濱口桂一郎のレビュー一覧
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ネタバレ[ 内容 ]
正規労働者であることが要件の、現在の日本型雇用システム。
その不合理と綻びはもはや覆うべくもない。
正規、非正規の別をこえ、合意形成の礎をいかに築き直すか。
問われているのは民主主義の本分だ。
独自の労働政策論で注目される著者が、混迷する雇用論議に一石を投じる。
[ 目次 ]
序 章 問題の根源はどこにあるか―日本型雇用システムを考える
第1章 働きすぎの正社員にワークライフバランスを
第2章 非正規労働者の本当の問題は何か?
第3章 賃金と社会保障のベストミックス―働くことが得になる社会へ
第4章 職場からの産業民主主義の再構築
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ] -
Posted by ブクログ
「ルポ 雇用劣化不況」を読んで、労働問題についてもうちょっと考えてみようと思って読んだ本。こっちの本は労働問題について基本的には制度(法律)を切り口にしている。
一言でいえば、ボリューム満点。そして、労働関係の書物に慣れてなかったり、労働法jについての知識がなければ完全に理解することはできない。そんなわけで、大体の内容しかわからなかった。以下、一部分のまとめ
日本型雇用システムをメンバーシップ契約(職務のない雇用契約)という点から説明しているのは興味深い。そして、この観点から、正規・非正規雇用者の間に均等待遇を論じ得るような共通の物差しがあり得るかどうかを問題とする。
他にも、現実に適合しない制度であったり、社会保障、ワークライブバランス、現行の労働組合に非正規社員も加入できるよう主張するなどとにかくボリューム満点。
読むなら気合入れて読まないといけないけど、それなりのものは得られるだろう。 -
Posted by ブクログ
ネタバレジョブ型とメンバーシップ型という雇用の仕組みを比較しながら、日本の雇用システムの問題を丁寧に解き明かしている一冊。
特に印象的だったのは、メンバーシップ型の雇用契約を「空白の石盤」とたとえた箇所。
日本では職務が曖昧なまま採用され、企業が必要に応じて仕事内容を書き足していく——この構造が、評価基準の不透明さや年齢依存の人事慣行につながっていると指摘していた。
また、大学教育と職業の接続が弱く、専門的スキルを育てにくい現状にも触れており、ジョブ型に移行するには企業だけでなく産官学の連携が不可欠だと感じた。
一方で、外資系企業が日本でどのようにジョブディスクリプションを運用しているか、という視点がなかったのは少し残念。
問題提起中心で終わっており、もう一歩踏み込んだ提案があればより良かったと思う。 -
Posted by ブクログ
さて、上述の通り、安倍政権下で「同一労働同一賃金」という旗印の下で行われた働き方改革であるにもかかわらず、その同一労働同一賃金と称するガイドライン(「短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針」)においては、基本給については指針は職能給、業績給、勤続給、昇給制度の場合のみを採り上げ、同一労働同一賃金に最も
ふさわしい職務給をあえて無視していました。そもそも、圧倒的多数を占めるはずの両者の賃金制度が全く異なるケースについては、本文には一切記述がなく、注に抽象的かつ曖昧な記述が数行盛り込まれているだけでした。
おそらく、パートタイム・有期雇用労働法によって法的に義務づけられている均等・均衡処遇についていう限りは、現在の日本政府のスタンスはそういうことになるのでしょう。ところが、法的拘束力のない情報提供サービスの次元にまで視野を広げると、日本政府が意外にも欧米型の職務給制度、それを支える職務分析や職務評価といった手法を企業に対して推奨している姿が浮かび上がってきます。
この間日本経済はバブル崩壊からの不況が続く中で、一九九五年には阪神・淡路大震災に加えて、急激な円高が進行して輸出産業が打撃を受け、さらに一九九七年には不良債権問題等から大手金融機関の破綻が相次ぐなど、深刻なデフレ状況に陥っていき、完全失業率もじわじわと上昇していきました。そうすると、労働組合側はなかなか大胆なベースアップ要求をしにくくなります。思い出していただきたいのですが、もともとベースアップという賃金の上げ方の基になった賃金ベースという概念は、戦時中の賃金統制令にせよ、終戦直後の公務員賃金や新価格体系にせよ、賃金をいかに抑えるかという問題意識から政府によって作り出された概念でした。それをいわば逆手にとって、賃金ベース打破=ベースアップを要求していったのが一九五〇年代初頭の労働組合であったわけです。それを可能にした背景としては、一九五○年から始まった朝鮮戦争による特需景気で企業の支払能力が高まったことがありました。企業がこれだけ儲かっているんだから、労働者にもその分け前をよこせというのは、要求として言いやすいものであったからです。しかし、これを逆に言うと、企業経営が困難な状況にある中で、(ジョブ型雇用社会において個々のジョブの価格引上げを要求するのとは異なり) 企業の人件費を引き上げることそれ自体を要求するというのは、かえって言いにくいものになってしまいます。一九九〇年代におけるベースアップの縮小と消滅の背後にあるのは、ベースアップという賃金の上げ方それ自体に潜むこの逆説であったのでしょう。
