雪広うたこのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
本作ではリチャードの過去があらわになる。
師との出会い、母親や家庭教師など、実家の話など…優しさであったり、考えられないくらいの苦しみであったり、それらが今のリチャードを形作っていることがよくわかる。
人は皆過去を元に作られていく。
優しさも賢さもそしてそれを総括した「美しさ」も。
「挑むシトルリン」は叶わない恋の物語だ。
いうことは簡単だが言わないことはその何十倍も苦しく、自分を律しなければならない。
そして、自分が思うほど相手は自分を思ってはくれないこともある。
だが、相手が生きる世界を、相手が大切にしている世界を愛することはできる。
愛とは、人間とは、なんと複雑なのだろう!
「ジルコンの尊厳」では、「美とは『ある』ものではないのです。『見つける』ものなのですよ」(206頁)
「祝福のペリドット」では、
「自分が今まで何をしてきたのかと厳しく考える時には誰しも、己がうつろに思えるものだが、実際には自分で思っているよりもいろいろなものが入っているし、逆に考えれば、まだまだ詰め込む余地があるということでもあると。」(282~283頁)
とこの本は伝えてくる。
美の基準であったり、自分自身の評価であったり、そう言ったものはなかなか高くは評価できず、低い評価のままになりがちだ。
そんな苦しみを少し和らげてくれる。
少しずつ少しずつ、本は私を救ってくれる。
薄皮一枚ずつが積もって、以前よりずっと苦しまなくなった。
たくさんの言葉に触れること、それは必ず自分の救いになる。