深水黎一郎のレビュー一覧

  • ストラディヴァリウスを上手に盗む方法

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    音楽的に為になる三つの作品からなる短編集。
    表題作ではヴァイオリンのことが、「ワグネリアン三部作」ではもちろんワーグナーのことが、そして最後の「レゾナンス」では純正律と平均律の違いが、上手く物語に組み込まれていて面白い。

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    2017年07月16日
  • ストラディヴァリウスを上手に盗む方法

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    表題作は音楽ミステリとして驚愕のトリック&謎解き法だった。いろんな意味ですごい。ワグネリアン三部作はマニアすぎて楽しかった。オタつながりで別の作家さんの『不機嫌な姫とブルックナー団』というブルオタの本を思い出した。

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    2017年07月01日
  • 言霊たちの反乱

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    60~100頁の短編と中編4つを収録。いずれも徹底した言葉遊びで楽しませてくれますが、本当にこんな人がいたら、相手をさせられる側はものすごくイライラすることでしょう。

    『漢(おとこ)は黙って勘違い』では、日本語に同音異義語がとても多いことに着目。主人公が「言いまつがい」ならぬ「聞きまつがい(笑)」を繰り返した結果、悲惨な運命に。

    『ビバ日本語!』の主人公は、自分が優秀だと自負する日本語教師。彼の生徒たちは教えられたとおりの文法ルールを守って日本語を話すわけですが、これがなんとも変なことに。

    『鬼八先生のワープロ』に登場するのは、いまどきパソコンではなくワープロしか使えない文芸評論家。自分

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    2017年05月15日
  • 世界で一つだけの殺し方

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    科学もピアノも割と好きなので楽しく読めましたが、興味ない人に瞬一郎君の薀蓄はつまらないのでは(そういう人はそもそも読まないか)。
    トリックは薄々察しがつくもののちょっと変わっててまあ面白いのですが、作中の言葉を借りると私はホワイダニットに重きをおくタイプなので動機はそれでいいの…と脱力。
    あ、瞬一郎君の性格は好きです。

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    2017年03月25日
  • 言霊たちの反乱

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    バカミスの類いだが、最後の「情緒過多涙腺刺激性言語免疫不全症候群」という短編は、唯一少しだけシリアスで、メディアの報道の仕方への批判的作品になっていた。これが一番面白かった。

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    2017年01月21日
  • 美人薄命

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    ネタバレ

    〇 概要
     主人公の磯田総司は,弁当配達のボランティアで老婆,内海カエと出会う。家族を失い,片目の視力を失い,貧しい生活を送るカエは,愛し合いながら結ばれなかった男との思いでを総司に語る。その悲しい恋物語の裏には,総司の人生観を一変させるような秘密が隠されていた。さまざまな事象について,ある一面と異なった一面が現れる変則ミステリー

    〇 総合評価 ★★★☆☆
     火事で内海カエが死んでしまう。その火事は原因などを踏まえると殺人といっていいほどのものである。しかし,ミステリという視点で見ると事件,連続殺人事件が起こるわけでもないし,トリックやプロットにも独創性は乏しい。カエの思い出話もそれだけ見れ

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    2016年12月10日
  • エコール・ド・パリ殺人事件 レザルティスト・モウディ

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    エコール・ド・パリとは著者そのもの
     エコール・ド・パリ ー 名前は聞いたことがあっても、明確な定義があるわけではない彼らについて知る人は少ないでしょう。モディリアーニや、シャガールなどの作品は実際見たことがありますが、華やかな印象派の画家たちと比べるとあまり好きな画風ではありませんでした。
     作品についてですが、作中作に当てはまる「呪われた芸術家たち」という美術論を筆頭に、美術ミステリとしてこれ以上ない水準だといえます。一方で、フェアとも巧妙とも思えない読者を誘導させる例のアレや、よく分からないミスリード、真相諸々、あまり好みでない要素が多かったです。あまりにも浮いている警部の存在もさること

