田中一江のレビュー一覧
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SF。エコSF。バイオSF。
かなり激しく物語が動く下巻。
上巻から引き続き4人の視点から進む。ただし、ジェイディーはカニヤにスイッチ。
ねじまき少女エミコが主役なのは間違いないものの、エミコの扱いがあまりに酷いのが印象的。
暑さでオーバーヒートし、痛みや不安も感じる、機械と人間の間にいるようなエミコのキャラクターが、個人的には大好き。今まで読んだSF作品で、一番好きなキャラクターかも。
上巻・下巻を通してダークな世界観だったが、エピローグには明るい未来が感じられ、読後感は意外と悪くない。
未来の世界をリアルに描いたSFとして、記憶されるべき作品。 -
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アダム・グラントの「ORIGINALS」の中でちょっと触れられていたので興味を持って読んでみました。なるほど、ちょっとハリー・ポッターに似てる(こっちの方が全然先発なので、失礼な表現ですが。。)。
天才エンダー少年が、幾多もの障壁にもめげずに前へ進んでいく姿を描いた名作SF。
舞台は異星人の侵略に備えて設立された艦隊指揮官育成用の学校。地球全体から頭の良い子どもを選抜して入校させ、訓練させて中でも更に選抜していく。
ゲームに勝つには、固定観念に囚われていてはいけない。考えて、機転を利かせないといけないということを学ばせてくれる本。
小学校高学年か、中学生なら問題なく読めそうなわかりやすさ、読 -
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タイトルは違うけれど、内容は完全に『ゼノサイド』の続き。
ディヴァイン・ウィンドの一連の話、パシフィカのマルの存在、最後に代弁をしたけどほとんど出番のないプリクトとか、消化し切れていないパーツがいっぱいあるんじゃないですかね。それで星ひとつ減。
これでもってエンダーのシリーズは一旦終了。主人公死んじゃうし。
この作品は大江健三郎と遠藤周作の『深い河』に影響を受け、そして作者はモルモン教徒で、ってことだけど、大江健三郎も遠藤周作もモルモン教もよく知らないのでそれがどう影響しているのか、その是非についてもわたしにはわかりません。ただ、内容が異生物虐殺をめぐるあれこれがテーマなので、宗教色は結構強 -
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ネタバレ『エンダーのゲーム』からつながってはいるものの、物語世界はだんだん違う方向へ行っています。上巻はまどろっこしい感があり、下巻ではそれなりにまとまったものの、内容ぎっしりで少々重かったですね。
モンスターペアレンツの家庭の状況、見た目が半人間や昆虫みたいな知的生物への拭えない嫌悪感、離婚へ至る過程における夫妻のすれ違い(←結構リアル)、遺伝子治療により直ったはずの元強迫性障害者の現実逃避とその顛末、キリスト教的?自己犠牲願望、アニマ・アニムスの実体化、引き寄せの法則のSF的表現。てんこ盛りな要素をひとつの物語にまとめるのは作者の技量も大きいと思います。
そして伏線を全部回収せず来シーズンをお楽し -
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多少こじつけとも感じられるが、ヘラクレスの12の難行になぞらえた12の事件。
ポアロの頭脳的策略や、ポアロのヒューマニズムを感じさせる心にくい解決手法が味わえる作品集。
人生相談や身の上相談、教訓話といった、ポアロよりもパーカー・パインが登場した方がふさわしいと感じる話が多いが、楽しめた。
特に、予想外の真相に驚かされる「ステュムパロスの鳥」と「クレタ島の雄牛」、ポアロがトリックを仕掛ける「アウゲイアス王の大牛舎」が面白い。
「ネメアの谷のライオン」
人間の認知機能の限界をうまく扱っている。
「レルネーのヒドラ」
事件関係者の聴き取り調査でポアロは違和感を感じ、犯人に気付く。
「アルカディア -
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情勢は暗いほうへと傾斜し、通産省を牛耳るアラカットと環境省の総帥プラチャ将軍の対立は王室を巻き込みながら政変と混乱を引き起こしていく(2010年のタイの赤シャツ・黄シャツの衝突を思い出すが、本書の出版はそれより前)。そして環境省が躍起になって防ごうとしていた新たな疫病の発生。下巻においては、環境省の隊長ジェイディーの副官カニアの活躍がクローズアップされてくる。
カロリー企業のエージェントであるアンダースンはアラカットと手を結ぼうとする。ホク・センはアンダースンを出しぬいて、もう一旗揚げようと企むが、タイ情勢の変化に翻弄されている。そして日本製人造人間、通称ねじまき、また新人類とも呼ばれるエ -
