村上靖彦のレビュー一覧
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自分自身では本年最高の読後感であった。現場の声から本質を捉えていく方法論で紡いでいく本書であるだけに力があるものだと思う。まずケアのゴールからであるが、「当事者が自身の<からだ>の感覚を再発見し、自らの願いを保てる、そのような力の発揮を目指すことこそがケアのゴールだ」で始まり、以下コミュニケーションを取る、小さな願いと落ち着ける場所、ということでACPにも言及。「いるつら」でも有名になった、存在を肯定する、「居る」を支えるケア、死や逆境に向き合う、「言葉にならないこと」を言葉にする、最後にケアの行方、当事者とケアラーのあいだで、ピアについて言及して締める。言葉にならないことを言葉にすることがそ
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Posted by ブクログ
困難な状況の中で孤立している母親への手当てと、つながりの再構築への道のりが丁寧に描かれています。
グループワークを行う機会の多い私にとって、参加者目線の言葉と、ファシリテーターの言葉と、観察者としての筆者の言葉の重なりが、とても参考になりました。
ホールディングという観点からグループワークの「場」を見つめてみた経験がなかったので、興味深く、ぐいぐい引き込まれました。
他者の語りを聴くこと。自分のことを語ること。
ホールディング。グループとのつながり。グループとの響き合い。
この世界の中に、自分の居場所を見つけ出すこと。
「孤立していたときの過去が世界の中に位置づけられることで、未来の行 -
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「治癒とは…創造性の回復(である)。創造性は困難な現実への適応を可能にするだけでなく、それ自体として健康であるという感覚を生むからである」という箇所にしびれました。なるほど!
この本は現象学という分野から治癒について述べているのですが、現象学にも哲学にも縁遠い私には、1つの文章だけに注目すると、書いてある意味がさっぱりわからないことが多かったです。でもがんばって読み進めていくと、なんとなく全体としては少しだけ(雰囲気だけ)わかったような気がしてきて、だんだんおもしろくなってきました。
次は同じ著者の「レヴィナス 壊れものとしての人間」に挑戦します! -
Posted by ブクログ
教育の現場に当てはめて考えながら読んだ。
「そこにいる存在」がケアの第一歩というのが自分の教育観と重なった。教員として、子どものために何ができるか考え、関わり続ける訳だが、何よりもまずは子どもたちと一緒にその場にいることが重要だと思う。
ケアの現場でも相手のために自分を犠牲にしてまで働くことがあり、その結果精神的に辛い状況になることがあるという。いつのまにかケアをする人がケアをされる側になっているということだ。
これは教育現場でも同じことが言えるだろう。
教員も子どもたちを支えようと一生懸命になりすぎて、自分を見失い、休職したり、退職したりすることがある。
そんな時に、誰しもそういう弱さがあ -
Posted by ブクログ
職業的なケアをしたことがなくて、これからケアをしようという人とか,ケアをしたことがない完全に異業種の方向け?の教科書のようで、エピソードの積み重ねのようなところがあって、さらっと読みやすく面白かった。
ひとつだけ、なぜこの事例を入れたのか分からなかったのが、骨髄腫か何かで入院しているのに良くならなくて、看護師もコミュニケーションを取るのが辛くなって病室を訪れて話しかけなくなったころ、自死をしてしまったケースのことかな。
この部分を読んでいて、すごくぞっとしたのは私だけ?。これってもっと真剣に検討されるべきケースな気がした。なんのためにこのエピソードを入れたのだろうか。 -
Posted by ブクログ
仕事しているとデータを取りまとめて分析し見出す客観的な視点と、感覚的にはどこかおかしい、そうではないという視点が対立することがままある。
最終的にどちらが正しいのか、ということはわからないけども、感覚的なところで腹落ちできることの方が自分にとっていい考え方、判断だったと思う。また、自分が思っていることは、みんなも思っているが正しさを表現できないから黙っているだけということもある。
客観性だけにとらわれて物事を判断するのではなく、それが当事者の思いに寄り添ったものなのか、誰のための客観的な考え方なのか、大事にしたいことは何なのか、データだけを鵜呑みにすることなく、広く視点で物事を考えていくこ -
Posted by ブクログ
大事な問題提起でした。客観性とは自然現象、社会現象を測定し、法則性を追求することで数値化され統計化されてきたこと、そしてその数値によって優劣がされ排除がされること、学校での偏差値から優生思想を生み出すことまで、今の世の中、思い当たることはたくさんあります。
筆者はそれを否定しているわけではなく、筆者の言う、それ以外も真理がある、一人一人の経験の内側に視点をとることが大切ということを、実践を紹介しながら展開していて、説得力があった。
大学の先生らしく、文章は論理的だがとっつきづらいかも。
個人的には「働く意思のない人を税金で救済するのはおかしい」という学生のコメントに対して、「彼らが統治者の視点