小隅黎のレビュー一覧
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ネタバレ【無常の月】
表題作にして白眉。
ある夜、月が異常な明るさで輝きだす。月は太陽光を反射している。つまり地球の反対側、昼の領域はもう……。というお話。
月という身近な存在に異常が起きるという掴みから、想像力を働かせて未曾有の事態にたどり着く衝撃。主人公は事態に勘づくが夜の街は平和そのもの、さて人類最後の夜をどう過ごすか、という哀愁。論理と情緒が両方詰まったハードな展開に心揺さぶられた。自分が読んだここ数年の短編では一番かも。
【帝国の遺物、中性子星、太陽系辺境空域】
同じ世界感を共有しており、ワープあり異種族ありで王道SF感がある。中性子星やブラックホールのアイデアは既視感がすごいけど、逆にこ -
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『造物主(ライフメーカー)の掟』の続編。機械人たちとの接触から数ヶ月後、残された謎が明らかになるが……。
序盤から、ザンベンドルフのはったりマジックが今回も面白い。実際には「そううまくはいかんやろ」と思ったりもするが、トリックの内容はよく考えられていて楽しめる。
前作から10年以上執筆の期間が空いているにもかかわらず、前作・続編というよりも、前編・後編といったほうがよさそうなほど、話の内容は連続していて違和感がない。今作では前作で最大の謎であった、機械人を送り出した異星人が登場し、タイタンは大混乱に陥ることになる。
意識はデジタル化できるか――という命題はさておき、覚醒後のサーヴィクの状 -
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土星の衛星タイタンを舞台にしたホーガン節の傑作。独自に進化した機械人たちの文明は中世西欧風の世界だった――。
冒頭の、ロボットたちが独自の文明世界を構築していく過程が、これぞSFという感じで面白い。その後は、ホーガンおなじみの、組織と人間関係の軋轢の中で真実への探究心を燃やす主人公たちが登場する。本作ではザンベンドルフとマッシーが対立しつつもやがて信頼関係を築いていく姿が、『星を継ぐもの』のハントとダンチェッカーを思い出させて、やはりこのあたりのキャラの書き方はうまい。ただし、人名が多すぎて読みにくくなっているのもお約束。
ハードSFとしての本質的な部分はプロローグで語り切ってしまっている -
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本作の原題:Thrice Upon A Time は『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の英題に引用された。
過去にメッセージを送ることができるマシンが完成した……という、それ何てシュタゲ?と今の若い人なら言いたくなるようなオープニング。2010年を舞台に1980年に出版されたホーガン節の時間移動SF。ホーガンといえば真っ先に思い浮かぶのが『星を継ぐもの』。これぞSF、というセンス・オブ・ワンダーとミステリー的な謎解き要素を併せ持った面白さは本作でも健在だ。
こういった、過去に干渉して歴史を改変するという物語は、改変前の世界と改変後の世界が分岐してそれぞれが継続していくというパターンと、改変前 -
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ネタバレシュタインズ・ゲートの元ネタというかシュタゲがリスペクトしているであろう内容。タイムトラベル物でまさかのラブストーリー…!「忘れてなんかいないわ」にちょっと泣いてしまった。
新しいなと思ったのは(1980年の作品なのに!)タイムトラベルの実現について国家をまたいで共有し、地球の未来を守るために首脳陣が知恵を絞っていく過程。もちろん打算や独り占めしたい各国の思惑も混ざるが、それでも歴史改変の危険性回避のために最善を尽くそうという強い意志がありそこも泣けた。
長編なのでずいぶん長いこと欲しいものリストに入れたまま放置していたが、読んで良かった。 -
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ーーーアメリカ西海岸で技術コンサルタント事務所を開いているマードック・ロスは、スコットランドの古城に住む引退した物理学者の祖父に招かれ、友人のリーとともにイギリスへ向かった。 祖父が政府の助けもなく、独力でタイム・マシンを完成させたというのだ。
『星を継ぐもの』シリーズ以来のJ•P•ホーガン
よく言えば外さない、悪く言えばありきたりのタイムマシンとそれに伴うパラドックスにまつわる物語
他の書評を見る限り、「シュタインズゲート」はこの小説にインスパイアされて生まれた作品みたいやね。
前に読んだシリーズでもそうやったけど、破綻の無い理論構成はグイグイ引き込まれる。
ただ、ひとつの欠点とし -
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ーーー百万年の昔、故障を起こした異星の自動工場宇宙船が土星の衛星タイタンに着陸し、自動工場を建設し始めた。
だが衛星の資源を使って作った製品を母星に送り出すはずのロボットたちは
故障のため独自の進化の道をたどり始めたのだ。
いまタイタンを訪れた地球人を見て彼ら機会生物は……?
ホーガンSF5作目
私たち人間とは、「生きもの」と「機械」の概念が正反対の、緻密な機械生物の世界。
まずプロローグが凄い。生物の進化と全く違う様に見えて、似通った部分も見受けられる。
独自の進化をとげた機械生物たちとの対比を通して、私たちの見ている「世界」とは電波や可視光、空気の振動といった一次的な刺