大栗博司のレビュー一覧
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Caltech の大栗先生のブルーバックス本。空間・時間とはの問いかけから始まる。3次元空間とか温度とかはミクロな世界の「ひも」の織りなす深遠な物理学の一端であり、人間はその「幻想」を見ているに過ぎない。科学的な興奮と、世界の真理を理解することへの途方もないハードルを同時に味わえる。物理を階層構造で捉える要素還元主義。ある階層で生じた無限大の問題を、よりミクロな階層へと先送り(無知の仕分け)する「くりこみ」の手法は理論でよく聞いたが、sweep under the rugだった(ただ、他の分野に手法として転用されて生きてる、経済物理学とか。通信にも使えないか。)量子力学の不確定性原理による距離のゆらぎが支配的なプランク長スケールのミクロな世界では、 “ミクロ”を正確に扱えず、くりこみが破綻する。LHCの一京倍のエネルギーでミクロの観測実験を行おうとするとブラックホールが出来て、事象の地平線の向こう側に結果が覆い隠される。標準模型の17種の素粒子を統一的に説明しようとした1次元の振動する弦の理論。点粒子と弦のファインマンダイアグラム。点→弦にすることで無限大問題解決すごい。開弦の横波→光子(電磁波)。閉じた弦の最も単純な振動モード→重力子。物質を構成するフェルミオンと力を伝えるボゾン。弦理論はボゾンだけ、超弦理論はフェルミオンも含む。同状態レベルに2粒子入れないフェルミオンを説明するためのグラスマン数(θ×θ=0)を考慮した超空間。グラスマン数次元の振動がフェルミオン、xyzの振動がボゾンでその間の回転対称性保証が超対称性。南部先生の自発的対称性の破れにより隠れる電磁気力と弱い力の対称性。弦理論ではオイラーの公式(1+2+3+…=-1/12を用いて25次元空間が予言される。超弦理論では9次元。ゲージ対称性は32次元回転対称性によりアノマリー相殺。クォークの世代数が3なのは、オイラー数が6のカラビ-ヤウ空間を使って6次元コンパクト化しているから。双対性のウェブでM理論として統一される5種の超弦理論と10次元超重力理論。Dブレーン上に貼り付く弦の端。事象の地平線上の開いた弦。マルダセナのAdS/CFT対応による事象の地平線のホログラフィー現象と、空間幻想説。時間もエントロピー増大してるだけという観点では幻想。数式を使わずにごまかしなく分かりやすく、2013年当時の超弦理論最前線の景色を見せてくれる素晴らしい本だと思います。
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想像してみてください
何処か南国のビーチにいて、ヤシの木陰のチェアに寝そべって、太陽は煌めき風はそよぎ波は穏やか
そんなゆっくりした時間を楽しみながら、友達や恋人と「あーのどかだわー」とかおしゃべりしてるそんなときも、
そこの地面、猛スピードで動いてますからっ
※地球の公転速度は秒速約30キロメートル!!
個人では絶対見えないことや感じられないことを知れるから、たまに宇宙の本を読みます
Imagine this:
-You’re on a tropical beach, reclining in a chair under the shade of a palm tree.
-The sun sparkles, the breeze whispers, and the waves lap gently.
-While you savor this leisurely moment, you chat with friends or a loved one, saying things like, “Ah, how peaceful this is.”
But the ground beneath you is racing through space at astonishing speed!
Note: Earth’s orbital velocity is about 30 kilometers per second.
