【感想・ネタバレ】造物主の掟のレビュー

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Posted by ブクログ

土星の衛星タイタンを舞台にしたホーガン節の傑作。独自に進化した機械人たちの文明は中世西欧風の世界だった――。

冒頭の、ロボットたちが独自の文明世界を構築していく過程が、これぞSFという感じで面白い。その後は、ホーガンおなじみの、組織と人間関係の軋轢の中で真実への探究心を燃やす主人公たちが登場する。本作ではザンベンドルフとマッシーが対立しつつもやがて信頼関係を築いていく姿が、『星を継ぐもの』のハントとダンチェッカーを思い出させて、やはりこのあたりのキャラの書き方はうまい。ただし、人名が多すぎて読みにくくなっているのもお約束。

ハードSFとしての本質的な部分はプロローグで語り切ってしまっているようで、接触した機械人文明が中世ヨーロッパ風なのもあり、本編は実は人間世界についてのアナロジーな気がする。SFは突き詰めると宗教的な論議になってしまうのか、機械人たちの形而上学的な会話が興味深い。ここから宗教と人間性に関する論点にスライドし、中世文明VS現代文明のような形でドラマが展開する。物語の展開そのものはとても面白く、後半はさすがホーガン、と何度もうならせてくれた。しかし同時に、本書からは「精神的に進歩しようとしない一般大衆」への強い憂慮と批判が強く感じられる。根本にある作者の思いを特に汲み取れる作品だったかと思う。「愚かな大衆はどこまでいっても馬鹿なままだ」――作者の強い悲しみを感じるラストの一シーンに、現代の日本の大衆の姿が重なって見えた。1983年刊、すでに40年前の小説だが、まるで今の時代を見てきたかのような書き方が何箇所もあるのでひとつ引用してみる。

P347 「よかろう、きみが今日の大衆に対して抱いている気持はわかっている」マッシーは両腕を宙にふり上げ、「彼らが二十一世紀に育ち、史上いかなる時代の人々よりも完備した学習と教育の機会に取り巻かれながら、その特権を利用しないほど愚かなら、それはきみの知ったことじゃない。彼ら自身の選んだ道だ」

とはいえ、主人公たちと機械人との交流は希望が持てるものだったし、小気味良いユーモアで後半は何度も笑わせてもらった。なるほどそういう意味だったのか!と舌を巻く、絶妙な「タイトル回収」の巧手も健在。続編は絶対面白いでしょうコレ!

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2023年06月10日

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『星を継ぐ者』シリーズ以来のホーガン。やっぱホーガンめちゃくちゃ面白い。

ロボットやAIの分野ではシンギュラリティが焦点になることも多いですが、この作品は逆でロボットたちが中世封建的な社会を築いて科学革命に至っていないとしたら…という発想。

このあべこべの発想に立つことで人間とは何かとか、社会とは何か、あるいは人間は何を問いうるかといったことを考えさせられますし、主人公がインチキ心霊術師で人は真実を見つめているかという問いに角度をつけた皮肉まで突きつけられます。

ホーガン作品の異星人との「個人的な通じ合いの感覚」の描き方も好き。

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2022年12月04日

Posted by ブクログ

興奮の導入、そして始まる「神様もつらいよ」。キリスト教のパロディも愉快に、理解不能な事物を理解するために神の言葉と奇跡への「変換」が起こるメカニズムの具体化が抜群に愉しい。ロマンチックなほど探求の精神を信じる作者の姿勢も痛快だった。心理学者のマッシーをさしおいて詐欺師もどきのザンベンドルフが主人公なのは、ショーマンにしかできない事もあるからなのだろうな。

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2013年07月24日

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ーーー百万年の昔、故障を起こした異星の自動工場宇宙船が土星の衛星タイタンに着陸し、自動工場を建設し始めた。
だが衛星の資源を使って作った製品を母星に送り出すはずのロボットたちは
故障のため独自の進化の道をたどり始めたのだ。
いまタイタンを訪れた地球人を見て彼ら機会生物は……?


