小川さやかのレビュー一覧
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海外の有識者2人への個別インタビューに対して、国内の有識者2人が討論するという面白い構成。
各国のコロナ対策の是非、ロシアのウクライナ侵攻に対するスタンスなど、インタビューを掘り下げていくと、有識者によって意見の食い違いがあることが分かり、国籍や立場によって複雑な事情があることを理解した。
SNSやデジタル技術によって、人々が「単純化」された理論への志向が強くなり、少しでも異質なモノを見つけ次第排除しようとする傾向は、私自身も含め危惧している。リアルの交流が減ると、ついつい異質な他者を排除できるからだ。ただし、同じ価値観を共有できるほど、社会が単純ではない。
人間は不確実で不完全な生き物。理解 -
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Posted by ブクログ
副題にあるとおり、日本含む多くの国で前提とされている資本主義に乗っ取った経済をフォーマルセクターとすると、そこのルールでは違法とされる模倣品販売などがなされているタンザニアのフィールドワークを基に、インフォーマルセクターの成立論理、そこに息づく人間関係、人生への向き合い方を描く。
この本で気付かされるのは自分達の当たり前は当たり前でないことと、現在までに適応した考え方であることに気付かされる。
定職につく人の方が少ない、お金は貸し借りありすぎてもはやわからない。持っている人が持ってない人に貸す。金額よりその恩という贈与に意味が持たされる。
屁理屈とも言えなくないが、インフォーマルセクターに -
Posted by ブクログ
現代の日本では大半の人は忘れているけど、仕事は食べて生きるためにすること。本にも書いてあったけど「仕事は仕事」。
やりがいのある仕事、成長できる仕事は、素敵なことだと思うし、どうせやるなら充実してる方がいいけど、やりがいが感じられないとダメってこともない。
人間はいつ死ぬかわからない。だから将来のために今をすり減らすんじゃなく、もっと味わって生きようと思った。
あと、大きな成功もないけど大きな失敗もない、その日暮らしの生き方はある意味気楽。今日も生きている、それだけで花マル、という考え方ができたら救われる人もいるだろう。
学術書という感じで読みにくいのが難点。 -
Posted by ブクログ
「その日暮らし」というと不安定さの代名詞のような感じがしてしまうけど、タンザニアでフィールドワークを重ねてきた著者が紹介してくれる事例や見方を知ると、その日暮しが豊かで無駄のないもののようにも思えてくるし、決して無計画なわけでもなくその日暮らしをしていく術のようなものがあることも感じられる。
たとえば著者の知り合いの夫婦。夫が安定した収入が見込める出稼ぎに行っている間は、妻は多少不安定な仕事で日銭を稼ぐ。逆に妻が元手をかけて店をやるときなどは夫は多少不安定なことができる。こないだ言ってたことと全然違うことを実際にはやっていたなんて日常茶飯事なんだけど、そのときそのときのチャンスやタイミングに合 -
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■ 内容
グローバル資本主義システムの末端で、零細商人マチンガが日々織りなしている商世界の実態を開示し、その商世界を維持・再生産している独自の人間・社会関係と商慣行を、彼らのミクロな商実践に注目して明らかにしている。〔P312より〕
■ 感想
一見、非合理で倫理に反する様に写る、マチンガの様子(マリ・カウリ取引/ウジャンジャ)にも、合理性や倫理的なつながりがある事がよくわかった。
日本、アメリカなど先進国と言われる国では、資本主義やそれに紐付く商慣行が行き渡っている。それは、とても合理的で恵まれている一方で、それにより人々の想像力や生き抜く知恵(本書で言うウジャンジャ的なもの)を身に付け -
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「その日暮らしに生きる」社会を見つめ,現代の未来,生産,発展主義的な人間感・人生観を問う本.
よくあるスローライフ礼賛ほんとは違い日本とは全く異なる商習慣や文化を持つ海外を取り上げて日本をはじめとした先進国家的ライフスタイルとコントラストを生み出している.
(海外の方が楽とか,楽しいとか一概に言えるわけじゃないけどね)
日本やアメリカのような社会では,明日のため,未来のために,今を手段化したり犠牲にしたりということを徹底的にやっている.
効率はそもそも,生産機械のための概念.いつもまにかそれが人間や社会にも適用されるようになってしまったようだ.
問題解決機械としての人体には効率化が求められる