雪広うたこのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ宝石商リチャード氏の謎鑑定シリーズ14冊目、完結が近付くことを感じさせる第3部の3冊目です。
前作、硝子の仮面舞踏会のラストで登場したヨアキムは、どうやら事情があってジェフリーの元から逃亡してきたらしく、しばらく正義たちの暮らす横浜のマンションで居候をすることに。英語しか話せないヨアキムとの距離をおそるおそる探りながらの交流、中華街に現れるようになった少し変わった占い師、みのるから見た正義とリチャードの関係と、真鈴が正義に向ける気持ちについて、様々な状況が入り乱れて、みのるは自分と周りの人のことを知らず知らずにつなげたり、考えを深めたりしていく。ようやく母親とも面会を果たし、一つ自分の中に何かが積み重なったように思う彼の成長を感じていける一冊。
今作は、メインはみのるくんの視点ではあるものの、複数のカメラで色々な事情が語られる話でもありました。ヨアキムさんの悩み、真鈴ちゃんの苦しみ、ジェフリーさんの気持ち、正義くんとリチャードさんの関係について――正直、初読の今、情報量に頭の処理が追い付いていません。落ち着いてから読まなければきっと処理できないだろう、と界隈の他の方々が読んでいた反応を見て思っていたので、万全を期して臨んだはずなのにこの様です。
とりあえず、クレアモント家の方々の愛がとんでもなく重量級だということは、分かっていたはずですが改めてよくよく感じました。まだまともかと思っていたヘンリーさんでさえ、GPS…………ええ、そうですか、そうですね、と思わず一瞬目が点に。
けれど、話の中でいくつも、本当に誰でも自分一人できちんと考えなければいけないのではないかと思うような、命題のようなものが織り込まれていたように思います。
普通とは、変とは、どういうことなんだろう。
誰かを大切にしたいというのは、どういうことなんだろう。
恋をするって、本当はどういうことで、それはどこに行きつくものなんだろう。そもそも、どこかに行きつかなければいけないものなんだろうか。
将来を考えるって、どういうことなんだろう。
そんな、漠然として、それはこれこれこうなんですよ、なんて簡単に誰かに答えをもらうことのできない問い。ある意味では哲学にも、宗教学にもなってしまいそうな、人生の問い。
今まで何度も突き当たったはずのその問いを、今改めて目の前に差し出されて、自分が何を思うのか。何を基準にして、どんな感覚で、どう答えを出せるのか。改めて考えてみたくなるような心地です。
そしてその問いに、揺れる大地で、指標のない海原で、それでも自分の答えを探してみようとし始めた若い少年たちがどんなものを見つけていくのか、今後をそっと見守りたいと思います。 -
購入済み
やはり面白い
第3部に入ったところで、しばらく読むのをやめていた。買ったまま積読状態だったのだが、風邪で寝込んだのを期に再び読み始めたら一気に3冊読了。やはり面白い!
ここへ来て宝石との絡みは少なめだが人と人の関係(リチャードと正義のみならず)を描く方に物語がシフトしているように感じた。
もちろん今まだだってそれぞれの宝石に絡めて人々の心の綾が描かれていたのだけれど。
思春期真っ只中の子供たちの悩みはともかく、良い大人たちである2組のカップルのややこしい悩みっぷりはどうなの?と思いつつも、考えてみれば彼らですら30前後のまあ青年…?と言っても良いお年頃なので仕方ないよねと、彼らの世代をはるかに超えてしまっている自分にツッコミを入れながら微笑ましく読ませてもらいました。
とりあえず今は正義たちの父との関係が気になる!
続きが楽しみです。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ大学生の正義(せいぎ)は酔っ払いにからまれている外国人を助け、彼が宝石商だと知り、サファイアの指輪の鑑別を依頼します。その指輪にはある事情があり ―― 。
外国人の宝石商リチャードはものずこい美形で日本語も堪能です。正義は名のごとく正義感溢れる好青年ですが、少し天然気味で誤解を受けそうなキャラ。
正義がリチャードの宝石商でバイトをすることになり、宝石にまつわる様々な出来事を目にしていくというお話。
二人の出会いの指輪のお話。正義の祖母が戦後の生活苦の時に掏摸で生計を立てていて、ある日若い女性から掏った指輪が女性の未来を変えてしまったという話なのですが、ずっと後悔したままだった祖母とそんな祖母を自分だけは許してはいけないという母の気持ちはどちらも仕方ないことだけど苦しいですよね。
事の顛末も含めて印象深かったです。
それとどうしても気になるのはリチャードと正義の関係。作者はこの二人をどういう関係にしたいのでしょうか。読者としてはどう読めばよいのか悩ましいです(笑)
ロイヤルミルクティーが美味しそうで飲みたくなります。 -
Posted by ブクログ
一部と二部の背後にあった物語プラス、二部が終わったあとの短い物語。
ジェフリーとヨアキム、大変だったんだな。と、ジェフリーが頑張りすぎていて、読んでいてかなりしんどい。そのぶん、これからヨアキムと幸せになって欲しいと、深く深く思った。
宝石商リチャードシリーズを読んでいると
「美しい」
という一言では言い表せない、たくさんの「美しい」ものが出てくる。
何人もの人が関わり合う中で、摩擦あり、肯定があり、反発があり、諦念がある。互いに愛し合っていても、正確に伝えられるかわからないし、正しく受け取れるかわからない。
違う人なのだから、すれ違って当たり前で、喧嘩することだってあるだろう。許せないこともあるはず。
それでも、この人と関わり続けたいという気持ちと、それに伴う努力が、人を美しくするのかもしれない。
人は沢山の人との関わりの中で磨かれる、宝石のようなものなのかも?
なんて、そんな事を思った。 -
Posted by ブクログ
今回の物語の舞台は、香港!
といっても、第二部が開始した頃から、各国各地域を回っているので、香港に止まらないのだが。
世界を飛び回る、それは甘い憧れだが言葉の壁、文化の壁という中で決して見た目よりも甘くはないことも知る。
だが、正義がぶつかったのは、日本だ。
彼の母国。彼が育った国。故郷。
日本人なら気づいているだろう、自分が生まれ育った国が、和を持って尊しと言いながらその和から外れるものには容赦しない国であることを。
それでも、そこに自分の根がある。
どこの国も内実は変わらない。
そこまで行かなくても、日々の暮らしの中で、私たちはぶつかる。
その時に、こんな言葉と出会えたら。
「あなたの胸に輝く宝石の存在は、あなたが知っていればいいと。」(41頁)
それから、リチャードと正義の間にも友情、愛情、尊敬、思慕、そんな複雑な感情を互いに相手に伝えるようになる。また、正義の淡い恋心の相手、谷本さんに対する思いの清算も。
男女のエロスだけが愛ではない。
けれども、アガペーと言われるとそれもまた違うような。
触れたいと願うのは、体だけではなくて、あなたの心なんだ、そんなこともあるが、それは変なことじゃないでしょう?
愛はグラデーション。
美しい宝石の物語は、心という見えない宝物に姿を変え、語り続ける。
次巻、物語は佳境へ!!