田中一江のレビュー一覧
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『ペルディード・ストリート・ステーション』を読み終えて、私はミエヴィル中毒になった。これはミエヴィルの短編集。『ペルディード』ふたたび、と思っていると、やはりちょっと違う。彼はホラーとかウィアードの作家ということになっており、そういう掌編が並ぶ。マンガも。
何だかダメになったロンドンでジェイクと別れた話。建物の基礎の声を聴く男。デパートのボールルームの怪異。魔法使いの使ったスプラッタな使い魔の行状。ある言葉を聞くと脳の一部が蠕虫状になって脳を食い荒らしてしまう病気についての医学事典の記載。クリスマスのあらゆる細部が商標登録されてしまったロンドンのお祭り騒ぎ。外界の線が相貌になって迫ってくることから逃れようとする老婆。などなど。
いずれも奇妙な話だが、現実世界に悪魔が登場するような類のホラーではない。森永のコマーシャルに「誰もいないと思っていても、どこかで、どこかでエンゼルが」という歌があったが、これ、改めて考えてみるととても不気味な歌であって、ミエヴィルの不気味さも日常に天使が浸透してくるような不気味さである。福山庸治の『臥夢螺館』というマンガを思い出した。そういえば『ペルディード』もそんな天使(?)が解き放たれたことで話が進んでいく。
そしてオチがないのも特徴。
『ペルディード』の終盤にかけて、苦しい戦いを強いられる主人公たちが見守るなか、突然、敵方の中に現れて、彼らと言葉を交わすこともなく、何だか解らないが手助けしてくれる「お祈りジャック」。曲者揃いの『ペルディード』の登場人物の中でも最高にファンキーな彼を扱った「ジャック」だけが、ニュー・クロヴゾンを舞台にした作品だ。
最後に「鏡」という中編が収められている。鏡の向こう側で長年、人間のまねを強いられてきた存在が、自由を求めてこっちに飛び出してきて崩壊したロンドン。どうやら「ジェイクをさがして」と同じ舞台らしい。
この不気味な手応え。
しかしやはり長編が読みたいと思ってしまったことも事実。 -
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途中までは少年のSF冒険譚かと思ったけど終盤でその趣がガラッと変わってしまった。特にピーターとヴァレンタインが思想活動に乗り出したあたりから。
どんな困難でも持ち前の頭脳で乗り越えていくエンダー。普通ならそこでハッピーエンドだったかもしれない。でもその先にあったのは絶望だった。エンダーを最高の兵士にするべく全てを管理しようとするあまりエンダーには一つも自由意志に基づくものが残されていなかった。そして最後にはたった一つのかけがえのない支えであったヴァレンタインへの想いまでも踏みにじられてしまった。最後に彼に自由として残ったのはただの「マインドゲーム」だけだった。
だから『エンダーのゲーム』なのか。てっきりバトルルームでの戦闘演習のことを指してるのかと思ってたけど…… -
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面白い!時は近未来。銀河外生命体バガーからの二度にわたる侵略を辛くも退けた歴史をもつ国際艦隊は、来たる三度目の侵略に対抗するための人材を探していた。そんな期待を知るよしもない天才少年エンダー(6)は、国際艦隊からの徴兵を受け入れ、最愛の姉ヴァレンタインと最悪の兄ピーターに別れを告げる。幹部候補生育成機関のバトル・スクールでエンダーはその才能を開花させていく!大人たちの本当の思惑とは?絶望に叩き落とされたエンダー、そこから立ち上がった時いったい何をするのか?!以下次巻!
