柳田邦男のレビュー一覧
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ノンフィクション作家、柳田邦夫さんの息子、洋二郎が自死をはかる。これまでの息子との会話から、息子が何を望んでいたか、父親としてどうするべきなのかを考え、臓器移植を決意していく。その決意までの思考を「生と死」「脳死問題」「臓器移植」などをキーワードにして、一人称、二人称、三人称の視点をおりまぜて書かれている。
私が「脳死」や「臓器提供」について考えたのは、きっと将来の進路を決めた中学生の終わり、高校生の始まりの頃だった気がする。両親に「脳死になったら臓器提供したい」という意思表示をしたところ、反対された覚えがある。いまだに、臓器提供したい気持ちは変わらないが、私はこれから母親の立場になる。果たし -
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福島第一原発事故を始めとする様々な事故や事件で露呈する国や企業の安全管理の脆弱性。それを隠蔽する体質、「いのち」の軽視。こうした今の日本の状況を「日本病」という治癒の兆しの見えない病に集約し、全体俯瞰の視点で描いたドキュメント。
安全管理を怠り、「いのち」に関わる大事故を引き起こし、さらには事故を隠蔽し、それが露呈した時、立ち行かなくなった大企業…その点、東京電力は国民の血税を大量投入し、政府に守られている。そういう政府も雪だるま式に増え続ける赤字財政に何ら手を打てず、さらなる国民からの集金システムを模索するので精一杯。普通の企業なら、東京電力も政府も、とっくに無くなっているはず。
今の日 -
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1945年、広島地方気象台の記録。
被爆直後の9月17日、枕崎台風が広島を襲っていたことを不覚にも初めて知った。
筆者は、8月6日まで、8月6日、8月6日以降の台員の動きを丁寧にたどる。8月6日の、気象台自身も被害を受けながら欠測なしの観測続行、中央気象台への通知手段探索の奮闘には本当に頭が下がる。市内の惨状の記録は忘れてはならないだろう。また、黒い雨の記録は、後に被災地域の再評価に結実する。
一方、1ヶ月後の枕崎台風の襲来は、気象台にとって、痛恨事となった。情報の収集・発信共に貧弱な状況での被災が如何に悲惨な結果を生むか。3.11もつながる複合災害の教訓は学び、伝えてゆかなければならない。
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1979年アメリカのペンシルバニア州スリーマイル島原子力発電所で発生した重大な事故について、その事象の進行を様々な切り口から辿ったノンフィクション。原子力発電所は言うまでもなく大変複雑なシステムなので、メルトダウンに至る事実の経過を正確に記述しようとすると、大変難解になりがちです。しかし、著者の柳田氏は航空機事故や医療事故などシステムとヒューマンエラーとの関わりを長年取材してきただけに、非常に分かりやすく、また正確に事故の全容を記述されています。なぜ原子炉内の水位が低下しているにも関わらず注水を止めてしまうのか、原子炉内の圧力を下げたいのに簡単に下げられないのはなぜか、など一般読者が感じる疑問
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祖父母が亡くなり,叔母が生死の境を彷徨ってからというもの
死について真摯に考えることが増えました。そして,姪が産まれてから
生について考えることが増えました。
どんなに頑張っても人の命には限りがある。ならば,未来の子孫のために
私には何が出来るのかということ考え,自らに落としこんで考えるならば
劣化しない価値あるデータを,生み出すことであろうと,暫定的な解を導いていました。
それを成し遂げるまでには,自分は死ねないし,まだ取り組み始めに過ぎないとも思っています。
今回「犠牲 わが息子・脳死の11日」を読んで,考えることがありました。
自死をした洋次郎さんは,長らく精神を病んでいた。
精神を病 -
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精神を病んで自死を図り、その後脳死状態になった息子との11日間の記録。
大きく二部構成になっていて、前半は突然の息子の自死から、彼の臓器移植を決意するまでの過程が丁寧に書かれています。そして後半は脳死について柳田さんの思いが綴られています。
著者の柳田邦男さんはノンフィクション作家さんだけあって感情を抑えた文章で語られています。それが却って痛々しく辛い。
25歳の若さで死を選んだ柳田さんの次男洋二郎さんの書いた日記や短編小説がいくつか紹介されていますが、鋭い文章で書かれた短編小説を読むと、ご存命であったら今頃素晴らしい作家さんになられたのではないかと、尚更その死が惜しまれます。
ホスピスやタ -
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ネタバレかつての日本主力戦闘機であった「零式艦上戦闘機」について書かれた物で、設計者:堀越二郎氏がいかにして日本の主力として君臨した戦闘機を描いたかに焦点を絞って書かれている。
