田中一江のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
上下巻共に読み終わり。物語の規模がとても壮大で、ラストの締め方も素晴らしい。SFを基盤にスクールカースト的な要素があったり、少年の苦悩と同時に、社会人にも通用しそうなリーダーシップとはどういうものか、なんて側面もあったりで、お話部分はとても面白かった……んだけど、SFってジャンルが自分のど真ん中ストライクじゃないってことを脇に置いといたとしても、最初から最後まで文体との相性が悪くて心の底から楽しむことができなかった。自分の読解力、想像力が乏しいだけと言われたらそれまでなんだけど、情景描写が少ない、というよりは比喩が少なかったのかな。「結局どういう場所でどういうバトルをしてるんだよこれは……」っていう疑問が終始ついて回ったので、映画化された動画を見て補完したりしてました。それが物語の大事な部分を占めている要素でもあったので、味わいきれなかった感が悔しい。
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Posted by ブクログ
SF版ハリーポッターとは言い得て妙な。順番的にはこっちのが大先輩なんだけれども。
SF、というと自分はどうしても「星を継ぐもの」と「ニューロマンサー」の2作が真っ先に出てくるので、なんでもそれが基準になってしまう。それよりはずっと読みやすく、展開も理解しやすい。
ただ最近気付いたんだけど、海外の小説が日本語訳された時の文章表現って……生の全てを感じ取るのは難しいよね。当たり前なんだけど、海外の特産物を日本でも楽しもうとしたら、そのためには冷凍したり輸送したり何なりという工程が挟まってしまうわけで。もし現地の人達が食べてるものと同じものを本気で味わおうとしたら、そりゃもう英語をめっちゃ勉強して原文で読むしかないわけで。そこまでする気力は……起きない。
訳した人のクセとかもあるのかもしれないけど、自分はやっぱり日本語そのままの物語が好きだなあとあらためて思った次第です。下巻いきまーす。 -
Posted by ブクログ
エネルギーが枯渇して社会構造が激変した近未来のバンコクが舞台のSF小説。
遺伝子操作技術と、その根幹になる無傷のオリジナルの遺伝子が物語を回す主軸になっている。
遺伝子操作によって人工的に作られた歪な生物たち。
その技術とオリジナルの遺伝子を巡っての利権抗争と、遺伝子操作された生物を取り締まる人たちの努力がドラスチックに描かれている。
利権抗争も遺伝子組み換えも、すでに存在している技術の延長に過ぎないところが物語にリアリティを与えているようでだ。
遺伝子操作しなくても、交配によって自然に手を加え続けてきた人類に守るべき自然とは何なのか、進化とは何なのかを問いかけてる作品です。 -
Posted by ブクログ
石油が枯渇し、エネルギー構造が激変した近未来のバンコク。
遺伝子組換動物を使役させエネルギーを取り出す工場を経営するアンダースン・レイクは、ある日、市場で奇妙な外見と芳醇な味を持つ果物【ンガウ】を手にする。
ンガウの調査を始めたアンダースンは、ある夜、クラブで踊る少女型アンドロイドのエミコに出会う。
彼とねじまき少女エミコの出会いは、世界の運命を大きく変えて行った。
(あらすじより)
このタイプのSF小説にありがちな事として、物語の前半を使って世界観や独自の文化を説明する手法がある。
最初は物語に入り込めず忍耐が必要だが、ここをしっかり読まないとその後の話にもついていけなくなるので、重要なパートでもある。
上巻はまさにその典型的なパターンだったように感じた。
洪水のような情報量。
イメージの奔流に圧倒される。
世界観、文化、人間関係、政治情勢、登場人物達の思惑が描かれ、上巻の最後のほうでようやく物語が動き出した感じだ。
下巻で一気に爆発するんだろうか。 -
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ネタバレ初長編で大きな賞を獲ったということで「『ニューロマンサー』以来の衝撃」がオビの売り文句になっているが、さらに言うと、雰囲気・手法もギブスンを意識しているみたいだ。
・遺伝子ハックやねじまきといった道具仕立ての細かい中身には立ち入らず、それらがいかにもリアルな世界で使われているという描写で世界観を描き出していく。ねじまきの性格がドMにデザインされているとか、人が錘になって動くエレベーターとか。この辺は読んでいて面白かった。
・タイを舞台にしてエキゾチックな感じをうまく出している。出てくる日本人のおかしさは相変わらず(ある意味正統的なステレオタイプ)。
・章ごとに入れ替わる多視点。語り手のバラエティも亡命中国人の爺さんとかいい感じ。
・翻訳でよく分からんところもあるが、現在形を使うところとか、章や段落の最後を印象的なセリフで区切って見せたりするのも似ているかな。
普通はねじまきの自意識が人間と同じホンモノなのかがテーマになりそうに思うが、そこはねじまき本人が語り手になっていることもあって(保守的タイ人は「カルマがない」なんて言うものの)当然ホンモノですよ、という感じでスルー。遺伝子をいじっているとは言え立派な生物だからかな。作中の世界では可愛そうに社会的にはモノ扱いではあるが、電気羊なんかと比べると、世界観的には人造人間の人権確立が進んでいる気がする。
惜しむらくは、筋の運びがぞんざいでアラッと思うところが多々ある。例えばジェイディーの最期とか、終盤のあたりかな。トントンとテンポがよろしいという評価もあるかもしれないけれど、なんか安易に思えた。バイオをSF的道具仕立てにしているが、そこらへんの描き込みも新しさは感じない。 -
Posted by ブクログ
多分、設定は面白いんだろう。
だがこれは手法の違いかもしれないが、きちんと時代や世界の背景、いろんな設定が明示されない展開にイライラする。
言葉一つにしても、それを普通に知ってるでしょう前提で言われても、もちろん読み進める内に多分と判るのだけど、多分で終わるのが居心地悪い。
別にこの作品だけでなく、そう感じる作品が多いと感じてて、もう、価値観とか世界観とか、少なくともSFがずーっと好きデスみたいな人だけが読んでくれればいいみたいな本が、好きではないのだな。
で、文体は嫌い。
人物はあんまり浮かび上がって来ないな。
ぼくにとっては、そう、いい小説ではなかった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ前巻のラストもキツい展開だったけれど、物語はさらに鬱々してきて最終的にかなり疲労感を覚える読書となった。
ジェイディーと対話するカニヤの姿の痛ましさ。
虐げられ続けてきたエミコの暴発。
大きな不運と少しの幸運に振り回されるホク・セン。
図らずも急転直下の事件の引き金を引いた形になってしまったアンダースンの失敗。
…それぞれの行動が一気に絡み合いながら迎えた大流血の惨事。
決してバッドエンドではないのだろうけど、結局最後の勝者となるのは新人類であることが示唆されていて、何とも言えない気分になる。
この過酷な世界を生きる上では当たり前なのだろうけど、登場人物たちはかなり即物的な生き方を強いられていて、その苦しさを想像してもなお感情移入は難しかった。見るべきは、ジェイディーの勇敢な死や、ホク・センがマイに見せる優しさ、アンダースンが最期にすがったもの、その中にある血の通った心なのかもしれない。けれど、 どうにもそこに気持ちを合わせていくことができなかった。
生存にかけてのエミコの欲求の強さに、心底ビビッてしまったというのも大きいかもしれない。