深水黎一郎のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ー〈完全犯罪完全指南〉破れたり!?
ーこれから殺人を行う。そんな時に〈完全犯罪完全指南〉という、ごく限られた人にしか入手できない裏ファイルを手に入れることができた。それは、独自捜査・違法捜査をやりすぎて懲戒免職となった刑事が書いた極秘のファイルだった。春夏秋冬、4人の人物がそのファイルを利用し、完全犯罪を犯していく。用意周到、完璧な殺人をする4人は逃げ切れるのか、、、。
短編で、4人の登場人物が様々な手段で殺人を犯します。叙述トリックで、最初から犯人が分かっているので、謎解きみたいな感じはないのですが、犯人目線のドキドキ感は味わえます。
本当に最後の最後まで読むと、「完全犯罪」が何を意味するのかが分かります。
1つ1つの短編自体の面白さよりも、〈完全犯罪完全指南〉の存在が面白いです!
個人的に、ミステリーは探偵の謎解きも大好きなのですが、叙述トリックが一番好きかもしれないです。
最初に犯人が分かっているからこその、犯罪心理や予期せぬアクシデントとかがハラハラドキドキしちゃいます。
なので、今回は犯人の心理とかがもっと色濃いとさらに満足度高かったかなぁ!
深水黎一郎さん人気な方なので、また読んでみたいです! -
Posted by ブクログ
○ 総合評価 ★★★☆☆
〇 サプライズ ★★☆☆☆
〇 熱中度 ★★★☆☆
〇 インパクト ★★☆☆☆
〇 キャラクター ★★☆☆☆
〇 読後感 ★★★★☆
よく言えばバラエティ豊かな短編集。雑多な作品が収録されている。どの作品もテイストは違うが,十分に楽しめる秀作ぞろい。深水黎一郎の作品は,長編だと面白いけど傑作というには一歩足りないと感じる作品が多い。短編だと読みやすさとクセのなさがより際立つ。この作品集では,「完全犯罪あるいは善人の見えない牙」が白眉だろう。
〇 人間の尊厳と八〇〇メートル
ふと立ち寄ったバーで見知らぬ男から持ちかけられた異様な「賭け」。男は人間の尊厳のために800メートルを競争しなければならないと説く。「ハイゼンベルクの不確定性原理」などを持ち出し,「普通に考えたら絶対にしない行為だから意味がある。限りなく0パーセントに近い可能性だったものを100パーセントに変えるのが目的だと。
その男は真島浩二といって,かつて日本の中距離界のエースと言われていた男だった。言葉巧みに800メートル競走に誘い,賭け金の5万円をせしめようとしていたのだ。そのことを見抜いたのはスケートボードを足の代わりに使い,上半身の筋肉でボードを漕ぐように床を押して進む男。その男は,絶対に勝ち目のない賭けを自ら提案し,それえをやらずに済ませた。その限りなくゼロに近い可能性を100にして見せることで人間の尊厳を証明したのだ。
日本推理作家協会賞を受賞した作品。作者のあとがきによると,読者にほんの一瞬でも八〇〇メートルを走ることが人間の尊厳を証明することになる,と思わせることができれば成功だと考えて書かれた作品とのこと。
真島の口を借りた量子力学の考えを使った作者の表現ぶりで,八〇〇メートルを全力疾走することで人間の尊厳を証明することになるのかもな…と思わせることには成功していると思う。しかし,オチが分かりにくい。一瞬何かわからず,考えオチみたいになってしまった。想像もしなかったことをすることで,0パーセントに近い可能性だったものを100パーセントにすることが人間の尊厳の証明という点を,勝ち目のない賭けを持ち掛け,その賭けをせずに済ますことで0パーセントに近い可能性を100パーセントにすること,というロジックがすっと落ちない。さらに,真島がスケートボードに乗って去った男が足が不自由であることを見抜けなかったところも腑に落ちない。途中の話の持って行き方はよいがオチの分かりにくさを踏まえ★3止まり。
〇 北欧二題
