山口周のレビュー一覧
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私は理系分野、特に応用的な授業を担当している。世の中が変わり、社会や人の意識の変化により、今までの理論や戦略では立ち打ちできなくなってきた。そのような時になぜか引かれる学問領域が歴史学であった。これまでの先人たちが何を失敗し、どのように考えてきたのかと言うことが非常に参考になった。ちょうどその頃、書店にこの本が並べられ目を引いた。私が自分の専門領域だけでは立ち打ちが行かないと感じたことが、この本の中に解として書かれていた。
『はじめに』の中に書かれていた。AI時代になって必要となる知識は、アジェンダの設定と仮説の構築であり、そのためには歴史、哲学、文学がいかに重要であるか、改めて感じることができた。自分の理系分野で、新たなるアジェンダを設定し、仮説を構築するためにも、ぜひとも幅広く人文知に積極的に触れてみたいと思う。 -
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『コンテキスト・リーダーシップ 「最高の上司」と「最悪の上司」は文脈で決まる』(山口周)は、「優れたリーダーには共通する資質がある」という定説を疑い、リーダーの良し悪しは、その人の能力だけでなく“置かれた文脈”によって決まると考える一冊です。
本書の面白いポイントは、「理想のリーダー像」を追い求める発想そのものを問い直している点。強い決断力を持つリーダーが必要な局面もあれば、メンバーに任せて聞き役に徹するリーダーが必要な局面もあります。ある組織では名経営者だった人物が、別の環境では成果を出せないことがあるのも、リーダーシップとコンテキストの相性から考えると理解しやすくなります。
特に興味深いのは、「自分はどんなリーダーになるべきか」より、「今、この組織にはどんなリーダーシップが必要なのか」を考えるという視点です。組織の成長段階、メンバーの成熟度、事業環境などが変われば、求められる振る舞いも変わる。過去に成功したマネジメントを繰り返すことが、逆に組織の成長を止める可能性もあります。
さらにこの考え方は、人材評価にも大きな示唆を与えます。「あの人は優秀」「あの人は使えない」と個人の能力だけで判断するのではなく、その人が力を発揮できる環境や役割は何かを考えることで、組織の見え方が変わってきます。
リーダーシップを「優秀な人になるための技術」ではなく、人と環境の組み合わせを考える技術として捉え直せる一冊。経営者や管理職はもちろん、組織づくりや人材育成に関わる人ほど考えさせられる内容です。 -
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『人文知は武器になる』(山口周・深井龍之介)は、歴史・哲学・文学といった人文学を「教養として知っておくもの」ではなく、現実の仕事や人生で使える“思考の武器”として捉え直す一冊です。
本書の面白いポイントは、「なぜ今、人文知が必要なのか?」を現代社会の変化と結びつけて考えているところ。正解が決まっている問題であれば、データや論理、そしてAIを活用することで効率よく答えを出せます。しかし、「そもそも何を目指すのか」「何を良いとするのか」といった正解のない問いになると、最後は人間自身が価値判断をしなければなりません。そこで重要になるのが、過去の人類が積み重ねてきた人文知です。
特に興味深いのは、歴史を「昔の出来事」ではなく、人間と社会の巨大なケーススタディとして捉える視点。組織がなぜ衰退するのか、権力を持った人間はどう変化するのか、社会の価値観はなぜ転換するのか。歴史や哲学を知ることで、目の前の出来事をより長い時間軸から考えられるようになります。
また、人文知を大量の知識を覚えることとは捉えていない点も印象的です。重要なのは、過去の思想や出来事を材料にして、「今の常識は本当に正しいのか?」と問い直すこと。知識量よりも、物事を見る視点を増やすことに価値が置かれています。
AIによって「答える力」の価値が変化していく時代だからこそ、「何を問うか」「何を選ぶか」が重要になる。人文学とビジネスが意外なほど近いことに気づかせてくれる、知的好奇心を刺激する一冊です。 -
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ネタバレ印象に残った点
・最初の段階で読むべき2割が見えない場合は、そもそもその本には手を出さない。29
★5冊読むより、「1冊を5回」読む。読書家というと数多くの雑多な本を読んでいると思われるが、これは趣味の読書に許されるものの、知的生産に従事する人にはあまり有効でない。理由は単純で、1回読んだだけでは必ず忘れるから。37
