田中一江のレビュー一覧

  • エンダーズ・シャドウ(上)

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    「エンダーのゲーム」は日本語訳刊行当時に大変面白く読んだ記憶があり、このエンダーズ・シャドウは「ゲーム」の映画化をきっかけに読むことになった。

    タイトルから想像するようなエンダーの影武者ではなく、遺伝子操作によってこの世に生を受けたビーンこそ、人間の能力の限界を超えた、いわば「ゲーム」の勝敗に直接、間接的に関わる存在だったのが面白い。

    これぞ「シャドウ」の醍醐味。

    コンピューター並みの演算能力と深い洞察力を誇るビーンだが、だからこそエンダーの苦渋を伴う人間としての決断によって光明を得るという辺りが皮肉。

    不幸な生い立ちのビーンこそ、戦後は幸せに生きて欲しい。

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    2014年01月11日
  • ねじまき少女(下)

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    石油が枯渇し、CO2による温暖化が進んだ世界。遺伝子操作が進化し、変異する病と競争している。
    一つの未来だと感じさせるSF。

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    2013年08月14日
  • ジェイクをさがして

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    SFや幻想小説が詰まった短編集。個人的には少し異端だけど「使い魔」が好き。ただ、出来不出来が激しい気がする。

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    2013年04月03日
  • ヘラクレスの冒険

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    ヘラクレスの10個の難業(実際は12個)に準えた事件をポアロが選んで解いていく短編集。
    短編だがどんでん返し(単に鈍いだけかもしれないけど)があったりして、長編にはない面白さがあったと思う。

    ギリシャ神話を昔少し読んでいたため、クリスティがユーモアを織り混ぜたのでろう部分に、気付けたときちょっと嬉しい(笑)
    ギリシャ神話を調べながら読むと『この難業がクリスティにかかるとどうなるの?』みたいな見方ができて、また面白いかも。

    それにしても、ポアロさんは負けず嫌いなおじ様ですね(笑)まぁ、それも魅力ですが…

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    2013年03月06日
  • ねじまき少女(上)

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    初めは馴染みの無い単語も多く状況を把握する事だけでも大変だったが、いつしかその独特の世界観に没頭してしまっていた。
    登場人物の個性も豊かで、読者を惹きつける要素も満載だ。

    石油に換わるエネルギー源としてのゼンマイ、蔓延する遺伝子操作、人々に暗い影を落とす疫病、発展途上を思わせる混沌とした都市、そしてねじまき少女の存在。

    世間では本作について賛否が分かれているようだが、私的には非常にSFらしくワクワクできる良作だった。

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    2013年02月25日
  • ねじまき少女(下)

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    環境破壊、遺伝子操作による生態系の破壊、石油の枯渇というダークな近未来のバンコク(もちろんクーデター絡み)を舞台にした人造日本人美少女エミコのお話。かなり面白かった。(サッサと読んでおけばよかったよ)

    が、最後まで読んで、やっぱりねじまき少女のエミコが主役だったんだなぁと思う程度には登場人物が切り替わる。

    あとタイの文化や言葉に馴染みが薄いせいか、翻訳も少し混乱してて、ちょっと読みづらい。結構タイ料理食いに行ってたので、料理とか、黄色の意味とかある程度分かったけど、上巻で出てくるお酒のサトの誤訳には悩んだ
    ググりながら読んだ方がいいかもしれないな。電子書籍版が出たからソッチのほうがいいかも

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    2013年01月31日
  • ねじまき少女(上)

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    90ページほど読んで、1年以上積んであった。

    石油が無くなり、常に変異する疫病群で多くの動植物が絶滅している世界で、タイを舞台に、遺伝子改造食料メジャーの西洋人アンダースン、ホロコーストを逃れた老中国人難民ホク・セン、試験管から製造された工業製品である日本の女の子エミコ。

