あらすじ
【第30回講談社科学出版賞受賞作】ベストセラー『重力とは何か』の著者があなたの世界観を根底から覆します! 私たちは「どこ」に存在しているのか? 物質の基本は「点」ではなく「ひも」とする超弦理論によって、ニュートンの力学、アインシュタインの相対性理論に続く時空概念の「第三の革命」が始まった。現代物理学における究極のテーマ「重力理論と量子力学の統合」にはなぜ「ひも」が必要なのか? 「空間が九次元」とはどういうことか? 類のない平易な説明の先に待ち受ける「空間は幻想」という衝撃の結論! (ブルーバックス2013年8月刊)
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
Caltech の大栗先生のブルーバックス本。空間・時間とはの問いかけから始まる。3次元空間とか温度とかはミクロな世界の「ひも」の織りなす深遠な物理学の一端であり、人間はその「幻想」を見ているに過ぎない。科学的な興奮と、世界の真理を理解することへの途方もないハードルを同時に味わえる。物理を階層構造で捉える要素還元主義。ある階層で生じた無限大の問題を、よりミクロな階層へと先送り(無知の仕分け)する「くりこみ」の手法は理論でよく聞いたが、sweep under the rugだった(ただ、他の分野に手法として転用されて生きてる、経済物理学とか。通信にも使えないか。)量子力学の不確定性原理による距離のゆらぎが支配的なプランク長スケールのミクロな世界では、 “ミクロ”を正確に扱えず、くりこみが破綻する。LHCの一京倍のエネルギーでミクロの観測実験を行おうとするとブラックホールが出来て、事象の地平線の向こう側に結果が覆い隠される。標準模型の17種の素粒子を統一的に説明しようとした1次元の振動する弦の理論。点粒子と弦のファインマンダイアグラム。点→弦にすることで無限大問題解決すごい。開弦の横波→光子(電磁波)。閉じた弦の最も単純な振動モード→重力子。物質を構成するフェルミオンと力を伝えるボゾン。弦理論はボゾンだけ、超弦理論はフェルミオンも含む。同状態レベルに2粒子入れないフェルミオンを説明するためのグラスマン数(θ×θ=0)を考慮した超空間。グラスマン数次元の振動がフェルミオン、xyzの振動がボゾンでその間の回転対称性保証が超対称性。南部先生の自発的対称性の破れにより隠れる電磁気力と弱い力の対称性。弦理論ではオイラーの公式(1+2+3+…=-1/12を用いて25次元空間が予言される。超弦理論では9次元。ゲージ対称性は32次元回転対称性によりアノマリー相殺。クォークの世代数が3なのは、オイラー数が6のカラビ-ヤウ空間を使って6次元コンパクト化しているから。双対性のウェブでM理論として統一される5種の超弦理論と10次元超重力理論。Dブレーン上に貼り付く弦の端。事象の地平線上の開いた弦。マルダセナのAdS/CFT対応による事象の地平線のホログラフィー現象と、空間幻想説。時間もエントロピー増大してるだけという観点では幻想。数式を使わずにごまかしなく分かりやすく、2013年当時の超弦理論最前線の景色を見せてくれる素晴らしい本だと思います。
Posted by ブクログ
「大栗先生の超弦理論入門」大栗博司
分子はランダムに運動しているのでエネルギーの値も常に揺らいでいるが、膨大な数の分子が集まると、エネルギーの平均として近似的に一定の値をとり、それを我々は温度と捉えている。
氷と水の区別のように、「温度」という概念は二次的なもの。温度とは分子の平均エネルギーの現れにすぎない。分子のレベルで温度という概念は消滅する。
つまり、温度とはマクロな世界に住む我々が感じる幻想。空間もより根源的なものから現れる幻想であるというのが超弦理論。
我々の身の回りにある全ての物質は素粒子の標準模型に含まれる17種類の点粒子(素粒子)の組み合わせでできているとされているが、宇宙には正体がわからない暗黒物質と呼ばれる物質が標準模型に含まれる物質の5倍以上ある。17種類の素粒子のどれでもない未知の素粒子からできているわけなので、この先もっと新たな素粒子が見つかるだろう。
2011年、宇宙の膨張は加速している事が判り、物質の他にダークエネルギーの存在が暗示された。
