてラルフの悪事が露見し、城は悪の軍勢の攻撃を受けることに…?「魔法のファンタジーを描かせたら第一人者」「ファンタジーの女王」と評価の高い、ダイアナ・ウィン・ジョーンズの代表連作「大魔法使いクレストマンシー」の一作。クレストマンシーの少年時代を、生き生きと描く。
※ 米が今まで読んだ本の中で1番面白いと思った本です! -
Posted by ブクログ
・私はダイアナ・ウイン・ ジョーンズ(以下DWJ)を創元推理文庫で知つてゐた。これ以外に翻訳は出てゐないと思つてゐた。その後、例の「ハウルの動く城」も彼女の作品であり翻訳もあると知つたが、それ以外のいくつかの作品も訳されてゐると知つた。それが徳間文庫であつた。しかもかなり以前から出てゐたらしい。私はそれを知らなかつた。何と迂闊なことか。クレストマンシーのシリーズも出てをり、私はこれをほぼ文庫で出た順に読んだ。このDWJ「大魔法使いクレストマンシー外伝 魔法がいっぱい」(徳間文庫)はその最後に出た短編集である。4作を収め、長くても100頁、短いのは40頁ない。もちろんおもしろい。登場人物はクレストマンシーを中心に、他の作品と重なる人物もゐる。ただし、クレストマンシーは人名ではない。従つて一人ではない。物語によつて変はる、といふよりもこれを襲名してゐると言ふべきかもしれない。クレストマンシーの「世界の政府が、いちばん魔力の強い、九つもの命を持つ大魔法使いに、魔法が悪用されないように監督させています。この大魔法使いの称号が『クレストマンシー』なのです。」(5〜6頁)これが最もよく分かるのが 「キャットとトニーノと魂泥棒」である。前、現、そして次のクレストマンシーが出てくるのみならず、かつてのクレストマンシーも、魂だけとはいへ出てくる。しかもその魂は、物語ラストにゐた何人かの新生児に入つてしまふのである。これは将来的にはその子が大魔法使ひになる可能性を示してゐるのであらうから、物語には次の次のクレストマンシーも出てゐると言へるのかもしれない。
・ここでふと考へる。これはDWJが続篇を企ててゐたのではないか、この子供たち、あるいはその大人になつた人物が主人公となるべき物語の構想があるのではないか。これだけ楽しくもまたおもしろい物語を作り続けてきた人である。そんな続篇があつたらさぞおもしろい物語になるだらうと思ふ。もちろんキャットの物語がそれ以前にあるはずである。キャットは「魔女と暮らせば」の問題女児の弟である。魔法の才がないと思つてゐたのに、実は誰よりも優れた才を持つてをり、しかも九つの命を持ってゐたといふ子供である。現在はクレストマンシーに庇護されつつ教育を受けてゐる。こんなキャットの次の物語が「キャットと魔法の卵」なのだが、この更なる続きもあつてしかるべきであつた。ところがDWJは2011年に死去してしまつた。キャットの新しい物語はもう読めないのである。もちろん、「魂泥棒」の最後のシーンからの続篇もなくなつてしまつた。実に残念なことであ る。最後に解説を兼ねた座談会がある。ここで本書の訳者の一人、田中薫子がDWJの作風を「緻密にプロットを練ってつくりあげるというよりも、物語が降りてくる。ふっと浮かんだら、わーっと書いてしまうというタイプの方ではないか」(271頁)と 言つてゐる。これは確かにさうだらう。「魂泥棒」はそんな物語で、書いてゐるうちに筆が勝手に動いていつたのではないか。 DWJはトールキンの文章を、「あの人の文章はつまんないのよね」と言つた(265頁、上村令発言)とか。中身が違へば文体も変はる。常識的に考へれば、DWJとトールキンのファンタジーを同じ文体にはできないのだが、二人の人間性の違ひもそこに出てゐるのであらう。さうであればこそ新しい作品を読みたいと思ふ。DWJが「指輪」風ヒロイックファンタジーを書くとどうなるか、などといふのはもはや無理、これを機に創元推理文庫を読み直してみよう、つまらないと思つた作品が実はさうではないと分かるかもしれないのだ。 -
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短編集だけど、充実している。
懐かしい人たちが出てきてニヤリとする。
物語が全然すましてなくて、
何度もクスリと笑わされる。
それにしても、
短編で、
毎回主人公が変わり
それほど特別な展開があるわけでもないのに、
飽きさせず楽しませるすごさ。
魅力のひとつは、
ウソがない人物の描き方なんだと思う。
どの人物の心情もリアルで、
たとえ主人公であろうと、
カッコ悪い情けないイヤなところまで