極北の国々を旅する日本人青年がおもちゃ屋と博物館で遭遇した二つの物語が描かれる。おもちゃ屋での事件は,おもちゃ屋で身分証明書がなく困っていた男がその国の国王で,コインや紙幣の肖像画で自身の身分を証明したという話。1988年にストックホルムで実際にあった話を元ネタにしているという。2つ目の博物館の話は,オチが分かりにくい。町を去ろうとしている博物館の従業員が15分前に博物館を閉めて,最後の仕事をきちんと終えてから町を去ろうとしたのか…と思わせて,そんな美しい話ではないのかもしれないと持って行くリドルストーリーのようなオチ。文章の読みにくさと相まって,すっと落ちてこなかった。ルビ以外の個所ではカタカナを用いないという文体で書かれており,雰囲気は出ているが,正直,読みにくい。2作のトータルでギリギリ及第点の★3で。
〇 特別警戒態勢
帰省が嫌な警察官の子どもが皇居の爆破予告をすることで,父親の休暇をなくし,帰省をしなくてもよくなるという話。「五声のリチェルカーレ」でも感じたが,作者の子どもに対する考えが現れた作品。意外な犯人モノとも読めるが,作者はホワイダニットに特化した作品だと言っている。確かに,フーダニットとしてはさほどの意外性はない。ただ,ホワイダニットとしてもそこまでの意外性はない。分かりやすくよくできた短編ではあるが★4とするほどでもない。★3で。
〇 完全犯罪あるいは善人の見えない牙
若い頃から異性に持てた女性が,魅力があると思って結婚した男性が善人過ぎるため,多額の保険金を掛けて毒殺する。自然死に見せかけるはずが,善人である男が借金を相続させないように死亡前に離婚。自身の臓器を移植するために解剖がされ,離婚をしていたので臓器の提供に異を唱えることができず,解剖により毒殺がバレてしまったという話。犯罪と認定されていないのに死体解剖されるケースは何かと考え,描かれた作品とのこと。これは面白い。オチも分かりやすい。傑作といってもいいデキだと思う。★4で。
〇 蜜月旅行 LUNE DE MILE
パリに新婚旅行に行っている夫婦を描いている作品。夫はかつてバックパッカーとして海外を放浪していた。旅行で夫は張り切るが,何か噛み合わない。妻は「日本帰ったら離婚することに決めたわ。」と言い出す。見栄っ張りでわがまま。まるで子どもだと。その後,強盗騒ぎに見舞われ,妻に盗癖があることが分かる。その後の妻はやりたい放題。そして夫と妻との関係も改善するとうオチ。
起承転結がしっかりした,短編のお手本のような作品。読後感もさわやか。ミステリーとは言えないが,ちょっとしたコメディとして及第点のデキだろう。★3で。 -
Posted by ブクログ
〇 総合評価 ★★★☆☆
〇 サプライズ ★★☆☆☆
〇 熱中度 ★★★☆☆
〇 インパクト ★★★☆☆
〇 キャラクター★★★☆☆
〇 読後感 ★★★☆☆
〇 希少価値 ★☆☆☆☆
いわゆる「倒叙モノ」のミステリ。「倒叙モノ」のミステリの多くがそうであるように,この作品も短編集となっている。本全体の趣向・構成としては,それぞれの短編のタイトルが春夏秋冬になぞらえたものになっている。「春は縊殺 やうやう白くなりゆく顔いろ」,「夏は溺殺 月の頃はさらなり」,「秋は刺殺。夕日のさして血の端いと近こうなりたるに」,「冬は中毒殺。雪の降りたるは言ふべきにもあらず」と万葉集のパロディのようなタイトルとなっている。 もう一つの大きな特徴は,全ての短編の主人公である殺人者が「完全犯罪完全指南」という裏ファイルを購入し,その内容を参考に犯行を実行するという設定である。「完全犯罪完全指南」は,ネット上で噂になっている裏ファイル。不定期にネット上のどこかに現れて数時間後には消える。決裁はウェブマネーのみ。一定時間経過すると自動的に壊れる仕組みである。独自捜査・違法捜査をやり過ぎて懲戒免職になった元警視庁の敏腕刑事が,組織へのルサンチマン(恨み)と実益を兼ねて執筆したという触れ込みの怪しげな裏ファイルだ。この「完全犯罪完全指南」の内容を踏まえて完全犯罪を計画するが,現場の特殊な状況や突発的なアクシデント,状況の変化などに適切に対応できずに犯行が発覚するという展開である。
そもそも,この「完全犯罪完全指南」を執筆し,裏サイトで頒布している黒幕は警視庁キャリアの母里谷。完全犯罪を裏で操り,また将来的には,一見完全犯罪に見える犯罪を解決することで自らのキャリアアップにつなげる。母里谷は自らの野望のために「完全犯罪完全指南」の完成度を高めようとし続ける。