自然界には重力、弱い力、電磁気力、強い力の4種類の力がある。重力は他の3つに比べてとても弱いので現在の素粒子実験での影響はほぼない。
強い力はクオークを互いに引きつけ合って陽子や中性子を作る力で、電磁気力よりも強い。
弱い力は原子核からの放射線の原因となる力で、電磁気力より弱い。
強い力だけは粒子同士が近づくと力が小さくなる。
磁石のように、離れても伝わる力のことを遠隔力と言い、「場」という概念はこの遠隔力を説明する為に考えられた。物体と物体の間には場という実体があり、それが力を伝えている。
磁気の力を伝えるのは磁場で、電気の力を伝えるのが電場。
物理学の定義では「場」とは空間の各点で値(力の大きさや方向)が決まっているもののこと。
19世紀の半ばにマクスウェルは電気と磁気をまとめた電磁場を説明する方程式を発見した。
電磁場が伝わる速さは光速。つまり光の正体とは電磁波の事。
電磁場において働く力の強さは距離の2乗に反比例する。(クーロンの法則)
光とは電磁波という波でもあるし、光子という粒の集まりでもある。これを双対性と呼ぶ。
一つの光子が電子と陽電子のペアに変わったり、また元に戻る事がある。
粒子同士が高エネルギーで衝突するとそこに質量の重いものが生まれ、加速器のエネルギーをどんどん上げていくとどんどん重力が大きくなりブラックホールができる。ここでは重力が極限まで重い為、光さえ飲み込まれる。
脱出速度が光速になってしまう表面の事を事象の地平線と呼ぶ。
超弦理論とは、弾力のある弦が振動し、その振動の仕方によって様々な素粒子が現れると考えるもの。全ての素粒子が1つの弦から現れる。
弦にはタリアテッレのような開いた弦と、ドーナツのような閉じた弦がある。
開いた弦の振動には電磁気力を伝える光子が含まれている。
弦の振動は縦波は振動していない状態と区別がつかないので横波しかない。
電場や磁場には向きがあり、その電場や磁場の大きさが変化する事で起きるのが電磁波。
電子が光を放出して別の電子がその光子を吸収すると、二つの電子の間には電磁気のクーロン力が伝わる。
重力の理論を量子力学と組み合わせると重力波の粒である重力子が予言される。
重力は重力子のやり取りによって伝わると考えられる。
当初の弦理論は力を伝えるボゾンだけで、それに物質の元になるフェルミオンも加わったのが超弦理論。
同じ数同士を掛けると答えがゼロになる数をグラスマン数と呼び、これを座標に使う空間を超空間と言う。この超空間によってフェルミオンを加える説明がついたのが超弦理論。
フェルミオンは一つの状態には一つの粒子しか入れない。これは一回掛けると0となって終わってしまうグラスマン数の性質に由来している。
普通の数の他にグラスマン数も座標として使う超空間では、グラスマン数で示される方向に振動する弦からフェルミオンが現れる。
普通に座標の方向に振動するとボゾンになる。
見る方向を変えても同じように見える時は回転対称と言う。
超空間に超対称性があるとボゾンとフェルミオンの間にも必然的に入れ替え可能な対称性が現れる。
我々は三次元空間ではなく、実は超次元空間に住んでいる。グラスマン数という不思議な数を座標に使う余剰次元が存在する。
物理学の理論の多くは次元数を選ばないが、超弦理論は9次元空間しか許されない。
電場があると、電子は電位の高い方に引き付けられる。
磁場があると電子はクルクル回ろうとする。
未知の世界を探求する人々は地図を持たない旅人。
素粒子はスピン(自転)しており、時計回りの素粒子だけに弱い力が働いている。
朝起きた時に今日1日数学をやるぞと思っているようではとてもものにならない。数学を考えながらいつの間にか眠り、朝、目が覚めた時にはすでに数学の世界に入ってなければいけない。
10という次元は超対称性を持つ理論を考える事のできる最大の次元であり、それは超重力理論のみ。
10次元の超重力理論の中には1次元の弦ではなく、二次元の拡がりを持つ膜がある。
10次元の空間に時間を入れると11次元の時空間となる。
10次元空間の中では二次元の膜と五次元に広がったものが絡みつく事ができる。
開いた弦はブラックホールの分子。
ミクロな基礎理論までいくと、温度も空間もその中に働く重力も本質的なものではない。
数学で空間を定義する要点は、二つの点の間が近いか遠いかを区別する事。近いと関係が強く、遠いと弱い。空間とは関係性のネットワーク。空間の次元とはネットワークの拡がり方の事。
