深水黎一郎のレビュー一覧
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★★★★☆
史上初の犯人
【内容】
新聞に連載小説を発表している私のもとに一通の手紙が届く。その手紙には、ミステリー界最後の不可能トリックを用いた「意外な犯人」モノの小説案を高値で買ってくれと書かれていた
【感想】
おそらくこの人が犯人になったのは初めてであろう。そのインパクトは絶大であり、それだけで評価できる。
なんとコレがデビュー作というからそこも驚き!
読後感としては、ちょっと複雑な感じがします。それほど中身に引き込まれたってことでしょう。
文字を映像にすれば映像化も不可能じゃないのですが、多くの人が最終的に混乱するので厳しいかな。
「ウルチモ・トルッコ」とはイタリア語(あるいはスペイン語)で「究極のトリック」を意味する言葉。
第36回メフィスト賞受賞作。 -
Posted by ブクログ
「読者が犯人」物はどうしたってキワモノにならざるを得ないと思うんですが、これもその御多分に漏れません(笑)。ですが、読み終わって本を閉じる時に、
「なるほど、確かに私が犯人だ!」
「いや、この殺害方法はアンフェアだ!」
と確かに悶々とするんですが、既読のこのジャンル作品の中では間違いなく暫定一位の新解釈です。そう来るか〜(笑)。
物語は、
「私に届いた、奇妙な手紙と小説」
「私と友人の、奇妙な手紙をめぐる会話」
「私と超能力研究者の、超能力実験と検証」
の三本柱を軸に展開します。あと、芸術探偵シリーズの海埜刑事の登場が嬉しかったわ〜( ^ω^ )
詳しくはネタバレになるので書きませんが、これらが言わば「トリックそのもの」であり、「読者に対するフェアな情報開示に極力努めたもの」であり、「このトリックが成立する世界観を構築しようとする」試みです。
読者を被害者と同じ次元に置き、なおかつ被害者を殺害させるという無理難題に対して作者が出した解答例は、あまりに荒唐無稽です。
ですが、表紙に映る自分の顔を見て、「悪気は無かったんや…」とうそぶきながらも、被害者が最後に私達犯人に送ったメッセージに胸を打たれたのでした。
この無謀なテーマに果敢に挑戦してくれた意欲に敬意を表して、星0.5増しの四つ星です!
「読者が犯人というミステリのトリック案を、一億円で提供したい」ーーそんな奇妙な手紙が「私」のもとに届いた。果たして差出人の意図、そして彼が命と引き換えにしても惜しくない「究極のトリック(ウルチモ・トリック)」とは? -
Posted by ブクログ
「芸術探偵シリーズ」第1弾。
印象派やフォービズムのように、流派の名を挙げることで
絵画作品の特徴が分かるようなものではない、エコール・ド・パリ。
画家ひとりひとりに特徴があり、同じエコール・ド・パリに分類される
画家同士でも全く意趣の異なる絵を描いていることも。
そんなエコール・ド・パリの画家及び彼らの作品にスポットを当て、
その特徴を紹介しつつ殺人事件とその解決の至るまでの経緯を
うまく絡めながら展開させたミステリ。
犯人は、、、まぁ分かりやすいでしょうか。
ミステリ好きな人にとっては。
謎の部分もどこかにあったものの組合せだしね。
ただ、2人目も死者の方は全く分からなかったなぁ~
芸術(絵画)に全く興味が無い人には、各章の冒頭部分など
読むのが辛い部分もあるだろうし、明かされる動機についても
しっくりこないこともあるだろう。
だけど、そのあたりを差し引いても良質なミステリだと思いました。
ひさびさにページをめくる手を止められなかった。
シリーズ続編も読むつもり! -
Posted by ブクログ
推理小説における最後の、そして究極のトリック・・・「犯人は読者」に挑戦した作品。
新聞に連載小説を発表している私のもとに1通の手紙が届く。その手紙には、ミステリー界最後の不可能トリックを用いた<意外な犯人>モノの小説案を高値で買ってくれと書かれていた。差出人が「命と引き換えにしても惜しくない」と切実に訴える、究極のトリックとは?読後に驚愕必至のメフィスト賞受賞作!