全体的に見て,コミカルな要素がある倒叙ミステリ。「完全犯罪完全指南」を使った,全体を通じての趣向もおまけ程度。作品全体に一貫性とちょっとした意外性を付与している程度。この作品の見どころは各作品において,犯人がどのような失敗をして犯行が暴かれるのかという部分である。
なお,倒叙モノミステリには,コロンボや古畑任三郎などの犯人を追い詰める探偵役がいることが多い。倒叙の四季でも警部補の海埜という警察官が探偵役を務める。地道に犯人を追い詰めていくというタイプでクセは少ないが,そのクセの少なさを逆手にとって,「冬は中毒殺 雪の降りたるは言うべきにもあらず」では,語り手を偽る叙述トリックを使い,探偵役を別シリーズの探偵役の神泉寺瞬一郎と入れ替えている。これもちょっとした読者サービスだろう。
全体を通じて深水黎一郎らしい,サービス精神と小技に満ちた連作短編集と言える。しかし,これも深水黎一郎らしいといえるのだが,イマイチ突き抜ける面白さがない。どの短編も,しっかりとした物理的な証拠で犯人を諦めさせるという点は工夫がこなされているが,「ふーん。」という程度の犯人のミスによる物理的な証拠ばかりなので,小説としての面白み,意外性がそれほどない。全体を通じた趣向や最後だけ探偵役を代えるという叙述トリックも,読者サービスだと思うのだが,やや唐突で空回り感がある。全体のデキは決して悪くはないが,やや面白みに欠ける作品という印象
以下,個別に個々の短編を見ていく。
〇 春は縊殺 やうやう白くなりゆく顔いろ
政治家の息子が,遊び相手の女性に子どもができたので自殺に見せかけて殺害する。政治家の関係者が愛人を殺害するという設定は倒叙モノに多い気がする。縊殺=首吊り自殺に見せかけるというのは,法医学的にはなかなか難しいものだという印象がある。この作品でも「完全犯罪完全指南」を頼りに多種多様な隠蔽工作を行う。しかし,鴨居に上に向かうささくれがあるという些細な物証から自殺でないことが見抜かれる。そして低反発クッションに残った足型から犯人であることがバレるというもの。これは犯人のミスが分かりやすく,意外性もあり作品として面白い。よくできた倒叙モノだと思う。
〇 夏は溺殺 月の頃はさらなり
友人と同じ女性を好きになり,結婚されてしまった男がその男を事故に見せかけて殺害する話。男女関係のもつれも倒叙モノに多そうな動機だが,この作品の動機はひどい。殺人の動機にはならない気がする。まぁ,倒叙モノミステリの動機は,どれも似たり寄ったりかもしれないが。海釣りにいって事故に遭ったと見せ掛けるために多種の工作をするが,些細な一言や細かな状況から殺人が疑われる。決定的だったのは遺体の肺に未消化の食べ物のカスが残っていたことからクーラーボックスなどで殺害したことが疑われ,その水を殺害した小屋の側で捨てていたことから殺害が疑われる。
うーん。これは一応物理的な証拠はあるのだが,ここまで慎重な犯人がなぜ小屋の側で殺害に使ったクーラーボックスの中の水を捨ててしまったのかが疑問。倒叙モノにはこのように,そんなミスをするかな?というミスから犯行がバレるものもある。やや興ざめ。動機も弱く,物理的な証拠の鮮やかさはともかく,小説としてそれほど面白くない。
〇 秋は刺殺。夕日のさして血の端いと近こうなりたるに
遺産をもらうために伯父を殺害する甥の話。これも倒叙モノミステリに多そうな設定。しかし,この作品の決め手となる物理トリックは感心できない。なんとダイイングメッセージである。殺害された伯父はロウソクで「C.J」というイニシャルを残していた。被害者が背中から刺されていること,電気が付いてたことなどから,物取りの犯行ではないことが予測される。床のロウを全て剥がしたあと,もう一度血だまりをつくるなり,被害者の血を擦り付けることをしなかったために,イニシャルが浮かび出てきて犯行がバレるというもの。これだけで犯行を認めるか?というのが素直な感想。そう思ってしまうと倒叙モノミステリとしては弱く感じる。
〇 冬は中毒殺。雪の降りたるは言ふべきにもあらず
