スタニスワフ・レムのレビュー一覧

  • ソラリス

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    ネタバレ

    1.理系っぽい解決プロセス
    問題に対して観察、分析、先行研究を確認して、解決策を考えるのは理系っぽくて面白かった。自分が正常かどうかを確認するために天体物理学の計算をするなんて考えられない。研究のためにどんな犠牲も厭わない覚悟は素晴らしい。(ただ文献調査パート長すぎ...)

    2.ミステリっぽい空気感
    なにが起こるのかわからない不穏な空気感がミステリっぽかった。会話シーンもどこか探り合いを行っているようで、衝突しているところもあって、なにか起きそうな緊張感が常に伝わった。先が気になってどんどん読み進めてしまった。

    3.未知の存在とのコンタクト
    意図があるのかないのかすら読めない未知の存在との

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    2025年12月01日
  • ソラリス

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    20代の頃にタルコフスキーの「惑星ソラリス」を観て、ソダーバーグの「ソラリス」を観ました。
    そして最近コミック化されたと知り、原作の本書とコミックを同時に読みました。

    うっすらとそうじゃないかなぁとは思っていましたが、タルコフスキーもソダーバーグも原作とはかけ離れていて、自分としては原作が1番面白く、知性が高く感じました。

    原作は未知とのコンタクトを本質的な主題にしていて、1番リアリティを感じました。
    途中のソラリス研究の史実を語るところは冗長になりましたが、意図している所だなと理解できたので、全体としては読みやすく、とても深みのある内容でした。

    アクション要素や派手な展開は皆無で、静か

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    2025年08月12日
  • 完全な真空

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    ポーランドのSF作家スタニスワフ・レムによる『架空の書籍』の書評集。

    本の内容を個別のパーツにばらして、ひとつひとつを解説・批評することが書評のおもしろさだとすれば、架空の本の書評はそもそも「全体」がないのに「一部」だけを切り取って摂取することになってまずその経験自体が奇妙で楽しかった。

    それを前提に、この本は架空の書評をするというアイデアを超えてすごい。ひとつひとつの「架空の書籍」につぎ込まれている想像・思考が尋常ではない。
    『新しい宇宙創造説』『とどのつまりは何も無し』『生の不可能性について/予知の不可能性について』など、いくつの分野でどれだけの教養を蓄えたら書けるのかちょっと想像もつ

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    2025年07月04日
  • 捜査・浴槽で発見された手記

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    SFは読まない(あと歴史物と推理小説と恋愛物も読まない)とふだん公言してるんだけどブラッドベリとか筒井康隆とか読むしむしろ好きだしレムもそう。SFへ分類するほうをやめたらいいんじゃないかな

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    2025年05月01日
  • 完全な真空

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    異常に面白い

    短編しかないが、同じ哲学がいくつかに一貫して通っている。どの話も理知的で断固としている。

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    2024年11月23日
  • インヴィンシブル

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    ネタバレ

    PS5の「The Invincible」というゲームをジャケ買いして遊んだところ、実は原作は小説であるということを知ったので、気になりすぎてこの新訳版を買ってみた。
    スタニスワフ・レム、一生きちんと名前を覚えられる自信がないが、一冊読み終わった今ならなんとかなる、かもしれない。

    まず装丁が良い。半透明の表紙の内側からうっすらと見えるLEMの文字となんか丸い図形。
    そして全体的に翻訳が大変素晴らしく、直訳感、翻訳感がほぼない。そして時折出てくる単語が普段遣いのものではなく、日本語なのに意味を知らなかったりそもそも読めなかったりして、自分の語彙のなさを嘆くと共に、翻訳のセンスを感じて震える。

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    2024年11月11日
  • ソラリス

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    ネタバレ

    学者たちがソラリスで暮らしながら毎日研究しているのに、それでもソラリスの生物についてほとんど何ひとつ解明できず、人生を捧げていても徒労に終わっている様子には胸が痛んだ。
    地球外の生命体というとヒトに近い姿で想像してしまいがちだけれど、それが液体状で海のように惑星を覆っているというのが怖くて興味深かった。自分たちの理解できる範囲を超えた存在にはやはり恐怖をおぼえる。
    脳から取り出された思い出の人物が意思を持っていることが悲劇だったが、ソラリスの海にはなんの意図もなさそうなところが私は良かったと思った。理解し合うにはすべてが違いすぎていて、お互いに一方通行のような実験を繰り返している。続けていれば

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    2024年10月23日
  • マゼラン雲

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    これを子どものころ読んでたら熱狂的なSFファンになってたかも。それはポーランドに生まれなければ無理だったわけだが。

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    2024年08月30日
  • ソラリス

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    読み手によって様々な解釈ができる(というか、される)作品であるが、私自身は本作の主題は「コンタクト」だと考えた。

    ホラー小説のようであり、恋愛小説のようであり、哲学的問題を提示する小説のようでもある……というように、「多層性」は本作を形容する1つの特徴でもある。作品は必ずしも作者が意図したとおりに解釈される必要はないと思っているが、本作に関しては、作者が考えているとおり、「地球外生物とのコンタクトはどのようになるか」が作品の最も重要な主題であると受け止めた。そして、地球外生命体が我々地球人と意思疎通できるとなぜ想定できるのか?そもそもそんなことはできないのではないか?という問題提起には大いに

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    2024年07月26日
  • 捜査・浴槽で発見された手記

