深水黎一郎のレビュー一覧
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最近の好きな作家の一人が深水黎一郎。で、期待して読んでみた。
なかなか実験的な推理小説。物語の中に別の物語があるという「作中作」の手法を使い、その「作中作」ではカタカナを一切使わないという実験的な試みも行っている。作者は他の著書のあとがきで述べているが、このカタカカナを使わない手法と言うのは、推理小説の持つ、ある種、独特の雰囲気を醸し出すのに有効とのこと。本書では成功しているのではないだろうか。
また、本書では芸術論なども述べられているが、いろいろな事に造詣の深そうな作者の本領発揮ということか、なかなか勉強にもなる内容である。
内容は・・・、仏・ランス大聖堂から男性が転落死した。地上81.5mにある塔は、出入りができない密室状態で、警察は自殺と断定。だが、半年後、また変死体が!二人の共通点は死の直前に、シャガールのステンドグラスを見ていたこと・・・。ランスに遊学していた芸術フリークの瞬一朗と、伯父の海埜刑事が、壮麗な建物と歴史に秘められた謎に迫る・・・。(裏表紙)
裏表紙の紹介文では、この本の良さを伝えきれてないな。伏線も回収されており、事件(この場合は殺人だが)の動機も納得できるものだし、犯行の方法も、まぁ、有りうるかな、とは思わせる。
ただ、犯行現場からの逃走の方法がいただけない。まるで、サーカスのようなアクロバットを使っての逃走である。これじゃぁ、現実感に著しく乏しい。自分の感覚では、ほぼ不可能。
せっかく良い作品なのに、ここの部分で台無し。これが無かったら☆5個なんだけど・・・。 -
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読者への挑戦状も付いてて、久しぶりに血がたぎったんですが、うーん…これはちょっとアンフェアくさいぞ(笑)。
肝心のミステリーも「芸術蘊蓄」に比べると、地味さが際立って消化不良。脇役な筈の警部の灰汁が強すぎて、キャラは弱くない筈の主人公が霞んでしまったのも残念。
メフィスト作家の描く主人公って、どことなくステレオタイプだよなあ…。
ただ、各章の冒頭に差し込まれた《被害者が書いた評論》は面白かった。絵画に全く興味のない私でも、思わずネットで絵を検索しましたからね^^本編よりもこっち推しな作風で書けば、更に面白くなったかも。
※以下は《被害者が書いた評論》の要約・抜粋なので信憑性は保証できません^^;
※私が超気になったのでまとめてるだけですよ〜
●エコール・ド・パリ(1910〜20年代)
一人一派の絵画/明確な定義は不可能/蜂の巣《ラ・ルッシュ》という長屋に住み着いた外国人中心(キスリングはモンマルトル)/芸術家の実人生と芸術作品に対する評価の相関関係の考察
●アメディオ・モディリアーニ
不遇の天才(線の単純化・構図の不安定さのバランス)/詩人・画商の友人ズボロウスキーの援助/一度だけ開催された個展では一枚も売れず裸婦像が押収されただけ/最晩年に得た名声/貧窮の中で病に倒れる(享年35)/画商達は絵の高騰を見越して援助しなかったという説/絵のモデルで妻になったジャンヌは夫の死の二日後に自殺
●ハイム・スーチン
モディリアーニが認めた才能/毀誉褒貶が二分/不快感を与える作風/極貧/成功後も先鋭化する作風/ナチスから逃げ回り胃潰瘍で死亡
●ジュール・パスキン
乱痴気騒ぎを好むプレイボーイ/遊興費を稼ぐ為に画商好みの作品を濫作/個展前日に自殺
●キスリング
社交的な成功者
●モーリス・ユトリロ
幼少からの飲酒癖/治療の一環として絵筆を取る/詩的な街並みを切り取る天才/結婚後は周囲に言われるまま若い頃の作品を模写〜晩年の作品の評価低落
●藤田嗣治
おかっぱ頭にロイド眼鏡/隠れた努力家/乳白色の肌の色の秘密/戦意高揚の絵を手掛け、戦争責任を仲間達に追及されそうになり、画壇に失望した藤田はフランスに帰化
悲劇的な生涯を送った画家たちの絵に心を奪われ続けた有名画商が、密室で殺された。死の謎を解く鍵は、被害者の遺した美術書の中に潜んでいる!? -
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ネタバレ"読者が犯人"このトリックの真相とは。
語り口が軽妙でぐいぐい読まされる。大真面目なようで人を食った展開。
