田中靖浩のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
「会計と歴史をエピソード満載に組み合わせ、楽しい物語を作る。」(p.414)という本書の企図は、よく実現されていると思います。
感覚的には、会計:歴史=3:7くらいではないでしょうか。
要するに「読み物」なので、勉強をするためというよりは、休日に読んで引き出しを増やすためのものというところです。
構成としては、次のとおり3部立てです。
第1部 簿記と会社の誕生
第2部 財務会計の歴史
第3部 管理会計とファイナンス
第2部の途中からほぼアメリカの話になるのですが、私にとってはこれが良かったです。
本書では①産業史、②音楽、③会計の3種類の話を織り交ぜて文章が進みます。
このうち特に①のアメリカ産業史について、私は全然知らなかったので、とても新鮮に感じたんです。
ケネディ、スタンフォード(鉄道)、カーネギー(USスチール)、ロックフェラー、J・P・モルガン、コカ・コーラ、マッキンゼー、エジソン(GE)、デュポンといった一度は聞いたことがあるような実業家や企業の名前。
彼らの活躍によって産業が発展するのと並行して、ディスクロージャー、連結決算、標準原価計算、事業部制、ROI、企業価値といった概念が作られ、会計学や経営学もまた発展していったというのは、何やら感動的でした。
あと、試験勉強の際は丸覚えでよかった会計学上の概念も、歴史を紐解けば出自が分かります。
例えば、財務会計の勉強として会計基準を読んでいると、将来キャッシュフローの現在価値といったファイナンスによって作られた概念が出てきます。
あるいは、決算書に出てくるセグメント情報について、日商簿記試験のテキストでは工業簿記の内容として説明されていますが、これは元々セグメント情報が「他人のため」に作られたのではなく、「自分のため」の管理会計として作られたからです。
こうした会計学上の概念は、最初から並列的に存在しているのではなくて、いつか誰かが必要に駆られて考え出したもの。
しかもそれは、せいぜいここ500年以内の話でしかありません。
歴史それ自体は出来事の羅列にすぎないわけですが、学問上の概念には、生み出されたときに生み出した人が込めた意味が必ずあるので、やはり学説史は特別です。
それを「読み物」として手に取ることができるわけですから、本書を読むのはとてもお得ですね。 -
Posted by ブクログ
会計士視点で読み解く落語の面白さ
正直落語にはあまり興味はなかったが、会計士視点、と言う点に興味を持った。収録されている話の多くは、どこかで似たような話を聞いたことがあったが、同じ落語を聞いても、人によって、読み取る教訓は異なるし、違う視点を持った人の見方は勉強になる。同じ仕事をしていても、年とともに立場が変わり色々な経験をすることでも、捉え方が変わってくる。読書も読んだ時の年齢や状況、抱えている問題によって、読んだことのある本でも違う受け取り方ができる。自分ならどう解釈するか?にはその人の生き方や考え方が合わられているようで面白かった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ過去に大学の動画セミナーで学んだ会計史が面白かったので、復習も兼ねて。
全てのルールには、作られた原因と理由がある。
数字を無味乾燥なものとして毛嫌いする人がいるけれど、その数字が示すものを理解すれば面白いもの。
かつて、どこかで読んだ「その人を知るには日記より家計簿」のは、お金の流れには行動が伴うから。口だけの人もいるなか、数字は誤魔化せない。
〇15世紀・簿記の誕生
イタリア 15世紀欧州経済の中心地
アート好きならおなじみのメディチ家が複数拠点で銀行業を営むため始めた為替取引
その初期の持ち株会社の管理を可能としたのが、簿記
この多拠点銀行業で生み出したお金でルネサンスが花開いた
そしてメディチ家転落のきっかけとなったのは大航海時代(スペインとポルトガル)
〇16世紀・株式会社(所有と経営の分離)と証券取引所
スペインから独立したオランダ「商売の国」と呼ばれ宗教・人種問わず商売をするものを受け入れた
1602年オランダ東インド会社=多額の費用が必要⇒世界で初の株式会社⇒証券市場
東インド会社の凋落
①ずさんな会計
⇒経営判断の誤り・株主からの信用を失う
②高すぎる配当金
借金で配当金
③不正に対する管理の甘さ
〇19世紀・決算書と監査
16C英・木材不足⇒石炭の発見⇒石炭採掘時の湧き水くみ上げのために蒸気機関の開発⇒織物工場・大量生産⇒経済発展⇒蒸気機関車=初期投資が膨大⇒減価償却(費用を分散させ配当金を出せる)⇒会計計算が収支計算から利益計算に
株主の存在が大きくなる⇒現金主義から発生主義=粉飾がやりやすい⇒会計士による監査の誕生
〇20世紀初・原価計算と連結
カーネギー