ホーガンSF5作目

私たち人間とは、「生きもの」と「機械」の概念が正反対の、緻密な機械生物の世界。
まずプロローグが凄い。生物の進化と全く違う様に見えて、似通った部分も見受けられる。
独自の進化をとげた機械生物たちとの対比を通して、私たちの見ている「世界」とは電波や可視光、空気の振動といった一次的な刺激を受けて
私たちの脳が構築しているものにすぎないことが理解できる( ̄▽ ̄)
こういうクオリア論みたいなものは大好物です

さらに綿密に練られたプロットで最後まで飽きることなくエンタメとして楽しめる。実に満足のいくSF作品でした

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2012年12月30日

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木星の衛星タイタンで独自に進化した機械人の文明。地球から交渉の為、派遣された科学者達に混じって大人気のインチキ超能力者の姿があった。大衆操作の為に送り込まれたザンベンドルフとスタッフはタイタンを植民地化しようとする後援者達の意図に反して、知識と真実への探究心を持った機械人と交流を深めて行く。ヨーロッパがアジアやアメリカやアフリカを植民地化していった歴史を批判し、真実より享楽的刺激を求める現代社会の大衆を皮肉っている。

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2012年11月07日

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機械生命体の遺伝子プログラムに含まれたバグを補完するための繁殖、人格と宗教の発生、科学の発達、宇宙という異世界で繰り広げられる歴史に人類が介入してしまったら?そしてその介入者側に利己的すぎる意思があったら?
最初の創世記さえクリアできれば、ユーモラスで人間性あふれる機会生命たちの物語を楽しめるはず。

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2012年07月25日

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生命ってなんだろう?機械は生命になり得ない?という問いに対する答えでしょうか。

荒唐無稽な話なのになぜか納得させられ、次から次へとページを繰りたくなる本です。生殖(?)する機械たち(まったくエロくありませんのでそのつもりで)とペテン師の主人公たち(人間)。創造者たち(機械たちを作った)はもういない

ホーガンさんのガニメアン・シリーズの第4作ではまた別の意味の(電脳空間の)生命が登場します。生命(いのち)とは「意思」なのだと思わされる作品です。

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2009年11月23日

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プロローグの<機械の進化>描写が秀逸!
ヒトもこんな風に進化したのかなぁと思わせられます。
<機械>の感情の動きがとても面白いです。

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2009年10月04日

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生命の定義を改めて考えさせられる。荒唐無稽なのはいつものことだけど、それでもホーガンのSFにはいつも、違う何かがある。

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2009年10月04日

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大昔の異星人が残した開拓用建設マシンが自律性を得て、タイタンに文明を築いていたという異色のファーストコンタクトもの。
ホーガン作品の主人公はほとんど科学者だが、本作はなんと心霊術師。しかし悪者に見えた彼が、機械人との邂逅により変質して意外なラストに繋がっていくのはさすが。

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2023年09月30日

Posted by ブクログ

この本が出たのは1983年。ボイジャーが丁度タイタンの撮影を行った時期でもあります。当初から大気があることやメタンの雨が降り注ぐ事で話題を集めていたタイタンの雰囲気が本著にはふんだんに盛り込まれています。

物語は異星の惑星開発機械がトラブルに見舞われるところから始まり、それが目的地を誤ってタイタンに着陸し、様々な要因を経て知性機械体に進化することで進んでいきます。異星人とのコンタクトや機械と人との関わりを描くSF小説は数あれど、異星人の生み出した機械とのコンタクトを描いた作品というのはSFの中でもかなり異色の部類に入るでしょう。