★★知的生産性の基礎体力を高める読書は、深みのある本を何度も反芻しながら読むことで初めて可能。一度読んで「ああわかった」といった読書を繰り返している人は気を付けた方がいい。結局は「どこかで聞いたような話」をさもしたり顔で語るだけの薄っぺらい人物になるだけ。40
★エッセンスだけを学んでも意味がない。簡易版の解説書をいくら読んでも経営のリテラシーは高まらない。思考のプロセスを追体験することが大切。56
・新刊のビジネス書に書いてあることのほとんどは、古典的名著と言われるビジネス書に書いてあることを。事例や業界を変えて繰り返し説明しているに過ぎない。59
・名著の弊害:入門書(曼荼羅の中心)から入り、色々な考え方があるとの俯瞰図を持ったうえで、そのごく一部を掘り下げるという意識を持って大家の名著に触れることが重要。72
・外資系コンサルの超速インプット読書術:1日「入門書5冊(午前中斜め読み)+専門書5冊(午後拾い読み)」。ポイントは期限を1日に限定する。パソコンも携帯もオフにして。86
★年齢に応じてビジネス書と教養書の比率は変わってきて当然、むしろ積極的に変えていくべき。91特に活躍している人は、共通してリベラルアーツの本を読んでいる。95
・役に立つかよりも、面白いかどうかの方がずっと大事な評価軸。103
・本との相性チェック法106
★目標に向かって努力するのは「危険」。「いま、ここ」ですぐ役立つとか。あるいは面白いとか刹那的な選考がより重要。「将来きっと役に立つだろう」より。113
・プロデュースとは、掛け算をつくる。117
・戦力の逐次的分散投入は非効率。知の巨人を目指すのは無駄。125
★★抽象化できない人はただの物知り。134、抽象化が癖になるといくつかの副次的な効果。代表的なものは、議論に強くなる。136
・1回目:線を引く、2回目:5つ選ぶ、3回目:転記する150文章の冒頭から末尾までしっかりアンダーラインを入れる。重要なキーワードだけでなく。153、ビジネスや実生活に対する示唆・具体的なアクションの仮説162、過去に引いたアンダーラインを中心にざっと再読する。こういったことを繰り返していると、ふっといいアイデアが浮かんでくる。175
・ビジネス書「以外」のフロアを回る179
★読み終わった本のうち、実際に本棚に入るのは1割程度。転記してデジタル化するのがまた1割程度。残りの8割はそのまま廃棄。207、何年も開いていないような本を本棚に置き続けることは、とりもなおさず知的インプットの量を制限する。209 -
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・アート、クラフト、サイエンス
・アカウンタビリティは、「言語化できる」「再現できる」が重要。
・千利休はチーフ・クリエイティブ・オフィサー。
・デザインも経営も、選択と捨象
・マーケティングとは、パーセプション(認識)が全て。
・実定法主義と自然法主義
・Don'tBeEvil 悪者になるな。
・システムを修正できるのは、システムに適応している人だけ。
・オウムも戦コンも同じ。
・システムの変化にルールが追いつかない世界。
・アナクシマンドロス。水の哲学。
・哲学から学べるもの
1.コンテンツからの学び
2.プロセスからの学び
3.モードからの学び
・真に重要なのは、その哲学者が生きた時代において支配的だった考え方について、その哲学者がどのように疑いの目を差し向け、考えたかというプロセスと態度。
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ラジオ番組は本書の元になったコーナーがメインではありますが音楽のコーナーが大変面白く放送開始から毎週欠かさず2年ほど聴いていました。
山口館長の解説が本の解説ではなくキーワードの解説であることに加えて長濱ねるさんとの対話であったことが、参考図書に興味が無くても読んでいなくても説得力があって興味を惹かれる大変魅力的な番組になった要因だと思っていました。
参考図書の全部が全部読みたいと思ったわけではありませんが気になった本は順次読んでいて大変参考になっています。本書では時系列とは別にテーマを決めてそれに沿った形でまとめていますが、放送時は今週のテーマは何だろう?というのも楽しみの一つではありましたね。
タイムリーなテーマが選ばれることが多かったと思いましたが流行にとらわれない選書だし単なるブックガイドではなく、みること考えることに対する道しるべを示しているような深みが感じられます。
番組は現在も続いているようなので続編の出版も期待したいです。 -
