著者はタンザニアのムワンザという都市で零細商人のビジネス手法を研究しており、本書ではそこから導かれた「その日暮らし(living for today)」の生活に新たな視点を提供する本となっています。「その日暮らし」というと多くの日本人はネガティブな生活を連想し、国の社会保障が存在していないような発展途上国に多く見られる「やむを得ない」ライフスタイルと考えがちではないでしょうか。
常に計画を立てて将来のために今を消費するような生き方は、日本のように整えられた社会だからこそできることで、でも確かにやりたいことをやりたい時にやる、という気持ちを制限している部分があるから、この生き方に縛られなくてもいいのかなと思った。Living for Todayの考え方はアナキズムとも繋がるかもと思った。
でも、本当にそうか? その日暮らしをベースにした経済は、実はちゃんと成立しているようにも見える。コピー商品とか、まあ一応いけないとされているものでも、まあこのぐらいは許してもらえるかな、みたいな形で、法的にはアウトでも道義的にはなぜか許されている世界がある。Living for Todayの世界では、借りは回すが贈与もある。
なんだ、やさしい世界じゃないか。いまの社会に疲れている人は、身の回りにゴマンといる。僕もその一人だと思う。いやあ、魅力的だぜLiving for Today。だが一人ではなかなか難しい。社会の変革が必要だ。
レビューでは片鱗しか書けなかったが、濃密なLiving for Todayの世界が描かれている。いま読まれるべき本、と思った。つうか身の回りの人みんな読んで、こういう社会に進んでほしい。他力本願。
0
2022年06月01日
Posted by ブクログ
私も含め大多数の日本人はもはや資本主義から抜け出ることは社会的な死とほぼイコールだと思っていると思います。が、資本主義じゃないもので動いている社会があり、それはどんなものぞや?と思い手に取った本
アフリカのLiving for Today(その日その日を生きる)な暮らしをする人々への取材から見えてきた、全く別の構造でできた社会を垣間見れて非常に興味深い内容でした。
この本の中で書かれていることをそのまま日本で適応するのは、ほぼ不可能だとは思うけれど(そしてそんなことは目的として書かれていないけれど)、「世界にはこういう考え方で動く社会もあるんだな」と知れるだけでも、少し閉塞感から抜け出せるような気がします。
筆者そうならないよう気をつけたと、あとがきで書かれていましたが、結構論文ぽいです笑
なので、小難しいな、と感じることも正直ありました。また、筆者の個人的な主観による意見が少ないこともそう感じさせた要因だと思います。
でも、おかげでこちらもフラットな目線で「だからアフリカはダメなんだ」「だから日本の経済はこんなにだめなんだ」みたいな批判的な気持ちを抱くことなく読めたので良かったです。
「今」しかないLving for Todayな生き方の数々は、「今」を犠牲に未来への投資ばかりしてる日本人にはうらやましいようでもあり、「あぁはなりたくない」という思いもさせる複雑な生き方です。
最後に一番印象に残った箇所を備忘録として記しておきます。