雪広うたこのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ゲイを自覚する親友、遥に告白され、咀嚼しきれない思いに戸惑う暁行の視点で終始進むお話。
あれ、一穂作品としては珍しくゲイである自分に苦悩する男の子とノンケの話だー、と思いつつ、苦悩や戸惑い、抑えきれない行き場のない感情の行き交う様がはらはらと美しくて切なくて引き込まれました。
人物描写と感情の流れのひとつひとつ、恋愛にとどまらない人間の描き方の深さがとてもすきです。
自由気ままに過ごしているように見える店長の抱えた影の重さがとても深い……。
店長や暁行の恋人真樹を交えての感情の行き来の移ろい、藍染の家業を営む遥の家族への想いなど、二人の恋の枠に収まらない人間同士の愛情の切り取り方や、毎回唸らされる小物使いのアクセント、言葉が切り取る色合いと景色のひとつひとつがしんと染み渡るほど美しい。
暁行はよくも悪くも不自由せず育ち、あっけらかんとした裏表のない性格でルックスにも恵まれ、「恵まれ、愛されている」が故の無自覚ののびのびとした傲慢さは普通の男の子という感じで、遙はそこが好きなんだろうなぁ。
人によってはイラッとするかもですが、ある種嫌味がない普通の男の子で、それ故に同性を、友達付き合いを続けてきた友人に恋ごころを告白されることも、狭い世界で生きてきた「都会の絵の具」に染まらない遙にどこか惹きつけられ、戸惑うさまもリアルでした。
日々の戸惑いやためらいを隠さずにブログに気持ちを綴る様も心の動きが手に取るように感じられて、はらはらと胸に迫るよう。
文章で気持ちを吐き出して行く様はのちのふったらどしゃぶりのメールのやり取りを思い起こします。
大学生のお話かー、と思いきや藍染の家業というお仕事、そこに由来する人間としての生き方が物語に絡んでくるところも一穂作品ならでは。
後半の兄のエピソードが痛ましくて切ない。
息苦しさと鮮烈さ、想いを重ねてからのあまやかさとがバランスがよくてとても好きな一作。 -
Posted by ブクログ
美しい金髪碧眼の宝石商リチャードとちょっぴりわんこなアルバイト大学生・正義の日常ミステリもの。
なんだろう、日常ミステリなのだけれど、他の作品とは違う。世の中は理不尽もあれば正しくないこともどうしようもないこともあって、それでも美しさは個々人の心の中にあり、宝石はいつでも人の隣に寄り添っている。そう、人に寄り添う宝石を描いた物語だ。
石には必ず願いが込められている。産出の過多や広告戦略に金額が左右されたり、資産になったりするけれど、石はただ石で、美しくあるために、人の心に寄り添うために磨かれる。
世の中なんでもできるわけじゃなくて、どうにもならない、どうにもならないでは諦めたくない、でもどうにかしようとしなかった、どうにもできなかった、泣きたくなることだってあるけれど、優しく寄り添ってくれる人がいる。このビターな感じ。お説教したり世界を恨んだりはしない。
明るいだけの物語でなく、宝石は華やかだが物語自体が華やかなわけではない。浮き世離れしているわけでもないが日常から少し離れており、でも読んでいて絵空事でもない。物語に没頭とはいかないけれど、うまく余韻を残す。言葉遣いも箱に収まるように適切。この感じがうまく言葉に表せられなくてもどかしい。
美しすぎるがゆえ達観したり悟ったりしないと生きてこれなくって、偏見をもたず日本語が饒舌で、甘いもの好きで、正義の直球の褒め言葉に赤くなったり渋い顔をしたり流暢な嫌みを返したりしながらも根は優しかったりと、リチャードがとても魅力的。
デビュー作から大幅に化けました。リチャード役を西欧の王子様系俳優にして是非ドラマ化して欲しい。 -
Posted by ブクログ
とにもかくにも「綺麗」の一言に尽きる作品。
派手な設定もなく、大きな事件もない。
ただただ二人の心の揺れ動く様子を普遍的で、それでいて美しい文章によって見事に描かれている。
個人的に可愛い系の容姿の受はあまり好みじゃないけれど、そんな事を全く感じさせないキャラクターの魅力が十二分にあった。
鬼門の人が多い女子キャラも適当な当て馬扱いではなく、ストーリーを構成する上できちんと機能している。
ノンケとゲイの関係の難しさや、攻の感情の移り変わり、決意を効果的に魅せる要素になっている。
いわゆる「名ばかりノンケ」のような軽々しさがなく、ひたむきな受の気持ちが作品上で大切にされていて嬉しい。
若干「なぜそこまで受を好きになったの?」という過程が端折られている感も否めないが、充分カバー出来る程度には魅力のある作品ではないだろうか。
そして読み終わった後にもう一度、表紙の絵を見てみる事を推奨する。
こんなにも表紙まで二人の物語を大切にした作品に出会った事はない。
骨のあるしっかりとした恋愛、泣ける話が読みたい方にはオススメ。