殺人の動機は子どものころに弟を事故死させた幼馴染を殺害するというもの。雪国で氷を利用した密室をつくり,練炭自殺に見せかけて殺害する。犯罪の動機がしっかり描かれていないので,すっきりしないが短編の倒叙モノミステリでは動機はあまり掘り下げない方が無難。もっとシンプルな動機にしてもよかったように思う。被害者の手にマッチをすった硝煙反応がなかったことから自殺ではないとされる。水の過冷却現象を利用して裏口のドアを凍らせるという密室トリック。
物語としては,海埜刑事と若手刑事が捜査していると見せ掛けて大村刑事と神泉寺俊一郎が捜査していたという叙述トリックが仕掛けられ,「完全犯罪完全指南」を書いた黒幕,キャリアの母里谷という人物が現れる。短編ミステリとしては叙述トリックがそれほど効果的ではないものの,マッチの硝煙反応がないことから他殺が疑われるところは上手い。密室トリックもそれなりに面白い。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ〇 総合評価 ★★★☆☆
深水黎一郎版「名探偵の掟」ともいうべき短編集。本格ミステリのさまざまな要素をちゃかした短編が収録されている。本家の「名探偵の掟」は,構想的な部分におふざけ要素があったが,個々の短編の完成度は低くなかった。しかし,この短編集は,短編そのものがミステリとして成立していなかったり(CHPTER1 国連施設での殺人),悪乗りがひどすぎて作品として破たんしている作品(CHAPTER11 青森キリストの墓殺人事件)まである。
中には,ミステリのうんちくやパロディとして完成度の高い作品もある(CHAPTER5 名もなき登場人物たち)。作品のデキの良し悪しの振れ幅が非常に大きい短編集であると言える。ユーモア要素は,主人公の大癋見警部のアクの強いキャラクターの影響もあって,非常にクセが強いものになっている。この独特のユーモア・個性も含め,好きな人は好き,嫌いな人は嫌いとはっきり分かれる短編集になっていると思う。
個人的な好みをいうと,ミステリ的なうんちくを充実させ,もう少しアクを取り除き,シンプルな作りの方が好み。しかしそれだと「名探偵の掟」になってしまうわけだ。既に「名探偵の掟」が存在するので,この作品としてはこの仕上げしかないのだろう。
個々の短編のデキの良し悪しの振れ幅が大きいので,全体の評価を付けにくいが,全体的に見るとひどい作品とまでも言えず,傑作ともいえないので,結局,★3かと思う。
CHAPTER1 ★☆☆☆☆
国連施設での作人(最初はやっぱりノックス宣誓)
国連施設での殺人。「この事件の張本人は誰かー」という報告書から「張」という中国人を疑ったり,ロシア人を疑ったりする。ミステリとは言えないショートショート。オチも冴えない。
CHAPTER2 ★★★☆☆
クリスマスの夜の殺人(神が嘉し給うたアリバイ)
正教会のクリスマスはユリウス暦で行われており,グレゴリウス暦だと1月7日になることからアリバイが生じた男の話。飽くまで短編向きのネタだが,これはちょっと面白い。
CHAPTER3 ★★★★☆
現場の見取り図(そろそろここらへんで密室殺人)
「空室(そらむろ)」という人物が住んでいた部屋を「空室(あきしつ)」と誤読させることで密室を作った作品。これも完全な短編ネタだが,結構面白い。
CHAPTER4 ★★★☆☆
逃走経路の謎(加えてさほど意味のない叙述トリック)
埼玉や千葉から逃走している犯人がどうやって逃走しているのか。警視庁の猪狩管理官が悩んでいるが,その原因と思われる地下トンネルがテレビで紹介されており,息子がそのテレビを見ているという話。なお猪狩警部補が女性であるという叙述トリックもある。これは…ちょっと分かりにくい。もっとすっきりして最後でオチを明らかにする作品にすれば面白かったと思う。叙述トリックをさりげなくそして,意味なく使う趣向は面白い。
CHAPTER5 ★★★★★
名もなき登場人物たち(完全無欠のレッドへリング)
A,B,Cと称された人物が犯人というトンデモない話。ちなみにAは永五郎,Bはユースケ・Bee,Cは志位というオチ。A・B・Cは赤いニシンのTシャツを着ていたが,これはアンチョビ。カタクチイワシ同好会から被害者が脱退したから,殺害したという動機。「たたみいわし」の見立てもある。「作品中で名前が与えられていない人物は犯人足り得ない」という本格ミステリのルールを裏から付いた作品。これも面白い。こういう短編ならではの思い切ったプロットの作品は好き。傑作といっていいと思う。