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ネタバレ『武器になる哲学』添付箇所・統合まとめ
哲学は、未来をつくり、欲望を理解し、課題を発見し、過ちを防ぐための実践知である
山口周『武器になる哲学』の今回の添付箇所では、哲学や思想が、単なる知識や教養ではなく、現実の意思決定や行動を変えるための「武器」として整理されています。
取り上げられた内容は、一見すると「未来予測」「報酬」「イノベーション」「歴史的悲劇」という異なるテーマに見えます。しかし、全体を通して共通しているのは、次の問題意識です。
私たちは、自分で考えて行動しているつもりでも、予測、常識、欲望、専門家の意見、社会の仕組みによって、知らないうちに思考や行動を決められている。
哲学を学ぶ意味は、こうした目に見えない前提や構造を言語化し、自分の意思で未来や行動を選び直せるようになることにあります。
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1.未来は「予測するもの」ではなく「発明するもの」
アラン・ケイの言葉として紹介されるのが、次の考え方です。
未来を予測する最善の方法は、それを発明することだ。
アラン・ケイは、1972年に「ダイナブック」という携帯型パーソナルコンピューターの構想を描きました。その絵は、現代のiPadやノート型端末によく似ています。
そのため、アラン・ケイは「40年以上前にタブレット端末の未来を予測した」と評価されることがあります。しかし、本書が強調するのは、彼が未来を的中させたのではないという点です。
アラン・ケイは、
* 未来がどうなるかを予想したのではなく
* 「こういうものがあったらよい」と考え
* その構想を具体的に描き
* 実現するために研究と行動を続けた
のです。
つまり、ダイナブックは未来予測の成果ではなく、望ましい未来を構想し、現実に引き寄せた結果です。
未来は意思決定の集積でできている
私たちは、コンサルタントや専門家に対して、
* 将来の市場はどうなるか
* どの技術が伸びるか
* 社会はどの方向へ進むか
* どの事業に投資すべきか
といった未来予測を求めます。
しかし、未来の社会は自然現象のように自動的に発生するものではありません。企業、行政、研究者、生活者など、多くの人が行う意思決定の積み重ねによって形成されます。
したがって、本来考えるべき問いは、
「未来はどうなるのか」
ではなく、
「私たちは未来をどうしたいのか」
です。
未来予測を外部に委ねるだけでは、自分が未来の当事者であるという責任を手放すことになります。
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2.未来予測には構造的な限界がある
本書では、未来予測が外れやすい例として、人口予測と携帯電話市場予測が紹介されています。
人口予測の失敗
人口動態は、未来予測のなかでは比較的予測しやすい分野と考えられています。それでも、実際には予測が大きく外れてきました。
20世紀初頭のイギリスでは、出生率の低下を背景に、多くの人口予測が将来の人口減少を見込みました。しかし、現実の人口は予測を上回って増加しました。
アメリカでも、1935年に将来の人口減少が予測されましたが、第二次世界大戦後に結婚率と出生率が上昇し、ベビーブームが起きたことで予測は外れました。
人間の結婚、出産、移動、消費といった行動は、社会環境や価値観の変化に強く影響されます。そのため、現在の傾向を延長するだけでは、将来を正確に捉えられません。
AT&Tとマッキンゼーの携帯電話市場予測
1982年、AT&Tはマッキンゼーに対して、2000年時点の携帯電話市場規模を予測するよう依頼しました。
提示された予測は約90万台でしたが、実際には市場規模は1億台を超えました。
AT&Tは悲観的な予測を踏まえて携帯電話事業を売却しましたが、その後、市場は急成長します。最終的には、AT&T自身が、かつて切り離した携帯電話事業につながる企業に買収されるという皮肉な結果を迎えました。
この事例から得られる教訓は、特定のコンサルティング会社の能力を批判することではありません。
優秀な専門家や精緻なモデルであっても、未来を確実に予測することはできない。
という点が本質です。
予測は、意思決定の参考情報にすぎない
未来予測を完全に否定する必要はありません。予測には、現在の前提を整理し、複数の可能性を検討するという意味があります。
ただし、予測を「正解」として扱うと危険です。
予測は、
* 前提が変われば崩れる
* 人間の意思決定によって変化する
* 技術革新や制度変更を織り込み切れない
* 外れた事例が表に出にくい
という性質を持っています。
