大栗博司のレビュー一覧
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現代のキホーテにならないために、現代の(理論)物理学を簡単に知ることができる1冊です。超弦理論が必要とされた背景から、これからの課題までが、他の物に比べてわかりやすく書かれています。
ただ、最低限の常識と、量子力学周りのわかりやすい本が1冊ほしい感じかも。
空間の余剰次元って、イメージしにくいと思うのですが、自然現象を説明するのに必要な項目と思っていいと思うのです。
例えば、普段の生活空間は、3次元的な広さだけを気にしているわけじゃないですよね?
ここ暑いな~と感じたら、気温が高いとか、湿度が高いとか思うはずです。
その気温や湿度のような説明が、3次元的な広がり以外にも、空間に必要となってい -
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日本のこの分野の第一人者である大栗教授の入門書。超弦理論は、物質を形づくっているのは粒子ではなく、多次元(10次元)の中でひものように一次元に拡がった何ものかであるというものであるという理論。この理論を採用することによってのみ、重力の理論と量子力学の理論が矛盾なく統合できるというものである。
この理論を宇宙論まで突き詰めると多宇宙論に行き着くというのが最近一般にも広がりつつある流行りの理論で、リサ・ランドールやブライアン・グリーンらの本がそこそこ売れているようだ。本書はそこまで振り切れずに、超弦理論の解説をきちんとやっている。
超弦理論の研究が進化発展する現場にいた研究者らしく、研究者でし -
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p274"自然界の基本法則の探求はこの広い世界に私たちが存在する意味について深く考える機会を与えてくれます。"
基礎科学の意義は理解されにくい。それはきっと内容が難しいからではなく(もちろんそのこともあるだろうけれど)、そこで研究者達が何をしようとしているかが理解されないからだろう。役に立たないという批判を免れるために基礎科学が役に立つかのように論じてしまう本もあるけれど、この本ではそんな誤りに陥ることはない。この世に生まれた以上、誰もが一度は考えたことのある疑問を探求することの面白さを教えてくれる。基礎科学の意義は役に立つことにあるのではなくて、役に立つ・役に立たないと -
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自然界に存在する四つの力。うち重力については前著『重力とは何か』であつかったので,ということで,本書は残りの三つの力について。つまり,標準模型の解説だ。中でも特に謎の多い「弱い力」が主役になっている。
話題のヒッグス粒子についても詳しく,決して水飴のようなイメージでとらえられるものでないことや,万物の質量の起源では全然ないこと,「神の粒子」でもないことを丁寧に教えてくれる。
ヒッグス場は電子やニュートリノ,クォークに質量を与えはするけど,それじゃ普通の物質の質量の1パーセントにも満たない。クォークを閉じ込める強い力のエネルギーが質量の起源のほとんどだそう。
あと,ヒッグス粒子の解説本の -
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現役バリバリの素粒子物理学者である筆者が、前作「重力とは何か」に引き続き一般人向けに書いた解説書で、書名通り強い力と弱い力をわかり易く書いたものである。それらの解説は、素粒子の標準模型の解説でもある。湯川秀樹博士の頃から、素粒子物理の理論と実験の進展を逐一解説し、多くの研究者によって作られてきたこの理論が、ヒッグス粒子の発見で完成した、と説明する。わかり易くと言っても難解な理論であり、読み進むにつれ次第についていけなくなる。何度も読み返さないと、分かり易くまとめた本書でさえ理解は覚束ない。時々垣間見える筆者の天才ぶりに驚くが、それくらいでないとこの理論の本当の理解が出来ないのだろうし、アインシ
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著者のツァイリンガー博士は実験物理学者で、量子テレポーテーションの実験などの功績で2022年にノーベル物理学賞を受賞している。
本書は学生に実験をさせて、観測されたデータが意味することを議論させるという形式で説明が進む。
博士自身が、実験を通して試行錯誤してきた様子を表しているのだと思う。
「世界一わかりやすい量子力学」という日本語タイトルは、本書の内容を的確に示していない。
原書タイトルは、「Dance of the photons : from Einstein to quantum teleportation」で、
直訳すると「光子のダンス:アインシュタインから量子テレポーテーション -
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最初にひとこと言わせてもらう。「どこが『世界一わかりやすい』ねん!!」です。以上。
と、これではレビューにならないのでもう少し。著者は実験物理学者で、2022年にノーベル物理学賞を受賞している。
本書の肝は「量子もつれ」「量子テレポーテーション」「ベルの不等式の破れ」であると、私は解釈しました。「量子もつれ」に関しては、私は一応存じ上げているつもりなのですが、後の2つについては正直よくわかりません。いや、「ベルの不等式」がそもそも知らない。
それぞれの言葉の説明については、本書を読めば書いてあるのですが、私の理解の範囲を今のところは超えています。著者が実験物理学者なので、実際に行った実験をモデ -
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私たちが量子という言葉を作り、発見し、研究し、実用可能な現代(2025)まで長い月日を経過した。これもひとえに量子力学視点からすると量子という存在が発見して確定した時から今日や未来の先までが創られているのだろう。
本著はとても図解を通してわかりやすく教えてくれる。量子力学とは何か、それがどういうことが出来るのか。私たちが知っている通常のパソコンとは次元が異なる演算能力を持っていることは確かだろう。
本著を読んで思ったことは、量子や量子もつれという存在は人間に似ているなと思った。量子力学では観測した瞬間に確定するという。人間も何か意識して行動した瞬間に確定すると似ていると思うのだ。私たちは120 -
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文藝春秋でも、「地図を持たない旅人」でエッセイを連載している著者。最先端の科学をわかりやすく、人物像も紹介しながら親しみやすい書き方がいい。本書は、当時高校生の娘さんを読者に想定して、数学の面白さを伝える取組みとしてまとめられた内容であり、すでに知っている、知られている内容が章立てに沿って紹介されていく。中盤ぐらいまでは、スラスラと何も考えずに染み込んでいくが、アーベルやガロアが登場してきて、群論の話題に入ると、途端に著者の自走が始まってしまい、急に難解で取っ付きにくい展開になっていく。これで娘さんは付いていけるのだろうか?と疑わしくなるが、なんと応用数学を専攻されたというから驚きだ。本書は、