小隅黎のレビュー一覧
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ノーベル賞受賞の物理学者チャールズ・ロスは、スコットランドの寒村にたたずむ古城でタイムマシンを開発する。それは、60秒過去の自分に6文字までメッセージを送るプログラムであった。チャールズは自身の孫・マードックらとともにタイムマシンの実験を続けるなかで、「未来から届いたメッセージを60秒経っても送信しない」という選択をする。しかし、60秒前に届いたメッセージは依然手元にあるまま。いったい、これはどういうことか…
本書は、「星を継ぐもの」で有名なハードSFの巨星が描く時間SFです。序盤は、タイムマシンの存在そのものが提起する難題(タイムパラドックスとか)を説明するため、ページの大部分が仮説の検証 -
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物語は過去に情報を送る事ができるタイムマシンを軸に展開されていく。
タイムマシンでの実験を繰り返しながら宇宙の在り方についての推論を進めていく過程は少々難解だったが 作中でのマシンの実験は実に興味深い。
60秒後の未来から送られてきた情報を得て、敢えて彼等は60秒後に何もしないという選択をする。
当然そうすると 送信したのはだれか?という矛盾タイムパラドックスが発生するが、彼等は敢えて問題を棚上げにして様々な実験を繰り返します。
その結果、歴史改変は可能であると知りそれに宇宙はパラレルワールドではないことを突き止めます。
歴史改変が行われた瞬間に、それまでの未来は -
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ニューヨークの時間が何者かに盗まれている!?という導入部は、おバカSF的でいかにも面白い。そのまま時間泥棒さがしのバカミス(お馬鹿ミステリー)展開かと思いきや、意外にもスマートな解決法。それでも赤方偏移うんぬんは馬鹿馬鹿しすぎる(笑)。爆笑しながら楽しく読みました。
時間が盗まれる(消えていく)というテーマをファンタジー的に扱うとミヒャエル・エンデの「モモ」になるし、コメディにすると筒井康隆の「急流」になりますね。ホーガンの回答は新しい切り口だと思います。別次元の宇宙生物の設定はアシモフの「神々自身」を思い出させるところもあり。
「時間泥棒」には時間の流れ方の差による劇的展開は特にないので、ウ -
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ノーベル物理学賞を受賞しつつも故郷スコットランドで世捨て人のような生活を送るチャールズ・ロス博士は、「60秒過去に6文字のメッセージを送る」時間間通信を可能にするプログラムを開発する。アメリカから駆けつけた数理物理学者の孫・マードックと仲間たちと共に研究を続けるうちに、この研究が持つ大きな意味に気づいていく。一方で、ある事件が世界規模で人類の未来を脅かしつつあり、時間間通信の研究は否応無しに歴史の渦中に飲み込まれていく・・・
ゼラズニイだのブラッドベリだのを続けて読んでいたので、久しぶりにハードSF読んでものすごく爽快感を味わいましたヽ( ´ー`)ノ
「タイム・マシンで過去を改変できるか」と -
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まずタイトルでどんな話か分かるのが秀逸。まさにその通り、一日だけ過去へメッセージを送ることができる機械を中心に展開される物語です。
タイムパラドックスの解決方法が面白いのでそういう思考実験が好きな人におすすめ。
猫が展開上のキーポイントになるのも良いですね。
あとはいつものホーガンというか、きわめてユートピア的な世界観。最先端の科学技術に対してあくまでポジティブな見方をしているのが特徴です。核によるクリーンなエネルギーが供給され、飢餓問題解決、だけど冷戦は解決していない…など、現代からすると苦笑いなのですが、80年代ならしょうがないね!
