原卓也のレビュー一覧
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生命とはなんだと思いますか?
そんな漠然と生命とはなんだと言っても、答える事は困難ですよね。
人それぞれ考え方が違うので、正しい答えをだすことは不可能に近いでしょう。
トルストイによる「人生論」
生命論とも言える書籍を紹介し、皆さんのなかにある生命とは何なのか?の一つの考え方として、捉えてみてはいかがだろうか。
本書は全部で35章の構成になっていて、全部を紹介すると何ページにもなってしまうので、重要な箇所と何がこの本の言いたいことなのか、を引用しつつも私の解説と共に紹介していく形で始めたいと思う。
では始めよう。
まずこの文を引用する。
「水車が唯一の生活手段であるような人間を想像して -
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極端な物語だ。
登場人物みんなが、切羽詰まっている。こういうギリギリの状況こそ、文学が人間を描くのには最適な舞台なのだろう。そう考えてみると、賭博場というのは、作家にとって理想的な環境が揃った空間であるのかもしれない。
この小説には、二人の強烈な賭博者が登場する。
一人は「わたし」という一人称で語られる主人公、もう一人は、高額な遺産を遺すであろうと親戚から期待されている老婆。いずれも常軌を逸したギャンブルの仕方をして、その行為で、自分の人生そのものを博打のタネにしようとする。
そして、もう一人、自らはギャンブルには関わらず、大儲けした男の金を使って堅実に地場を固める、峰不二子っぽいマドモア -
Posted by ブクログ
どこを読んでも瑞々しい輝きに満ちた中編。
たくさんの愛すべき登場人物に囲まれてのびのびと暮らし、母から注がれる最上の愛と、それを渇望する少年の人生に於いてもっとも幸せな時代。
日常の小さな幸せのひとつひとつにこそ胸を締め付けられる想いがしたし、もうとっくに思い出す事もなくなっていた甘美な思い出も思い出させてくれた。
あの頃のような瑞々しい心や感動はどこへいったのか?
トルストイの言葉をそのまま自分に問いかけてみる。
「あの涙や歓喜が永久にわたしから離れ去ってしまうほど、
重い足跡を、はたして人生がわたしの心に残しただろうか?」
そんなはずはないと、思ってはいるけれど。 -
Posted by ブクログ
古い悲しみは人の世の偉大な神秘によって、しだいに静かな感動の喜びに変わってゆく。沸きたつ若い血潮に代わって、柔和な澄みきった老年が訪れる。わたしは今も毎日の日の出を祝福しているし、わたしの心は前と同じように朝日に歌いかけてはいるが、それでも今ではもう、むしろ夕日を、夕日の長い斜光を愛し、その斜光とともに、長い祝福された人生の中の、静かな和やかな感動的な思い出を、なつかしい人々の面影を愛している。わたしの人生は終わりかけている。そのことは自分でも知っているし、その気配もきこえているのだが、残された一日ごとに、地上の自分の生活がもはや新しい、限りない、未知の、だが間近に迫った生活と触れ合おうとして