したがって、未来予測は、未来を受動的に待つためではなく、どの未来を選び、何を実現するかを考えるための材料として使うべきです。
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3.人は「確実な報酬」より「不確実な報酬」にハマる
次に扱われるのが、心理学者バラス・スキナーの強化理論です。
中心となる主張は、次のとおりです。
報酬が必ず与えられる場合よりも、いつ与えられるか分からない場合の方が、人の行動は強く強化される。
毎回同じ報酬が得られる場合、人はやがてその刺激に慣れます。
一方で、
* 次は当たるかもしれない
* 次は面白い情報が出るかもしれない
* 次は誰かから反応があるかもしれない
という不確実性があると、人は行動を繰り返しやすくなります。
ギャンブルとガチャの構造
スロットマシンやパチンコでは、報酬が毎回与えられるわけではありません。いつ当たるか分からず、ときどき大きな報酬が得られます。
この不確実性が、
「次こそ当たるかもしれない」
という期待を生み、行動を反復させます。
ソーシャルゲームのガチャも同様です。欲しいキャラクターやアイテムが確実に手に入らないからこそ、利用者は繰り返し課金や抽選を行います。
人がやめられなくなるのは、報酬が多いからだけではありません。むしろ、報酬が不規則に与えられることが依存的な行動を生み出します。
ソーシャルメディアも報酬装置である
XやFacebook、メール、メッセージアプリにも、同じ構造があります。
画面を開いても、毎回価値のある情報が得られるわけではありません。しかし、ときどき、
* 「いいね」が付いている
* 返信が届いている
* 興味深いニュースがある
* 自分に関係する情報が表示される
* 強く感情を刺激する投稿が現れる
といった報酬が与えられます。
この「次は何かあるかもしれない」という期待が、人を何度も画面に戻らせます。
ソーシャルメディアは、金銭的な報酬を与えなくても、承認、情報、驚き、共感、怒りといった心理的報酬によって行動を強化できます。
ドーパミンは「快楽」より「期待」に関係する
ドーパミンは、単純に快楽を感じさせる物質として理解されることがあります。
しかし本書では、報酬を実際に得た瞬間だけでなく、
何か良いことが起こるかもしれないという期待
が、人を行動させる点に注目しています。
したがって、私たちがスマートフォンを無意識に開くのは、情報が必要だからだけではありません。次に何が出てくるか分からないという不確実性によって、行動が強化されている可能性があります。
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4.自由に行動しているつもりでも、行動は設計されている
報酬の議論から得られる重要な示唆は、人間の意思決定が本人の意志だけで決まっているわけではないということです。
私たちは、
* 自分が見たいからSNSを見ている
* 自分が遊びたいからゲームをしている
* 自分の判断で課金している
* 自分の意思で通知を確認している
と思っています。
しかし実際には、サービス提供者が設計した報酬のタイミングや不確実性によって、行動を誘導されている場合があります。
ここで哲学や心理学が「武器」になるのは、自分を責めるためではありません。
自分の行動を生み出している構造を理解し、環境や仕組みを選び直すため
です。
意志の強さだけで対抗するのではなく、
* 通知を切る
* アプリを開く時間を決める
* 報酬の仕組みを理解する
* 衝動と本来の目的を区別する
といった対応が必要になります。
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5.イノベーションの起点は「アイデア」ではなく「課題」である
「ビジネスパーソンが哲学を学ぶ意味③」では、哲学や教養が、イノベーションの起点となるアジェンダ設定に役立つと説明されています。
ここでいうアジェンダとは、会議の議題ではなく、
社会や組織が解決すべき、本質的な課題
を意味します。
多くの日本企業は、イノベーションを経営課題として掲げています。しかし著者は、その多くで、
「何のためにイノベーションを起こすのか」
が明確にされていないと指摘します。
その状態で、
* アイデアコンテストを行う
* 外部から新規事業案を募集する
* オープンイノベーション制度を導入する
* 創造性研修を実施する
* 新規事業プロセスを整備する
といった施策を行っても、イノベーションは生まれにくいと考えられます。
解決したい課題が存在しなければ、アイデアは目的を持たないからです。
イノベーターは「イノベーションを起こそう」としていない