Because books about the cosmos let us learn about things we can never see or feel firsthand, I read them from time to time. -
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感銘深い内容であり、著者が類稀なる才能の持ち主であることが伝わってくる。理論物理学者でありながら、知的関心の分野の幅広さと、その深さに驚きを持ちながら読み進めた。才能ゆえに、学問を探究する上で恵まれたコースを歩み、日本に閉じこもることなく、文字通り世界を股にかけた活躍は爽快でもある。素粒子論の究極の理論と思われている超弦理論に早くから刮目し、取り組んでいた先見の明は素晴らしい。基礎科学は地図のない旅に例えられるが、正しい方向に進んでいるのか、果たしてゴールはあるのか、不透明ななかを手探りで進むが、10年先、20年先で成果が見えることがあり、比類なき精神力とともに粘り強さが求められる。短期的な成果を追い求めがちな昨今の日本が真摯に考えるべきヒントが本書にはある。研究費支給の判定に、目的や実現可能性だけで判断すると、将来の大樹の芽をつむことになる。欧米では、研究者自身の探究心が優れているか、遂行する能力にたけているか、人にお金をつける、という発想がある。集中力の例えとして、数学者の例があげられているが、含蓄ある内容なので以下に再掲する。数学を考えながらいつのまにか眠り、朝目が覚めた時にはすでに数学の世界に入っていなければいけない。常人の理解を超越した世界である。
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Posted by ブクログ
「大栗先生の超弦理論入門」大栗博司
分子はランダムに運動しているのでエネルギーの値も常に揺らいでいるが、膨大な数の分子が集まると、エネルギーの平均として近似的に一定の値をとり、それを我々は温度と捉えている。
氷と水の区別のように、「温度」という概念は二次的なもの。温度とは分子の平均エネルギーの現れにすぎない。分子のレベルで温度という概念は消滅する。
つまり、温度とはマクロな世界に住む我々が感じる幻想。空間もより根源的なものから現れる幻想であるというのが超弦理論。
我々の身の回りにある全ての物質は素粒子の標準模型に含まれる17種類の点粒子(素粒子)の組み合わせでできているとされているが、宇宙には正体がわからない暗黒物質と呼ばれる物質が標準模型に含まれる物質の5倍以上ある。17種類の素粒子のどれでもない未知の素粒子からできているわけなので、この先もっと新たな素粒子が見つかるだろう。
2011年、宇宙の膨張は加速している事が判り、物質の他にダークエネルギーの存在が暗示された。
自然界には重力、弱い力、電磁気力、強い力の4種類の力がある。重力は他の3つに比べてとても弱いので現在の素粒子実験での影響はほぼない。
強い力はクオークを互いに引きつけ合って陽子や中性子を作る力で、電磁気力よりも強い。
弱い力は原子核からの放射線の原因となる力で、電磁気力より弱い。
強い力だけは粒子同士が近づくと力が小さくなる。
磁石のように、離れても伝わる力のことを遠隔力と言い、「場」という概念はこの遠隔力を説明する為に考えられた。物体と物体の間には場という実体があり、それが力を伝えている。
磁気の力を伝えるのは磁場で、電気の力を伝えるのが電場。
物理学の定義では「場」とは空間の各点で値(力の大きさや方向)が決まっているもののこと。
19世紀の半ばにマクスウェルは電気と磁気をまとめた電磁場を説明する方程式を発見した。
電磁場が伝わる速さは光速。つまり光の正体とは電磁波の事。
電磁場において働く力の強さは距離の2乗に反比例する。(クーロンの法則)
光とは電磁波という波でもあるし、光子という粒の集まりでもある。これを双対性と呼ぶ。
一つの光子が電子と陽電子のペアに変わったり、また元に戻る事がある。
粒子同士が高エネルギーで衝突するとそこに質量の重いものが生まれ、加速器のエネルギーをどんどん上げていくとどんどん重力が大きくなりブラックホールができる。ここでは重力が極限まで重い為、光さえ飲み込まれる。