自然科学の基礎には因果律があるが、ある時刻の状態によって過去も未来も全て決まってしまうのなら、過去や未来は現在とは独立していない事になる。
名人による超弦理論の解説
超ひも理論(超弦理論)の最前線の研究者である大栗教授の入門書。素粒子の既存の標準理論の説明から説き起こして、超弦理論の到達点までを順序立てて説明してくれている。音は空気が無いところでは存在しないし、色彩も可視光線の波長未満の大きさでは存在しないように、超弦理論の帰結では3次元空間も幻想であり、時間もそうかもしれないというところまで連れて行ってくれる。この人は素人にごまかし無しで難しいことを説明する名人じゃないかと思う。研究者として優秀であることと解説者として優れていることはなかなか両立しないが、両立している貴重な例かと。
この本を読んだ後は素人の自分でも、ちょっと超弦理論について語れそうな気がして来る。
Posted by ブクログ
理論物理学、素粒子論、宇宙論の最先端がわかりやすく説明されていてワクワクする。
特に疑問だったなぜ空間が9次元とか10次元とか言われているのかがようやく理解できた。
けど「時間」についてはまだ謎らしい。
不思議だ。
Posted by ブクログ
「なぜ、点ではいけないのか。点とは部分を持たないものである。」で始まる、物質の最小単位・サイズ・形状をめぐる超弦理論が展開する挑戦の物語。夏休みから秋にかけてのお薦めの一冊。
Posted by ブクログ
西山事件というと沖縄返還における密約を新聞記者が暴いたが、その情報入手の手段が外務省の女性事務官に対する色恋によるそそのかしであるというもの。本書を読む前に読んでいた山崎豊子の『約束の海』で改めてそのストーリーを追っていた。その女性事務官の抗弁に「女性は情交した相手に逆らえないものだ」というセリフがある。真相は不明だが、少なくともそうした意見があったという事だ。なんでこの話かというと、同時並行で読んでいて頭が混乱してしまったのだが、次元の違う「超ひも理論」である・・・。
もとい。量子力学の超弦理論、イコール超ひも(紐)理論である。なぜ紐かというと、量子を最小単位で捉えようと追求していくと、「点」のイメージになるが、点は正確には「・」のように面積を持つものではなく、これが線や面にならぬから「点」なのであり、ゼロポイントである。だが、これが本当にゼロならば、境界のない存在にエネルギーが内包され、質量が無限大になってしまう。そのため重力の理論と量子力学を矛盾なく組み合わせる新しい理論が必要。そうした必要に迫られて、考えられる理論の選択肢を順番に潰していった結果として残ったのが、物質の基礎が「ひも」であるという超弦理論だった。つまり、点粒子などは考えず、電子に大きさがあるとすれば、無限大の問題は解消できる。超弦理論の発想の原点はここにある。その大きさを形容するために、線、紐、ひも状を仮定する必要があった。
このひもが振動する様式によって、電子やクォーク、光子などの性質が決まる。点ではなくひもであることで、エネルギーが空間に広がり、無限大の問題が回避される。
分かるような分からないような、だが、分かった気にさせてくれるのが本書の素晴らしい所。特に自然界における四種類の力の説明は他の本でも読んだことがあるが、本書の分かりやすさが抜群だった。強い力 >電磁気力>弱い力>重力という図式。
― 自然界には重力・電磁気力・強い力・弱い力という四種類の力があることがわかっています。「重力」や「電磁気力」については古くから知られていましたが、二〇世紀になると、自然界にはあと二つ、「強い力」と「弱い力」という力があることが発見されました。強い力は、クオークを互いに引きつけあって、陽子や中性子をつくる力です。また、弱い力は、原子核からの放射線の原因となる力です。強い力は電磁気力より「強い」、弱い力は電磁気力より「弱い」ので、このように呼ばれています。あまり専門用語らしくありませんが、二つとも素粒子の間に働く基本的な力です。
― 弱い力は名前が示すように電磁気力よりも弱いのですが、重力はそれよりもはるかに弱いので、これまで地上でおこなわれてきた素粒子実験においては、重力を無視した標準模型でもその結果が説明できたのです。
