深水黎一郎のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
60~100頁の短編と中編4つを収録。いずれも徹底した言葉遊びで楽しませてくれますが、本当にこんな人がいたら、相手をさせられる側はものすごくイライラすることでしょう。
『漢(おとこ)は黙って勘違い』では、日本語に同音異義語がとても多いことに着目。主人公が「言いまつがい」ならぬ「聞きまつがい(笑)」を繰り返した結果、悲惨な運命に。
『ビバ日本語!』の主人公は、自分が優秀だと自負する日本語教師。彼の生徒たちは教えられたとおりの文法ルールを守って日本語を話すわけですが、これがなんとも変なことに。
『鬼八先生のワープロ』に登場するのは、いまどきパソコンではなくワープロしか使えない文芸評論家。自分 -
Posted by ブクログ
ネタバレ〇 概要
主人公の磯田総司は,弁当配達のボランティアで老婆,内海カエと出会う。家族を失い,片目の視力を失い,貧しい生活を送るカエは,愛し合いながら結ばれなかった男との思いでを総司に語る。その悲しい恋物語の裏には,総司の人生観を一変させるような秘密が隠されていた。さまざまな事象について,ある一面と異なった一面が現れる変則ミステリー
〇 総合評価 ★★★☆☆
火事で内海カエが死んでしまう。その火事は原因などを踏まえると殺人といっていいほどのものである。しかし,ミステリという視点で見ると事件,連続殺人事件が起こるわけでもないし,トリックやプロットにも独創性は乏しい。カエの思い出話もそれだけ見れ -
Posted by ブクログ
エコール・ド・パリとは著者そのもの
エコール・ド・パリ ー 名前は聞いたことがあっても、明確な定義があるわけではない彼らについて知る人は少ないでしょう。モディリアーニや、シャガールなどの作品は実際見たことがありますが、華やかな印象派の画家たちと比べるとあまり好きな画風ではありませんでした。
作品についてですが、作中作に当てはまる「呪われた芸術家たち」という美術論を筆頭に、美術ミステリとしてこれ以上ない水準だといえます。一方で、フェアとも巧妙とも思えない読者を誘導させる例のアレや、よく分からないミスリード、真相諸々、あまり好みでない要素が多かったです。あまりにも浮いている警部の存在もさること -
Posted by ブクログ
ネタバレ若者と老婆の交流を描いた、ミステリ長編。
全体的な雰囲気や展開は、割とありふれたもの。
ただし、ミステリ面は巧みで、結末はそれなりに捻ってある。期待を裏切らない程度には面白い。
しかし、著者は若者を描くのが苦手に思える。他のキャラクター描写の水準を考えると、ちょっと紋切り型というかお粗末で、そのへんの小説に出てきそうなものになってしまっている。若干醒めてしまった。
あとは、本線の外側にあるエピソードたちの作り込みがやや過剰か。なんだかもったいなく感じる部分がいくつかあった。
と、散々文句を上げたが、話も面白かったし、雰囲気も独特で充分楽しんだ。
3+ -
Posted by ブクログ
神泉寺瞬一郎のシリーズ。これは作品内で時系列がちゃんとあるんですね。先日読んだ「ジークフリードの剣」の次になってる。そこら辺の話もでてきてるし。
今回は歌劇『トスカ』公演の真っ最中に舞台上で起きた殺人。真相に至る推理もさることながら、この手の話に疎い自分からすると歌劇とか知らない世界をいろいろと勉強できてそれがまた趣深い。知ってる人からしたら退屈だったりいろいろ反論したいところもあったりするのだろうか?
話の展開とかは決して明るくもないのにおなじみ大癋見警部のとぼけた味わいで馬鹿馬鹿しさもたっぷりってのがとぼけた味わいにもなっていいですね。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ深水黎一郎の作品は,メフィスト賞受賞作の「ウルチモ・トルッコ 犯人はあなただ!」を読んでみたいと思っていながらも,未読。この作品が始めての作品。
予備知識なしで読み終わった。読み終わった段階の感想は,驚くことはできたけど,「なんか違和感があるな?」というもの。パラパラと再読しても,なかなか違和感がなくならなかった。
本作は,同級生ふたりを殺した少年を家庭裁判所調査官の「森本」が調査をしているという設定となっている。調査がされている少年の名前が伏せられており,この少年が誰か?という点が謎となっている。
叙述トリックで少年を「昌晴」という少年だと思わせ「,実は「白崎」という少年でした!」という真相 -
Posted by ブクログ
本書は『トスカの接吻』のサイドストーリーに位置付けられます。
物語では、念願叶ってジークフリード訳を射止めた主人公が、舞台で喝采を浴びるまでの苦悩や葛藤が描かれています。
こうして書いてみると、およそミステリっぽくないのですが、そこは芸術探偵シリーズで卒のない作品を産んできた作者のこと、細かな伏線、暗示的な描写などで、胸打つミステリに仕上がっています。
しかし、実を言うとミステリとして読まない方がより本書を楽しめるような気がします。作者の名前的に無理な注文でしょうが、ひとまず物語の流れるままに、文字を追うような読み方をオススメします。
ラストのジークフリードを演じる主人公の姿は、読者である僕も