小川さやかのレビュー一覧
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ネタバレ4名の著名な知識人へのインタビューと、それを踏まえた日本の知識人による論評という構成。日本の知識人の方々は、確り自身の意見を述べていて好感が持てた。
また4名のインタビューの中では、ミラノビッチ氏の話が面白かった。
曰く、エレファントカーブを見ると、程度の差こそあれ、あらゆる人々がグローバリゼーションを通じて所得が増加していることがわかる。また、グローバリゼーションに反発するのは、相対的に恩恵の少ない先進国の中産階級だけで、国内政策での対応が可能である。
そう考えると、保護貿易的な政策で中産階級を保護するより、再配分や成長産業への労働力移動を通じた、グローバリゼーションに抗わない政策の方 -
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Posted by ブクログ
すごく面白かった。
タンザニアでのフィールドワーク等、人類学的なアプローチで(ときには露店商をやり)検討される、いわゆるインフォーマルセクター、本書で言う「Living for Today」の経済活動。「なぜ共同経営しないのか?」「なぜ未来のために貯蓄しないのか?」「なぜ貸した金を返してもらわないのか?」「なぜコピー商品を作るのか、買うのか?」などが、当事者の言葉で語られ、なんとなくちょっとわかった気がする。いまの20代〜30代の一部にも(自分を含め)相通じるメンタリティがある気がする。山寨企業の原動力、強み、市場への向き合い方は、アジャイルの究極なのかもしれない。 -
Posted by ブクログ
常識が揺さぶられる一冊。
タンザニアを舞台に「インフォーマル経済」のあり方を観察したレポートなのだが、現在の日本社会(の主流)とは全く異なる原理で動いているので、スムーズに読み進まなくて頭がムズムズする。
サブタイトルの「もう一つの資本主義経済」というのは、確かにその通りなのだけど、いままでは規模が小さいから見逃されていただけで、2つの資本主義が並立したり主導権が入れ替わるかはよくわからない。
最終章で触れている、スマホを使った送金システムの普及によって社会(我々とは異なる原理で動く社会)が変質し始めていることを示唆しているし。
一応、現代日本とは異なるというスタンスで述べてきたが、1970 -
Posted by ブクログ
ルポとしての面白さは『チョンキンマンションのボスは知っている』の方が上。でも、比較文化的な観点から日本を考えるためには参考になる。また、海外ビジネスを考えている人は読んでおいて損はないと思う。
本書を読んでいると、杉浦日奈子の描く江戸庶民の暮らしが思い出される。例えば、タンザニアの人々の購買活動には計画性が欠けていて場当たり的だという指摘は、「宵越しの銭は持たない」という江戸っ子気質に重なるものだし、その時々の状況に合わせて職を点々として生きていくという点もまた、江戸の下層市民に見られるもの。何より、貸しと借りの感覚の(いい意味での)ルーズさは「金は天下の回り物」と言い切って、深く考えずに金 -
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かつての戦後日本のような貧しくダイナミズムに溢れたアフリカ社会。経済成長と共に日本人が失くしたものが分かる気がして読んでましたが、日本人とは違うと、違和感を覚えたのは商売における信用についてでした。
相当昔、近代化以前の江戸時代でも、信用を重んじて割と誠実な取引を好んだように思いますし、貸し借りには几帳面です。
やっぱり日本は世界のガラパゴス、特殊な人たちなのでしょうか?
これから経済的にはますます貧乏になり、人口も減っていくと、どういう社会になるのでしょう。アフリカ的なliving for todayとは少し違う感じです。少なくとも今よりみんなが幸せを感じられる社会になって欲しいですね -
Posted by ブクログ
現代では技術が進歩し、あらゆる業務が効率化されている。働き方改革により労働時間は削減されているが、それでもまだまだ働く時間は多いように感じる。そんな時に資本主義とは別の理論で動く世界があるとして、この本を紹介してもらった。内容としては期待していたものではなかったが、資本主義社会とは異なる経済の社会がアフリカ中国で動いていると言うことがわかり、大変面白かった。ある種の終末論のようなもので、先行きがわからない人たちは、とにかくやってみる。組織立たずに個人でやってみる。だめならすぐに転戦するという戦略が最適なのだと思われる。
一方で、読みたかった本としては、ポスト資本主義、ベーシックインカムのような -
Posted by ブクログ
並行してエマニュエル・トッドを読んでいたのでその理解が深まったが、やはり複数名を一冊に取り扱うようなダイジェスト本だと論説の中身が浅い。広く浅く、まずは関心を、がコンセプトなのだろうからそこで文句を言ってはいけないのだが。本書に関しては、先の賢者たちの言説紹介よりも、後半の日本人同士のセッションの方が面白く感じた。
與那覇氏。「よなは」。と読むらしい。この方の発言で、「民主主義は皆が理性を働かせ、今より良くなっていくことを建前としている」のだから、「ニヒルな人間不信とは相性が悪い」という内容に共感を覚えた。ニヒリストは、もの凄く大きな権力とか構造に対して諦めてしまい、民主主義を放棄しがちだ。 -