最も分からないのは9次元のイメージだ。次元の異なる「超ひも理論」、3次元の座標で描く世界線がパラレルに存在するなら、4次元、5次元と増幅させていく事も可能なのかもしれない。ひもの振動が面を描き2次元から3次元を創るように、世界の振動が+次元のイメージを可能にするのではないかと。そこで、振動するだけではなく、結び付けるイメージとしての紐(ひも)に帰ってくるわけだ。言葉の揺らぎが、多世界解釈に繋がっていく(・・ギブアップ)。
Posted by ブクログ
日本においてヒモ理論といえば大栗さんですが、私自身まだまだ理解が追いついていません。
Newtonなどでは断片的に理解していましたが、本書ではなぜ次元を高次元にし、そして点ではなくヒモでなければ成立しないのか?がよく理解できます。
一方で、これを完全に理解するためのトポロジカルな見識が私には不足していて、ところどころ不明な部分もあります。
他の専門書と合わせてまた読み直したい1冊です。
Posted by ブクログ
物資の基本は、点ではなく、ひも、とする超弦理論(Super String)の解説ですが難解です。空間は弦の運動から現れる、集合の一種です。重力は、空間や時間の伸び縮で伝わる、とか、時間も幻想かもしれない、という辺りは、理解が追いつきません。とはいえ、138億年前の宇宙の始まりが、理論的に解明されるようになった時代の統一理論を追いかけている大栗先生の良くわかる超弦理論の説明。あまり良くわかりませんが、★四つです。
Posted by ブクログ
語りがうまい
物理の歴史総まとめ
からの先端理論
■前書き
○時間と空間
アリストテレス 空間も時間も、物質やその運動に付随して定義されるものである
最初の革命
ニュートン力学「絶対空間」「絶対時間」
第二の革命
アインシュタイン
相対論
時間や空間は伸び縮みする
第三の革命
今起きようとしている
“空間とは私たちの「幻想」にすぎない”
Posted by ブクログ
極力数式を使わずに展開されるから、逆に難しかったかも。
とは言え、その時々の「最新の数学」を発明して対処する様な領域だから、数式載せちゃ誰も付いて来れんのかな。
工学系からすると、所与の数学で対処できるモノしか接してこなかったから「最新の数学」という概念がこれまでピンと来なかったけど、この本で初めてイメージが持てた。本筋からズレるがオイラーの公式は確かに滝に打たれる様な衝撃だったが、巻末の解説を見ると納得。
空間がホログラフィックなモノだという説明を理解しきったわけではないが、時間と空間の本質なモノがありそうだと言うことは、ままイメージが持てた
Posted by ブクログ
文系が頑張って読んだ。ひも理論。超弦理論だ。
いや、読み流した。
というより、50%以降はフィーリングだ。。。
すっごいわかりやすい、フェルミオンとボゾンのイラストでの説明。「…で?」と思ってしまうが、まあ、頑張って読み進むのだ。
ハイライト、56人が引いているところ。
「超対称性とは、この回転対称性の概念を超空間にまで拡張したものです。超空間の座標は、普通の数とグラスマン数の両方からできています」
「…お、おう…。」
もうほんと全部パスタで説明して欲しい…。徹頭徹尾パスタでいって欲しい。
9次元、25次元、読んでるときは必死で考えているけど、こう、後でまとめるとかはできん。できんけども、こういう世界があることはうっすらわかった。
わたしたちの三次元の+時間経過の四次元の一瞬のことについて書いてもある。ここは参考になる。
そしてさらに突き詰めて、
「わたしたちは習慣によって、
重力があったり、
次元があったり、
空間があったりすると思うが、
現実に存在するのは…」
この「・・・・」に当てはめるべき言葉を知らないという。重力や次元や空間は幻想であることが確かである!!!!でも本当のこと、根源的な理解に達していない…。
なんかどこかで聞いたことのあるような話。
人間ってなにやっていても、こういうところに行き着くのだろうか。
それにしても数式で様々なことを解き明かしていくというのはすごく不思議で痛快でもある。数式見てもまったくわからんけど。
仏教的時間空間の話を理解するために読んだのだけど、まあ、このくらいで勘弁しておいてやるという心持ちである。