脱出速度が光速になってしまう表面の事を事象の地平線と呼ぶ。
超弦理論とは、弾力のある弦が振動し、その振動の仕方によって様々な素粒子が現れると考えるもの。全ての素粒子が1つの弦から現れる。
弦にはタリアテッレのような開いた弦と、ドーナツのような閉じた弦がある。
開いた弦の振動には電磁気力を伝える光子が含まれている。
弦の振動は縦波は振動していない状態と区別がつかないので横波しかない。
電場や磁場には向きがあり、その電場や磁場の大きさが変化する事で起きるのが電磁波。
電子が光を放出して別の電子がその光子を吸収すると、二つの電子の間には電磁気のクーロン力が伝わる。
重力の理論を量子力学と組み合わせると重力波の粒である重力子が予言される。
重力は重力子のやり取りによって伝わると考えられる。
当初の弦理論は力を伝えるボゾンだけで、それに物質の元になるフェルミオンも加わったのが超弦理論。
同じ数同士を掛けると答えがゼロになる数をグラスマン数と呼び、これを座標に使う空間を超空間と言う。この超空間によってフェルミオンを加える説明がついたのが超弦理論。
フェルミオンは一つの状態には一つの粒子しか入れない。これは一回掛けると0となって終わってしまうグラスマン数の性質に由来している。
普通の数の他にグラスマン数も座標として使う超空間では、グラスマン数で示される方向に振動する弦からフェルミオンが現れる。
普通に座標の方向に振動するとボゾンになる。
見る方向を変えても同じように見える時は回転対称と言う。
超空間に超対称性があるとボゾンとフェルミオンの間にも必然的に入れ替え可能な対称性が現れる。
我々は三次元空間ではなく、実は超次元空間に住んでいる。グラスマン数という不思議な数を座標に使う余剰次元が存在する。
物理学の理論の多くは次元数を選ばないが、超弦理論は9次元空間しか許されない。
電場があると、電子は電位の高い方に引き付けられる。
磁場があると電子はクルクル回ろうとする。
未知の世界を探求する人々は地図を持たない旅人。
素粒子はスピン(自転)しており、時計回りの素粒子だけに弱い力が働いている。
朝起きた時に今日1日数学をやるぞと思っているようではとてもものにならない。数学を考えながらいつの間にか眠り、朝、目が覚めた時にはすでに数学の世界に入ってなければいけない。
10という次元は超対称性を持つ理論を考える事のできる最大の次元であり、それは超重力理論のみ。
10次元の超重力理論の中には1次元の弦ではなく、二次元の拡がりを持つ膜がある。
10次元の空間に時間を入れると11次元の時空間となる。
10次元空間の中では二次元の膜と五次元に広がったものが絡みつく事ができる。
開いた弦はブラックホールの分子。
ミクロな基礎理論までいくと、温度も空間もその中に働く重力も本質的なものではない。
数学で空間を定義する要点は、二つの点の間が近いか遠いかを区別する事。近いと関係が強く、遠いと弱い。空間とは関係性のネットワーク。空間の次元とはネットワークの拡がり方の事。
自然科学の基礎には因果律があるが、ある時刻の状態によって過去も未来も全て決まってしまうのなら、過去や未来は現在とは独立していない事になる。 -
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ハーバード大学の1年生向けの講義で使っているテキストというので、難しいのだろうと覚悟して手に取ってみた。
確かに難しいが、いくつかやってみたところ、どの問題も考えることはできる。
こんなパズルの本が欲しかった。という内容で面白い。なので買った。
難しいと感じる理由の1つに、問題自体の意味がわからないというのがある。
例えば、「半減期が1時間の放射性物質がある。3時間経過すると、この放射性物質はどれだけ崩壊するか。元々の全体量に対しての量を答えよ。」
みたいな問題だと、「半減期」「放射性物質」「崩壊」を知らないと考えようがなく、答えを見ても理解できないだろう。
本書のパズルは、問われている内容は分かり易く、それをどうやって解こうとしたのかの思考力を試される。
問題はこんな感じ。
【パズル28】
地球の赤道のまわりに、巨大なベルトをきつく巻いたとしよう。
そのベルトの長さを1m延ばす。
すると、ベルトは地表からどれだけ浮き上がるか?
下に紙を通せるか?ネズミがくぐれるか?高層ビルなら?