    改良された象とゼンマイが動力源の世界で、タイの固有名詞に馴染めなかったのと、悪いやつ二人と奴隷が一人、個別視点で語られて、感情移入できなくて。

    で、先週続きを読み始めたら、あっという間に上巻終わり。
    あと数ページ先から面白い展開が待ってるとは思わなかったよ。

    実はバンコクも水没の危機下にあって、タイ環境省の実力行使チ

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    2013年01月16日
  • ねじまき少女(下)

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    非常に読み応えがあって面白かった。
    最初は「石油枯渇後の近未来でバンコクを舞台に、遺伝子操作された生物が主役となる話」という設定に惹きつけられて手にとったのだが、実際に読み進めてみると、設定と世界が深く作りこまれているだけでなく、人間同士のドラマが複雑に織り成されていて、こちらも見事だった。

    うん、バンコクか……。アメリカ人の作者があえてアジアの一国を物語の舞台として選び、欧米人を侵略者として描くやり方が興味深い。もちろんこれは、作者が大学で東アジアについて学び、実際に中国で暮らした経験もあるからこそ可能になったのだろうけど、でも仏教を中心とした文化の理解は相当なものだと思うし、アメリカ的資

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    2012年12月29日
  • ねじまき少女(下)

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    スピード感が出てきたと思ったら、物語が一気に流れて行く下巻。説明不足や伏線の投げっ放しがあるようにも感じますが、それを無視して十分に楽しむことのできる作品でした。決してきれいなストーリーではないですが、混沌とした社会の中で、それぞれの立場で精一杯に生きる人々の物語に圧倒される。

    外国バイオ企業の手先であるアンダーソンの行動原理や内面描写はもっと欲しかった。確実にいやなやつなんだけど、彼なりの正義がどこかにあったのかなぁと気になる。広い意味での作品世界の中では中心的勢力に属するはずのアンダーソンなのに、情勢に振り回されて寂しいかぎり。

    没落した華僑老人のホク・センはずっと応援してました。ほん

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    2012年11月26日
  • ねじまき少女(下)

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    上巻で起きた暴動が内乱につながり、政変が起こる。視点が目まぐるしく変わるので誰かに肩入れして読む、というのではなく全体的な雰囲気を味わう物語、という感じ。
    粘っこく、ドロドロした世界の中で精一杯生きる道を探す人を描くのが上手いなぁ、と『シップブレイカー』を読んだ時にも思ったけれど、今回もそう思った。
    エピローグの救いがあるんだか、ディストピア的な世界への足かけなのかわからない終わり方が良い。

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    2012年10月08日
  • ねじまき少女(下)

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    同じ背景で描かれた池上永一『シャングリ・ラ』はどこか遠い未来、遠い世界の話に思えたけれど、本書で描かれる近未来はそうではない。ちょっとした糸の掛け違えで、近い将来こんな未来が待っているのではと思わせるだけの怖さがある。

    正直言うとこの作品、ストーリーなんてあんまり覚えてない。覚えてないというか、もはやどうでもいい(笑)。とにかくこの世界観に圧倒され、打ちのめされ、最後にはもうへへ~っと土下座したわけですよ。それほどまでに本書はすごい。

    80点(100点満点)。

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    2012年09月18日
  • ねじまき少女(上)

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    そこかしこで散見される訳の拙さはさておき、散文的にばらまかれる現在形による描写にまず打ちのめされる。いわゆる普通の文体に慣れた身にはほんと辛かった。

    そんな読み手の困惑を無視してしょっぱなから話はぐいぐい進む。今我々が住む世界とは似ても似つかないとんでもない近未来世界へ何の前知識もなく放り込まれるものだから、もうたまったものではない。帯の惹句につられて軽い気持ちで本書を手に取った読み手の多くは下巻を手に取ることなく書を閉じているに違いない。
    かくいう私もこりゃ無理だわ。

    80点(100点満点)。

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    2012年09月18日
  • ねじまき少女(上)

