清水義範のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
歴史上の人物の、今に残る言葉を「暴言」というキーワードで読み解いていくという趣向の本。
聖徳太子の「日出づるところの御子、・・・」とか、明智光秀の「敵は本能寺にあり」、神尾春央の「胡麻の油と百姓は搾れば搾るほど出るものなり」、東条英機「生きて虜囚の辱めを受けず」などが扱われている。
有名な言葉をまずは、「暴言」と括り出して、その後、その文脈を確認して、真意はこうだったんじゃないか、と推定するのが本書のスタイル。
おもしろいといえば面白いのだが、何となく「暴言」のパワーを常識の枠組みに回収していくようにも思われなくもない。
特に、よく知られているエピソードが多い古代から江戸までは、正直、あまり面白くない、と感じてしまった。
けれども、近現代に入ってくると、俄然面白くなった。
(それは単に私の知識がなく、新鮮に思えるからだったのかもしれない)
丁寧に文脈を確認していく作業がなされていて、好感が持てた。 -
Posted by ブクログ
ネタバレちょっと軽めのミステリーが読みたい、ということで、書店の文庫コーナーで見つけた本。
帯の煽り、「こんなとてつもない1冊が埋もれていた!」に惹かれて購入。
記憶喪失の男が、治療と称して読まされる、猟奇殺人に関する文献。
この各種文献(供述調書・週刊誌の記事・他)を中心に流れていく物語。
各章での文章の書き分けが実に見事で、読んでいて飽きないタイプ。
とにかくリアルで緻密な描写で、読んでいるこちらはグングン引き込まれたのだけど、
残念なことにラストがあまりに食い足りない(^^;)。ここに予想外のオチが付いてれば、
かなり印象は変わったと思うんだけど・・・。
最近読んだ完全なる首長竜の日に近い印象。
ただ、こちらの作品の方がぐにゃり感が無く、サラッと読める事は間違い無い。
しかし、どちらが印象に残るかと言うと・・・。
・・・返す返すもラストが惜しい。ちょっと残念かな? -
Posted by ブクログ
今までに作家の数々の「文章読本」というものが出されていますが、読み物としてそれらの作品を鑑賞できますが、実用として参考にするにはなんだか違和感がありますね。谷崎潤一郎の『文章読本』は除いて。『大人のための文章教室』は、著者がこだわっていますがあくまでも「教室」というこで実用に役立つことが数多く書かれています。
出色なのは、「文体」についての言及ですね。この明確に定義されにくいものを「文章の特徴」として文章にはリズムがあるということです。改行のリズム、地の文と会話とのつなぎのリズム、「、」や「。」の使いかたリズムに作家の個性が表れるとの指摘にモヤモヤしていた部分がすっきりしました。作家の独特の比喩をさがすとの指摘は流石ですね。「接続詞は文章の論理構造を決定している」の項は、文法で説明するのでなく具体例をあげながらの解説はよいですね。
文章をより素敵なものにするために、色々な作品を真似ることの重要性は理解できます。ふと、ある素朴な疑問が浮かんでしまいす。音楽でいえばモーツァルトと文学でいえば清少納言はどのような研鑚を励んだのだろうかと。 -
Posted by ブクログ
ネタバレごく普通のOL藤内真奈美は、合コンで知り合った大学生の井口克己に付きまとわれた末殺され、身体の一部分を切り取られる。井口はそれをアイスクリームの中に埋め込み保管していた。作家の中澤は、世間で『アイスクリーム殺人事件』と呼ばれたこの猟奇殺人を題材に小説を書くべく、井口や真奈美の周辺を取材する。その取材メモや週刊誌などの記事を、『記憶喪失にかかっている男』が治療の為に読んでいく、という筋立て。こうして書くとややこしい。
語り手が記憶を失っている為、霧の中を手探りで進んでいるような心許ない状況ではあるが、徐々に真相に近づいて行く過程は読ませる。井口の異常性や真奈美の他の一面も、いきなり前面に押し出すのではなく、読むうちに分かってくるのも良かった。ただ、大方そんなところだろうなと予想通りになってしまってはいるが。近年ストーカー事件が起こりすぎているので、こんなことくらい珍しくないという気になってしまっているのだ。勿論そう思うことに実はなくむしろ危険だ。
明言はされないが、語り手が井口、治療師が中澤という関係で進んでいるように見える。だが、本当は二人は同一人物で、殺人以後の全ては井口もしくは中澤の妄想であるようにも思える。ラストが分かり辛いというかスッキリしないが、分かったような気でいればいいのだろうか。だって脳髄は人間の中の迷宮だから。