素人でも大量生産可能な仕組みを開発=分業・標準化・機械化
適正価格・製品コストを知るために原価計算
JPモルガン
鉄道ブーム⇒(経営分析ブーム⇒)破綻鉄道会社を買い占める⇒モルガニゼーション・所有権を持ち経営再建⇒グループ全体を把握するために連結決算
〇投資家保護・会計が公的なものへ
大恐慌で当時違法でなかったインサイダー取引で大儲けしたジョー・ケネディ(JFKの父親)がルーズベルト大統領を応援
SEC初代長官に
アメリカ会計基準、CPA監査制度、決算情報の公開制度、インサイダー取引の禁止
〇国際会計基準
ダイムラーベンツがアメリカ市場でIPOすることが契機(独:黒字 米:赤字⇒会計基準の統一が必要)
〇管理会計・予算管理(予算から将来を見る)
ジェームズ・マッキンゼー
どれくらい売れるか?⇒どれくらい作るべきか?ムダな在庫や売損じを防ぐ
〇大量消費←割賦販売
19世紀初にGEが始めた
一部の金持ちの家電が一般人へ⇒大量生産⇒どの製品が売れているのかわからなくなる⇒製品別損益
〇ROI×利益率×回転率 デュポン公式(多角化による部門別管理)
短期的な儲けだけ:「利益」を元に判断できる
長期的成長・設備投資が大きい:ROI
〇ファイナンス(M&Aの増加⇒企業価値の計算)
ゴールドマンサックス
割安な会社を数年間保有⇒IPO、売却、合併で利益
可能にしたのが
①会社買収後の将来CFを見積もる
②将来CFを現在価値に割引計算 -
Posted by ブクログ
会計制度の詳細には立ち入らず、その成り立ちから現在までの発展を解説している。大まかに言えば、会計の発展は三段階あり、本書の三部構成は各段階に対応している。
簿記 → 財務会計 → 管理会計
本書のタイトルは「会計の世界史」であり、「会計史」ではない。会計の重要な歴史を中心に置きながらも、大航海時代のイタリアから産業革命まっただ中のイギリス、そして大陸横断鉄道の建設から現代にいたるアメリカを駆け足で抜ける世界史読み物に近い。また、時代を切り取る道具として絵画(第一部)、発明(第二部)、音楽(第三部)を軸に据えるという、面白い構成を採用している。写真やイラストがふんだんに盛り込まれ、柔らかい語り口とあわせて読みやすい。本書で会計を学ぶのは無理があるものの、簿記や財務会計、管理会計がどういった背景から生まれたのかが理解できる。
はしがきには、本書の特徴として次の2点が挙げられている。
・会計の歴史を物語として表現したこと
・簿記、会計、ファイナンスの全体を紹介したこと
これらの特徴は本書の中身を正しく言い表しているが、コーポレート・ファイナンスを取りあげた第三部は、物語として読むと少しばかり強引さが目に付く。管理会計だけだと第三部を書き切れなかったという事情もあるのかもしれない。
第一部から第三部の概要は次のとおり。
第一部は、15世紀のイタリアで誕生した簿記から、17世紀のオランダで成立した株式会社までの流れを描く。東方貿易で商売に成功したヴェネチア商人たちは帳簿を付ける必要に迫られ、そこから簿記が誕生する。やがて、17世紀に入るとプロテスタントの国・オランダに他国から商人が流れ込み、商業が盛んになる。ビジネスの大規模化にともない、身内(家族・親族)や仲間だけでなく、広く出資者を募るために、世界初の株式会社(東インド会社)が誕生する。アムステルダムには世界初の証券取引所も開設される。
第二部は、世界初の蒸気機関車を生んだ19世紀のイギリスに舞台を移す。鉄道の開設には土地・車両・駅舎など多くの固定資産が必要だが、初期投資に比して日々の運賃収入は小さく、開業当初は利益が出にくい。しかし、株主を満足させるためには利益が必要であり、そこで登場したのが「減価償却」。現金主義会計(収支=収入―支出)から発生主義会計(収益=収益―費用)への移行が始まる。その後、19世紀後半に入り、投資先がアメリカへと向かう。
株式投資が盛んになるにつれて、会計士による監査が一般的になってくる。貸借対照表と損益決算書を正しく作成し、監査を受けることで、投資家に正しい財務情報を提供することができる。さらに、1929年10月の株価大暴落を踏まえ、ディスクロージャーが強化され、投資家保護の視点が重要性を増した。20世紀後半からは、通信網の発達にともないグローバル投資の時代に突入し、国際会計基準が登場する。
第三部は、再び19世紀のアメリカに視点を戻し、鉄道会社から始まった管理会計の発展に目を向ける。外部報告のための財務会計に対し、管理会計の目的は内部利用。標準品の大量生産を基本とする製造業では、コスト削減による効率化が重視され、管理会計に標準原価計算が持ち込まれる。コストを変動費と固定費に分け、限界利益を明らかにすることで、予算管理が可能となる。管理会計のセグメント情報が製品別から事業別へと発展すると、セグメントごとの業績評価が可能となり、組織の分権化を進めることができる。