答えに数式も出てくるので、数学アレルギーの人には辛いかもしれないが、結果を知るだけでも楽しめる内容だ。
ちなみに、この問題の答えは、
ベルトを全方向に一様に持ち上げると、地表から16㎝になり猫でもくぐれる。
一か所だけ引っ張り上げた場合は、121mにもなり、自由の女神も通せる高さになる。
もうひとつ、紹介しておこう。
【パズル32】
2種類の薬(AとB)をそれぞれ一日1錠ずつ飲んでいるとする。
薬は見ただけでは区別できない。
ある日、1錠のAと2錠のBを、うっかり一緒にしてしまった。
この3錠を捨てずに、正しい用量を守って飲むには、どうすればいいだろうか?
答えは言いません。
(二日だと2錠ずつ飲んでいるということは…)
(一日分は二日分の半分だから…)
本書と「はまると深い!数学クイズ」で、クイズ・パズル本を2冊常備することになった。
今年はこれらで脳みそに刺激を与えられそうです。 -
購入済み
名人による超弦理論の解説
超ひも理論(超弦理論)の最前線の研究者である大栗教授の入門書。素粒子の既存の標準理論の説明から説き起こして、超弦理論の到達点までを順序立てて説明してくれている。音は空気が無いところでは存在しないし、色彩も可視光線の波長未満の大きさでは存在しないように、超弦理論の帰結では3次元空間も幻想であり、時間もそうかもしれないというところまで連れて行ってくれる。この人は素人にごまかし無しで難しいことを説明する名人じゃないかと思う。研究者として優秀であることと解説者として優れていることはなかなか両立しないが、両立している貴重な例かと。
この本を読んだ後は素人の自分でも、ちょっと超弦理論について語れそうな気がして来る。 -
Posted by ブクログ
ブルーバックス「南部陽一郎物語」を読んで、積読本だった本書を手に取りました。がんの転移の可能性を指摘されたタイミングで、ずっと避けていま研究人生の回顧録を執筆したとのこと。結局、転移もなく、この本が生まれたのは若い世代にとっては幸運でした。物理を学ぶ学生だけではなく、まだ進むべき道を見つけていない若者にとっても良書だと思います。まさに、書名通りの「探究する精神」が小学生の時から発現し、その知的好奇心が研究人生をドライブして来たことが、丁寧に書かれています。知的好奇心の道標が、本であり大栗博司版「ぼくはこんな本を読んできた」になっています。最初に通った近所の本屋さんの名前が「自由書房」っていうのもいいよなぁ…もちろん物理学の名著、大著もありますが、最近出版された新書などでの気づきもいろいろ引用してあって、人生まるまる「自由書房」で自らを放牧している感じ。素敵です。著者は物理学が統一理論に向けてぐいぐい前進したいた時代の学者で、しかも数理連携の重要性の推進役の一人であることも含めて、物理学の「日の当たる道」が眩しく見えます。この新書を読んだのか4月の天気のいい朝、窓から日差しの溢れる電車の中で。はるか昔の新学期のワクワク感が蘇りました。
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超弦理論の話は研究者時代の話であるが、小学生時代から大学生、大学院生、大学での職について書かれている。したがって科学に興味があってもなくても自分の生活と科学の関係を考えることに役立つ。
それよりも、本文で紹介される本が特殊な本ではなく、誰でもが一度は聞いたことがある有名な本で、しかもそれが文庫として紹介されている。わずか83冊であるが、これだけを読むだけでもだいぶ考えることが増えるであろう。
京大の下宿に1000冊の本があり、大学院を卒業する前には5000冊になったと書かれている。
本もかなり吟味されてここで引用されているので、いんようされた本を読む価値は十分にある。
今、1000冊の本が下宿にある学部生はどのくらいいるであろうか。1つの本棚に100冊の本が入るとしたら、本棚10個分である。
20年間で2000冊いかない私の読書が恥ずかしいばかりである。