面白かったです。わざとミステリ部分とトーンを変えた「覚書」のところ、不器用な少年のエピソードにしんみりした。
以下ネタバレあり。
「覚書」に出てくる少年の症状は、発達障害の一部として典型的なもの。
他人には無意味に思えるこだわり。他人の命令を鵜呑みにする。
単一の存在に愛着を覚える。
本人に悪気はないのに周囲との軋轢を生んでしまう。
でも最終的に、愛する人と子供を残せたのは幸せだったのか…
エピソードがあるあるすぎて胸が痛い。
語り手の友人である有馬の「自分の文章が自分とつながっているように感じる」というコメントは、よくわかる。
人によっては、著作をけなされると我が身をナイフで切り裂かれるように傷つくもの。
一度それをされたら、二度と作文など書けなくなる子供もいる。全然不思議じゃない。
でも、このエピソードも世界観を作って読者を誘導するエピソードの一部だったのですなあ。
語り手の階下に住むヒデ坊の件も。
古瀬博士との挿話は、「テレパシーはありえるよ」というメタ世界の舞台設定として必要だったのだろうかな。 -
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ネタバレメフィスト賞受賞作家のシリーズ作、芸術探偵シリーズの
第一弾作品。1920年代、フランスのパリで悲劇的な生涯を
送った画家達...エコール・ド・パリを主軸にしながら、その
画家達の生き様と作品を、単純に知的好奇心を満足させる
作品としての側面と、その作中作とも言える、「呪われた
芸儒家たち」の章を伏線にしつつ、ミステリとしての好奇心を
満たす本格推理小説という、別の側面も待つ、実験的で
アクロバチックな作品。
その割には、案外、どちらの読み物としても
読み易く、しかも面白いというのは、なかなかの
力作ではないでしょうか? 基本的に全く興味の無い
絵画...しかも、どちらかというと超マイナーな画家たちの
作品や生涯にも充分面白く、興味深く読めます。
今作ではさほどメインとなって事件を解決するような
活躍を見せなかった探偵役の「瞬一郎」にやや肩透かしを
食った感があるのと、メインとなる画商の殺人事件が
繋がった形で露になる他の事件との関連が、どうもイマイチ
不自然に見えてしまった...というミステリ面での満足度が
個人的には...あと一歩っス。贅沢かしら? -
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◆五声のリチェルカーレ・・・家裁調査官の森本は困り果てていた。目の前にいる14歳の少年はクラスメイトを2人刺したが、その動機を決して語らないばかりか、「生きていたから殺した」などという、無差別殺人ともとれるような発言すらする。昆虫好きでおとなしいと評判だった少年の心の中は一体どうなっているのか。
◆シンリガクの実験・・・相手の気持ちを見抜く特技があった僕にとって、クラスを思いのままにあやつることはとても簡単だった。そんな中、自分と同じ特技を持っていると思われるアオヤギミユキが転校してきた。
以上2編が収録。
◆五声のリチェルカーレ・・・読んでいる途中、犯行があまりにも唐突だなぁとは確かに思っていた。転校を繰り返し、行く先々でいじめに合っていた少年の過去のやり過ごし方からして、そんな行動に出るのはイマイチ腑に落ちず、なんだか突然人が変わったかのような印象。「ん~??」と思っていたらやっぱり最後の2ページで真相発覚。これはたまたまではあるが、この1冊前に読んでいた作品と”○○○○○○○”という点で同じであったため、驚き少なめ。「へぇー」とは思ったけれど、じゃあ今まで読んでいたほとんどの部分はこの犯行を行った少年の過去や行動ではなかったということで・・・。犯行を行った少年は一体どんな過去を生きて来て(昌晴と似たようなものであったことは想像がつくが)、どんな人間だったのか。
だから全ては紙一重なんだよ。つまりこのストレスフルな現代社会では、
被害者になるのも犯人になるのも、ある意味偶然なんだ。
いつどこで誰が被害者になるかも、全くわからない。
これを昌晴のように「それは絶対に違う。少なくとも自分自身が犯罪者になることは自分の意思で完璧に防げる」とは言い切れないと思っている自分は大丈夫だろうか(^^;紙一重で犯人にならなかった○○と、紙一重で犯人になった○○は一体何が違ったのだろう?