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2010年SF賞総なめの作品。邦題はオタク受けを狙って『ねじまき少女』なのかと思いきや、原題もきっちりThe Windup Girl。
化石燃料が枯渇し、遺伝子改変動物を使役して生み出す力学的エネルギーを小型高性能のゼンマイにため込むというのが、この時代のエネルギー事情だ。よってすべてのエネルギーの源は家畜が食べる飼料のカロリーにたどり着くことになり、農業こそがが最重要産業なのだが、バイオテクによって生じた疫病や害虫で植物もまた壊滅的となっている。
舞台はタイ王国。農作物の遺伝情報を握るカロリー企業の支配に屈せず独自の繁栄を築いている。物語はアニメ風のねじまき少女の冒険ではない。この -
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『ペルディード・ストリート・ステーション』を読み終えて、私はミエヴィル中毒になった。これはミエヴィルの短編集。『ペルディード』ふたたび、と思っていると、やはりちょっと違う。彼はホラーとかウィアードの作家ということになっており、そういう掌編が並ぶ。マンガも。
何だかダメになったロンドンでジェイクと別れた話。建物の基礎の声を聴く男。デパートのボールルームの怪異。魔法使いの使ったスプラッタな使い魔の行状。ある言葉を聞くと脳の一部が蠕虫状になって脳を食い荒らしてしまう病気についての医学事典の記載。クリスマスのあらゆる細部が商標登録されてしまったロンドンのお祭り騒ぎ。外界の線が相貌になって迫ってく -
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途中までは少年のSF冒険譚かと思ったけど終盤でその趣がガラッと変わってしまった。特にピーターとヴァレンタインが思想活動に乗り出したあたりから。
どんな困難でも持ち前の頭脳で乗り越えていくエンダー。普通ならそこでハッピーエンドだったかもしれない。でもその先にあったのは絶望だった。エンダーを最高の兵士にするべく全てを管理しようとするあまりエンダーには一つも自由意志に基づくものが残されていなかった。そして最後にはたった一つのかけがえのない支えであったヴァレンタインへの想いまでも踏みにじられてしまった。最後に彼に自由として残ったのはただの「マインドゲーム」だけだった。
だから『エンダーのゲーム』な -
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面白い!時は近未来。銀河外生命体バガーからの二度にわたる侵略を辛くも退けた歴史をもつ国際艦隊は、来たる三度目の侵略に対抗するための人材を探していた。そんな期待を知るよしもない天才少年エンダー(6)は、国際艦隊からの徴兵を受け入れ、最愛の姉ヴァレンタインと最悪の兄ピーターに別れを告げる。幹部候補生育成機関のバトル・スクールでエンダーはその才能を開花させていく!大人たちの本当の思惑とは?絶望に叩き落とされたエンダー、そこから立ち上がった時いったい何をするのか?!以下次巻!
ガジェットも物語を縁取る世界観も人物の心情も、すべての要素からワクワクが止まらない!エンダーの成長から目が話せないエンターテイ -
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近未来のバンコクを舞台にした物語ですが、現在私たちが映像などで知っているバンコクとあまり違わないように思えます。違うのは、市場にありとあらゆる遺伝子組み換え植物が並んでいたり、象を組み替えた動物がいたり、日本で作られたアンドロイドが出てくるところでしょうか。遺伝子組み換え植物は新たな病気をもたらし、人間には対抗策がありません。しかしアンドロイドなどつくられた生き物たちは、そうした病気と無縁です。必要から生まれたアンドロイドのエミコは、日本では大切に扱われていたものの、ここバンコクでは敬意を払われず、蔑まれています。主人(持ち主)に服従することを教育されているため、不満があっても逆らうことはあり
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購入済み
凄いとしかいいようがない
エンダーの影になり得たただ一人の少年。天才で圧倒的ででも孤独なエンダーの話が好きだったけど、ビーンも気になる存在だったから、ビーンサイドをえがいた話には一もにもなく飛びついた。読後感は言いようもない。ビーンのあの口調や話し方はそういう意味があったのね。出だしはそんなことありえるのか、と思うような事件から始まったけど、話にぐいぐい引き込まれた。最後はビーンにも幸せになると予感させて貰えたけど、もっとその後はどうなるのかが気になる。死者の代弁者のように、エンダーのその後やバガーとよばれた女王ありの世界や思想や観念の話も良かったけど、ビーンの人生そのものがどうなったのか知りたい。でもこれで完結してし
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