佐藤さとるのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
佐藤さとる氏の新作が出版されたというのは聞いていたのだが、文庫本になったのを発見して購入。ジャンルは児童書、らしいが、40年位前の子供ならともかく、現代っ子は最後まで付き合えるか、要らぬ心配をしてしまった。
物語的には、与平が九郎丸を人に戻そうと大天狗に直訴するくだりをクライマックスにしてもよかったかなと思う。九郎丸の出生が明かされるまでは、佐藤さとるらしいファンタジーで、一気に読ませるが、そこからは、それまでのキーアイテムだったカラス蓑や笛、といった小道具が活躍せずに、現実世界の話が進む歴史小説風になって、盛り上がりに欠けた気もする。
ただ、人物(と、天狗)描写はぴか一で、それぞれの人物 -
Posted by ブクログ
コロボックルの語り部から聞き出したという形で、
コロボックルに昔から伝わる物語を再話した「第一巻以前の話」。
上代の国造りの神話から、中古の伝説・昔話(おなじみの一寸法師や桃太郎も登場)、中世近世の歴史的伝記的なものまで、コロボックル的視点からの日本文学パロディ短篇集。
最後に「コロボックル余話」として、これまでの読者からの手紙にも答える形で登場人物たちのその後やコロボックルの衣食住などについて書かれている。読者からの質問というのがまた想像力に富んでいて(たとえば「コロボックルの目が人間より優れているとしたら、彼らの天文学はとても進んでいたのではないか」とか)、これもコロボックル物語が完成した -
Posted by ブクログ
ネタバレ人間との接触を御法度としてきたコロボックル界のルールが曲がり角に。つむじまがりの老コロボックルが幼い人間の男の子とトモダチになってすぎる6ー7年間を描く。出会いはほとんど一目惚れだけれど、そのあとの手続は慎重なコロボックル。少年との交流を通じてコロボックルの古い言い伝えの点と点がつながって、最後は少年たち人間とコロボックルたち双方にとって大切な池を目に見えない協働で救う。コロボックルの物語は巻が変わるたびに人間の主役もコロボックルの主役も世代交代しているが、前作までのしばりを隠し味に、構成が緻密で、しっかりとしたメッセージもある。長くつきあってゆけるもう一つの世界。