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    石油の枯渇した近未来のバンコック、外国人の工場では遺伝子操作したゾウを動力として海草タンクを用いて新型エネルギーであるゼンマイを製造している。最初80ページ位はタイトルと小説の世界観が上手くなじまずちょっと読み進むのに抵抗があった。ちなみに昨年このあたりで一回挫折w

    そしてタイトルでもある日本製のアンドロイド、ねじ巻き少女が成人向けの描写とともに登場し、通産省と環境省の争いなどぐいぐい引きつけられ下巻に続きます。

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    2012年08月19日
  • ねじまき少女(上)

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    石油が枯渇し、エネルギー構造が激変した近未来のバンコク。遺伝子組替動物を使役させエネルギーを取り出す工場を経営するアンダースン・レイクは、ある日、市場で奇妙な外見と芳醇な味を持つ果物ンガウを手にする。ンガウの調査を始めたアンダースンは、ある夜、クラブで踊る少女型アンドロイドのエミコに出会う。彼とねじまき少女エミコとの出会いは、世界の運命を大きく変えていった。主要SF賞を総なめにした鮮烈作

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    2012年08月16日
  • ねじまき少女(下)

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    先に『第六ポンプ』を読んだせいか、衝撃度は少なかったけれど(オチとかもう少し大風呂敷かと思っていたので)、どんな世界でも幸せを求める生物…というところで希望が持てそうな終わり方でした。エミコすきすき。

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    2012年07月03日
  • ねじまき少女(上)

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    ネタバレ

    舞台は近未来のタイ、バンコク.石油は枯渇し、ねじまき(ぜんまい)が主な動力源となっている.温暖化のためか海面は上がりバンコクも水没の危機に瀕している.また新たな疫病もはびこっている.カロリー企業や通産省、環境省の役人、軍人はそれぞれの勢力を伸ばそうとして暗躍する.エミコは日本製のねじまき少女だがタイにつれてこられてそのまま不正滞在をし、裏社会のSMショーや売春をして生活していたがカロリー企業の経営者アンダーソンと出会う.

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    2012年06月26日
  • ジェイクをさがして

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    13 の短・中編と、ひとつのコミックからなる作品集。
    真相のわからない物語は、結構つらい。
    手暗がりで不気味な非現実性に浮き足立つ。

    「鏡」
    2003 年 ローカス賞ノヴェラ部門受賞作品。

    「ロンドンにおける“ある出来事”の報告」
    2005 年 ローカス賞ノヴォレット部門受賞作品。

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    2012年02月21日
  • ヘラクレスの冒険

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    大好き連作短編集!

    テーマはギリシャ神話「ヘラクレス12の難業」だよ!

    ポワロが自分をヘラクレスとし
    (エルキュールはヘラクレスって読むらしいよ)
    舞い込む事件を12の難業に例えて解決していくんだよ!

    とはいっても、けっこう強引なこじつけが多い(笑)
    本格的なミステリーっていうよりも、
    ポワロ外伝ってフィーリングで楽しめます。
    あ、ポワロ好きにはね!

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    2011年09月06日
  • ジェイクをさがして

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    異世界の一情景すっぽり切り取ったような作品集。
    だから、オチがないものが多い。
    ドタバタ風の寓話『あの季節がやってきた』が一番読みやすいか。

    ただし、あの異様な世界にはまると、どっぷりとはまり込んで抜けられません。

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    2010年10月09日
  • シャドウ・パペッツ

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    面白かったが『死者の代弁者』を読んだ頃の年齢だとそうでもないかも、と思った。人が共感するポイントも年齢によって変わるんだなぁ。
    続編はSFとしてはどんどん緩くなってます。が、子どもを産み育てる、というテーマはリアルな小説だと食傷気味だけど、舞台がこうなると割と素直に読める。個人的には好きです。自分の心持ちと内容が偶然一致した感じかな〜
    2006.04.13

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    2010年01月30日