ちゃんと描いているから楽しい。
個人的にはキャロルの話が
いちばん好き。
特にラスト。
それまでクレストマンシーにすら
大人ぶって面と向かっていた彼女が
一気に子供に戻った描写は、
とっても心が動かされてジーンときた。 -
Posted by ブクログ
『クリストファーと魔法の旅』から続く、クレストマンシーシリーズ。並行世界の冒険なので、割とどこから読んでも大丈夫。
コンラッドもクリストファーもいい子なので、基本的には読みづらいと感じることは少なかった。コンラッドがおとなしい語り部だから、クリストファーが積極的でよかった。序盤の、ダイアナ・ウィン・ジョーンズ作品によく出てくる、嫌な大人、息苦しい家庭からコンラッドが離れていくまでが一番長く感じたかも。そこから離れて、自分の目で世界を見るようになってからが本番。ファンタジーではあるが、ゆめかわファンタジーではなく、ちょい現実寄り。
うーん、途中までわちゃわちゃしていて、設定も人も魔法もどんどん増えて、「これ全部畳めるの?」「あとこれしかページが残ってないけど、本当にちゃんと終わる?」といつも不思議に思うんだけど、ちゃんと綺麗に終わるんだよね……。まあ若干力技っぽいけど……、それでも凄いなあ。 -
Posted by ブクログ
なんでジブリはこれを映画化しなかったんだろう、
と思わされる傑作。
読んでいて脳内で次々にアニメになって
シーンが流れ出すほどおもしろい。
次々に起きたり起こしたりする騒動が、
とにかく楽しくて、ワクワクしながら読み進められる。
そして考えつかない展開になっていくから、
子どものように夢中になって読んでいける。
そして極めつけが、
悪が徹底的に悪であること。
この容赦のなさが、
ファンタジーという一見甘そうな物語を、
ピリッと引き締めて大人の味にしている。
かつて心理学者の河合隼雄氏が、
児童文学とは子どもの本ではなく、
子どもの目を通して描かれた文学だと
おっしゃっていたとおりの本だと思う。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ私の頭の中で、
ジブリの映像が映し出されるほど、
わくわくがあふれている作品。
どうしても館が舞台のため、
展開が限定された話になるのだけれど、
途中で意外な世界の広がりを見せるし、
ラストで館から飛び出すことで、
それまでちょっと停滞していたお話が
一気に動き出して心が動かされる結末へと
むかっていくところが好き。
子どもが自立していく姿を
見事に描いているなと思う。
自立していくためには、
家族から離れ、別の場所で
試練を乗り越えていかなければならない。
もう一つ大事なことは、
象徴的に親殺しをしなければならない。
なぜならば、
子どもはそれまで親の定めた運命に
乗っかって生きてきたから。
自分の人生を生きるためには、
それらを壊さなければならない。
そんなことをちゃんと描いている。
ところで特に心に残ったのはラストの
母親とゲイブリエルの会話。
「私のもとに誰もいなくなってしまう」
「人のことをかまわない人間は
おうおうにしてそうなるものです」
まさにその通り。 -
Posted by ブクログ
NHKラジオの飛ぶ教室で、子どもの日を前に、親子で読む児童文学として推薦された一冊です。
イギリスでファンタジーの女王と言われた作者の代表連作、大魔法使いクレストマンシーの少年時代を描いたもの。悪ガキのクリストファーが世界の危機を救う物語で、最後のドレイトとの駆け引きや、城のリーダーとして防御体制を組織的に作り上げていく成長ぶりに、読み手としても盛り上がりました。
偉大な人は親との縁が薄いことが多いものですが、このファンタジーの主人公クリストファーもその1人です。父親も母親も生きているのですが、父親は顔を覚えていないほど影が薄いし、母親は冷めた人で息子を応援しつつも利用しようとする人です。それでも父親はクリストファーにとって正しい選択をするところが、さすが父親です。
一方で、その影ともいうべき存在が母方の伯父で、彼の企みで、クリストファーは知らず知らず悪に加担していき、世界の危機を作っていきます。けれど、面白いことに、それがクリストファーを目覚めさせるのですね。
このような父ー伯父の対に対して、母ー家庭教師という対もあるのですが、こちらは2人とも伯父とつながっていて、父ー伯父ほど、分化していません。このようなバランスの悪さも、世界の危機を招く背景にあるのかもしれません。
文庫でも出版されています。読み応えのある物語ですので、大人も楽しめるでしょう。