でもわからんなりに読み通せたので、この大栗先生のお話は面白い。YouTubeも見た。そんな気なくて読んではまる人もいるかもしれない。という感じの本。
Posted by ブクログ
物理学者 大栗博司氏による超弦理論についての解説書。ブルーバックスから刊行されているため、専門外の人が読むことを前提に書かれています。ニュートンの力学に始まり、アインシュタインの相対性理論、弦理論から超弦理論へと発展する歴史を俯瞰しつつ、それぞれの持つ問題点や限界を明示し、その解決策を示しながら話を進めていくので、なんとなく分かった気になります。今後、この分野で、どのような発見があるのか楽しみになりました。凄く難解な事をこうやって、ある程度平易な言葉で表現するって、凄いことだと思いました。
Posted by ブクログ
超弦理論はやっぱり難しい、けれど最後まで読み通せるし、今までより内容に少し踏み込めた感じがしました。大栗先生の研究が目指しているところや、そのおもしろさが伝わってきました。
Posted by ブクログ
超弦理論が歴史的発展にそって解説されていて、非常にわかりやすく面白い
それぞれの理論の特徴と現代における位置付けがわかる
特に理論の次元が決定される理由などは詳説されている
ゲージ理論を金融で説明するのは斬新
Posted by ブクログ
第四章なぜ九次元なのか、あたりから???となって、とにかく話を追っていくだけになっていました。ただ、物理学者の研究の雰囲気はなんとなく感じられたように思います。
Posted by ブクログ
これね、最高です。わかりやすい。まあ全然わかってないんだろうけど、次元ってたいしたことないんだよ。9と10とかあんまり変わんない。って感じなんだと。大栗さんの他の著作も読んでみよう。しかし、多次元が脳内でイメージできるかどうかが鍵だよね。さらっと、空間は幻想だよね。実体が写ってるスクリーンに過ぎません。みたいなことが。でもね、そうなると、私達がこういうことを理解しているということは、映画館のスクリーンは人生とか言って暮らすのもわるくないってことですかね。違うか。
Posted by ブクログ
この本は現代物理学理論において注目されている超弦理論について書かれた本です。
そもそも超弦理論とは直感的に言ってしまえば、物質を構成する最小単位である素粒子を点ではなく弦であると考えましょうという理論です。
現代物理学にはこの世の中に存在する力を1つの数式で表すという大きな目標があります。そのためには重力理論と量子力学を融合させる必要があります。しかし、それには数学的な困難が多々あります。
なぜ超弦理論が注目されているのかというと、素粒子を”弦”と考えることで”点”の時にはうまくいかなかった計算が上手くいくことがわかってきたからです。
そんな超弦理論についてその歴史に沿って書かれているのが本書です。
個人的には第9章「空間は幻想である」が印象に残っています。超弦理論の発展によって”空間”が”温度”のような二次的な概念であるということがわかったという点が目から鱗でした。
超弦理論についてその歴史に沿って学んでいきたい方には良い本だと思います。
ちなみに数式はほとんどなかった印象です。購入の際の参考になれば幸いです。
Posted by ブクログ
超弦理論を判りやすく説明していて流石です。難しい数式もほとんど使わず、図解を駆使して概念を説明しているので、ちょっと物理や数学は苦手…という人も手に取りやすい&理解しやすいかと。
研究の当時の熱気含めて書かれてるので、そういう現場の雰囲気含めて堪能しました。
(ちょっと古い本になりますが、はじめての〈超ひも理論〉 (講談社現代新書)を併せて読むと、ブルーバックスの方ではサラッと「知ってますよね」前提で書かれてる辺りを補完しながら、宇宙論との関係など理解してさらに読み込めるかと)
Posted by ブクログ
一般読者に向けて書かれた,超弦理論の解説書.
最先端の理論を非常に明快に解説しており,素晴らしい.
特に弦理論および超弦理論で扱う空間次元がそれぞれ25次元と9次元
になることは,やや厳密性を書くとはいえ,数式で求めており,
関心した.専門書にははるかに及ばないのでしょうが,
一般人向けとしては,これ以上のものは望めないのではないだろうか.
最先端の物理の世界を味わってみたい全ての人にお勧めです.