このように、ほぼ三十年ぶりにベースアップ型の賃上げが復活したとはいえ、それで万歳というわけにはいきません。そもそも本書で見てきたように、ベースアップ概念の基になった賃金ベースとは賃金をあげないための概念でした。その賃金抑制のための概念を逆手にとって、賃金ベース打破=ベースアップを要求するというスタイルが四○年にわたって続いたのですが) その根っこには企業単位の支払能力という枠が厳然として存在します。戦後期の急進的で対立的な労働運動ならともかく、高度成長期以後の穏健で労使協調的な労働組合には、企業経営にとって無理なベースアップを要求することはそもそも困難なのです。第二次安倍政権、岸田政権と、過去一〇年の賃金引上げが官邸主導による官製春闘とならざるを得なかったのも、ベースアップという日本独特の賃上げ方式の本質に根ざすものであったというべきでしょう。
この事態をいささか風刺的に表現してみるとするならば、「上げなくても上がるから上げないので上がらない賃金」ということになるのではないでしょうか。
「上げなくても」:ベースアップという形で無理やりにでも賃金総額を引き上げるということ
「上がるから」:定期昇給という形で毎年正社員一人ひとりの賃金は上がっていくものだから、
「上げないので」:わざわざ苦労してベースアップして賃金を引き上げるということをしなくなってしまったので、
「上がらない」:結果として日本人全体の賃金水準は全然上がらないままになってしまった、
というわけです。
逆に、日本以外の諸国がなぜこの三〇年間着実に賃金が上がってきたかといえば、無理やりにでも賃金を引き上げてきたからです。序章で述べたように、ジョブ型社会では賃金は職務にくっついています。人にくっついてはいません。従って、職務を変えない限り、原則として賃金は上がりません。日本のような定期昇給という仕組みはないのです。ほうっておいても賃金が上がる日本とは対照的に、ほうっておいたらいつまで経っても賃金は上がらないのがジョブ想社会です。そこで、職務に貼りつけられた値札をみんなで一斉に書き換える運動をせざるを得なくなるのです。それがジョブ型社会の団体交渉であり、その結果の改定価格表が労働協約ということになります。この事態をやはりいささか風刺的に表現してみると、「上げなければ上がらないから上げるので上がる賃金」ということになりましょう。
「上げなければ」:団体交渉による値札の書き換えをしなければ、
「上がらないから」:職務に貼りつけられた値札の額はいつまで経っても上がらないから、
「上げるので」:みんなで団結して団体交渉をして無理やりにでも値札を書き換えるので、
「上がる」:結果として一国全体の賃金水準が上がっていった、
というわけです。
「上げる」という他動詞と「上がる」という自動詞の間には暗くて深い川が流れているようです。 -
Posted by ブクログ
日本の雇用問題とその背景を歴史から学ぶことができる。日本は欧米とは異なるメンバーシップ型の雇用であるという歴史は別の本で学んだが、女性が明治時代の繊維職の労働から戦時中の労働、戦後、、とどのような雇用形態を取ってきたのか、そこにある日本社会の都合による差別や制約も含めて知ることができ、勉強になった。
また、建前上は制度ができても実運用が成り立たない慣習、女性はこうあるものだといったもの、それが女性自身もそういうものだという認識を持ってしまっていただろう、というのも難所であったと考える。欧米も含め、過去に偉大なことをしてきた女性から学ぶこともたくさんあるのではないかと振り返る。 -
Posted by ブクログ
前著『ジョブ型雇用社会とは何か』が秀逸だったので期待して読んだが、前著とは少し趣が違っていた。感想としては「今の自分には少し重い」という感じ。
内容は、戦前から戦中・戦後を経るなかで、日本の賃金体系がどのように変遷してきたかということを、淡々と綴っている。政府・経営者・労働組合それぞれが、その時々でどのような方針を打ち出して来たのか、豊富な引用を元に解説している。
全体的な流れとしては、戦前は職務に対して賃金が設定されていたのが、戦中の賃金統制を経て、戦後も職務ではなく所属給的な体系が温存される様が描かれる。ただ、著者の労働思想としては、欧米と同じく職務給(ジョブ型)の賃金体系を正しく導入すべきということなので、淡々とした解説の中に、たまに批判的な文言がちょこちょこ見られる。
個人的にはこれが少し気持ち悪くて、解説なら解説だけ、主張があるなら解説書に変に自我を出さずに、それをメインに書けば良いのに、と思ってしまう。(ただし、著者の主張自体には同意する立場。)
なお、知見の少ない分野なので、個人的には内容が理解しきれず、後半は目が滑ってしまった。(漢字率高すぎだって)
あとは、日本における現状維持の重力強すぎだと改めて認識するなど。今も所属給的な賃金体系が残ってるのって、戦時下の賃金統制を引きずってるのって、本当になんだかなあ。という感じ。 -
Posted by ブクログ
伝聞に頼ってゐる
メンバーシップ型とジョブ型とに大別してみると、なるほど日本と海外ではかなり異ることがわかる。
この本は日本のメンバーシップ型の矛盾点を中心に論じてゐる。読むとジョブ型のほうがまともだと思ってしまふが、ジョブ型にも若者雇用問題といふ弱点があり、著者はジョブ型正社員をいふ理念を提唱してゐる。新卒一括採用や人間力採用に由来する歪みが、刊行から10年経った2023年になっても感じられた。
しかし伝聞だけの推測と思はれる部分もあり、そこは蓋然性が低い。また、この本は2013年の刊行だから、この10年で何か変ったことも多いのではないか。