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    レム・コレクション第2期も順調に出版されて喜ばしい限りです。
    今回はレムの作品の中でも最も謎めいたものが2篇。レムの作品は危険だ。捜査はタイトル通りミステリーを感じさせるし実際ロンドン警察庁の刑事が主人公で動く死体という不可解な謎に挑むというものです。しかしなんのヒントも得られないうえに解決不可能性がほのめかされるしSF的な方向に向かうかと思えば不気味な描写もあってホラーの雰囲気。読者が思い込んでしまうカテゴリーをことごとく外していってあれ?あれ?あれ?これはどういうこと?と頭がぐるぐると回っていきます。浴槽で発見された手記にしても同様に前書きと称する部分だけガチガチのSFで架空の手記自体は全

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    2024年06月17日
  • 捜査・浴槽で発見された手記

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    アンチミステリのカップリング。警察ものとスパイものの枠組みだけど、どちらも結論がない。こういうの好き。

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    2024年05月24日
  • ソラリス

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    すごい。
    ハードSFで全編走るのかと思ったら、想像以上に多層的なスルメ小説だった。
    学術的な科学の知見をフルに使ってSFの「リアリズム」を構築している。
    愛の物語ではあるが、ノスタルジックに埋没していることを本人が自覚してるゆえのヤバさがある。

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    2023年11月18日
  • ソラリス

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    SF文学の偉大な傑作。伝え聞いていたよりはるかに首尾一貫とした話で、コンタクトというテーマを様々な角度から見事に描き出し、安易な解決を決してつけず、何よりその奥行きの深い掘り下げに、完全に圧倒されました。素晴らしい作品と出会えて幸せです。

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    2023年10月24日
  • ソラリス

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    ネタバレ

    人間とは異なる理で生きる存在との意思疎通を可能だと考えることの浅ましさを見せつけられた感覚。最後までソレの特徴はあくまで人間側からの視点に過ぎず、積み上げた研究を無視する様にソレが悠然と存在し続ける絶望感
    最高
    なんとなくメッセージと対極をなす様な感じ

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    2023年10月17日
  • ソラリス

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    ファーストコンタクト三部作『ソラリス』『砂漠の惑星(インヴィンシブル)』『エデン』

    原作を読んだのは中学生の時で細部は覚えていないものの、私の価値観に稲妻の一撃を与えた一作。
    この本のお陰で宗教や不可知論に傾倒していったので間違いなく個人的インパクトファクター。

    緻密に練られた設定、惑星ソラリスの謎、終盤で提示される新たな神と奇蹟。

    人間的な物差しで推し量れない「究極的他者」(ソラリス)とは、人間至上主義に対するアンチテーゼであり、地球上の枠組みを超越した存在である。

    人類(地球)の延長線上における生や死、愛といった人間的概念をこの銀河に当てはめる試みは果たして可能なのだろうか?

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    2023年06月07日
  • ソラリス

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    本作を読む前にタルコフスキーとソダーバーグの映画どっちも観ていて別に特別好きな作品というわけではなかったのだが(というかあまり覚えていない)原作のほうはかなりおもしろかった。タルコフスキーの映画の方は映像は綺麗だったけど全体的にセリフが少なくてケルヴィンらにあまり人間味を感じないような印象があった
    本作で好きな部分はステーション内の人間模様とソラリス学のところで映画版はそこがどちらも削ぎ落とされているから(仕方ないが)そこまで刺さらなかったのだろう。名前を忘れたがヘリコプター運転手のソラリスがでかい子供やら庭を作り出したって話はとても不気味で良かった
    現代のCGかなにかで対象体の映像でもみてみ

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    2023年06月04日
  • ソラリス

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    ソラリスという惑星。

    この惑星は、二つの太陽のまわりを回っているそう。

    太陽が2つ…⁝(ᵒ̴̶̷᷄⌑ ᵒ̴̶̷᷅   )⁝



    『ソラリス』には、意思を持った知的生命である『海』が広がっています。

    私達が想像している人型の知的生命体のイメージとは異なりますね(^▽^;)

    『ソラリスの海』は水ではありません。
    流動生をもったひとつの細胞のようなものだそうです。
    ゼリー状で、惑星全体を覆っています。

    そのソラリスを周っている『ソラリス・ステーション』に、心理学者の主人公ケルヴィンが到着する所から話が始まります。


    簡単に言うと、この話は「知的生命体とのコンタクトの様子」の話です。

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    2023年05月10日
  • 火星からの来訪者

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    楽しみにしているレム・コレクション。第二期は順調に出版されていて誠に喜ばしいです。
    実質のデビュー作である表題作含め非SF短編も含む初期作品集。書かれたタイミングは戦時中でありしかも場所は現在も禍中にあるリヴィウ。ドイツに占領されていたりポーランド領だったりソ連だったりと過酷な経緯を辿る街で、また今も翻弄されています。ホロ・コーストのストレートな場面を描かれた短編も含まれており、ユダヤ人でもあったレムはこんな環境のなかでも作品を書き続けていたのがよくわかります。「ヒロシマの男」も印象的です。発表されたのは原爆投下後の二年後と早く、いかにレムも衝撃を受けていたことがわかります。感情的なじとじとし

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    2023年03月28日
  • インヴィンシブル

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    第二期始まってたのね。ソラリスに負けず劣らず大傑作。アイデアは今も斬新。このままアニメにできる。無敵とは傲慢である。そして不死とは。

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    2022年02月10日
  • インヴィンシブル

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    三体なんかで余計な足を取られてしまって、ようやく読めた。
    今回、宇宙船の内部の様子が匂いっだったり、鋼材が冷却中に発する音や暗い食堂といった描写によって活き活きと描かれることに気づいた。また、「会話」の章での艦長とロアンの対話がすさまじい。人間やらざるを得ない状況ってあるよね。やってくれって言えないけど、やるって言ってほしい状況を見事に描いていて苦しくなる。読み返すたびに凄いと思える数少ない作家。本そのものの品質も素晴らしいです。電子版にするか迷いましたが紙版で良かった。

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    2021年12月30日