Posted by ブクログ
ニュートン力学、量子力学までは、何とかおぼろげながら理解できたつもりだが、全ての現象を説明できる統一理論の構築過程で出現した矛盾点を解消すべく、超弦理論が出てきたのだということだろう.でも、この様な難しいことを真剣に考えている科学者がいることも驚きだ.電磁場と金融市場の類似性の説明は明快だった.
Posted by ブクログ
現代のキホーテにならないために、現代の(理論)物理学を簡単に知ることができる1冊です。超弦理論が必要とされた背景から、これからの課題までが、他の物に比べてわかりやすく書かれています。
ただ、最低限の常識と、量子力学周りのわかりやすい本が1冊ほしい感じかも。
空間の余剰次元って、イメージしにくいと思うのですが、自然現象を説明するのに必要な項目と思っていいと思うのです。
例えば、普段の生活空間は、3次元的な広さだけを気にしているわけじゃないですよね?
ここ暑いな~と感じたら、気温が高いとか、湿度が高いとか思うはずです。
その気温や湿度のような説明が、3次元的な広がり以外にも、空間に必要となっているということなのです。
また、気温が高いというのは、分子との衝突で受けるエネルギーとその頻度と言い換えれますよね。
同様に、余剰次元についても、自然現象の振る舞いの説明でしかないため、別の説明をするなら、次元も変わっていくよね?ということなのです。
あと、不思議な感じがするのは、次元の数の根拠となる
・1+2+3+…=-1/12
の導出です。
現代数学は、公理系…計算するための世界を定義することで、初めて成り立ちます。
算数のように、実数平面上だけの世界もあります。
・1+2+3+…=∞(計算不可)
範囲を複素平面まで拡張して、実数からは無理でも、虚数側から収束させれる世界もあります。
・1+2+3+…=ζ(-1)→-1/12
どっちの世界を当てはめたらいいの?と思うのですが、自然の公理系はわからないため、当てはめて問題なく振舞う方が、より自然に近い世界と言えるのです。
それで元の式を思い出してください。
・光子エネルギー=2+(D-1)(1+2+3+…) → 0
元々、質量無限大の問題を解決するためのものと考えると、解の収束する世界が適切と推測できますよね?
当てずっぽうじゃない?と思うかもです。
だからこそ、証明がとっても大切な分野なのです。
Posted by ブクログ
大栗先生による。とても分かりやすい。次元が確定する話とか、ゲージ対称性の話とか、単語や結果だけは聞いていたことが、中身のストーリーについても少しだけ理解が進んだのは嬉しい。
Posted by ブクログ
日本のこの分野の第一人者である大栗教授の入門書。超弦理論は、物質を形づくっているのは粒子ではなく、多次元(10次元)の中でひものように一次元に拡がった何ものかであるというものであるという理論。この理論を採用することによってのみ、重力の理論と量子力学の理論が矛盾なく統合できるというものである。
この理論を宇宙論まで突き詰めると多宇宙論に行き着くというのが最近一般にも広がりつつある流行りの理論で、リサ・ランドールやブライアン・グリーンらの本がそこそこ売れているようだ。本書はそこまで振り切れずに、超弦理論の解説をきちんとやっている。
超弦理論の研究が進化発展する現場にいた研究者らしく、研究者でしかわからないようなエピソードを本の中で色々と入れてきている。この分野で同じくいくつか書籍を出している村山斉氏とも研究人生の中で絡んでいるようだ。この世界も狭い世界なんだろうな。
はっきりと理解できたと言うのは難しいが、少しづつそういうもんなんだなと思えるようになってきたのが不思議。
ブルーバックスシリーズって、安っぽいけど、昔からそんなに悪くない。
Posted by ブクログ
p274"自然界の基本法則の探求はこの広い世界に私たちが存在する意味について深く考える機会を与えてくれます。"
基礎科学の意義は理解されにくい。それはきっと内容が難しいからではなく(もちろんそのこともあるだろうけれど)、そこで研究者達が何をしようとしているかが理解されないからだろう。役に立たないという批判を免れるために基礎科学が役に立つかのように論じてしまう本もあるけれど、この本ではそんな誤りに陥ることはない。この世に生まれた以上、誰もが一度は考えたことのある疑問を探求することの面白さを教えてくれる。基礎科学の意義は役に立つことにあるのではなくて、役に立つ・役に立たないという造り物の物差しをとっぱらった世界へ誘ってくれること。