著者が、社会的にイノベーターと評価される人々にインタビューしたところ、多くの人は、
「イノベーションを起こそう」
とは考えていませんでした。
彼らが考えていたのは、
「解決したい課題がある」
ということでした。
つまり、イノベーションは直接の目的ではありません。重要な課題を解決しようとした結果として、新しい技術、事業、制度、価値が生まれます。
したがって、企業でイノベーションが生まれない最大の原因は、必ずしもアイデア不足や創造性不足ではありません。
そもそも、解くに値する課題が設定されていない。
という可能性があります。
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6.課題を発見するには「常識を相対化する」必要がある
重要な課題は、目の前の現実を眺めているだけでは見つかりません。
なぜなら、私たちは日常的に接している制度、慣習、商品、働き方を「当たり前」として受け入れているからです。
当たり前だと思っているものは、問題として認識できません。
そこで必要になるのが、現在の常識を別の視点から見直すことです。
教養が与える「比較対象」
著者は、課題設定能力を高める鍵として、哲学、歴史、芸術、文学、宗教、文化などの教養を挙げています。
教養は、単なる知識量ではありません。
教養によって、
* 異なる国や文化ではどうなっているか
* 過去の時代ではどう考えられていたか
* 別の思想ではどのような社会を想定しているか
* 現実とは異なる可能性が存在するか
を知ることができます。
その結果、目の前の制度や慣習を、唯一の自然な状態ではなく、数ある選択肢の一つとして捉えられるようになります。
空間軸と時間軸
著者は、常識を相対化するための知識を、大きく二つの軸で整理しています。
空間軸
異なる国、文化、地域、社会との比較です。
ある社会では当然とされることも、別の社会から見れば不合理に見える場合があります。
時間軸
現在を、過去の歴史、思想、制度と比較する視点です。
現在の常識も、特定の時代や条件のなかで成立した一つの仕組みにすぎないと理解できます。
空間軸と時間軸が広がるほど、現在の状況を絶対視せず、比較によって問い直せるようになります。
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7.イノベーションとは「当たり前」を当たり前でなくすること
イノベーションには、これまで当然とされていたものを、当然ではない状態へ変える側面があります。
しかし、そのためには最初に、
「これは本当に当たり前なのか」
と疑う必要があります。
本書では、スティーブ・ジョブズとエルネスト・ゲバラの例が紹介されています。
スティーブ・ジョブズ
ジョブズはカリグラフィーの美しさを知っていました。
そのため、当時のコンピューターの文字表示を見て、
なぜコンピューターのフォントは、これほど美しくないのか
という問いを持つことができました。
美しい文字の可能性を知らなければ、既存の文字表示を当たり前として受け入れていたかもしれません。
エルネスト・ゲバラ
ゲバラは、プラトンが論じた理想国家など、現実とは異なる社会のあり方を知っていました。
そのため、現実の社会を見て、
なぜ世界はこれほど悲惨なのか
という問いを持つことができました。
現実と異なる可能性を知っているからこそ、現実の問題を課題として認識できます。
課題は「現実と可能性の差分」から生まれる
この二つの例が示すのは、課題は現実だけから生まれるのではないということです。
現実と、あり得る別の状態との間にある差分が、課題になる。
したがって、課題設定能力とは、現実の欠点を探す能力だけではありません。
* どのような状態があり得るのか
* どのような状態が望ましいのか
* 現実との間に何が不足しているのか
を考える能力です。
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8.未来を「発明すること」と「課題を設定すること」はつながっている
アラン・ケイの未来論と、アジェンダ設定の議論は、密接につながっています。
未来を発明するためには、まず、
「現在の何を変えたいのか」
「どのような未来を実現したいのか」
を定めなければなりません。
これは、そのまま課題設定です。
一方、課題を発見するためには、現状を相対化し、別の未来の可能性を想像する必要があります。
したがって、
1. 現在の常識を疑う
2. 別の可能性を知る
3. 現実と理想の差分を見つける
4. 解くべき課題として定義する
5. 実現したい未来を構想する
6. 意思決定と行動を積み重ねる
7. 結果としてイノベーションが生まれる
という流れになります。
