鴻巣友季子のレビュー一覧
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何を言いたいのか私にはよく掴めなかった。
ただ、ページが進むにつれて、シモンが愛おしくなる。
ダビードやイネスに冷たくされながらも、ダビードの為に、一所懸命になる姿に応援したくなる。
シモン、イネス、ダビードは疑似家族。でも、シモンはダビードの為に、父親としての任を果たそうと頑張る。
イネスのように、自身が打ち込める何かを見つけるわけではないし、ダビードのように明晰な感じでもない。
それでも、ダビードのために一所懸命な姿は、世の中の親の一般的な姿ではないかと思ったし、それで、いいんじゃないのかなって思った。
特筆すべき何かがなくても、誰かの為に一所懸命になる、愛を注ぐ。それができたら、いいのだって。
シモンの不器用な感じは、聖書のペテロ(シモン)のよう。 -
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初めて読んだのは確か小5くらいのときで、家にあった河出書房の世界文学全集の、なので大久保康雄訳。他のがグリーンなのになぜか「風と共に」と一部の小説が白い表紙で、その乙女っぽい装丁にときめいた記憶がある。その後、高校生くらいまで何度か再読した。映画のほうはたぶんNHKで観たと思う。ヴィヴィアン・リーとクラーク・ゲーブルのビジュアルは本を読む前から知っていて、そのイメージで本も読んだ…かもしれないけど、映画は原作の良さが全然入ってなくて退屈だな…と思った記憶がある。なので私の中では映画はあまり印象にない。
鴻巣さんが手がけた新訳版は読んでないが、この本は読書リストには入れていた。なんといっても暗記するくらい読んだ「風共」だから。最近はこういう評論は読まなくなって久しいのだけど、BLMの動きで一瞬「風共」に注目が集まり、その流れで手に取った。
本の中には鴻巣さんによる新訳が随所に引用される。それを見ると私の読んだ訳よりずいぶんとカジュアルな感じがする。私自身はこの本に相当のめり込んで、登場人物が勝手に生き生きと躍動していたので、当時の翻訳がどうこうというのはなかった。またあまりにも子供だったから、「風共」がはらんでいる問題を全然意識してなかった。地の文と登場人物の心の声が地続きになっているなんてこと気づかずに、かといってミッチェルが差別主義者だなんてまったく思わずに、これは登場人物の心理だと思って当然のように読みこなしていた。本が作者の考えを表すなんてこと、その頃は意識したことなかったのだ。物語の中の登場人物がすべて。神の視点で語られる場面もあるが、それを当然のように受け止めていた頃、なんて幸福な時代の読書体験だったんだろう。でも優れた小説はすべてそういうものじゃないか。鴻巣さんが発見するいろいろなことは1人の作者としてこのテクストを読まざるを得なかった結果から導き出されたことで、純粋な読者はそんなことは思いもせずに、ただ物語の中に浸り、登場人物の声を聞く。
なので、私にはあまり解くべき謎もなかったし、知ったところで「風共」の読書体験に変化はまったくないのだけれど、以前から感じていたメラニーの存在感(私には彼女はグレーでイメージされている)が言語化されたのはすっきりしたのと、スカーレットの目からしか描かれていなかったアシュレーが肉欲もある一人の男性であるという気づきは久しぶりに再読しようかなという気持ちをそそった。そう、本当に再読しようかな、今度は鴻巣さんの新訳で。 -
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翻訳とは外国語で書かれたものを日本語に訳することだ。訳するとは何なのか?それは外国語で書かれたものを深く読み、掘り下げて、作家の意図を探り取らなければならない。翻訳とは訳をする作業なのではなく、読み込む作業なのだ。
翻訳家であり、翻訳教室なども催している筆者が、10作品の例文を提示しながら、その訳し方を解説する。
韻を踏んだ文章や、当時の時代背景や文化とは切り離せない登場人物同士の関係、辞書では同じ日本語になりがちな複数の英単語の使い分けによる違い、などなど、それは原文を読み込まなければ見えてこない。
翻訳文学が好きな身としては、翻訳家の苦悩が垣間見えて面白かった。 -
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読みやすくはあるが、扱う主題は難しい。
都会で教授をしている二度の離婚経験のあるおじさんが、性欲を抑えきれず教え子に手を出して、職を追われ、田舎の娘のところに行き着き、そこから展開していくストーリー。