かつて素粒子物理学を学んでいた者として、その素晴らしさの一旦を垣間見たものとして、このような書籍が一般向けに出版されていることに喜びを感じる。自分がここにいることに対する疑問を一度でも感じたことのある方には是非とも手にとってほしい本。
Posted by ブクログ
うーん、これはダメなタイプの本だと思う。
大事なところとかを詩で誤魔化した怪しい教養本のように感じてしまう。ただ、友人はこの本を褒めていて、超弦理論の世界観を楽しめたようなので、彼とは少し違う感想を持った。
「金融市場にもある電磁誘導」というキーワードが来た時点で、そりゃないだろと。何かまやかしか、アナロジーかわからないけど、そういうものが含まれているような感じがしてしまった。
Posted by ブクログ
“
私たちは習慣によって、
重力があったり、
次元があったり、
空間があったりすると思うが、
現実に存在するのは……
(p.248)”
『重力とは何か』、『強い力と弱い力』といった優れた啓蒙書を世に送り出してきたカリフォルニア工科大学カブリ冠教授 大栗博司。本書のテーマは、まさに彼の専門分野である「超弦理論」だ。
超弦理論に関しては、「物体は極微のひもから出来ている」、「空間は三次元ではなく実は九次元」といった何ともワクワクさせられる煽り文句(?)が広く人口に膾炙していると思う。一方で、その内実、つまり「『なぜ』物体がひもから出来ていると考えるのか」、「九という数字は『どのように』導かれるのか」といったことはほとんど知られていないのではないだろうか(もちろん僕も知らなかった)。超弦理論は現代物理学の最前線にある理論で、当然かなりの難解さを誇るわけだが、本書は、専門家が理論のエッセンスを噛み砕いて一般向けに易しく、しかもなるべく誤魔化しを入れずに解説してくれている貴重な一冊だ。また、当時の研究の現場の活気溢れる様子を紹介できるのも、第一線で活躍してきた筆者ならではだろう。
扱われているのは次のようなトピック。
・標準模型の限界
・なぜ点ではなくひもなのか
・超対称性とは何か
・空間の次元はどのようにして決まるのか
・双対性のウェブ
・AdS/CFT対応
・時空とは一体何なのか
個人的には、九次元がコンパクト化されて三次元になる、六次元多様体「カラビ-ヤウ空間」のオイラー数から素粒子の世代数が決定されるというのが興味深かった。
ただ、これだけ難解な理論を数式を用いず言葉だけで説明するというのにはやはりどうしても限界がある。「なるほど!」と腑に落ちたこともあったのだが、正直なところ、僕には理解が追いつかない箇所が多かった。特に、空間次元D=9を導く過程で、例の
1+2+3+4+5+…=-1/12
という式を使っているけれど大丈夫なのか?(Re s>1でしか成り立たないはずのζ(s)=Σ1/n^sという関係をs=-1に適用しているが…)
多分問題ないのだろうとは思うが、モヤモヤが残る。
1 なぜ「点」ではいけないのか
2 もはや問題の先送りはできない
3 「弦理論」から「超弦理論」へ
4 なぜ九次元なのか
5 力の統一原理
6 第一次超弦理論革命
7 トポロジカルな弦理論
8 第二次超弦理論革命
9 空間は幻想である
10 時間は幻想か
付録 オイラーの公式
Posted by ブクログ
超弦理論に詳しくなりたくて、個人的に大傑作だと思う「重力とは何か」を書いた大栗先生の本ということもあり、喜び勇んで読んだのだが、ちょっと難しかった。
素人にも分かるように色々と工夫されているのだが、理解が追いつかなかった。いつかもう一度チャレンジしてみたい。
Posted by ブクログ
この本を読んで驚いたのは「数式を癒やす」という表現、この分野の科学が「哲学」「神学」などに近づく理由が垣間見れたこと。さらには、基本的なコンセプトは仕事にも活かせそうだというところ。
本書では数式はほとんど登場しないし、あってもかなり簡単なものに置き換えられている。実際には高度な論理を解いているはずで、その抽象化は半端ない。逆に言うと、この抽象化スキルが現代の数学と物理を推し進めているのだと理解する。故に「癒す」となどの我々が知っている算数や数学ではあり得ない表現を使うのだ。