ガジェットも物語を縁取る世界観も人物の心情も、すべての要素からワクワクが止まらない!エンダーの成長から目が話せないエンターテイメント! -
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近未来のバンコクを舞台にした物語ですが、現在私たちが映像などで知っているバンコクとあまり違わないように思えます。違うのは、市場にありとあらゆる遺伝子組み換え植物が並んでいたり、象を組み替えた動物がいたり、日本で作られたアンドロイドが出てくるところでしょうか。遺伝子組み換え植物は新たな病気をもたらし、人間には対抗策がありません。しかしアンドロイドなどつくられた生き物たちは、そうした病気と無縁です。必要から生まれたアンドロイドのエミコは、日本では大切に扱われていたものの、ここバンコクでは敬意を払われず、蔑まれています。主人(持ち主)に服従することを教育されているため、不満があっても逆らうことはありません。このあたり、日本の女性が置かれた社会的環境を示唆しているようです。バンコクには不穏な空気が満ちており、その中で登場人物たちは思い思いに行動します。エミコは課せられた拘束を解き、自由になりたいと思っていますが、上巻ではまだ答えは出ていません。
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購入済み
凄いとしかいいようがない
エンダーの影になり得たただ一人の少年。天才で圧倒的ででも孤独なエンダーの話が好きだったけど、ビーンも気になる存在だったから、ビーンサイドをえがいた話には一もにもなく飛びついた。読後感は言いようもない。ビーンのあの口調や話し方はそういう意味があったのね。出だしはそんなことありえるのか、と思うような事件から始まったけど、話にぐいぐい引き込まれた。最後はビーンにも幸せになると予感させて貰えたけど、もっとその後はどうなるのかが気になる。死者の代弁者のように、エンダーのその後やバガーとよばれた女王ありの世界や思想や観念の話も良かったけど、ビーンの人生そのものがどうなったのか知りたい。でもこれで完結してしまったからこの先はないよね。ああ、でも気になる。
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「エンダーのゲーム」は日本語訳刊行当時に大変面白く読んだ記憶があり、このエンダーズ・シャドウは「ゲーム」の映画化をきっかけに読むことになった。
タイトルから想像するようなエンダーの影武者ではなく、遺伝子操作によってこの世に生を受けたビーンこそ、人間の能力の限界を超えた、いわば「ゲーム」の勝敗に直接、間接的に関わる存在だったのが面白い。
これぞ「シャドウ」の醍醐味。
コンピューター並みの演算能力と深い洞察力を誇るビーンだが、だからこそエンダーの苦渋を伴う人間としての決断によって光明を得るという辺りが皮肉。
不幸な生い立ちのビーンこそ、戦後は幸せに生きて欲しい。 -
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環境破壊、遺伝子操作による生態系の破壊、石油の枯渇というダークな近未来のバンコク(もちろんクーデター絡み)を舞台にした人造日本人美少女エミコのお話。かなり面白かった。(サッサと読んでおけばよかったよ)
が、最後まで読んで、やっぱりねじまき少女のエミコが主役だったんだなぁと思う程度には登場人物が切り替わる。
あとタイの文化や言葉に馴染みが薄いせいか、翻訳も少し混乱してて、ちょっと読みづらい。結構タイ料理食いに行ってたので、料理とか、黄色の意味とかある程度分かったけど、上巻で出てくるお酒のサトの誤訳には悩んだ
ググりながら読んだ方がいいかもしれないな。電子書籍版が出たからソッチのほうがいいかも -
Posted by ブクログ
90ページほど読んで、1年以上積んであった。
石油が無くなり、常に変異する疫病群で多くの動植物が絶滅している世界で、タイを舞台に、遺伝子改造食料メジャーの西洋人アンダースン、ホロコーストを逃れた老中国人難民ホク・セン、試験管から製造された工業製品である日本の女の子エミコ。
改良された象とゼンマイが動力源の世界で、タイの固有名詞に馴染めなかったのと、悪いやつ二人と奴隷が一人、個別視点で語られて、感情移入できなくて。
で、先週続きを読み始めたら、あっという間に上巻終わり。
あと数ページ先から面白い展開が待ってるとは思わなかったよ。
実はバンコクも水没の危機下にあって、タイ環境省の実力行使チームが出てきて急に面白くなった感じ。(たぶん4人めの主人公)
で下巻を読み始め -
Posted by ブクログ
非常に読み応えがあって面白かった。
最初は「石油枯渇後の近未来でバンコクを舞台に、遺伝子操作された生物が主役となる話」という設定に惹きつけられて手にとったのだが、実際に読み進めてみると、設定と世界が深く作りこまれているだけでなく、人間同士のドラマが複雑に織り成されていて、こちらも見事だった。
うん、バンコクか……。アメリカ人の作者があえてアジアの一国を物語の舞台として選び、欧米人を侵略者として描くやり方が興味深い。もちろんこれは、作者が大学で東アジアについて学び、実際に中国で暮らした経験もあるからこそ可能になったのだろうけど、でも仏教を中心とした文化の理解は相当なものだと思うし、アメリカ的資本主義のあり方を否定してみせねるラストは凄いと思う。 -
Posted by ブクログ
スピード感が出てきたと思ったら、物語が一気に流れて行く下巻。説明不足や伏線の投げっ放しがあるようにも感じますが、それを無視して十分に楽しむことのできる作品でした。決してきれいなストーリーではないですが、混沌とした社会の中で、それぞれの立場で精一杯に生きる人々の物語に圧倒される。
外国バイオ企業の手先であるアンダーソンの行動原理や内面描写はもっと欲しかった。確実にいやなやつなんだけど、彼なりの正義がどこかにあったのかなぁと気になる。広い意味での作品世界の中では中心的勢力に属するはずのアンダーソンなのに、情勢に振り回されて寂しいかぎり。
没落した華僑老人のホク・センはずっと応援してました。ほんと最初から応援してた。目的が一番はっきりしていて主人公らしい。
ねじまき少女エミコ。健気。作中設定的にも、ストーリーの上でも異分子であったはずの彼女が、最後まで読んだら、いつのまにか真の主人公でしたね。
タイの役人たち、重要ではあるんだけど、今回は感情移入できなかった。外側の話な気がしてしまいました。
今回はホクセンとエミコの物語として読んでいました。また読んだら違う視点で読めそうな気がしています。たぶん再読する。