田中一江のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「エンダーのゲーム」は日本語訳刊行当時に大変面白く読んだ記憶があり、このエンダーズ・シャドウは「ゲーム」の映画化をきっかけに読むことになった。
タイトルから想像するようなエンダーの影武者ではなく、遺伝子操作によってこの世に生を受けたビーンこそ、人間の能力の限界を超えた、いわば「ゲーム」の勝敗に直接、間接的に関わる存在だったのが面白い。
これぞ「シャドウ」の醍醐味。
コンピューター並みの演算能力と深い洞察力を誇るビーンだが、だからこそエンダーの苦渋を伴う人間としての決断によって光明を得るという辺りが皮肉。
不幸な生い立ちのビーンこそ、戦後は幸せに生きて欲しい。 -
Posted by ブクログ
環境破壊、遺伝子操作による生態系の破壊、石油の枯渇というダークな近未来のバンコク(もちろんクーデター絡み)を舞台にした人造日本人美少女エミコのお話。かなり面白かった。(サッサと読んでおけばよかったよ)
が、最後まで読んで、やっぱりねじまき少女のエミコが主役だったんだなぁと思う程度には登場人物が切り替わる。
あとタイの文化や言葉に馴染みが薄いせいか、翻訳も少し混乱してて、ちょっと読みづらい。結構タイ料理食いに行ってたので、料理とか、黄色の意味とかある程度分かったけど、上巻で出てくるお酒のサトの誤訳には悩んだ
ググりながら読んだ方がいいかもしれないな。電子書籍版が出たからソッチのほうがいいかも -
Posted by ブクログ
90ページほど読んで、1年以上積んであった。
石油が無くなり、常に変異する疫病群で多くの動植物が絶滅している世界で、タイを舞台に、遺伝子改造食料メジャーの西洋人アンダースン、ホロコーストを逃れた老中国人難民ホク・セン、試験管から製造された工業製品である日本の女の子エミコ。
改良された象とゼンマイが動力源の世界で、タイの固有名詞に馴染めなかったのと、悪いやつ二人と奴隷が一人、個別視点で語られて、感情移入できなくて。
で、先週続きを読み始めたら、あっという間に上巻終わり。
あと数ページ先から面白い展開が待ってるとは思わなかったよ。
実はバンコクも水没の危機下にあって、タイ環境省の実力行使チ -
Posted by ブクログ
非常に読み応えがあって面白かった。
最初は「石油枯渇後の近未来でバンコクを舞台に、遺伝子操作された生物が主役となる話」という設定に惹きつけられて手にとったのだが、実際に読み進めてみると、設定と世界が深く作りこまれているだけでなく、人間同士のドラマが複雑に織り成されていて、こちらも見事だった。
うん、バンコクか……。アメリカ人の作者があえてアジアの一国を物語の舞台として選び、欧米人を侵略者として描くやり方が興味深い。もちろんこれは、作者が大学で東アジアについて学び、実際に中国で暮らした経験もあるからこそ可能になったのだろうけど、でも仏教を中心とした文化の理解は相当なものだと思うし、アメリカ的資 -
Posted by ブクログ
スピード感が出てきたと思ったら、物語が一気に流れて行く下巻。説明不足や伏線の投げっ放しがあるようにも感じますが、それを無視して十分に楽しむことのできる作品でした。決してきれいなストーリーではないですが、混沌とした社会の中で、それぞれの立場で精一杯に生きる人々の物語に圧倒される。
外国バイオ企業の手先であるアンダーソンの行動原理や内面描写はもっと欲しかった。確実にいやなやつなんだけど、彼なりの正義がどこかにあったのかなぁと気になる。広い意味での作品世界の中では中心的勢力に属するはずのアンダーソンなのに、情勢に振り回されて寂しいかぎり。
没落した華僑老人のホク・センはずっと応援してました。ほん