さらに驚くのは、何らかの基準や思い込みを捨てることで、この学問が発展しているという事実である。たまたま、マクロでは見えていた現象はミクロの確率の集まりでしかなく、量が多量だったために見えていたに過ぎないということらしい。
私が現在使える道具は中学生までの数学、主に四則演算、確率統計の基礎、そして、初等幾何である。とはいえ、これだけの道具でも、問いを正しく設定すれば解ける問題は多い。思考停止に陥らず、考え続けることはやはり大事だ。物事の本質を問い続けることはやはり我々の本能なのだ。
Posted by ブクログ
超弦理論をわかりやすく解説してくれてはいるのだが、それでもわからないものはわからない。超弦理論と言うのは計算結果があうので都合よく使われた方便だと考えていいのだろう。この理論が正しいかどうかは何らかの実験的な証拠が得られないと何とも言えない。A→Bが正しいからといってB→Aは正しいとは言えない、計算結果があうことは超弦理論の正しさを証明してはくれない。いまのところはだ。
電子が動くと電磁場へ変化を与える。これが電磁気力のしくみなのだが力の強さは距離の二乗に比例するとして電磁場は動いた電子自身へも影響を与えてしまう。こうすると距離はゼロなので自身に影響を与える電磁気力は無限大になってしまう。それをE=MC2にあてはめると電子の質量も無限大になってしまう。これは何かがおかしいということで原因は電子を大きさのない点だと考えたことから起こった。電子などの粒子を有限の大きさを持つ点だと考えることで無限大の問題を回避しようとしたのが超弦理論の発想の元となっている。
電磁場のエネルギーが無限に大きくなって行った際に計算上粒子の質量をマイナスにするアイデアが生まれ「くりこみ」というそのテクニックは機能したがよりミクロな世界を観察しようとすると理論上の限界が来てしまう。光学顕微鏡、電子顕微鏡とより小さな世界を見ようとするとより波長の短い光が必要になるのだが波長を短くするにはどんどんエネルギーを上げて行かざるを得ず、それだけの高エネルギーの光を粒子にぶつけるとブラックホールができてしまうようなのだ。
そこで粒子の基本を点ではなく「ひも」にしたのが弦理論でひもを振動させることで点粒子が色々なエネルギーを持つことができるようになる。弦理論と超弦理論の違いは対象となる粒子を光子や重力を伝えるヒッグス粒子の様な力を伝える粒子だけに限定するか、電子やクォークのような物質を作る粒子にも適用させるかで、だから何だといわれてもこれ以上の説明は手に余る。
よく分からないのだが超弦理論は9次元以外の空間では矛盾が出るそうだ。ちなみに弦理論では25次元になる。なるんだからしょうがない。余った次元はどうなってるかというと小さく丸め込まれているという話を聴いた様な聴かない様な。ともあれ目に見える大きさであれば3次元でことは足りる。
数学を扱った本では何度も出てくるオイラーがここでも出て来て(1+2+3+4+5+・・・・・)=−1/12というとんでもない式が出てくる。光子のエネルギーをあ求める式にこの公式を使うと弦理論では25次元でエネルギーがゼロに、超弦理論では9次元でゼロになるという。巻末にはこの式の証明もつけられてはいるのだが、やはりさっぱりわからない。
4次元自体が3次元空間にいると想像しがたいが、2次元と3次元であればまだわかる。平面状の2点は2次元区間では決まった距離を持つが、これを3次元的に折り畳んでやると接触させることができる。しかし2次元平面内では3次元的に折り畳まれたことは知覚できない。3次元空間も4次元的に折り畳んでやれば離れた場所に接触できる。ドラえもんの4次元ポケットやどこでもドアはこの応用だろう。ヤマトのワープも似た様なものだ。物理学では空間と時間を同じように取り扱うので時間も一つの次元として捉えられる。物理学の公式は次元を選ばないらしい。
この本はブルーバックスとしては初めて縦書きのタイトルで書かれており、「超弦理論の様な物理学の最先端でも、日本語の力で、ここまで深く解説できることを象徴したい」という編集部の意向だそうだが、縦書きになったからといって理解できるわけではない。数式は横書きの方が見やすいしね。それでもこの本が少なくとも手元にある第5刷まで増刷されているというのはすごいことだと感心するばかりだ。