深沢仁のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
本編5話に文庫版ボーナストラック1話を加えた、6編からなる作品集です。
友情や恋愛といった既存の言葉だけではいい表せないような、脆くも尊い関係性が描かれており、読み終えた後はなんとも形容しがたい不思議な感情に包まれました。
非常に読みやすく、一気に物語の世界へ惹き込まれてしまいます。
タイトルにある通り、全編を通して「夜」が舞台となっています。友人や恋人と楽しく騒ぎながら過ごす夜もあれば、たったひとりで寂しさに震えながら更けるのを待つ夜もある。作品を通じて、人それぞれの多様な「夜の過ごし方」をそっと垣間見ているような感覚になりました。
決してすべてが分かりやすいハッピーエンドではありません。しかし、不器用ながらも必死に自分の答えを見つけようともがいている登場人物たちの姿を、静かに応援してくれるような優しさに満ちています。
まさに眠れない夜に読みたくなる一冊でした。 -
Posted by ブクログ
ネタバレなんか、なんか今、超絶ポプラ文庫読みたいッ…!という衝動のもと、ポプラ棚に駆け寄り、あああこれずっと読みたいと思ってるやつー!と毎夏思っては購入タイミングを逃していた、いつも平積みされている深沢仁さんの本書を今夏こそ購入。
なんといっても、タイトルがすばらしく素敵。
五編からなる短編集ですが、どの短編を読んだあとでも最後にこのタイトルをそっと呟くと、さらに最高にエモさが増すじゃん…! と大興奮読書でした。
しかし、どの話もタイトル回収に一辺倒なのではなく、どの話に描かれていたどの夏もそれぞれ全く系統の違う夏であり、だがそのどれもパッと光って咲いて散る、ひと夏の眩い青春がこんなにもバラエティに富んでいて、こんなに胸を熱くさせてくれるのか……深沢先生ッ!って感じでした。
何が言いたいかって、ほんとに、どの話も最&高。
なかでも、特に大好きだった短編が、『生き残り』です。
主人公・市井の若さゆえのフッ軽・執着のなさかと思いきや、彼女が篠くんにハマるごとに、普段は自身の母親から最も遠のいたキャラクターであろうとする市井の、家庭環境やそこで培った、深淵とも呼べる昏い思想が、篠くんの”生き残り”の謎が解かれていくごとに立ち上る「篠くん」という人間そのものに共鳴し、まるでぼろぼろとメッキが剥がれていくかのような、めちゃくちゃなのめり込み方が鳥肌もの。
若く未熟で、何も持たず力もない子どもの二人が”今”を生きるのに互いの温もりをとても必要としあっているのに、自分たちの未来は決して重ならず、”今”から本当の意味で逃れるには、交わらず、別の道へ進むしかないということが、ちらつくタイトルで示唆されるという……!
そしてそのタイトルが、強がりで言っているものなのか、諦念がそう言わせるのか、あるいは願望なのか、篠が市井を安心させるために言っているのか、などなど妄想はどこまでも膨らみ、激エモイ夏がわいの中に訪れるのです……!
た、たまらねえな……!
逃げるには心許ない、互いの六万円だけ握りしめて、きっとごっこ遊びににしかならない逃避行でも、大人になって再会したときに、どうせ忘れると思っていた夏のことを笑いながら語り合える未来があってほしいと、つい願ってしまう。
最初から面食らうようなガツンとした書き出しの『空と窒息』も好きでした。
インパクトだけが一人歩きするような嫌な感じは全くなくて、読み進めるごとに、ただ相手を知りたいと近づいていく香乃のピュアさの対比がいい。
香乃と可宮の二人のする何気ない対話の中に核心があるのもいいし、不可侵領域の外にいるんだけど、なんだかこう絶妙な距離感でいてくれる香乃の存在感がすごく印象的でした。
良いBLを読んだ後のような充足感……!