南アフリカの白人と黒人の間のわだかまり、治安の悪さ、強姦などといった時代背景がある中、娘とは事件後でも仲良くはあるが、意見は全く食い違う。
相手の意見を聞かずに、自分の意見を通し、辞職に追い込まれ、その後娘に自分の意見を通そうとする。かつて物を教える立場であったように。
一度だけでは本の一部分しか理解には及ばない自分の読解力の無さを嘆きたくなるが、ブッカー賞受賞作なだけあり、読み応えはある。
男たちに強姦され、妊娠までさせられるのに、警察などには一切言わず、その土地に溶け込もうとする娘。覚悟の上で、生き抜こうとする様は、か弱い人私にとってこの父親のように、理解に苦しむ。
人生何が起こるかわからない。そして何を起こすかわからない。ただ、現実を受け止め、何を教訓としていくか。難しい……。 -
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ネタバレ2007年12月に筑摩書房から出版され、好評を博していたた『やみくも -翻訳家、穴に落ちる』を親本に、新たに執筆されたエッセイなどを多数集めて、今回文庫化された。
文庫新版にあたって収録されたエッセイには、翻訳家として世に出るまでの生い立ちや最新の仕事事情までが歯切れのいい文章で綴られている。
前作を購入された鴻巣ファンの方にとっても、新鮮な内容がたくさん含まれているので損せぬ内容となっているのでは。
最初に収録されている4編は、たまたまこの本と前後して読んだ「本の寄り道」に収録されている4編だったので、始めはあれと思ったのだが、残りは未読のもの。著者がお得意とする読書にまつわる感想も交えながらのエッセイだ。
それにしても、なんとも不思議体験の多いことよと思わされる。世の中を鋭く観察しながら生きている物書きにはよくあることなのかもしれないが、、、 -
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「翻訳」に興味があるので手に取りました。一編5〜6ページのエッセイがおよそ50本、テーマの共通性で5つのパートに分けて並べられている。どこからでも読める。どれを読んでもかなり面白い。
さりげない日常の話から書き始め、「なになに、それでどうなったの?」と身を乗り出した読者を、文学ワンダーランドで楽しませてくれる。ユーモアもあればオチもある。この人、なかなかのエッセイストであり書評家のようです。ついでにいえば、酒飲みでもあり、「元」がつくけどスキーヤーでありカヌーイストでもあります。
ひとつメモしておきます。「デジタルの力というのは、忘却という人間に残された最後の安らぎ、最後の赦しを奪おうとしているのか?」(p.62)という一節に傍線を引きました。なるほど、確かにそういう面はありますね。 -
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[ 内容 ]
驚愕!感嘆!唖然!恐るべし、明治大正の翻訳界。
『小公子』『鉄仮面』『復活』『フランダースの犬』『人形の家』『美貌の友』『オペラの怪人』…いまも読み継がれる名作はいかにして日本語となったのか。
森田思軒の苦心から黒岩涙香の荒業まで、内田魯庵の熱意から若松賤子の身体感覚まで、島村抱月の見識から佐々木邦のいたずらまで、現代の人気翻訳家が秘密のワンダーランドに特別ご招待。
[ 目次 ]
近代の翻訳はこの「一字入魂」から出発する―ユゴー『探偵ユーベル』森田思軒訳(明治22年)
訳文が生きるか死ぬかは会話文―バアネット『小公子』若松賤子訳(明治23~25年)
超訳どころの騒ぎではない―ボアゴベイ『正史実歴鉄仮面』黒岩涙香訳述(明治25~26年)
鴎外の陰に隠れはしたが―レルモントフ「浴泉記」小金井喜美子訳(明治25~27年
すべては憧憬にはじまる―ゾラ『女優ナヽ』永井荷風編訳(明治36年)
辛抱して読んでくれ!―トルストイ『復活』内田貢(魯庵)訳(明治38年)
遠く離れた日本で出世―ウイダ『フランダースの犬』日高柿軒訳述(明治41年)
原作はいったいどこに…?!―アンノウンマン『いたづら小僧日記』佐々木邦訳(明治42年)
肉体を翻訳する舞台―イプセン『人形の家』島村抱月訳(明治43年)
童話は初版だけが本物か―「模範家庭文庫」中島孤島他訳(大正4年)
絶好の売り時を逃すまじ―リットン『ポンペイ最後の日』中村詳一訳(大正12年)
うっかり誤訳?意図的誤訳?―グリズマー『東への道』岩堂全智・中村剛久共訳(大正12年)
発禁、伏せ字を乗り越えて―モオパッサン『美貌の友』広津和郎訳(大正13年)
ノベライゼーションの草分け―ルルー原作、カーニー改作『オペラの怪人』石川俊彦訳(大正14年)
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