CHAPTER6 ★★★☆☆
図像学と変形ダイイングメッセージ(ヴァン・ダインの20則も忘れない)
牡牛の人形を握って死んでいた犯人。牡牛=聖ルカという新約聖書の福音史家を意味して「流伽」という女性が犯人だと思わせる。その後,牛頭という使用人がいることが分かってこちらが真犯人っぽいというオチ。使用人が犯人であってはならないというヴァン・ダインの20則に反するというオチでもある。これは狙い過ぎていてそれほど面白くない。牛が干支と星座の両方に該当して,牡牛のダイイングメッセージがいろいろに解釈できるという点はダイイングメッセージの本質的な問題を示していて,面白い。
CHAPTER7 ★★☆☆☆
テトロドトキシン連続毒殺事件(後期クイーン問題に対して,登場人物達が取るべき正しい態度)
後期クイーン問題とは,作中の探偵が全ての情報を手に入れていると証明することは,作中の人物には決してできないということ。すなわち,いくら見事な推理でも,それを覆す証拠が出てきたら意味がなくなってしまう。見事な推理で終わったミステリでも,それを覆す証拠を出す続編を作れば,間違った推理になってしまうということ
フグの毒を使った殺人事件で,最初はフグ屋,次に日本料理屋と捜査範囲を広げ,最後は釣り人全員が容疑者といったところで後期クイーン問題を持ち出した警官がボコボコにされるというオチ
真相は,築地市場のバイトが犯人と思わせる描写がある。
後期クイーン問題そのものは面白いが,これを題材にするのであればもっと面白い作品ができたと思う。これは分かりにくいしオチもイマイチ。凡作。
ENTR'ACTE 観察の神様かく語りき(正確な死因)
★★☆☆☆
観察の神様といわれる監察医が生きているうちに解剖をしてしまったので、解剖が死因だったというオチのショートショート。これはしょーもない。
CHAPTER8
この中の1人が(お茶会で特定の人物だけを毒殺する方法) ★★★☆☆
ティーパーティーで特定の人物だけに毒を盛るというトリックを巡る作品。「あらゆるものに瞬時に溶け,経口摂取すると,ほんの少量で飲んだものの命を奪うほどの猛毒だが,その正体を突き止めることができないという「例の無色透明な毒」が使われる。トリックはソーサーに紅茶を移してから飲むといううんちくを披露する被害者を狙ったというもの。話全体の雰囲気はそれなりに面白いが…ミステリとしては平凡
CHAPTER9
宇宙航空研究開発機構(JAXA)での殺人(21世紀本格) ★★★★☆
密室トリック。しかし,そのトリックの解明には国際宇宙ステーションの太陽光パネルの開発が,友人宇宙環境利用ミッション本部の管轄であるという(この話内の)知識が必要。ノックスの十戒の第4条「結末で長大な科学的説明が必要とされる小道具を使ってはならない」にモロに抵触する話。島田荘司の「21世紀本格」=いろんな分野のいろんな知を結集してミステリーの世界をどんどん豊にしていこう!を紹介している。最新技術はもちろん,仮にいまだ実現化されていない技術でも,読者に充分実現可能だと納得させることができたら使ってもOKという考えを紹介している。ちなみにCHAPTER1の真相もさらっと描かれている(ロシア人のスミノルフが犯人。アルコール度数96度を誇る世界最高純度の酒スピリタスを利用したトリック)。
結果的に殺人のためにえらく大掛かりな独立実験棟を作っていたということになる(作中ではマジックにでも使うつもりで作ったのだろうとなっているが…)。まさにバカミス。バカミスの手本というような作品で結構好き。
CHAPTER10
薔薇は語る(〈見立て〉の真相) ★★★☆☆
見立て殺人についてのうんちくが語られる。見立て殺人は犯人に何のメリットもないとか,日本では一時期,やたらに流行ったとか。海外ではクリスティの某長編(そして誰もいなくなった)など,いくつかの名作を除くと,実際の作例はそれほど多くない。そもそも日本のミステリに見立てが多いという事情など