そういう、脇の人間が主人公の置かれた立場やシーン一つ一つをすごく印象深いものにする効果を生んでいる、というのはどのお話にも共通していて、本当に大好物でした。
どの話も、そのとき、その人にしかできない愛情の放出がとても刹那的で、読み終えた後、まるで肘の柔いところを打ってしまって、しばらくジーンとした痺れに支配されるのに似た囚われ感があります。
どうせすぐに忘れてしまうのだけど、そのときはとても痛くてすっかり囚われてしまう、そんな感じの。
あー、しばらく深沢作品に浸かりたい。
それほどまでにすっかりファンです。 -
Posted by ブクログ
『ふたりの窓の外』がとても良かったし、ミユキさんからのご紹介もあって。
5作品からなる短編集。
●空と窒息
短めの文章が淡々とした印象だったが、むんとした真夏の空気が息苦しさを感じさせる。
けれど、息苦しいのは夏のせいだけじゃない。
「音はないのに夏だとわかる。…(略)…強引な光のせい。」
「なつのくらやみ。」
「…(略)…そういうのをいきなり過去に放り投げ、元には戻らないことを無言のうちに同意した。」
●昆虫標本
大きな館に住むハーフの同級生、藍莉。
切手の収集がきっかけで、千夏は藍莉の家にお呼ばれする。
美しい藍莉は同性でありながら不思議な魅力を放っている。
美しい者ってそれだけで優位的だ。
千夏はいつもよりちょっぴりドキドキ度高めの夏休みを過ごす。
「生きていくことはグロテスクだ。」
●宵闇の山
ミナミ、トキヤ、ヤマト、サツキ、シュウ。
男の子5人組。
夏祭りの夜。
少年時代の思い出と現在とを、ストーリーは行ったり来たりしながら進む。
でもミナミは…。
「一年に一度の、夏休みの一日くらい、夢とか幻とか、みてもいいだろ。」
●生き残り
高校生活最後の夏。
梨奈は付き合うのに「ちょうどいい人」を探している。
見た目がそこそこよくて、私より背が高くて、受験にそこまで熱心じゃなくて、馬鹿でもなくて、東京の大学に行かない人。
東京の大学に進学したら都会の人と付き合いたいから、付き合うのはそれまででいい。
そして見つけたターゲットは、篠くん。
この話がダントツで一番好きだった。
どんでん返しで超切ないやつ!
『ふたりの窓の外』でも感じたけど、この、ギリギリで切ない感じが、深沢さんてとても上手い。
●夏の直線
失踪した父は小説家だった。
父の別荘である海辺のアパートで、夏の一週間を過ごすことにした羽白(はしろ)。
そして夜の海辺で、父を知るアオと出会う。
「すでに静寂が鳴っている。」
「美しい星空には、いつも後ろめたさを覚える。」
「あとがき」にある、「夏休みという短い永遠に生きる彼らと、少しだけいっしょに時間を過ごしていただければと思います。」の文章が印象的だった。
本作は青春小説なのだけど、よくある爽やかなものとは全く違う読み心地。
全て読み終えてから改めてタイトル『この夏のこともどうせ忘れる』を思い返すと、なんとも言えない気持ちに襲われる。
タイトルが秀逸だ。
タイトルを読むと全ての短編がキラキラと愛おしく、一番好きだった「生き残り」に再びギュッと胸を掴まれる思いだった。
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Posted by ブクログ
SNSで見掛けて気になり、手に取った作品。
装画もすごく好きで、今の時期に読むのにぴったりだと思った。
火葬場で出会い、ひょんなことから春夏秋冬…季節ごとに一度だけ一緒に旅をすることになった男女の一年間を描いた物語。
年齢を重ねてきたからなのか、恋愛小説で好きな作品に出会うことが減ってきたように思っていて…
でもこの作品はとても好きだった!
喪失を抱え、自分の人生なのにどこか投げやり。
そんな2人が一緒に旅をすることで、自分自身に対して、相手に対して、気持ちに変化が表れていく。
この関係を何と呼べばいいのか?
また次はあるのか?
一緒に過ごした季節を重ねるごとに、変わっていく2人の空気感や距離感…
近いようで遠く、もどかしい。
けれど、一年を通してゆっくりゆっくり育まれていく想い、関係がなんとも尊い…!
心理描写はもちろん、風景描写も素晴らしく、私も2人と旅をした気分になれた。
春のネモフィラ、夏の緑色の山々と紺色の海、秋のダムと紅葉、冬の雪…
私も季節を感じながら、あてのない旅をしてみたい。
読後、装画を見て思い出してはニヤリ。
キュンとしたい方、おすすめです♡ -
Posted by ブクログ
日常と非日常のまじわるこの絶妙なかんじ…すごく好みだった。
読者にゆだねる終わり方も◎
自分好みでない結末よりは妄想する方がいいし…
何回も読みたくなるし、読む返すと伏線もたくさん見つけられて感動した。
この春自分も高三になるからか、同じ高三の女の子が主人公の「生き残り」が一番印象に残った。彼女のような恋への積極性は皆無だけど、似たような考え方に共感してしまったり、篠くんのような性格の子いるなぁ、そういう子が好きだった、と思ったり、最後は号泣してしまった。
「空と窒息」蒸し暑い空気感が伝わってきたのと、秘密を共有したことで変わっていく香乃との関係がとてもよかった。
「昆虫標本」兄にゲームで負けた、という藍莉のセリフでまさか?!となった。
とにかくこの時期に読めてよかった。
高三の夏を過ぎてからだともっと高校生活謳歌しておけばよかったって後悔しそうだし。
今同級生に全力でおすすめしたい一冊。
毎日を人生最後の日のように全力で生きよ、という発想は、わたしにはちょっとマッチョすぎるけど、毎日を高校生活最後の日のように全力で恋せよ、というのはいいな、と思った。きらきらしていて。「生き残り」