超弦理論をわかりやすく解説してくれてはいるのだが、それでもわからないものはわからない。超弦理論と言うのは計算結果があうので都合よく使われた方便だと考えていいのだろう。この理論が正しいかどうかは何らかの実験的な証拠が得られないと何とも言えない。A→Bが正しいからといってB→Aは正しいとは言えない、計算結果があうことは超弦理論の正しさを証明してはくれない。いまのところはだ。
電子が動くと電磁場へ変化を与える。これが電磁気力のしくみなのだが力の強さは距離の二乗に比例するとして電磁場は動いた電子自身へも影響を与えてしまう。こうすると距離はゼロなので自身に影響を与える電磁気力は無限大になってしまう。それをE=MC2にあてはめると電子の質量も無限大になってしまう。これは何かがおかしいということで原因は電子を大きさのない点だと考えたことから起こった。電子などの粒子を有限の大きさを持つ点だと考えることで無限大の問題を回避しようとしたのが超弦理論の発想の元となっている。
電磁場のエネルギーが無限に大きくなって行った際に計算上粒子の質量をマイナスにするアイデアが生まれ「くりこみ」というそのテクニックは機能したがよりミクロな世界を観察しようとすると理論上の限界が来てしまう。光学顕微鏡、電子顕微鏡とより小さな世界を見ようとするとより波長の短い光が必要になるのだが波長を短くするにはどんどんエネルギーを上げて行かざるを得ず、それだけの高エネルギーの光を粒子にぶつけるとブラックホールができてしまうようなのだ。
そこで粒子の基本を点ではなく「ひも」にしたのが弦理論でひもを振動させることで点粒子が色々なエネルギーを持つことができるようになる。弦理論と超弦理論の違いは対象となる粒子を光子や重力を伝えるヒッグス粒子の様な力を伝える粒子だけに限定するか、電子やクォークのような物質を作る粒子にも適用させるかで、だから何だといわれてもこれ以上の説明は手に余る。
よく分からないのだが超弦理論は9次元以外の空間では矛盾が出るそうだ。ちなみに弦理論では25次元になる。なるんだからしょうがない。余った次元はどうなってるかというと小さく丸め込まれているという話を聴いた様な聴かない様な。ともあれ目に見える大きさであれば3次元でことは足りる。
数学を扱った本では何度も出てくるオイラーがここでも出て来て(1+2+3+4+5+・・・・・)=−1/12というとんでもない式が出てくる。光子のエネルギーをあ求める式にこの公式を使うと弦理論では25次元でエネルギーがゼロに、超弦理論では9次元でゼロになるという。巻末にはこの式の証明もつけられてはいるのだが、やはりさっぱりわからない。
4次元自体が3次元空間にいると想像しがたいが、2次元と3次元であればまだわかる。平面状の2点は2次元区間では決まった距離を持つが、これを3次元的に折り畳んでやると接触させることができる。しかし2次元平面内では3次元的に折り畳まれたことは知覚できない。3次元空間も4次元的に折り畳んでやれば離れた場所に接触できる。ドラえもんの4次元ポケットやどこでもドアはこの応用だろう。ヤマトのワープも似た様なものだ。物理学では空間と時間を同じように取り扱うので時間も一つの次元として捉えられる。物理学の公式は次元を選ばないらしい。
この本はブルーバックスとしては初めて縦書きのタイトルで書かれており、「超弦理論の様な物理学の最先端でも、日本語の力で、ここまで深く解説できることを象徴したい」という編集部の意向だそうだが、縦書きになったからといって理解できるわけではない。数式は横書きの方が見やすいしね。それでもこの本が少なくとも手元にある第5刷まで増刷されているというのはすごいことだと感心するばかりだ。