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    2016年11月27日
  • 美人薄命

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    表紙に惹かれ購入。ミステリ要素が邪魔に感じてしまった。でもカエの心情を詳らかに語ってしまうのも興が無い気もするし・・・。面白かったけど何か物足りなさを抱いた作品でした。
    あらすじ(背表紙より)
    弁当配達のボランティアで老婆・カエと出会った、大学生の総司。家族を失い、片目の視力を失い、貧しい生活を送るカエは、愛し合いながらも結ばれなかった男との思い出を語り始める。その悲しい恋物語には、総司の人生すら一変させる、壮絶な秘密が隠されていた。衝撃の結末が待ち受ける、長編純愛ミステリー。

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    2016年10月10日
  • 言霊たちの反乱

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    用法で変化する言葉の不完全さをコメディタッチでおちょくり倒す短編集。扱うテーマの割に新喜劇を見ているような軽い読み味。ミステリーアリーナに繋がるマスメディアへの描写も多々あってオッとなった。あと『ビバ日本語!』に全裸中年男性が登場して笑った。

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    2016年07月10日
  • 美人薄命

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    ネタバレ

    若者と老婆の交流を描いた、ミステリ長編。
    全体的な雰囲気や展開は、割とありふれたもの。
    ただし、ミステリ面は巧みで、結末はそれなりに捻ってある。期待を裏切らない程度には面白い。
    しかし、著者は若者を描くのが苦手に思える。他のキャラクター描写の水準を考えると、ちょっと紋切り型というかお粗末で、そのへんの小説に出てきそうなものになってしまっている。若干醒めてしまった。
    あとは、本線の外側にあるエピソードたちの作り込みがやや過剰か。なんだかもったいなく感じる部分がいくつかあった。
    と、散々文句を上げたが、話も面白かったし、雰囲気も独特で充分楽しんだ。
    3+

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    2016年06月12日
  • 花窗玻璃 シャガールの黙示

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    芸術探偵神泉寺瞬一郎のシリーズ。
    ヨーロッパ旅行中での一事件を手記にまとめ、日本に帰って叔父がそれを読んで推理するという流れ。いつもながら漢字の表記にはじまりステンドグラスの云々などうんちくもたっぷりw
    で、内容は・・・まあいつも通りという感じでしょうか。うんちくを楽しみつつ事件の推理を楽しむ。そしていつもながらの完成度・・ではあるんですが。あの警部がでてこないとなんだかちょっとさみしく感じてしまいましたw

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    2016年03月31日
  • トスカの接吻 オペラ・ミステリオーザ

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    神泉寺瞬一郎のシリーズ。これは作品内で時系列がちゃんとあるんですね。先日読んだ「ジークフリードの剣」の次になってる。そこら辺の話もでてきてるし。
    今回は歌劇『トスカ』公演の真っ最中に舞台上で起きた殺人。真相に至る推理もさることながら、この手の話に疎い自分からすると歌劇とか知らない世界をいろいろと勉強できてそれがまた趣深い。知ってる人からしたら退屈だったりいろいろ反論したいところもあったりするのだろうか?
    話の展開とかは決して明るくもないのにおなじみ大癋見警部のとぼけた味わいで馬鹿馬鹿しさもたっぷりってのがとぼけた味わいにもなっていいですね。

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    2016年03月05日
  • 花窗玻璃 シャガールの黙示

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    瞬一郎がフランスに遊学していた頃の話し。作中作としてカタカナを使わないで記述するという目論みもあり。途中にあった「あいつら」の白痴的表現は確かに許しがたい。ルビも素晴らしいのに!色々面白く読めた。

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    2016年02月11日
  • ジークフリートの剣

