村上靖彦のレビュー一覧

  • 客観性の落とし穴

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    村上靖彦先生のようか、臨床哲学の実践家は、「客観性」をいかに見、いかに語るのか、を知りたいと思い本書を購入。

    もちろん本書の重みは、後半の臨床哲学的な分析の部分、制度の「間」に落ちてしまった人たちやその支援者の語り(ナラティブ)の分析になるのだろう。が、わたしとしては、村上先生が自身の違和感を言語化するためにおこなった数々の努力が伝わってくる前半の議論の方に、心が惹かれた。

    「客観性」重視の論調への違和感を表面するのは簡単だが、それが、わたしたち人間にとってなぜ負の側面をもたらすのか、それがなぜ「悪」だといえるのか、それを、一つひとつ、「客観性」の世界にいきる私たちの耳に届けていくことは、

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    2025年12月11日
  • 鍵をあけはなつ ー介護・福祉における自由の実験

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    どうしても日常の現場活動にいると、ケアの本質を見失うことがある。そういう時に本質に戻させてくれる書が必要である。本書は認知症グループホーム、障害者グループホーム、高齢者施設、若者支援、発達保育、高齢者デイサービスなど、多様な人たちを支える人たちの語り集である。語りの中に真実は宿る。「リスク管理に抗するマネジメント」をどの人たちも苦労しながら行っており、それが失われた、いや新しケア像を作り出すことにつながると感じた。

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    2025年08月09日
  • 傷つきやすさと傷つけやすさ ケアと生きるスペースをめぐってある男性研究者が考えたこと

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    著者は「ケアとは何か」で声を出せない当事者の姿を見つけ、声を出せる援助の方策など、実際のケアの現場に沿ったケア論を展開していたが、本書はそれがヴァージョンアップされ、ケアの背景にある社会やその構造に目が開かれた、そして私たちはあらためて氏の主張にあらためて出会った。そして「ケアの倫理」になった。

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    2025年06月07日
  • アイヌがまなざす 痛みの声を聴くとき

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    自分が何も知らなかったことを思い知った。
    遺骨の盗掘や研究者たちの謝罪について、ぼんやりと聞いたことがあること、大学生の時に、親が北海道旅行で撮ってきた踊るアイヌの写真を無邪気に見せる様子に感じた、苛立ちと悲しい気持ちが、ずっと引っかかっていて、もっと知らなければ思っていたけれど、この本に出会えて本当に良かった。
    私にはマイノリティの属性もあるけど、アイヌの人達が経験してきた歴史や苦しみを全くといっていいほど知らなかったし、思いを馳せることもなかった。
    日本の教育を受け、日本の主流の文化的コンテンツを消費してきた私は、マイノリティ要素の有無をとわず、著者がいう白人性を持つ日本人だ。特権性に無自

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    2025年05月12日
  • 客観性の落とし穴

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    前半1-4章は客観性の呪縛に囚われているわれらの罪深さを抉り取られ、いたたまれない気持ちに。 
    後半5-8章が著者の主張。個々人の経験の偶然性やリズムを、無編集の語りから掬い上げようという。さらにはケアの文脈から、マジョリティで覆い隠されている弱者への救済。

    ちくまプリマーから刊行しているには、内容が重い。それだからこそ、10代のような若者にこそ、客観性の神話から解き放たれてほしいという著者の切実な祈りを感じる。客観性が「一般」ではなく「普遍」と解釈されがちな社会、その思想に浸かっている自分の目を覚させてくれる。

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    2025年04月12日
  • となりのヤングケアラー ――SOSをキャッチするには?

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    【目次】

    第1章 ヤングケアラーってどんな存在?

    ヤングケアラーの発覚
    子どもが誰でももつ権利

    第2章 家事や介護だけがケアなのだろうか?

    親が精神疾患の子どもたち
    社会から排除される家族
    定義の試み①「家族への心配から逃げることができない子ども」
    定義の試み② 災害のなかの家族、災害としての家族

    第3章 愛憎相半ばする……

    相反する感情のゆらぎ
    家族が心配であり、家族と一緒に過ごしたいし、家族のために役に立ちたい
    家族にしばられて苦しい
    「私」がなくなる
    孤立

    第4章 ヤングケアラーという言葉をどう受け止める?