未来予測とイノベーションは別々の話ではありません。
未来を予測する側にとどまるのか、課題を定めて未来をつくる側に回るのか
という対比として理解できます。
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9.哲学を学ぶ意味は「二度と悲劇を起こさない」ことにもある
最後の添付では、「ビジネスパーソンが哲学を学ぶ意味④」として、
二度と悲劇を起こさないために
というテーマが提示されています。
添付範囲は導入部分ですが、著者は、人類の歴史における悲劇が、特別に邪悪な人物だけによって起こされたわけではないと指摘しています。
むしろ、しばしば、
普通の人々の愚かさ、無批判な服従、集団への同調
によって悲劇が拡大してきました。
哲学者たちは、それぞれの時代に起きた社会的な悲劇を観察し、
* 人間はどのような状況で判断を誤るのか
* なぜ普通の人が残酷な行為に加担するのか
* 権力や集団は人間をどう変えるのか
* どのような思想が悲劇を正当化するのか
を言葉にしてきました。
哲学を学ぶことは、過去の思想を暗記することではありません。
過去に発生した人間と社会の失敗を、再び繰り返さないための警告を受け取ること
でもあります。
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10.四つの論点を貫く共通テーマ
今回の添付内容は、次の四つの論点として整理できます。
論点表面的なテーマ本質的な問い
未来予測将来をどう読むかどのような未来をつくりたいか
報酬人は何にハマるか自分の行動は誰に設計されているか
アジェンダ設定イノベーションをどう起こすか本当に解くべき課題は何か
哲学と悲劇過去の思想をなぜ学ぶか同じ過ちに加担しないために何を知るべきか
これらに共通するのは、無自覚な受動性から抜け出すことです。
* 専門家の未来予測をそのまま信じる
* 不確実な報酬に反応し続ける
* 社会の常識を疑わない
* イノベーションという言葉だけを追う
* 集団の判断に無批判に従う
このような状態では、自分で考えているように見えて、実際には外部から与えられた前提のなかで動いているにすぎません。
哲学は、その前提を見えるようにします。
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11.本書から得られる実践的な思考法
今回の内容から、実務や人生に応用できる思考法を整理すると、次のようになります。
① 予測を求める前に、意思を定める
「将来どうなるか」を調べる前に、
自分はどうしたいのか
を考える。
予測は意思決定を支援する材料であって、意思の代わりにはなりません。
② 自分の行動を生み出す仕組みを観察する
何度も繰り返してしまう行動について、
* 本当に必要だからしているのか
* 不確実な報酬に反応しているのか
* 誰かが意図的に設計した行動なのか
を考える。
③ アイデアを出す前に、課題を定義する
新規事業やイノベーションでは、最初から解決策を考えるのではなく、
誰の、どのような問題を、なぜ解くのか
を明確にする。
④ 常識を、空間軸と時間軸で比較する
現在の制度や慣習について、
* 他国ではどうなっているか
* 過去にはどうだったか
* なぜ現在の形になったか
* その前提は今も有効か
を問い直す。
⑤ 過去の悲劇を「自分とは無関係」と考えない
悲劇は、異常な人物だけによって起こるのではありません。
普通の人が、
* 権威に従う
* 集団に同調する
* 自分で判断することをやめる
* 責任を分散させる
ことで発生します。
哲学は、自分も同じ状況に置かれれば誤る可能性がある、という前提を持つためのものです。
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統合的な結論
今回の添付箇所から読み取れる『武器になる哲学』のメッセージは、次のようにまとめられます。
哲学とは、世界について知識を増やすためだけのものではない。自分が何を当然視し、何に動かされ、どの未来を望み、どの課題を解き、どのような過ちを避けるべきかを考えるための実践的な道具である。
未来予測に依存するのではなく、望む未来を構想する。
不確実な報酬に無自覚に反応するのではなく、自分の行動を生み出す構造を理解する。
アイデアを大量に出すのではなく、解くに値する課題を設定する。
現在の常識を絶対視するのではなく、歴史、文化、思想との比較によって相対化する。
そして、過去の悲劇を他人事として扱うのではなく、自分自身も同じ過ちを犯し得るという認識を持つ。
これらはすべて、
自分の頭で考え、自分の意思で選択し、自分が望む世界の形成に関与する
