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Posted by ブクログ
勤め先の会社でジョブディスクリプションが整備されました。これが「ジョブ型」か、とやんわりとした認識しかありませんでしたが、社内で異動先を公募する際の参考資料としてしか活用されておらず、何だか早くも死蔵となりそうです。そんな経緯から、ジョブ型って何なんだ?という素朴な疑問を持つに至り、書店でズバリのタイトルが目に入りこの本を手に取ったのですが、おかげでかなりスッキリしました。やっぱり大きな認識相違があったんだとわかりました。
本の後半ほとんどは、日本で流布されているジョブ型が得たいの知れない某かになってしまっていると思われる歴史的経緯について、労働法制を中心に解説されています。その中で、米国と欧州と日本の違いもザックリと掴むことができます。これだけの内容をよく1冊にまとめたものだと感じるのは、私に前提知識が皆無だったからだと思うわけですが、似た状況の方にはお薦めです。
考えたこととしては、日本はやっぱりここでもガラパゴスだということと、しかしそれは優劣ではなく特色だということです。むしろ誇らしくもあると感じるくらいです。長らく元気・自信のない日本ですが、賃上げが叫ばれる昨今、雇用という観点からも自らの立ち位置を見定める価値があり、その上でどうやって未来を切り開いて行くべきか我が事として考えて行くべきだと思いました。良い本でした。
Posted by ブクログ
以前から人事制度や労政に興味があり、ジョブ型雇用の概念も正しく理解しているのだが、最近やたらこのワードを聞くようになって「またどこかの人事コンサルと近視眼的経営者が結託して良からぬたくらみをしているな」と感じていたところ、濱口氏の新作が出るというので迷わず購入。本書で日本の特殊な雇用制度が成立した背景や論点を改めて整理することができた。前作同様平易な語り口で素人にも理解しやすい良書。
人事制度に限らず、世の中の大抵のシステムは無数の個別の施策が協調して成立しているのであって、その中の一つの部品だけ評判の良い(とされる)ものに取り換えてもバランスが崩れて上手くいかないことが多い。昨今のいわゆる「ジョブ型」も、採用・処遇制度はもちろんの事、教育から年金制度まで社会のありようすべてをジョブ型にハーモナイズさせなければ、結局どこかに歪を生じさせるだけで終わる。投資に対しては非常に抑制的で慎重なのに、なぜか組織や人事制度の改変にはやたら冒険的な経営者が多いが、下手をすると屋台骨を揺るがす重大なリスクがあることを肝に銘じるべきである。そもそも人事・雇用制度のような社員の人生を直接左右する領域で安易に冒険をすることは許されるものではない。
Posted by ブクログ
労働法、社会政策の専門家であり、労働政策研究所所長を務める著者による、「ジョブ型雇用」を開設した本。
2021年刊行。
著者は冒頭、自身が前書『新しい労働社会』で日本的なメンバーシップ型雇用と対になる「ジョブ型雇用」を提唱し、流行するに至ったが、世に間違った理解が広まり、浅薄なジョブ型語用論者が溢れていることを懺悔する。
その上で、本書にて「ジョブ型雇用」とは何であり、また、何でないのかを説明する。
著者の説明をまとめると以下である。
「ジョブ型雇用」とは、企業における各職務のジョブディスクリプションを明確にした上で、そのジョブに社員を当てはめていく雇用形態である。
ジョブ型では、その社員が職務に就く際に、その職務を遂行する能力があるかのスクリーニングを行っているため、一部の幹部候補を除いて会社が評価を行うことはない。
新入社員をOJTで教育することもない。
その職務にアサインされた時点で、職務をこなすことができることが前提になっており、また別の職務を任されることもない(社内で別のジョブに募集しない限り)から、評価も教育も必要ないのだ。
著者はこの基本的な説明を展開した上で、日本において混同されている認識を訂正し、さらに日本型雇用が今の形になった経緯、賃金決定の基本的思想、労働組合の矛盾など、周辺問題に切り込んでいく。
日本におけるジョブ型雇用に関するよくある誤解の例として、「ジョブ型雇用=解雇されやすい」という言説があるが、これはまったく間違っていると著者は言う。
日本以外の主要国はほとんどがジョブ型雇用社会だが、アメリカを除くすべての国が妥当な理由のない解雇を規制している。
解雇のされやすさ、されにくさというものは各国の法令に依るものであり、ジョブ型かメンバーシップ型かという形態には関係ない。
日本で蔓延るこの誤解は、アメリカ社会を見たバイヤスに引きずられた産物だと言える。
むしろ、タスクをこなせても社内のメンバーとして不適であることを理由に実質的に自由解雇が可能な日本社会の方が、アメリカ以外の国から見ると奇妙な存在だと見られている。
このように、本書ではジョブ型雇用における正しい理解を与えつつ、問題提起を図る一冊である。
本書を読んで個人的にひとつ考えたのは、職務に人をつけるのではなく、人に仕事をつけていく日本において、欧米的雇用流動性を達成することは難しいということだ。
その理論前提を無視して流動性の向上という結果だけを追い求めても、企業と社員双方にとって不幸な結果しか生まない。
故に、日本社会のリストラクチャリングとして目指すべきは、正しいAs-Isを把握し、その強みを活かすTo-Beを実現していくことである。
本書はその一役を担う良書だと思う。
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