さだまさしのレビュー一覧
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ネタバレ標題作は読み進めるのがつらい。
『秋桜』(あきざくら)は、感動のツボを心得た中編。
『水底の村』は少し冗長な気がしないでもないがホッとできる温かさ。
『サクラサク』は、家族、会社、認知症、思慕、いろいろな思いを交錯させながら余韻を残す読後感。
4作に共通しているのは、良い出来事であれ、悪い出来事であれ、人生の分岐点、臨界点を迎えたときの登場人物たちの心の動き。
そして、重松清さんもさだまさし好きなんだろうな。
愛溢れる解説が花を添える。
僕は小学校から高校にかけて、「歌手・さだまさし」の大ファンで、今でも時々、
『長崎小夜曲』、『驛舎』、『夕凪』、『加速度』、『療養所』、『つゆの -
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心の病で高校を中退するが、現在は遺品整理の会社で働き始めた杏平。人間の悪の面や、残酷な死に直面する現場は、彼の精神にはには過酷な体験のはずだが…自分たちの仕事の在り方を背中で教えてくれる会社の先輩によって、杏平の中にも誇らしさが芽生える所が良かった。杏平を信じて暖かく見守り寄り添った父、そして何より杏平の心の清らかさ。高校時代に二度、行動を起こそうとした杏平を止めたのは、山木ではなく杏平自身の声なんじゃないかとも思う。子供がしてはいけない経験をしてしまったが、そんな大人たちやユキちゃんとの出会いに救われて本当に良かった。
…と、本来はここで感想を終えなければならないのは分かってるけど、どうして -
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マジで泣いた…。
さだまさしさんは有名だし、多才である事は知っている。
確か弟さんが事務所の社長をやられているみたいだけど、インタビュー記事に『兄は破天荒だからその後始末が大変だ』みたいな事が書いてあり意外に思った。
でも何処かで兄を尊敬してるような響き(文章だけど)もあって何か魅力のある人なのかも知れないなーと思った覚えがある。
さださんが長崎出身である事は知ってる。『がんばらんば』という曲を出してらっしゃるけど、それが教育テレビで流れていた(中学生くらいの時かな?)結構耳に残るし、九州弁はどこか安心感がある。
この小説も所々に長崎弁が使ってあり、私は九州出身なので普通にスラスラ読めるが -
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さだまさしさん、やっぱり裏切らない面白さでした。
タイトルがちょっと冗談みたいな感じで、軽い話だと思ったら、大間違いでした。
過去にある出来事から2度同級生を殺しかけた杏平が、遺品整理という仕事を通して、遺族や故人を偲び、人の命の重さについて考えるようになります。
簡単に人の命を奪ってはいけない。どの命も重く尊いのは同じである、ということ。
行きつけの居酒屋で働くゆきちゃんに出会って、彼女の過去も知ったことで、さらに命の重さについて感じ取る杏平。
死から生を学び取って、前を向いて歩けるようになった杏平に、ホッとしつつ、ちょっと涙ぐんでしまいました。
私も杏平と同じく、仕事を通して故人と -
Posted by ブクログ
ネタバレとても好きな本。徐々に視力を侵されいずれは失明する病を患いながら、残された時間を仏教の「行」に例え、故郷の景色を己の中に刻もうとする表題作は、視力を完全に失うラストシーンを決して饒舌な文章ではないのにあれほど美しく書き切ったのは見事の一言。また解説で重松清氏も引用した「大好きだった祖母は死んだ後この樹のどこかに住まわせてもらっていることにしよう、と思ったとたん隆之は自分が救われたような気がしたのだった。」をはじめ、所々見えるさだまさし氏の生死感や人への暖かな眼差しが心地良いです。全4編の短編集ですが、どの話も珠玉の出来栄えなのでぜひ読んでほしい。