大栗博司のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
小学生時代の書店での放牧経験が大栗先生の基礎となった。僕自身、高校1年の時に近所にジュンク堂ができ、毎日のように通った。そこで、昔から好きだった小説の世界を広げることができたし、建築の世界に触れるきっかけになった。当時は、背伸びをして大人の世界を覗いている感覚が嬉しくて本を読んでいたと思う。ただ、動機はどうあれ、新たな世界に触れるきっかけに、書店の役割は大きかった。子供にも、放牧を経験させたい。
本書の1部は、大栗先生の本紹介のようでもあり、メモが捗った。
リベラルアーツ(特にコミュニケーション面)に対する意見、価値合理的な研究に対する意見には大いに同意。(「人にお金をつける」研究支援制度は面白い)
僕自身は、課題発見・解決を生業としているが、そんな近視眼的な目線だけでは、社会は面白くない。探究心を自由に炸裂させる或る種の利己的な目線も大事にしたい。 -
Posted by ブクログ
少し古い本なので新しい重力に関するニュースを追いかけたくなった。重力波やヒッグス粒子の話題があったことを思い出した。そして今超弦理論はどう進展しているのかとても気になる。
本書ではニュートン力学からアインシュタインの相対性理論、電磁気学、量子力学、重力理論、ブラックホール、ビックバンとダイナミックに視点が移る。
細かいところは理解ができないところもあったが、流れを掴めるので楽しかった。そしていよいよこの世界の統一理論を作ろうとしているのだとわかるとワクワクしてくる。
宇宙のスケールに比べれば日常の悩みなんてスケールが10の100乗くらい違うのだ。そう思うと少し気が楽になった。 -
Posted by ブクログ
「はじめに」を読んでビックリ。癌の手術をしていたんですね。幸い転移はなかったとあります。一安心です。最初の3分の2は著者の半生が描かれています。いくつかのエピソードは、他の著書にも書かれていることですが、初出のエピソードもたくさん載ってます。高等研究所の研究員として採用されたときに嬉しさのあまり後方宙返りしたとか、大学に入学するまでに読んだ本(ハイレベルです)とか、東大ではなく京大を選んだ理由とか、勉強した受験参考書とか、京大から東大に移る経緯とか。
後半の3分の1は、基礎科学を研究することの意義について書かれています。おそらく、本書で一番伝えたいことなのだと思います。また、大栗先生は研究者として一流なだけでなく、組織のオーガナイザーとしても優秀な方であることが分かりました。それだからこそ、米国の物理学会で成功をおさめることができたのでしょう。 -
Posted by ブクログ
自然の法則を研究し、宇宙の真理から粒子までの成り立ちを追究する近代科学。
人間の真理を追究し、涅槃に入る道を説いた釈迦の仏教。
この二つは一見全く違うもののように思えますが、世の中の真理を求めて両者が到達したのは、「人生の目的はあらかじめ与えられているものではなく、そもそも生きることに意味はない」という結論でした。
ではこのような世界で、どのように生きるのか、なぜ物事を正しく見ることが必要なのかを、一流の仏教学者と物理学者が語り尽くします。
最新の物理学は私の頭ではあまり深くは理解できませんでしたが、両者の共通点には驚かされるものがあります。
とにかく素晴らしい本です。 -
Posted by ブクログ
かつてニュートン力学が物体の運動を記述することに成功し、その後電磁気学が確立したことで、目に見える世界の物理現象はすべて説明しつくしたに見えた。ところが現実にはそうではなく、ニュートン力学と電磁気学の間には齟齬があったし、その後発見された黒体輻射やコンプトン効果など、目に見えないミクロの世界の現象はこれらの理論では完全には説明できなかった。そもそも、ニュートン力学では重力がどのようにはたらくかを説明できても、なぜ重力が生まれるかを説明することはできなかった。そこで、ミクロの現象を記述するための量子力学や素粒子論、そしてミクロの世界だけでなく宇宙そのものの謎と深く関係している重力理論が発展していくことになる。