まず堀越氏は、海軍から新しい艦上戦闘機の計画要求を満たすべく、当時主流の形態であった複葉機設計ではなく、あえて実例の乏しかった単葉機設計を選び七試艦戦を制作した(大判断)。七試艦戦は失敗に終わったものの、堀越氏はその失敗を踏まえて沈殿鋲を採用し、前作の七試艦戦より遥かに流麗な姿をした九六試艦戦を制作した(小判断)。さらに、引き込み足や超々ジュラルミンの採用の下、徹底した軽量化によって零式戦闘機は誕生した。
このエピソード -
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「冷たい夏の夕暮れに」、神経症というこころの病を抱えた次男洋二郎が25歳で自死を図り,脳死に至る。その11日間の揺れ動く家族の記録と、そこに生前の彼の日記、遺稿集、友達からの追悼の手紙などをはさみ、彼がどう生きていたのかを浮き彫りにしている。生きていた証しを、父親として丁寧に記している。
著者は脳死の専門家。<今こそ「科学知識による自己コントロール」という生活信条を実践しなければ>と考える。
しかし、著者は医療に関する本は数千冊、「脳死と臓器移植に関する本」も数十冊持っているが、「確実に脳死状態に陥っていく息子に対し」それが「ほとんど役に立たないことに気づいた」。
それは三人称の死ではな -
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「想像以上」「予想以上」という言葉と共に疑問に思っていた「想定外」という言葉から、各種災害(東日本大震災・チェルノブイリ・スリーマイル島・東海村臨界事故・原爆・阪神淡路大震災など)の原因や元凶、今後の対策に至るまで厳しい追求と的確な提言の書かれた本。著者の柳田邦男の性格がよく現れているとともに、最近の表面だけ取り上げての論評とは一線を画す重みのある内容に感服。特に、タイトルにもなっている「想定外」という言葉の定義を3つにまとめ、それをそれぞれ追求している所が本書の核心かもしれない。
それともう一つ。柳田にインパクトを与えたビートたけしの発言、「マスコミは5000人死んだ災害が起きたといって騒い -
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[焰のち豪雨、その下の人間]原爆が投下された広島をそのわずか一ヶ月後に襲った超大型の「枕崎台風」。気象に関する情報が途絶した広島で、数千名の死者・行方不明者を出したその災害と、2つの災厄にも負けることなく、生活を取り戻し、日常を持続させようと務めた人々の記録です。著者は、「核と災害」をテーマに多くの著作を手がけている柳田邦男。
8.15という「点」ではなく、その前後の時間軸である「線」、また原爆の直接の影響にとどまらない「面」までをも視野に入れた作品として超一級のノンフィクション作品と言えるのではないでしょうか。30年以上前に著された作品なのですが、危機管理、戦争、気象学、そして道徳的観点 -
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知られているもの、余り知られていないものを含め、本作は「普通の人達の目線」で「非情な事態」を描く…
現代の戦争は、「敵対陣営の軍事行動を阻む」ことを名目に、輸送、通信、産業の生産活動、エネルギー供給等々「社会が営まれる基盤そのもの」を破壊し尽くそうとする“総力戦”というものである。それ故に、「気象情報を伝える通信網」のようなものまで戦災で損なわれ、大型台風で「考え難い程の大きな犠牲」が発生してしまった…『空白の天気図』という本作の題名は象徴的だ。“天気図”というようなものは、作中に出て来る“観測精神”のような考え方で必死にデータを集め、毎日間違いなく作成することを常とするモノである。それに“ -
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ネタバレ爆心地から離れていたため全壊は免れたものの、台員たちはほとんどが被爆。悲惨な環境の中でも、「欠測」を出さないために、必死で観測を続ける姿勢が凄まじいプロ根性を感じさせる。巻末の後書きで、実に淡々と、一部では惰性と呼べる部分もあったようなことも記されていて、では、人間が死ぬまで食べることと排泄をすることをやめられないのと同じくらい、観測が生きることとなっていた人たちなのだろうなと感じた。
そんな必死の観測にもかかわらず、災害によって情報の伝達が遮断され、原爆被災のあとを襲った巨大台風の警報を市民に呼びかけることができず、多くの死傷者を出してしまう。
データの収集と、何よりもその情報を「活かす」こ -
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【人間が振り回された朝】周辺の自治体だけでなく、全米、全世界の注目を集めたスリーマイル島の原子力発電所事故。人々をパニックの境地に追い立てたその事故の原因、そして混乱の波及の仕方をドキュメントとして記録した作品です。著者は、飛行機や鉄道などの大型システムが絡む事故を徹底的に追い続けた柳田邦男。
タイトルだけを見ると、原子力に対して是か非かという本に見えなくもないですが、内容は極めて「危機管理」に特化したもの。合理的に考えられながらもいざというときにまったく役に立たない対策システムの危険性や、小さな不作為が次第に積み重なってとんでもない事故を引き起こす原因となることなどをしっかりと指摘してお