◆シンリガクの実験・・・アオヤギミユキの行動ははたして計算だったのか?それとも本当に素だったのか。謎は残るが、最終的にはそんな彼女に見事にやられてしまったという結末がおもしろい。 -
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「ウルチモ・トルッコ~」を当時読んで以来だなー。
思ったほどトリッキーな作品じゃなくて意外と拍子抜け。
被害者も動機も明かさないまま、容疑者である少年と
家裁調査官とのやりとり、そして少年の辛い日々の
回想...という2つの場面が交互で展開され、
ラストには予想しなかった結末が...。という
全体像ですが、やはり「いじめ」が描かれている
作品はなんだか読んでいて落ち着かない...。
自分の少年期が被害者でも加害者でもなく、傍観者
だったという負い目を晒されるような痛みを伴う。
昆虫が自然界のパワーバランスを生き抜くために
手にした擬態という進化。人間界のパワーバランスを
生き抜くために弱者が手するものは...なんなのだろう...。
ミステリとしてもまんまとこの作品の「擬態」に
騙されてしまった。個人的には読み応えありました。 -
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ネタバレとある作家の元に届いた一通の手紙。差出人の名は香坂誠一、記憶にない人物で住所は記されていない。これまでのミステリで提示された数々の「意外な犯人」…語り手が犯人、探偵が犯人、動物が犯人、自然現象が犯人…。そして過去の作品が未だ実現していない最後の不可能トリック、究極の「意外な犯人」…それは「読者が犯人」というもの。「読者が犯人」というトリックを成立させるには、あらゆる読者に「自分が作品を読んだことによって登場人物が殺された」と思わせなければならない。手紙の中で香坂は「究極のトリックを可能にするアイデアを持っている。ぜひ買い取ってほしい」と語る。彼には作品を書き上げる時間的・経済的な余裕はなく、しかも他人の目に晒せるような文章を書いたこともないという。にわかには信じられない話だが妙に心動かされた作家は…。2007年第36回メフィスト賞受賞作。奇妙なタイトルは"究極のトリック"を指すイタリア語("ULTIMO TRUCCO")で、これは"ULTIMATE TRICK"と読み替えられるそうだ。裏表紙のあらすじ、煽り文句、表紙、「犯人はあなただ!」というタイトルから、これは一発狙いの色物系なのかという不安が湧く。どことなく怪しい匂いがぷんぷんしている。前半早々に、「本格ミステリ最後の不可能トリック『読者が犯人』を成立させる」という高いハードルを自ら設定しており、これが最終的にメイントリックとなるのだが、最終的に素直に感激できるか苦笑するかは読者によって分かれそうだ。だが読んでみると意外に癖のない文章で、本格ミステリ談義に言及したり、関係なさそうなエピソードもそれだけ読んでも面白いし、どれもが無駄なく後に伏線として活きてきてなかなか侮れない。メイントリックのネタだけ取り出してポロっと言ってしまえば「なぁんだ」と言われてしまうそうなアイデアなのだが、この作中の中ではそのアイデアを活かしうまい具合に消化され、少しずつ露呈し、振り返ってみるとできる限りフェアな表現になるようなあとが見られる。裏表紙にあるように「驚愕必至」とまでは残念ながら至らなかったが、この手が残されていたかと感心させられたのは確かだ。独特なトリックに一応納得。いや、実際思いついたアイデアはすごいと思う。自分的にはミステリとしては許容範囲、色物と思い込まずに、このアイデアを買って(読んで)みてよかった。【以下ネタバレ含むため未読の方はご注意】作中で、超能力学者が行う実験のうち、美少女双子姉妹がとあるトリックを用いて隔離された場所にいながら相手の選んだESPカードを当てる方法は、なるほど〜と感心した。割と実際に使えそうな現実的な方法だ(どこでどう利用するかは疑問だが)。こうした超能力実験や謎の男の手紙に同封された私小説的な「覚書」も、一見話に全く関係なさそうで、実は「読者が犯人」となるためのある人物の特殊な条件(人に自分の文章を読まれると体調が悪くなる体質・能力?)のための伏線となっているところが巧い。もちろんそんな能力はありえない(と思う)ので実現不可能なトリックにはちがいなのだが、妙な説得力がある。問題はトリック云々よりむしろ、読み終わった読者が「たしかに自分が犯人だ」と思えるかどうかだろう。なにしろ作中の文は「新聞連載中の文章」という前提に限った場合にのみ「読者=犯人」という図が成り立つのだから。揚げ足取りっぽいが、この本を手に取る読者は「新聞を読んだわけではない」のでこの図式には当てはまらないのだ。ともあれ、本書は「意外な犯人」の新たなパターンを提示している。ミステリ好きなら読んでみて損はないだろう。(ただし読後憤慨されても当方は責任を負いかねます)
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Posted by ブクログ
ミステリと芸術論の融合はさらに磨きがかかっている。
芸術的なものの観光地化や、伝統的なもの、伝統的な芸術と現代芸術との対立、そしてそれを語る一人の老学者と主人公の語り合いが非常に魅力的であり、どちらの意見にもうなずけるものがある。
そして、それを描くために事件が用意されたように思える。
(これに関しては毎回そうだけど)
メイントリックは、ある種の知識がないと解けないけど、犯人の動機とも上手く絡んでいて良かった。
もう一つのメイントリックについては、現地を知らないと想像しにくいと思う。
もちろん想像できるように描かれているのだから、読み取り不足と言われればその通りなんだけど・・・・・・。
でも、このトリックと作中人物の奇妙な行動については膝を打った。
芸術論が魅力的過ぎて、ミステリ部分が(悪くないのに)付け足しのような気がしてしまうのが残念。