駒月雅子のレビュー一覧
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正直、真ん中あたりまでは「誰が犯人だろう?」みたいなミステリーとしてのワクワクと、19世紀のロンドンを恐怖に陥れた切り裂きジャックに対する恐怖からのホラーとしてのワクワクで面白かった。
でも、読めば読むほど後半が失速していった。
まず、犯人はアイツだけはないだろう、というような奴だった。
探偵=犯人という禁じ手は肯定できても、アイツが犯人は肯定できない。
私が読む限り、作中に犯人であることを示唆するヒントが本人の自白しかない。
それでは、ミステリーとしては成立しないのではないか?
次に、最後の方が駆け足過ぎて、えっ、何が起きているの?みたいな感じで、読者が置いてけぼり状態だった。
そのせい -
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Posted by ブクログ
作者は何と、御大カーの孫娘。可憐なヒロインがヴィクトリア朝のロンドンにタイムトラベルして、切り裂きジャックの犯行を止めようとする。そこで出会うのはオスカー・ワイルドにブラム・ストーカーにホイッスラー。時を隔てた恋もある。まあ、これほど華やかなお話もあまりあるまい。
展開がどうもバタバタしていることとか、タイムトラベルの扱いがあまりに大ざっぱであることとか、なんだかなあと思うのだが、ぐんぐん読ませる語りの魅力がある。切り裂きジャックの正体を暴いてこれで終わりかと思えば、その後のことが実は核心だったのだとわかるあたりは、ページをめくる手が止まらない。雰囲気たっぷりの語りはおじいちゃん譲りか?など -
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「子供は戯れに蛙を殺すが、蛙は真剣に死ぬ」
随所にさりげなく織り込まれた言葉が、真相がわかったときに突然意味を成してくるのがクックの作品。
これまでの作品同様、主人公がどうしても腑に落ちない事件を掘り起し、少しずつ過去が明らかになってくる。そしてまた、主軸に父と息子があるのも同様。
ただ、以前と比べて謎解きと意外さの面白さは影をひそめ、ミステリとはいえども文学的要素が強くなってきている。それはこの前に読んだ『キャサリン・カーの終わりなき旅』でも同様。
丹念に織り込まれたタペストリーの糸を少しずつ解いていくようなクック作品、今回も満足はするにはしたのだが、好みは、と言われればもう少し前の作 -
Posted by ブクログ
ザックリあらすじ。
主人公フィリップのかけがいのない友で作家ジュリアン・ウェルズが突然自殺した。
友が何故自殺したのか、どうすれば友を救えたのか、フィリップはジュリアンの自殺の謎を解明するべく彼の足跡ををたどる旅に出る。
やがてジュリアンの若き日の罪が探り出されていく。キーワードとなるのは、「子供は戯れに蛙を殺すけれども、蛙は真剣に死ぬ」
時折でてくる詩的な表現がとても美しい。
ジュリアンの書いた小説は実在の殺人者達の物語。とても残酷で実話だけに、心に迫ってくるものがある。
それが彼の心の中の暗闇が深い事を象徴しているようだ。
とても良くできているが、一気に読む感じではない。はっきり言って、 -
Posted by ブクログ
共有した時間を元に、作家の人物像を懐かしく語っているが、旅が進めば進むほど作家の意外性がクローズアップされ、友情に対する価値観が徐々に揺らいでくる。この辺りの微妙な心理の変化は、ミステリというよりは、純文学のヴェールをまとった雰囲気がある。
ささいなきっかけから人生が流されていく皮肉さを描く手腕はクックの真骨頂だが、本作品は、追想の旅がいつしか探偵劇に変貌していく展開が秀逸で、ゆるやかに進行しつつもプロットは緻密。読後、振り返ればミステリだと認識できるが、読書中はそういう意識は薄いので、退屈さを感じる時間の方が多かったかな。
「子供は戯れに蛙を殺すが、蛙は真剣に死ぬ」、「善とは悪の極めて巧 -
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