深水黎一郎のレビュー一覧
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主人公のもとに、謎の手紙が届く。差出人に心当たりはない。ミステリーで最も「ありえない」犯人、つまり「読者が犯人だ!」というアイディアを売りつけるというもの。そのトリックとは・・・??そしてこの手紙の送り主の意図は??
「推理小説の犯人は、大抵怪しくなさそうなヤツが犯人だ」とよく言われている。実際トリックなど全然見破れず、伏線にも気づけず…という私ですら、勘で犯人が分かってしまうことがわりとある。(逆に勘でわかっちゃうから真剣に読まないのか?)「意外」な犯人のパターンは出尽くしたともいわれていて、究極の犯人=読者であるが、こんなトリックは今まで成立していない。
そして超能力・心理学関 -
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8人の大学生が暮らすシェアハウスで学生の一人が密室状態の自室で殺害されているのが発見される。容疑者は叙述トリックを排除するため語り手となる二人を除いた5人。容疑者各々が犯人であるケースと、イレギュラーケースとして犯人不在の場合と外部犯の場合を含めた7パターンの解決が示されるという多重解決ミステリ。刊行前に出題編である第一部と二部を無料公開し犯人にしたい登場人物の投票を募ったという仕掛けも面白い。(本書にはその投票結果も著者による解説つきで収録されている)
多重解決といいつつ実質どんでん返しというべきじゃねという作品もあるなか、この作品で提示される7つの解決は互いに等価でどれか一つが真相ではな -
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ネタバレ笑えた。まず、プロのミステリー読みってなんやねんwみたいなトコロから、「俺みたいな玄人ミステリ読者は分かっちゃうんだよね」と自信満々な早押し解答にも、最後らへんの真相の苦しさにも笑いっぱなし。
「プロのミステリー読み」への痛烈な皮肉を混ぜたメタメタなミステリかと思いきやそれだけではなかった。その皮肉は別のジャンルの文芸にまで及ぶ。司会者の最後の方のセリフが全てでしょう。
本書の構成は面白いけれど、作中作自体に魅力的な謎、トリックがほとんどない(一応密室は拵えてあるけど解答はいずれもしょぼめ)ということが欠点かな。この辺りをしっかり多重解決に盛り込めば更なる傑作になったと思う。
いやしかし、現実 -
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ネタバレ「読者が犯人」を言葉遊びや皮肉などではなく、一定の水準以上で成立させた史上初の本格ミステリーとのこと。読者は小説世界の住人ではないので、読者が架空の小説のキャラクターを殺すなんて本来は無理だ。これは本作にも該当すると思う。あくまで小説世界にいる新聞連載を読んだ者=犯人であって、俺は犯人ではない。そう貶すこともできる。
では、俺(現実読者)を犯人にするには?本作の語り手・深水黎一郎が本作を書籍化し、広く読まれたことで、香坂誠一が死んだことにすれば良いのではないか?とすると、本作内で香坂の死亡を描いてはいけなかった。例えば、シリーズ1作目では羞恥の手紙までで留めておき、シリーズ2作目で我々ミステリ -
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ネタバレ全国高等学校ビブリオバトルの動画で、男子高校生がとても楽しく本書を紹介していたので読んでみた。
文学的表現というか凝った言い回しが頻出する書簡や、超能力を研究する大学教授とのやり取り、保険の説明などに難しい言葉が出てきてなかなかスムーズに読み進められなかったが、終盤に近づくにつれて先が知りたくてスピードアップ。
でも最後まで読んで、「そんなのあり⁈」と狐につままれたような気持ちになった。
読者が犯人。まあ、それは確かにそうなるけど。
追記。
他の方の感想を読んで、改めて島田庄司による文庫の解説を読んでみた。トリックは確かに成立しているけど、私たち読者に香坂を殺す動機はない。むしろ救いたかった