    マイナス面だけでないとらえ方
    ヤングケアラーという言葉をどう受け

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    2025年02月22日
  • ケアとは何か 看護・福祉で大事なこと

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    看護をするなかで初心に戻れる本だと思う。
    そもそものケアとは何かを問うことが看護職として、看護職である前の人間として必要だと思う。
    このまま看護師への道に進んでも良いか迷ったときに、もう一度読みたい。

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    2025年01月13日
  • アイヌがまなざす 痛みの声を聴くとき

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    現代を生きる生身のアイヌの人たちの声を知ることができる。
    いまだに結婚差別があるなんて、どうすれば差別解消できるのか、考えさせられる。

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    2024年11月10日
  • ケアする対話 この世界を自由にするポリフォニック・ダイアローグ

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    「ケアの倫理」「オープンダイアローグ」「当事者研究」
    最近のわたしのキーワードが満載された本ですごく面白かったけれども、自分のなかではまだ体系化できてないなと思ったら「体系を構築すると権力志向が生まれてくる」という中井久夫の思想が紹介されていて(p.125)、じゃあもうしばらくこのままあれこれ読んでいくか……となった。

    興味を広げてくれるハブのような本で、これのおかげで2年前に録画したままになっていた「100分de名著」の中井久夫特集を一気見したし(「S親和者」がわからなかったので見たけど、中井自身のものと思われるエピソードがめちゃくちゃおもしろかった。本の背表紙を見ていると読んだ内容がすべ

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    2024年09月28日
  • ケアとは何か 看護・福祉で大事なこと

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    ケアラーだけでなく、全ての人に読んで欲しい本。
    この本は医療福祉従事者のための専門書ではなく、人と人が共に生きていくために大切なことを考える哲学書だと思う。

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    2024年09月15日
  • 客観性の落とし穴

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    これ分かる。あまりに当たり前になってるけど、大学を学部で選ぶんじゃなくて、偏差値で学部とか関係なく受けたりするの馬鹿みたいだなと思う。そんなんしか大学に行かないなんて、大学側としても国としても害悪な気がするんだけど。

    村上靖彦(むらかみ・やすひこ)
    1970年、東京都生まれ。日本の精神分析学・現象学者、大阪大学教授。1992年東京大学教養学部卒、基礎精神病理学・精神分析学博士(パリ第七大学)。現在、大阪大学大学院人間科学研究科教授・感染症総合教育研究拠点CiDER兼任教員。専門は現象学的な質的研究。著書に『ケアとは何か』(中公新書)、『子どもたちのつくる町』(世界思想社

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    2024年09月04日
  • アイヌがまなざす 痛みの声を聴くとき

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    【痛みの声があぶり出す欺瞞】
    なんて孤独なんだろう。生活と歴史がいやが応でも切り結ばれてしまう人びとの、救いのない、絶望的な孤独の片鱗をイメージしただけで胸がいっぱいになった。
    本書はアイヌに出自を持つ文化人類学者の石原真衣氏と哲学者の村上彰彦氏による共著で、5人の当事者へのインタビューと論考により構成されている。
    登場するインタビュー対象者たちの孤独に和人はいかに関わってきたのか。特に知識人である研究者たちは、「知的好奇心」で彼彼女らを消費し、自らの業績とし、時にはアイヌを批判し上から目線でアドバイスをして、自分たちがイメージするマイノリティ像に近づくようけしかける。そしてそれ以外の生き方や

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    2024年08月10日
  • ケアする対話 この世界を自由にするポリフォニック・ダイアローグ

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    横道氏の書をはさみ、斎藤環氏とケア倫理を絡めた小川公代氏の対談を中心に当事者研究とオープンダイアログ、そしてケア倫理の関係を対談なので、わかりやすく、縦横無尽に語り尽くす。最後に頭木弘樹氏、村上靖彦氏の対談でしめるなんとも贅沢な対話集であった。印象に残った言葉を二、三。倫理的であることが治療的である。人間の尊厳、自由や権利を尊重していくことで結果的に回復が起こる。知は権力で、権力が生まれると上下関係が生まれる。ケアラーが弱さを共有していないとケアはせいりあしない。中井久夫氏とケアの倫理の親和性についての論考も面白かった。

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    2024年03月17日
  • ケアとは何か 看護・福祉で大事なこと