この短編での事件は薔薇を死体に突き刺すという見立て。真相は事故死。警察に匿名電話をしたのは女王蜂クラブというデリヘルの娘。被害者の依頼で体のいたるところに薔薇を刺し,被害者が事故死したので帰ったという。その後,現場に駆け付けた安斎刑事が見立てを完成させ,その筋の雑誌に投稿していたというオチ。ミステリのうんちくと全体の雰囲気はなかなか。
CHAPTER11 ★★★☆☆
青森キリストの墓殺人事件(バールストン先攻法にリドル・ストーリー,警察小説,歴史ミステリ―及びトラベルミステリー,さらば多重解決)
青森のキリストの墓で,村人の死体が発見される。歴史ミステリ―的要素は,キリストの墓が青森にあるというトンデモ説の否定。バールストン先攻法的要素はキリストが2000年も前から仕掛けていたというもの。リドルストーリー的要素はキリストが復活したようにも見える描写。それから警察の健全性テストがされていたというオチもあり,村長が犯人だったり,鶴岡刑事のドッキリだったりという多重解決。トラベルミステリー的要素は青森の描写。警察小説っぽい要素は警察の捜査とてんこ盛り。やや悪乗りが過ぎる点が難点。 -
Posted by ブクログ
『美人薄命』で魂を射抜かれた(と言っては大げさか)作家。それで著作を大人買いしたのに、その次に読んだ『言霊たちの反乱』はイマイチ、いやイマサンぐらいでガクッ。この「芸術ミステリシリーズ」には手を出せずにいましたが、数日前に西宮大谷記念美術館で開催中の藤田嗣治展に行き、読むなら今しかないでしょうということで。
エコール・ド・パリブームをつくったともいうべき、有名画廊のオーナーが刺殺される。いわゆる密室殺人事件。豪邸に居合わせたのは、何十年も仕える執事、被害者の妻子、知的障害のある作男のみ。
450頁超のボリュームのうち、こりゃ要らんやろと思う部分多数。推理する登場人物が皆、能書き薀蓄垂れで勿体つけすぎの感あり。誰にも共感できず、特に悪態つくのが仕事と公言してはばからない警部には怖気が走ります(笑)。画家の名前が出るたびにやらかすボケはまったく笑えず、しばいたろかと思うほど。とはいえ、このボリュームを一応は飽きずに最後まで読ませてくれます。ミステリーとしてはどうなんだと思うものの、エコール・ド・パリについてわかりやすく書かれているところはとても良い。
「日本人全体がエコール・ド・パリになるべき」、すなわち一人一派となるべきだと。一理あり。 -
Posted by ブクログ
芸術探偵シリーズは、正直謎解きを楽しむというより蘊蓄を楽しむことをメインにしてるので、表題作のトリックも「そんなん音楽に詳しくない素人に見抜けるわけないわー!」とはなりませんでした。「へ〜バイオリンってそうなの〜へぇ〜」と感心しきりに徹することができる私は、すごく優等生な読者だなァと思います(作文)。
表題作もいいんですか、個人的にはワグネリアン三部作が面白かったかな〜。
ワーグナーってあれだよね…タンホイザーとかワルキューレとかジークフリートみたいなアレでしょ…年末によくEテレとかBSで見るヤツ…位の知識しかない私でも楽しめました。オチが小気味良くて軽快。深水作品お馴染みの芸術への愛を感じられて満足できる連作です。
千住博さんの著作でも感じたけど、特定の分野の芸術を、その芸術の表現方法ではない文章という手法で説明して、なおかつ興味を抱かせるって、すごいことなんじゃないかなあって思うんですよね〜。
◎ストラディヴァリウスを上手に盗む方法…時価数十億のストラディヴァリウスがコンサート会場から忽然と消えた!容疑者は観客とオーケストラの団員達に絞られたが、懸命の捜査にも関わらずストラディヴァリウスの行方は杳としてしれない。果たして、犯人はどこにバイオリンという決して小さくない楽器を隠したのか?そして、芸術探偵が犯人を指摘した驚くべき方法とは?
◎ワグネリアン三部作…ワグネリアンを自称する男はクラシックに毛ほども興味のない恋人をワグネリエンヌに仕立てようと奮闘し、/熱烈なワグネリエンヌの女はワーグナーへの愛ゆえに就活をことごとく失敗するもその愛ゆえに最高の仕事を見つけ、/3名の選ばれしワグネリアン/ワグネリエンヌはマニアックなクイズ番組でワーグナーの知識を競い合う。
◎レゾナンス…深水先生の処女作。冒頭から瑞々しさ爆発←←