本書は重力に関係する理論に重点を置いて説明している。重力理論は発展中の理論ということもあり難解ではあるのだが、特殊相対性理論と一般相対性理論、そして超弦理論といった一つ取り上げるだけで教科書が何冊も書ける理論を読みやすく新書一冊にまとめている大栗先生の手腕に感心することしきりだった。また、科学の発展は人間ドラマがつきものなのだが、教科書的な記述ではどうしてもそれが見えてこないのに対し、多くの研究者のエピソードが入れられているので学問の世界も血の通った人間の行いであることが感じられると思う。あまりにも当たり前だけれど考えてみると不思議だらけの重力について、違った一面を感じられる一冊である。 -
購入済み
相対論から超弦理論まで
素晴らしい本。相対論から超弦理論そしてブラックホールまでをカバーした本。
特に印象に残ったのが二つ
1)「不確定性原理」は一つの量子状態は固有の位置と速度を同時に持つことはないと言う原理。一方「ハイセンベルグの不確定性原理」は位置の測定しようとする行為が速度の測定値に不確定性を生むという測定制度の限界。これは目から鱗だった。
2)3次元空間では量子電磁気学は繰り込みが可能だが、4次元以上の空間になるともっとタチの悪い無限大が出てきてしまい繰り込むことが出来ない。高次元では量子電磁気学が成り立たない
このように、物理学の専門家でも新たな知識に出会える本である。 -
Posted by ブクログ
Kavli IPMUの機構長である大栗先生が、娘さんにこれからの生き方を数学を通して語った一冊。元々は幻冬舎のサイトの連載コラム記事を本にまとめたものである。このコラムが連載された頃、娘さんは高校受験だったがその後無事に第一志望に合格されたそうだ。
本書は数学の様々な内容を通して、人生をより良く生きるための指針がいたるところに盛り込まれている。ベイズ推定や金融などで扱う大きな数の話のような、実生活に役立つ話題から、無限集合や方程式の解法などの基礎的な数学の話もあり、数学教育として重要な内容ばかりだと思う。学校の勉強のように単元の寄せ集めではなく、大栗先生の想いというか思想が柱として貫かれており、読んでいて面白かった。ここで語り切れない内容については、カルテクのサイトに補遺としてまとめられており、読後の楽しみもある。
本書は父から娘に贈る数学という副題が付いているが、娘さんばかりでなく様々な人の生きる指針になるようにも感じた。あとがきで数学と民主主義との関係について述べられた部分は特に印象に残っている。 -
Posted by ブクログ
宗教者の佐々木閑、宇宙物理学者の大栗博司両氏の対談。対談と言っても普通の会話のやり取りではない。宇宙物理学と量子論、原始宗教と大乗仏教に関する専門分野のセッションを3回にわたって行い、間に質疑が入る。最新の科学情報と宗教情報が融合して、生きることの意味を考えさせてくれる。(大栗博士の超弦理論は理解できないが面白い、すごいと思う)以下は気になったメモ▼▼(大栗)死後の世界を佐々木先生はどう考えられますか。▼(佐々木)死んだ後の世界は信じません。釈迦の教えによれば、私たちの存在はたんなる構成要素のゆるやかな集合体にすぎず、それが生まれ変わり、死に変わりに際して離合集散していくのが輪廻だからです。そこには「自己」という不変の実在はありません。これを仏教では「諸法無我」と言います。もしも業のエネルギーがなければ、死によって発散した「私」は二度と再合成されないはずなのですが、そこに業が作用して、再び別の形で「私」を形成してしまうので、輪廻が繰り返されるというのです。▽私自身は業や輪廻という現象を信じませんから、結果として、私という存在は、「再構成の可能性を持たない、構成要素の緩やかな集合体だ」ということになります。それはつまり、私に死後の世界はない、ということを意味します。▽ここで申し上げておかねばならないのは、私自身が死後の世界を信じないからと言って、「死後の世界はある」と主張する人たちの立場を否定するつもりは全くないということです。大栗先生もおっしゃったように、「死後の世界があるかないか」という問題自体が、科学とは関わりのない宗教世界での問いですから、それに対する答えが科学的事実である必要がありません。▼(大栗)仏教では、意味がない人生をどうすればよく生きられると教えるのでしょう。▼(佐々木)釈迦は、「みんな同じようにこういう意味を持って生きろ」といったことは一切言いません。教えの内容は、日々の生活の具体的な方法を語る生活マニュアルなんです。そのマニュアルを実践することによって、自分が向上する、すなわち煩悩が消えていくことを確信する。