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    非常に面白く読めた。史実的な行為がクローズアップされるが、それに至るまでのコミニュケーションが大事。意思疎通を図ろうとする努力そのものがケアである。
    人が人を相手にする仕事だからこそ様々な形でのコミニュケーションがある。

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    2024年02月14日
  • ケアとは何か 看護・福祉で大事なこと

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     仕事柄、病や逆境と向き合う患者さんと多く接してきた。その接し方で見えてきたことの答え合わせをしたくて手にした本。

     患者さんの中には、悲嘆から抜け出せないでいたり、希望を持てないでいる方も多く、声掛けにも応じず、否定が重なる。まさに人生の歯車が止まっている状態だ。ここに関わる者は、ケアラーとして役に立てず自分が不甲斐なく感じることはないだろうか。

     確かに病や死は避けたくても避けられない。受け入れるしかないものである。しかし、これらの逆境は人との関わりが断たれるだけでなく、その孤独を表明することすらできなくなる辛さを伴う。

     ケアラーとして、良いケアを考える時にヒントとなるのは、逆境の

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    2023年12月03日
  • ケアとは何か 看護・福祉で大事なこと

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    ケアといってもいろんなケアの場があり、この本でも医療者による患者への、介護職による利用者へのとか、子どものケアをしている人とか著者の長年の研究をもとにしたケアの場面から見えてくるものが紹介され、ケアに含まれるさまざまな要素が示唆される。
    ケアとは何かと説く本をこれまでにも何冊か読んできて、そのたびに感じこの本を読んでも感じたことなんだけど、かなり意気込んで読み始めるんだけど途中でわからなくなっちゃうんだよね。興味ありながらもケアの場にどっぷり身をおいていないので実感が伴わないのか、哲学的な話になっていくと理解できなくなってしまうのか……とにかく残念なことよ。
    とはいえ、この本を読みながら思った

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    2023年02月03日
  • 「ヤングケアラー」とは誰か 家族を“気づかう”子どもたちの孤立

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    ヤングケアラー当事者の声を丁寧に掘り下げた一冊。

    読むのが苦しくて、何度も挫折して、ようやく読み終えました。
    ヤングケアラーと呼ばれるご本人に世界はどのように見えていたのか、ご本人の言葉からだからこそ湧き上がる感覚、浮かび上がってくる情景があり、読むことができて本当によかったです。

    記号としてのヤングケアラー。
    ヤングケアラーとネグレクト、どちらの視点から見るか。
    社会の中で起きていることとしてみていくことなど、わかりやすくまとめられていて、ヤングケアラーの理解と整理の助けになりました。

    ヤングケアラーの統計やデータを見るというマクロな視点と、個別に詳しく見ていくミクロな視点と。
    両方の

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    2023年01月29日
  • 「ヤングケアラー」とは誰か 家族を“気づかう”子どもたちの孤立

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    ここ数年来に知られるようになった「ヤングケアラー」。何冊か類書を読んでいるが、本書はその中でも異色というか、深く問題を掘り下げ、またヤングケアラーだった人、サバイバーと言ったらよいのか、その人たちからの聞き取りをまとめたものなので、実情がより具体的であり、またその支援も具体的である。事例の方々は、よくこんな過酷な状況を生き抜いてきたなという人たちばかりである、本書に登場する人達は、西成にある「こどもの里」に関わっている人たちであり、こどもの立場に立って、包摂する場があったからこそ今があると言って良いと思う。全国津々浦々なかなかこのような場はないと思うが、参考にはなる。また子供への支援ではあるが

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    2022年09月24日
  • 子どもたちがつくる町――大阪・西成の子育て支援

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    文章がひじょうに読みやすく、私のように西成地区や児童福祉に関する知識に乏しい者でも問題を把握しやすい。また、インタビューの取り上げ方が絶妙で、村上先生の考察と合わせて、支援者が何を見てどう感じ行動しているかをありありと知ることができる。

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    2021年11月23日
  • ケアとは何か 看護・福祉で大事なこと

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    ケアについて,現象学的アプローチから実践ベースに語られた良著。私はメイヤロフ,ノディングズなどに明るくないが,それでも読み切れてしまう。

    〈出会いの場〉〈からだ〉など現象学チックな言葉づかい,概念も多いが,平易な文章のため難なく読めるのではないだろうか。

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    2021年10月23日