ミステリーを読むと、犯人は必ず作中に登場しているわけで、意外性を狙った小説でも、探偵が犯人、動物が犯人、被害者が犯人でもあった・・・等々、およそ書き尽くされてるんだが、この作品では、ミステリー界に残された最大のトリック・・・「読者が犯人」になると言うトリックに挑んでいる。
本書を読む前に、事前の知識として、犯人は読者である、って事は知っていたので、果たしてどんなトリックなんだろう?と興味津々で読み進めた。この作者は、非常に博識なのか勉強熱心なのか、さまざまな事柄について博識ぶりを披露している。それが嫌味にならないのは、高い筆力の裏づけがあっての事だと思う。退屈させない構成も水準以上。
ただ、「犯人は読者」というトリックについてはどうか?
なるほど新しい視点ではあるし、伏線も回収されており、大きな破綻は無いように思われるんだが、このトリックを完成させるのは少し条件が厳しいのではないか、と思われる。作者も作中に書いているが、条件さえ満たせば、たしかに「犯人は読者」が成立しそうな気もする。しかし、その条件が厳しい。一般的ではない条件と言ってもよいだろう。このあたりを許容範囲とするか否かは、それぞれの読者の判断になると思うんだが、自分としてはアウトかな。
しかし、斬新なアイデアと構成の妙、読みやすさ等の総合判断では、☆4個。 -
Posted by ブクログ
ネタバレとても中身の濃い一冊です。
凝った表現方法をとっているのに、すいすい一気に読まされてしまうリーダビリティ。
ネタバレ感想を順不同で。
マルタン刑事の叙述トリック(?) まんまとひっかかりました。
ジャン・レノ系の渋いルックスで想像しながら読んでいたらアレ(笑
いやジャン・レノも「グラン・ブルー」で共通するある要素を演じていたからアリか?
タイペイさんがお気づきになったあれは、一読わかりませんでした。
あれにお気づきになるとはすごい!
クラシックの楽曲などで、サビの旋律を最初にさりげなくモチーフとして提示する感じで、ノベルスP55の、
長髪を真っ赤に染めた若者 →後半でローラン氏につっかかるレストランの客
ロウソクを無駄につける紳士 →真相のトリックの暗示
「神のくそったれ」と言う赤毛の少女 →真犯人の生い立ちを暗示
しているのかな?と思いました。
ローラン氏が、「昔から通ってるからあいつは自分に頭が上がらない」とか思ってるレストランの主人が、実は彼をうざいと思ってそうなとことか、ありそうでいて切ないです。
「天使を見た」という並はずれて視力の良い目撃者と、真相の絵画的な描写がすばらしいです。
個人的に、情景がありありと目に浮かぶような華のあるトリックが好きです。
グイド・レーニの絵画のエピソードは胸が痛みます。
真の動機もそうですが…
そういうことする人は、自分が相手の人生をめちゃくちゃにしてる、とか反省の気持ちは持ちようがないのでしょう。
殺して排除するしかないというのがやりきれないです。
いろいろなことを考えさせられ、かつ盛りだくさんの満足度の高い一冊でした。 -
Posted by ブクログ
『同級生の刺殺事件』という凶悪犯罪を起こしたのは、昆虫好きの大人しい、クラスでも目立たないタイプの少年だった。
「生きていたから殺した」と謎の動機を語る少年。少年との対話を元に、闇に包まれた事件の真相を追う家裁調査官の森本。そして少年による“事件の回想”が始まる…。
読後すぐに「あっ、いつの間にか騙されていた!」と驚嘆。
「一体何が起こったのか?」という事件の全容を把握するためには、一度最後まで読んだ後に、場面ごとに細かく再度の“検証”を必要とする、そこで初めて読者が“大いなる勘違い”に気付く、実に匠に構成された物語。
こういう技巧を凝らした小説は大変好みです。
そして、同時収録の短編『シンリガクの実験』…実は表題作よりも好きだったりします(笑)
人死にはありませんが、これもある意味で“大いなる勘違い”の物語。けど表題作とは違った意味でハラハラして…けど最後にはニヤニヤとビックリが抑えきれない、そんなお話です。お勧めです。