深水黎一郎のレビュー一覧
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歌劇といえば「宝塚?(*^o^*)?」な知識しか無い私ですが、これはいい芸術ミステリです。観劇したくなったので、Eテレさんに全力で期待。いつかトスカお願いしゃーす!!
前作に引き続き、作者の美術分野への造詣の深さと、その面白さを読者に伝える手腕はお見事だなーと素直に感心しきり。なんですが。
肝心のミステリーは、やっぱり何だかあと一押しが足りないんだよな~←
プロローグから死体を出してのけたり、「開かれた密室」という大胆不敵なトリックを弄したり、ミステリスキーの血湧き肉躍る出だしに「四つ星以上確定かしらー!!!」と興奮しきりだったのですが、海埜刑事の取り調べが進むに連れて、何だか尻すぼみに…。 -
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最近の好きな作家の一人が深水黎一郎。で、期待して読んでみた。
なかなか実験的な推理小説。物語の中に別の物語があるという「作中作」の手法を使い、その「作中作」ではカタカナを一切使わないという実験的な試みも行っている。作者は他の著書のあとがきで述べているが、このカタカカナを使わない手法と言うのは、推理小説の持つ、ある種、独特の雰囲気を醸し出すのに有効とのこと。本書では成功しているのではないだろうか。
また、本書では芸術論なども述べられているが、いろいろな事に造詣の深そうな作者の本領発揮ということか、なかなか勉強にもなる内容である。
内容は・・・、仏・ランス大聖堂から男性が転落死した。地上81. -
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読者への挑戦状も付いてて、久しぶりに血がたぎったんですが、うーん…これはちょっとアンフェアくさいぞ(笑)。
肝心のミステリーも「芸術蘊蓄」に比べると、地味さが際立って消化不良。脇役な筈の警部の灰汁が強すぎて、キャラは弱くない筈の主人公が霞んでしまったのも残念。
メフィスト作家の描く主人公って、どことなくステレオタイプだよなあ…。
ただ、各章の冒頭に差し込まれた《被害者が書いた評論》は面白かった。絵画に全く興味のない私でも、思わずネットで絵を検索しましたからね^^本編よりもこっち推しな作風で書けば、更に面白くなったかも。
※以下は《被害者が書いた評論》の要約・抜粋なので信憑性は保証できま -
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ネタバレ"読者が犯人"このトリックの真相とは。
語り口が軽妙でぐいぐい読まされる。大真面目なようで人を食った展開。
面白かったです。わざとミステリ部分とトーンを変えた「覚書」のところ、不器用な少年のエピソードにしんみりした。
以下ネタバレあり。
「覚書」に出てくる少年の症状は、発達障害の一部として典型的なもの。
他人には無意味に思えるこだわり。他人の命令を鵜呑みにする。
単一の存在に愛着を覚える。
本人に悪気はないのに周囲との軋轢を生んでしまう。
でも最終的に、愛する人と子供を残せたのは幸せだったのか…
エピソードがあるあるすぎて胸が痛い。
語り手の友人である有馬の「自 -
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ネタバレメフィスト賞受賞作家のシリーズ作、芸術探偵シリーズの
第一弾作品。1920年代、フランスのパリで悲劇的な生涯を
送った画家達...エコール・ド・パリを主軸にしながら、その
画家達の生き様と作品を、単純に知的好奇心を満足させる
作品としての側面と、その作中作とも言える、「呪われた
芸儒家たち」の章を伏線にしつつ、ミステリとしての好奇心を
満たす本格推理小説という、別の側面も待つ、実験的で
アクロバチックな作品。
その割には、案外、どちらの読み物としても
読み易く、しかも面白いというのは、なかなかの
力作ではないでしょうか? 基本的に全く興味の無い
絵画...しかも、どちらかというと超マイナーな -
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◆五声のリチェルカーレ・・・家裁調査官の森本は困り果てていた。目の前にいる14歳の少年はクラスメイトを2人刺したが、その動機を決して語らないばかりか、「生きていたから殺した」などという、無差別殺人ともとれるような発言すらする。昆虫好きでおとなしいと評判だった少年の心の中は一体どうなっているのか。
◆シンリガクの実験・・・相手の気持ちを見抜く特技があった僕にとって、クラスを思いのままにあやつることはとても簡単だった。そんな中、自分と同じ特技を持っていると思われるアオヤギミユキが転校してきた。
以上2編が収録。
◆五声のリチェルカーレ・・・読んでいる途中、犯行があまりにも唐突だなぁとは確かに思 -
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「ウルチモ・トルッコ~」を当時読んで以来だなー。
思ったほどトリッキーな作品じゃなくて意外と拍子抜け。
被害者も動機も明かさないまま、容疑者である少年と
家裁調査官とのやりとり、そして少年の辛い日々の
回想...という2つの場面が交互で展開され、
ラストには予想しなかった結末が...。という
全体像ですが、やはり「いじめ」が描かれている
作品はなんだか読んでいて落ち着かない...。
自分の少年期が被害者でも加害者でもなく、傍観者
だったという負い目を晒されるような痛みを伴う。
昆虫が自然界のパワーバランスを生き抜くために
手にした擬態という進化。人間界のパワーバランスを
生き抜くために弱者が -
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ネタバレとある作家の元に届いた一通の手紙。差出人の名は香坂誠一、記憶にない人物で住所は記されていない。これまでのミステリで提示された数々の「意外な犯人」…語り手が犯人、探偵が犯人、動物が犯人、自然現象が犯人…。そして過去の作品が未だ実現していない最後の不可能トリック、究極の「意外な犯人」…それは「読者が犯人」というもの。「読者が犯人」というトリックを成立させるには、あらゆる読者に「自分が作品を読んだことによって登場人物が殺された」と思わせなければならない。手紙の中で香坂は「究極のトリックを可能にするアイデアを持っている。ぜひ買い取ってほしい」と語る。彼には作品を書き上げる時間的・経済的な余裕はなく、し
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ミステリと芸術論の融合はさらに磨きがかかっている。
芸術的なものの観光地化や、伝統的なもの、伝統的な芸術と現代芸術との対立、そしてそれを語る一人の老学者と主人公の語り合いが非常に魅力的であり、どちらの意見にもうなずけるものがある。
そして、それを描くために事件が用意されたように思える。
(これに関しては毎回そうだけど)
メイントリックは、ある種の知識がないと解けないけど、犯人の動機とも上手く絡んでいて良かった。
もう一つのメイントリックについては、現地を知らないと想像しにくいと思う。
もちろん想像できるように描かれているのだから、読み取り不足と言われればその通りなんだけど・・・・・・。
でも