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    若干いろいろ詰め込み過ぎな感じがしなくもない。オペラのうんちくはともかく女医さんのくだりは主人公のクズっぷりが鼻にもついたしなあ。
    その辺を除いたら綺麗にまとまった一冊だとは思うんだけど。
    ていうかぽっと出てきただけの探偵役が一体なんなんだろうと思ったらシリーズ探偵的な人物だったんですね。知らずに読んだので「うわなんだこいつ急に」くらいに思ってしまった。

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    2015年11月16日
  • 五声のリチェルカーレ

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    深水黎一郎による、学芸タッチの中編ミステリ。
    デビュー作から考えると、特異な起承転結はないが、代わりに文体や表現、セリフ等で所々個性を滲ませている感じがした。
    様々な学術的知識やエピソードをはさみつつ、話の構成は緻密で、上手くまとまった作品だと思う。
    ただし、少し文章は硬質すぎるか。自分の好みの問題ではあるが。
    3

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    2015年10月24日
  • 五声のリチェルカーレ

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    ネタバレ

    深水黎一郎の作品は,メフィスト賞受賞作の「ウルチモ・トルッコ 犯人はあなただ!」を読んでみたいと思っていながらも,未読。この作品が始めての作品。
    予備知識なしで読み終わった。読み終わった段階の感想は,驚くことはできたけど,「なんか違和感があるな?」というもの。パラパラと再読しても,なかなか違和感がなくならなかった。
    本作は,同級生ふたりを殺した少年を家庭裁判所調査官の「森本」が調査をしているという設定となっている。調査がされている少年の名前が伏せられており,この少年が誰か?という点が謎となっている。
    叙述トリックで少年を「昌晴」という少年だと思わせ「,実は「白崎」という少年でした!」という真相

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    2015年09月27日
  • 人間の尊厳と八〇〇メートル

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    サクサク読めるのと読後感の良さよ。こういう味わいのミステリって他になんかあったかなぁと、何とも例え難い。各々の話でのキャラクターたちが語る内容が面白かった

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    2015年09月14日
  • 人間の尊厳と八〇〇メートル

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    こじんまりとしたバーで、「わたし」が初対面の男から持ちかけられた、謎めいた“賭け"の行方は・・・。

    短編集です。
    ちょっとした日常の謎とか歌野晶午みたいなワンアイデアで一本くらいの軽いミステリとかバラエティに富んでいます。いい意味でも悪い意味でも統一感がない一冊かもしれません。逆にいうとどれか一本くらいは好みの話が見つかるんじゃないかな、と。
    個人的には「北欧二題」が異国の風景を読んでいて感じ入った気がして好きです。謎!って感じの話でもなくすっきりと読めたのも好印象。

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    2015年08月11日
  • 人間の尊厳と八〇〇メートル

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    深水黎一郎のミステリ短編集。
    表題作は日本推理作家協会賞作品、これはよかった。洒落た感じと、切れの良い起承転結、読後感も良好。
    それと「蜜月旅行」は楽しめたが、他が微妙だった。
    メフィストデビューの作者の色合いは不安定であり、どちらかといえば、“らしさ”がない作品のほうが好き。
    となると、相性はよくないのかもしれない。
    3

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    2015年06月18日
  • ジークフリートの剣

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    本書は『トスカの接吻』のサイドストーリーに位置付けられます。
    物語では、念願叶ってジークフリード訳を射止めた主人公が、舞台で喝采を浴びるまでの苦悩や葛藤が描かれています。
    こうして書いてみると、およそミステリっぽくないのですが、そこは芸術探偵シリーズで卒のない作品を産んできた作者のこと、細かな伏線、暗示的な描写などで、胸打つミステリに仕上がっています。
    しかし、実を言うとミステリとして読まない方がより本書を楽しめるような気がします。作者の名前的に無理な注文でしょうが、ひとまず物語の流れるままに、文字を追うような読み方をオススメします。
    ラストのジークフリードを演じる主人公の姿は、読者である僕も

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    2015年05月24日