ための態度につながっています。
一文でまとめると
哲学は、与えられた未来・欲望・常識・課題に従うのではなく、それらを問い直し、自分の意思でよりよい未来をつくるための武器である。 -
Posted by ブクログ
リーダーシップに対する考え方が大きく変わった。
本書では、リーダーシップはリーダー個人の能力や資質ではなく、周囲との関係性の中で生まれる社会現象だと捉えている。また、その意味づけは行為そのものではなく、文脈(コンテキスト)によって大きく左右されることを、さまざまな事例を交えながら考察している。
リーダーシップとは、他者を支配して動かす技術ではなく、他者との関係の中で一緒に物語をつくり上げていく営みなのだという考え方が印象に残った。
また、AIが苦手とするアジェンダ設定や仮説構築についても触れられており、これからの時代のリーダーに求められる役割を考えるきっかけとなった。リーダーシップを新たな視点から学びたい人におすすめしたい。 -
Posted by ブクログ
視座を高めてくれる良書でした。
本書の根幹〜
リーダーシップの発揮は、能力や「何をしたか」ではなく、場のコンテキストやその流れをいかに読むかにかかっている、という事。
前半部分はその論理的説明です。後半は、コンテキストを読んで適切なタイミングで手を打って成功、または逆に読み誤って失敗した企業や国家が例示される、いずれも興味深く読み進めました。
以下、トピック。
リーダーシップは、行為ではなく、前後の状況や背景、上司と部下のこれまでの関係といったコンテキスト、部下による「行為の意味付け」によって現れる。
「任せる」と「丸投げ」の違いは、コンテキストの違いから生じる。
リーダーシップは、能力やスキルといった個人の内側に生まれるものではなく、周囲との関係性のあり方から生まれる現象で、高度に社会的なもの。
小説を読む時、登場人物の行為や言葉の背景にある感情や動機を想像し、無意識に「もし自分ならどう感じるか」「この人物はなぜこのような行動をするのか」と、自分なりに物語を補完する。文学は「他者の物語を借りながら、自分自身の物語を豊かに編み直す」行為。現実世界において人を理解し、関係を築き、状況を動かすための最も重要な力の一つになる。
組織に問題があるときは、必ずリーダーのマネジメントに問題がある。組織はリーダーの写像であり、リーダーの抱える世界観や人格上の問題が、すべて組織の問題として現れる。
マネジメントの本質は、特定の行動ではなく、「コミュニケーション」にある。リーダーは自分の言葉で語る事で、部下の持つ現状認識に影響を与えることが求められる。言葉のセンスが必要。
ある研究によると、人が他者に影響を与える要素は、言葉7%、声の調子38%、表情や仕草55%。言葉と非言語的表現を一致させる必要がある。
リモートワークが多くなると、コンテキストの共有が難しくなる。リーダーは、直接会える時間をコンテキスト共有のための貴重な時間資本と考える事が大切。時間を自分の経営資源と捉える。
キャリアというものは、個別の専門性を高めていく(スペシャル)前半期と、全般的な領域に通じるマネジメント(ジェネラル)を身につけていく後半期とで、全く異なる種目をするゲームといえる。
なぜ組織にビジョンが必要か?それはリーダーの時間資源は限られているから。リーダーは全ての現場を回って逐一指示命令はできない。組織構成員に権限委譲しながら組織が一つの方向に向かって動くためにビジョンが必要。
人は「信頼してない人」のビジョンには動かされない。リーダーシップの発揮において最も重要な要件は、土台となる「人間としての信頼」。
社会心理学社のエドウィン・P・ホランダーは、リーダーシップを、集団の中で「信用=Credit」が徐々に蓄積されることで結晶のように現出する動的プロセスと考えた。
1. 新しく組織に加わったメンバーは、当初は既存のルールに従い、協力的に行動し、有能さを示す必要がある。
2. 一定期間それらを示すことで、主要の貯金が蓄積されていく。
3. 信用の額が一定量に達すると、新規の提案をしたり、規範を一時的に破ったりすることが、むしろ期待されるようになる。
・クロノス=スケジュール的な時。
・カイロス=好機、時宜。
組織の文脈を読み、「今こそ」(カイロス)という瞬間を見抜き、決断と行動を起こせるかどうかが、リーダーに求められる最も重要な資質。
じっと待つ=カイロスを捉える
イノベーションは、ある課題のボトルネックを解消する事で、他の課題へとボトルネックのシフトを促してきた。AIは情報の収集、分析、出力のボトルネックを解消すると考えられる。そうすると次のボトルネックは、
・有意義なアジェンダを設定する事
・多くの人を束ねるリーダー
に移ると想定できる。人はここに注力すべき。