村上靖彦のレビュー一覧
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村上靖彦先生のようか、臨床哲学の実践家は、「客観性」をいかに見、いかに語るのか、を知りたいと思い本書を購入。
もちろん本書の重みは、後半の臨床哲学的な分析の部分、制度の「間」に落ちてしまった人たちやその支援者の語り(ナラティブ)の分析になるのだろう。が、わたしとしては、村上先生が自身の違和感を言語化するためにおこなった数々の努力が伝わってくる前半の議論の方に、心が惹かれた。
「客観性」重視の論調への違和感を表面するのは簡単だが、それが、わたしたち人間にとってなぜ負の側面をもたらすのか、それがなぜ「悪」だといえるのか、それを、一つひとつ、「客観性」の世界にいきる私たちの耳に届けていくことは、 -
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自分が何も知らなかったことを思い知った。
遺骨の盗掘や研究者たちの謝罪について、ぼんやりと聞いたことがあること、大学生の時に、親が北海道旅行で撮ってきた踊るアイヌの写真を無邪気に見せる様子に感じた、苛立ちと悲しい気持ちが、ずっと引っかかっていて、もっと知らなければ思っていたけれど、この本に出会えて本当に良かった。
私にはマイノリティの属性もあるけど、アイヌの人達が経験してきた歴史や苦しみを全くといっていいほど知らなかったし、思いを馳せることもなかった。
日本の教育を受け、日本の主流の文化的コンテンツを消費してきた私は、マイノリティ要素の有無をとわず、著者がいう白人性を持つ日本人だ。特権性に無自 -
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【目次】
第1章 ヤングケアラーってどんな存在?
ヤングケアラーの発覚
子どもが誰でももつ権利
第2章 家事や介護だけがケアなのだろうか?
親が精神疾患の子どもたち
社会から排除される家族
定義の試み①「家族への心配から逃げることができない子ども」
定義の試み② 災害のなかの家族、災害としての家族
第3章 愛憎相半ばする……
相反する感情のゆらぎ
家族が心配であり、家族と一緒に過ごしたいし、家族のために役に立ちたい
家族にしばられて苦しい
「私」がなくなる
孤立
第4章 ヤングケアラーという言葉をどう受け止める?
マイナス面だけでないとらえ方
ヤングケアラーという言葉をどう受け -
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「ケアの倫理」「オープンダイアローグ」「当事者研究」
最近のわたしのキーワードが満載された本ですごく面白かったけれども、自分のなかではまだ体系化できてないなと思ったら「体系を構築すると権力志向が生まれてくる」という中井久夫の思想が紹介されていて(p.125)、じゃあもうしばらくこのままあれこれ読んでいくか……となった。
興味を広げてくれるハブのような本で、これのおかげで2年前に録画したままになっていた「100分de名著」の中井久夫特集を一気見したし(「S親和者」がわからなかったので見たけど、中井自身のものと思われるエピソードがめちゃくちゃおもしろかった。本の背表紙を見ていると読んだ内容がすべ -
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825
192P
これ分かる。あまりに当たり前になってるけど、大学を学部で選ぶんじゃなくて、偏差値で学部とか関係なく受けたりするの馬鹿みたいだなと思う。そんなんしか大学に行かないなんて、大学側としても国としても害悪な気がするんだけど。
村上靖彦(むらかみ・やすひこ)
1970年、東京都生まれ。日本の精神分析学・現象学者、大阪大学教授。1992年東京大学教養学部卒、基礎精神病理学・精神分析学博士(パリ第七大学)。現在、大阪大学大学院人間科学研究科教授・感染症総合教育研究拠点CiDER兼任教員。専門は現象学的な質的研究。著書に『ケアとは何か』(中公新書)、『子どもたちのつくる町』(世界思想社 -
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【痛みの声があぶり出す欺瞞】
なんて孤独なんだろう。生活と歴史がいやが応でも切り結ばれてしまう人びとの、救いのない、絶望的な孤独の片鱗をイメージしただけで胸がいっぱいになった。
本書はアイヌに出自を持つ文化人類学者の石原真衣氏と哲学者の村上彰彦氏による共著で、5人の当事者へのインタビューと論考により構成されている。
登場するインタビュー対象者たちの孤独に和人はいかに関わってきたのか。特に知識人である研究者たちは、「知的好奇心」で彼彼女らを消費し、自らの業績とし、時にはアイヌを批判し上から目線でアドバイスをして、自分たちがイメージするマイノリティ像に近づくようけしかける。そしてそれ以外の生き方や -
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仕事柄、病や逆境と向き合う患者さんと多く接してきた。その接し方で見えてきたことの答え合わせをしたくて手にした本。
患者さんの中には、悲嘆から抜け出せないでいたり、希望を持てないでいる方も多く、声掛けにも応じず、否定が重なる。まさに人生の歯車が止まっている状態だ。ここに関わる者は、ケアラーとして役に立てず自分が不甲斐なく感じることはないだろうか。
確かに病や死は避けたくても避けられない。受け入れるしかないものである。しかし、これらの逆境は人との関わりが断たれるだけでなく、その孤独を表明することすらできなくなる辛さを伴う。
ケアラーとして、良いケアを考える時にヒントとなるのは、逆境の -
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ケアといってもいろんなケアの場があり、この本でも医療者による患者への、介護職による利用者へのとか、子どものケアをしている人とか著者の長年の研究をもとにしたケアの場面から見えてくるものが紹介され、ケアに含まれるさまざまな要素が示唆される。
ケアとは何かと説く本をこれまでにも何冊か読んできて、そのたびに感じこの本を読んでも感じたことなんだけど、かなり意気込んで読み始めるんだけど途中でわからなくなっちゃうんだよね。興味ありながらもケアの場にどっぷり身をおいていないので実感が伴わないのか、哲学的な話になっていくと理解できなくなってしまうのか……とにかく残念なことよ。
とはいえ、この本を読みながら思った -
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ヤングケアラー当事者の声を丁寧に掘り下げた一冊。
読むのが苦しくて、何度も挫折して、ようやく読み終えました。
ヤングケアラーと呼ばれるご本人に世界はどのように見えていたのか、ご本人の言葉からだからこそ湧き上がる感覚、浮かび上がってくる情景があり、読むことができて本当によかったです。
記号としてのヤングケアラー。
ヤングケアラーとネグレクト、どちらの視点から見るか。
社会の中で起きていることとしてみていくことなど、わかりやすくまとめられていて、ヤングケアラーの理解と整理の助けになりました。
ヤングケアラーの統計やデータを見るというマクロな視点と、個別に詳しく見ていくミクロな視点と。
両方の -
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ここ数年来に知られるようになった「ヤングケアラー」。何冊か類書を読んでいるが、本書はその中でも異色というか、深く問題を掘り下げ、またヤングケアラーだった人、サバイバーと言ったらよいのか、その人たちからの聞き取りをまとめたものなので、実情がより具体的であり、またその支援も具体的である。事例の方々は、よくこんな過酷な状況を生き抜いてきたなという人たちばかりである、本書に登場する人達は、西成にある「こどもの里」に関わっている人たちであり、こどもの立場に立って、包摂する場があったからこそ今があると言って良いと思う。全国津々浦々なかなかこのような場はないと思うが、参考にはなる。また子供への支援ではあるが