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Posted by ブクログ
日本の労働者は守られすぎ、という言説について考えるために読み始めた。
ワーキングプアや年越し派遣村が問題となった15年以上前の本だが、問題意識はいまだに通底する。
同一労働同一賃金や残業規制については一定前進がみられるものの、労働法制の改革は進んでいないということか...?
日本型雇用システムの最も重要な特徴である①長期雇用制度、②年功賃金制度、③企業別組合が、ジョブ型ではないメンバーシップ型の労働契約の性質に起因するというのはとても面白い発見だった。
自分がやりたい仕事じゃなくて、所属したい企業を軸に考えるのって何なんでしょう。忠臣は二君に仕えずとか忠孝みたいな東アジア的なところからきているのかしら。
労働者保護の程度という冒頭の問いに対して、整理解雇の要件は厳しいけど、それ以外の解雇の要件は緩やかという指摘は目から鱗だった。整理解雇を厳しくしてしまっているからこそ、平時に長時間労働や広範な配転を行わざるを得なくなっているという主張も面白い。
労働者法制については、目の前の具体的な権利にフォーカスしすぎることなく、制度の根本からもう一回考え直したほうが良いように思う。整理解雇も長時間労働もダメというのは企業にとって無理筋であり、めぐりめぐって労働者に対しても不利益になりかねない。変動が著しい環境における最適な制度というのを、雇用システムだけでなく教育なども含めてもう一度考えるべきなんだろう。
Posted by ブクログ
日本型雇用慣行の成り立ちと、労働法からみた現代の雇用にまつわる諸課題を丁寧に解説してあり、非常に分かりやすい。
終身雇用、年功的職能給制度、企業別組合、ホワイトカラーの長時間サービス労働などはすべて’日本型雇用システム’を支える重要なパーツであり、すべてつながっている。従ってどれか一つだけ変えようとしてもうまく行かないことがよく理解できた。これらはある意味日本文化の本質とでも言うものであり、一朝一夕には変わらないだろうが、いずれグローバルスタンダードに収れんしていくように思われる。
いまは非正規労働者というカースト外の身分を作ってそこにしわ寄せすることで何とか外国勢と戦っているが、今後若年労働者が減少し、多くの老人を支えるべき高生産性を実現していくにはサステナブルなシステムではない。
Posted by ブクログ
濱口圭一郎さんは、今や世の中に一般用語として受け入れられた「メンバーシップ型雇用」「ジョブ型雇用」という用語を初めて使われた方で、キャリア官僚、大学教授などを経て、今は独立行政法人労働政策研究・研修機構の研究員。
本書は、2009年発行であり、私の記憶が間違っていなければ、濱口さんが、「メンバーシップ型」「ジョブ型」という用語を使われるようになる前の著作だ。
職務を特定しないまま労働契約を締結することが、日本型雇用の本質である、と筆者はまず主張されている。数十年前、大学を卒業し入社した会社では、入社研修が終わり、「配属式」と呼ばれる式で配属先の発表を受けるまで、自分はどこで、どんな仕事をするのか分からなかった。今でも、新卒として比較的規模の大きな会社に入るとそういう状態のはずだ。説明の詳細は省くが、この日本型雇用システムにより、ある意味で、労働者がしわ寄せを受けているのではないか、というのが、本書の主張のメインの部分だ。
それは、色々ある。
日本的な長期雇用(終身雇用)を社会の仕組みとしてキープするために、労働者は、会社の決定により勤務場所や職務が決められる。それは、望まない転勤を招いたりする。特に家族持ちの場合には生活に対しての影響は大きい。しかし、判例では、相当な部分まで、労働者は会社の命じる転勤に従うべきであるという判断がくだされたりしている。そのようなことは数多い。
本書は、どちらかと言えば、そういった問題を、労働「行政」「法制」「政策」の視点で論じたものであり、割合と実際的・実務的な話が多い。人事管理の仕事等に関係している人にとっては、頭の整理にもなる。
Posted by ブクログ
日本型雇用システム(長期雇用、過度な年功賃金、企業別組合)が適用されるのは正社員のみであり、その背後には多くの非正規労働者が存在する。その格差是正のアイデアの一つに、EU等で採用されている同一労働同一賃金(長期雇用を前提とした過度な年功賃金制度からの脱却)がある。本書の中で関心を持ったのはその部分で、本書では、賃金制度にメスを入れる時に整備されておくべき社会的条件を考察している。EUにおける非正規労働規約の焦点は均等待遇原則(基本的労働条件について差別されない)にあり、ベースには男女平等があるらしい。一方男女均等の観点で日本は、男女を等しく長期雇用に組み込んでいく慣行が出来上がり、これは正社員の総合職と一般職に代表されるようなコースの平等と言える。基本的労働条件においては日本は、パートに対して賃金の均衡処遇の努力義務を課しているものの、非正規労働者(派遣労働者)には均衡処遇も否定している(賃金は外部労働市場で決定されるという整理)。同一労働同一賃金を導入する場合の社会的条件の一つに、年功賃金が担っている生活給の側面(正社員への長期的な安心の提供)を誰がどのようにカバーするのかという問題がある。本書では市場経済の交換の正義と、福祉社会の分配の正義が相容れないことを指摘し、公的な仕組みで負担していくことを説いている。企業の福利厚生の一環である住宅手当や家族手当などは企業の魅力を高めることもできるが、労働の対価という観点では不正義になる(同じ技能を持った社員でも、扶養する家族が多いほど給与が多くなる等)。本来政府がやるべきところを長年企業がやってくれてたもので、著者は早速、生活保護の一部雇用保険化などのアイデアを出している。年功賃金には中高年層への過剰な対価の提供というデメリットがあり、イノベーションの阻害要因にもなるから、日本でも長く見直しの機運があるが、現実には技術革新による配置転換が難しくなったり、今の制度に甘んじてる人たちがたくさんいるため(非正規では組合として交渉できない)、現在でも大きな変化はないように思える。生産性の低い組織となり利益が出なくなれば、また非正規が増える悪循環になる。となると、まず正社員がいつ辞めても大丈夫と思えるくらいの制度が用意される必要があるだろう。
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