ホーガンの小説には健全な人や健全な要素しか出てこないから -
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タイトルどおり未来から過去への干渉を描いた時間物。
過去への干渉を目的としない純粋な(空想)科学的実験の
繰り返しと、その中で生まれる恋愛ドラマ・・・と思いきや
一つの絶望的な状況の打破のため
これまでの素敵な世界を再構築して、無かったことにしてしまう
道を選んだにもかかわらず、並行で進んでいるもう一つの問題
悲劇的な世界、二つの致命的な問題を、どう解決するのか、
という二段(三段?)構えでドキドキワクワクの世界。
しかし素人・文系には科学的・理系に見える
小難しそうな理論でかためられた時間跳躍も
物語を進めるための小道具に思えてしまうのが残念。
一回目にメロドラマ風からチョッとドライに展開し -
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この本が出たのは1983年。ボイジャーが丁度タイタンの撮影を行った時期でもあります。当初から大気があることやメタンの雨が降り注ぐ事で話題を集めていたタイタンの雰囲気が本著にはふんだんに盛り込まれています。
物語は異星の惑星開発機械がトラブルに見舞われるところから始まり、それが目的地を誤ってタイタンに着陸し、様々な要因を経て知性機械体に進化することで進んでいきます。異星人とのコンタクトや機械と人との関わりを描くSF小説は数あれど、異星人の生み出した機械とのコンタクトを描いた作品というのはSFの中でもかなり異色の部類に入るでしょう。
機能性の塊であるはずの機会が非効率的な封建社会を構築している -
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「タイムトラベルもの」と言えるか。
人や物が時を超えるわけではなく、メッセージが伝えられるだけなのだが、それが過去へ届けば、歴史を変える力は十分にある。
タイムトラベルものには、扱いに困る矛盾が色々とあるにもかかわらず、元祖「タイムマシン」から多くの作品が描かれているが、そこにはやはり、「もう一度やり直せたら・・・」という人間の願望が表れているのではないか。
ホーガンらしくちょっととっつきにくい理屈をこねる場面もあるが、「やり直すことでの影響あれこれ」という基本はしっかり描かれており、前半のスローペースからは考えられない急展開も控えている。
ラストがいいです。 -
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ずっと本棚の奥で埃を被って眠っていたSF小説を引っ張り出して読む。
ジェイムズ・P・ホーガン 著 「造物主(ライフメーカー)の掟」
もう購入してから10年以上も本棚の肥やしとなっていた作品だ。
毎回半分程度まで読み進むと決まって話の筋が判らなくなってしまって、挫折してしまうのであったが、今回は挫折する間も無く一気に読破してやった。
話のあらすじは、だいたいこんな感じ。
「遠い昔、地球外知的生命体によって建造された無人宇宙船が土星の衛星タイタンに着陸した。
宇宙船には内蔵されたプログラムによって自己増殖し、鉱物資源を採掘・精練して故郷の星へ送り届ける任務を与えられたロボットが搭載されてい -
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ネタバレ題材としては初期SFに近い空気を感じつつも、題材への切り口はアメリカSF的な空気も持ち合わせている不思議な一冊。すんなり読めるけど、練りこまれた傑作。
事象の考察への切り込み方はホーガンらしい。印象的だったのが以下の一文。
「分かりませんね」とコペルスキーは答えた。「そいつはあなたの専門でしょう。ですが、なんでも頭から否定して、スタートする前にブレーキをかけようとするより、まず可能性を認めてその根拠を検討したらどうです? そして、どこに考えが落ち着くかを見てほしいですね」
この一文のすぐ後にもある通り、帰納的に考えるのではなく演繹的に考えるべきだという事を、ホーガンは星を継ぐものでも書い -
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実はSFのスタンダード、もしくは古典と呼ばれている作品をほとんど読んだことがなかったのでこの際チャレンジしてみようかと、読んでみました。とても有名なレンズマンの一作目みたいです。
いやあ、痛快活劇、と言うのはまさにコレのことだなあ、と思いました。悪いやつは悪い。勧善懲悪。なんと言うのかお話は小難しくなく、明快で、テンポがよくてついついページをめくってしまいます。でもって色々と出てくるSF用語や科学見解は今の方向性とはちょっと違っては居ますがそれはそれで面白い。考えてみるとSF、特に宇宙を駆け巡るようなストーリーの中で機軸になっているひとつのキーワードが精神世界、と言うのも面白い。
今時分 -
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「時間泥棒」と聞いて真っ先に挙げられるのは、やっぱりエンデの『モモ』。ファンタジーという形式を取りながら、現代を的確に風刺した『モモ』を真っ先に思い浮かべてしまうので、本書はちょっと物足りなさも感じてしまう。また、ホーガンらしい緻密な理論構築も、従来に比べて少々甘いような気もする。
それでも、主人公のコペクスキー初め、モイナハン神父やエーリンガー博士など、魅力的な登場人物の描写は、やはりホーガン、と思わざるを得ない。犯人である「虫」を、トラックに積んだ大量のエサで釣って回る、というコミカルな発想も、ハリウッド的で、エンターテインメントとしてはそこそこおもしろいと思う。 -
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ネタバレクラークは昔よく読んだ作家だが、この小説のことは長らく知らなかった。映画「ディープインパクト」の原案とのことで、「悪魔のハンマー」のようなカタストロフィ物を期待して読み始めた。前半はクラークお得意の近未来社会描写の中で、一人の男の努力や挫折が中心に描かれ、「海底牧場」的な感動話になるのかとも思ったが、カタストロフィ物としてはやや緊張感に欠ける。終盤になって彗星の軌道をずらそうとする現場の描写が中心となり、ようやく盛り上がり始める。結局、人類滅亡は免れたが彗星の一部は地球に衝突し多くの人々が犠牲になった。その時の人々の生き様を丹念に描いたのが「悪魔のハンマー」だが、ニーブン&パーネルが1000ペ