濱口桂一郎のレビュー一覧
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さて、上述の通り、安倍政権下で「同一労働同一賃金」という旗印の下で行われた働き方改革であるにもかかわらず、その同一労働同一賃金と称するガイドライン(「短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針」)においては、基本給については指針は職能給、業績給、勤続給、昇給制度の場合のみを採り上げ、同一労働同一賃金に最も
ふさわしい職務給をあえて無視していました。そもそも、圧倒的多数を占めるはずの両者の賃金制度が全く異なるケースについては、本文には一切記述がなく、注に抽象的かつ曖昧な記述が数行盛り込まれているだけでした。
おそらく、パートタイム・有期雇用労働法によって法 -
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日本の雇用問題とその背景を歴史から学ぶことができる。日本は欧米とは異なるメンバーシップ型の雇用であるという歴史は別の本で学んだが、女性が明治時代の繊維職の労働から戦時中の労働、戦後、、とどのような雇用形態を取ってきたのか、そこにある日本社会の都合による差別や制約も含めて知ることができ、勉強になった。
また、建前上は制度ができても実運用が成り立たない慣習、女性はこうあるものだといったもの、それが女性自身もそういうものだという認識を持ってしまっていただろう、というのも難所であったと考える。欧米も含め、過去に偉大なことをしてきた女性から学ぶこともたくさんあるのではないかと振り返る。 -
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前著『ジョブ型雇用社会とは何か』が秀逸だったので期待して読んだが、前著とは少し趣が違っていた。感想としては「今の自分には少し重い」という感じ。
内容は、戦前から戦中・戦後を経るなかで、日本の賃金体系がどのように変遷してきたかということを、淡々と綴っている。政府・経営者・労働組合それぞれが、その時々でどのような方針を打ち出して来たのか、豊富な引用を元に解説している。
全体的な流れとしては、戦前は職務に対して賃金が設定されていたのが、戦中の賃金統制を経て、戦後も職務ではなく所属給的な体系が温存される様が描かれる。ただ、著者の労働思想としては、欧米と同じく職務給(ジョブ型)の賃金体系を正しく導入 -
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戦前、工場監督官の女性が一人。日本でただ一人。今の感覚なら、すごい話だなと思うが、製造業を見回すと、工場で職場長をしている女性は、今だって珍しい。あまり、変わっていない。
この日本初の婦人工事監督官補、谷野せつ。日本女子大学卒。一等国から女の役人がいないと指摘された際に、谷野さんを一枚看板にして体裁を繕っていたのだという。体裁のための女性。これも、今と意識があまり変わらない。
労働者の賃金は、生活するに十分なだけ、与えておけば良い。そこには妻と子供を養う分は含める。労働力は、使い捨て。成功した起業家のみが人間であるかのような価値観。今も変わらない。これを変えるには、起業するか、副業や転職に -
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伝聞に頼ってゐる
メンバーシップ型とジョブ型とに大別してみると、なるほど日本と海外ではかなり異ることがわかる。
この本は日本のメンバーシップ型の矛盾点を中心に論じてゐる。読むとジョブ型のほうがまともだと思ってしまふが、ジョブ型にも若者雇用問題といふ弱点があり、著者はジョブ型正社員をいふ理念を提唱してゐる。新卒一括採用や人間力採用に由来する歪みが、刊行から10年経った2023年になっても感じられた。
しかし伝聞だけの推測と思はれる部分もあり、そこは蓋然性が低い。また、この本は2013年の刊行だから、この10年で何か変ったことも多いのではないか。 -
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いろいろと勉強になった。
ジョブ型とメンバーシップ型は本来どちらが上というものではなく制度として違うものであるというだけであるが、近年はジョブ型礼賛の風潮があり、しかもそれがジョブ型の趣旨を正しく理解していない言説になっていることを問題視して著されたもの。
ジョブ型とは採用時に職務内容を規定し、その職務を行う能力があるかどうかで採用し、ジョブをこなせているかどうかで雇用継続するか否かを判断するものであり、自動的な昇進や、先輩や上司による教育というようなものが存在しないものである。これに対してメンバーシップ型は、明確な職務の約束がなく、時間も勤務場所も会社側に白紙委任する雇用契約を締結するが、そ