機能性の塊であるはずの機会が非効率的な封建社会を構築していることや、西洋人の侵略者・支配者的発想へのシニカルな語りが特徴的。「星を継ぐもの」のようなオプティミズム(楽観主義)に満ちた結末ながらも、なかなかの深みを感じさせる一冊でした。
特に、モーセの十戒やゴルゴダの丘の逸話を模倣したかのように発生していくタロイドたちの宗教の描写が秀逸。
SFは基本的に宗教色をあまり意識しない作品が多いですが、この本ではキリスト教圏的な考えを垣間見ることが出来、興味深かったです。
まったく意識な存在であるはずの機械類が人間と同じような宗教を持つあたり、もしかしたらこの本の根底には「宗教は普遍な存在でどの知性体でも獲得するものである」という考えがあるのかもしれません。
宗教観の薄い日本ではなかなか出なさそうな発想で、そこが興味深かったです。

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2015年04月10日

Posted by ブクログ

ずっと本棚の奥で埃を被って眠っていたSF小説を引っ張り出して読む。

ジェイムズ・P・ホーガン 著 「造物主(ライフメーカー)の掟」
もう購入してから10年以上も本棚の肥やしとなっていた作品だ。
毎回半分程度まで読み進むと決まって話の筋が判らなくなってしまって、挫折してしまうのであったが、今回は挫折する間も無く一気に読破してやった。

話のあらすじは、だいたいこんな感じ。

「遠い昔、地球外知的生命体によって建造された無人宇宙船が土星の衛星タイタンに着陸した。
宇宙船には内蔵されたプログラムによって自己増殖し、鉱物資源を採掘・精練して故郷の星へ送り届ける任務を与えられたロボットが搭載されていたのだが、航行中に超新星のフレアを浴びた影響でプログラムに重大なバグが生じてしまった。
しかしロボットたちはひたすら採掘と自己増殖を続けながらも、世代を重ねるごとにさまざまな「種」の変異と淘汰を繰り返して「進化」していく。

そして21世紀、無人探査機によってタイタンに生物がいるらしいことを知ったアメリカは大規模な調査隊を派遣する。
そこで彼らが見たものは中世の地球と良く似た文化を持ったロボット達の世界であった・・・」

久しぶりにこういうガッツリとした読み応えのあるSF小説を読むと、やっぱりSF作品というのは映画ではなく小説で楽しむに限るなと思う。

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2010年03月15日

Posted by ブクログ

超異世界のお話。
とはいえ、これが、舞台は土星のタイタン。
どっか遠い星の自動機械たちが
いろんな不調を乗り越えた結果
地球の生態系にあたる進化を繰り広げちゃった。。。という話。
その説明も空前絶後。
もう唸るしかないっ!

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2009年10月04日

Posted by ブクログ

名前を覚えるのがしんどい/ 後半の巻き返しからは面白かった/ 機械生命体と細かい設定も良い/ 『米国政府』と出てきてなるほどな、と思う/ 

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2018年10月08日

Posted by ブクログ

設定が幾分ご都合主義というか、ガニメデシリーズで感じたような虚構としてのリアリティが弱いように感じた。
であるが、魅力的な設定でもあり、概ね楽しく読めた。
一方で登場人物が非常に多く、それぞれが結構な頻度で物語に関わってくるため、読みながら誰が誰なのか判別に苦労することが多かった。口調や行動規範によって判別することも難しく、そこに関してはアニメ/漫画的な過剰なキャラ付けのないリアルさ、と言えるかもしれない。読み手の問題ではあるだろうが、翻訳文が意味を取りにくいと感じた箇所も散見された。
ネガティブな要素ばかり書いてしまったが、序盤から中盤にかけて、地球から舞台が移り変わるあたりでは、特にワクワクさせられ、次へ次へと読んでしまった。再読するともっと面白さがわかるかもしれない。続編も読んでみたいと思う。

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2018年03月26日

Posted by ブクログ

機械にも動物と同様に進化の道はある
生命を持つものと、工業的に作られるものの差はなに?
宗主国と植民地の関係と『人間性』
宗教の持つ、まやかしの一面と世界を支える力
飽くなき探求力と異端の関係
ザンベンドルフへ嫌悪感から好意的、共感につながる変化
異文化コミュニケーションと啓蒙

タロイドを脳内生成・再生するとメカ沢さんになるのが残念
だって、二足歩行の人型になる理由がよくわからないので。

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2010年10月10日

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