濱口桂一郎のレビュー一覧
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『働く女子の運命』 濱口圭一郎
2022年10月―12月期 グロービス参考図書
本書でも『若者と労働』と同様に、雇用保障と引き換えの職務・労働時間・勤務場所が無限定の労働義務を負う正社員と非正規雇用の二極化する日本的雇用慣行をベースに論を進めている。
女性はその中で、育児やその他の女性の身体的特徴からなる活動と上記の無限定的な正社員像の狭間で退職し、育児の見通しが立つと非正規雇用での復帰とならざるを得ない状況となる。
濱口氏がかねてより主張するジョブ型雇用やジョブ型正社員像であれば、こうした女性も給与は正社員として、業務はジョブに限定されるため、これまでの日本の少数精鋭的な無限定型の正社員と -
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◯労働分野の勉強はほとんどしていない自分にとっては、面白いように新しい知見を得られる一冊であった。
◯特に印象的だったのは、日本の若者の就職の実態と、労働法制がずれているという点が面白い。なんのための法令だか分からなくなる。これではブラック企業や過労がなくならないのもなんとなく頷ける。(この辺りは経済界と政界の折り合いがもたらした悲劇なのかもしれないが)
◯また、日本の就活が、採用基準の意味不明な人間性を見ているのは何故かということにも、一定の納得が得られた。確かに、現在の日本の大学では就職のためのスキルを得られない文系大学や講義が多すぎる気がする。
◯この辺りはそれこそ「革命」でも起きない限 -
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日本の雇用システムの歴史的流れとその中の女性労働者の立ち位置が整理されていてとても読みやすくわかりやすかった。
ワークライフバランスには、労働時間を規定する第一段階と柔軟性をもたせる第二段階があり、日本は第二段階については他国と遜色ないくらい充実してるのに第一段階が空洞化(時間無制限な労働義務)しているから、育児や家事で時間が制限されることが決定的なデメリットとなり、結果育休世代がジレンマに投げ込まれるとの説明は納得感あり。
国民は勤労することで国家に奉仕し、国家は家族含めて勤労者を守るという立て付けが、現在も企業と社員の関係性の中で生きている。
日本がメンバーシップ型からジョブ型に移行 -
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日本人は、所属先を失ったり、不当に扱われたりすると、
簡単に自信を喪失したり、最悪、自殺します。
所属と日本人を考える上で一番参考になるのが、
就職活動です。
ここでいう就職活動は、日本の大学生が3年時から、
行う新卒定期採用制への参加、通称就活を指します。
これがなぜ、一番参考になるかという、
就活に参加するか、しないかが、
学生が、日本で職業人生を
歩む上で極めて重要になるからです。
私は以前から、この就活は、戦前・戦中の、旧日本軍への、
徴兵制と、全く変わらないんじゃないかと思っています。
つまり、自由意志とは関係なく、強制であり、
参加しないものには、
社会からの制裁を社会的経済 -
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ネタバレとてもおもしろかったです。
現代の日本の労働状況をときほぐして説明してくれる本でした。
日本の、職業に直結しない教育の度合いというか、
卒業して就職へ臨む若いひとたちの
「これまでの教育が職業に役立つかどうか」の意識というかは、
先進国で最下位だったそうです。
義務教育を受けても、それがその後の就職にはつながらないと
日本人は考えているし、実際そうなのでした。
そんな日本の労働システム。
本書では、メンバーシップ型と読んでいます。
年功序列だとか、新卒一斉就職だとか、
そしてそれらとマッチングした企業内のシステムだとか、特殊なんですね。
欧米に限らず、中国を含むアジアの先進国にも、
日本の -
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戦後の女性の労使関係史をまとめた新書だが、(戦後の)日本的労働観がその前提としてまとまっている良書。
欧米の仕事内容が規定された労使関係は、もともと女性と男性のジョブを分け賃金格差もあった。1950年ごろを見れば男女差別は日欧米共に歴然としてあった。
現在の欧米では流動性の高い就職状況下で規定されたジョブと賃金が結びつくことによって、女性を賃金の高い職につけるというアファーマティブアクションで分断の壁を少なくすることができている。一方日本は、流動性がなく、会社が従業員の生活給を出す著者の言う会社に従業員の生活が取り込まれるメンバーシップ制を敷いており、ジョブと賃金が結びつかず、無理やり、総合職 -
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■BGとOL
・BGは1950年代末から60年代にかけて短期勤続の女子事務員を指す言葉として流行
■戦前と戦後を貫く女性労働の特色は短期勤続
■会社側から結婚退職制の採用とその理由が示された「住友セメント事件」
・結婚前の女子は既婚女子に比して家事等に煩わされない
・結婚後において家庭本位となり欠勤が増え,適格性を欠き,労働能率が低下
・男女職員の実質的平等を実現するには女子職員の賃金体系を男子のそれと均衡のとれるよう低下させるか,高賃金で結婚までの短期間に限り特定の職種につき雇う
■20世紀初頭の日本では年功的な賃金制度など存在せず基本的に技能評価に基づく職種別賃金であった
■日本に -
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ネタバレ日本の賃金制度について、資料が多い内容ではあるが真面目に書かれた印象の本。
・日本以外の国では職務の内容が雇用契約に規定されている(職務給)が、日本の場合はこれが特定されていない。日本における雇用の本質は職務(job)でなく所属(membership)にある。戦後まもなくは子供の数などによって給与額が決まるという生活給であった。これをより合理的な賃金体系へということで現在では人を評価する職能給となっている
・定期昇給というのも戦後の激しい労働争議に困った経営陣が作り上げた巧妙なシステムであったが、長い間定昇+ベアという時代が続いた。バブル崩壊後は定昇のみで、経営陣にとっては給与の支払総額が -
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日本の賃金制度の変遷を整理したもの。その記述は簡便なものであるが、明治期や大正期の賃金制度から始まっており、通史的に知ることが出来る。
ただ、自分の興味の対象は、主としてバブル崩壊期以降のもの、せいぜい広く考えても、第二次大戦後のもの。
大戦後の流れを簡単に整理すると、①電産型生活給的賃金②経営側による職務給の提唱(実現せず)③職能資格制度をベースとした職能給体系(少なくとも大企業の多くはこの方に落ち着いたはず)、ここまでが高度成長期~安定成長期④オイルショック後、労使の関心が「賃金」よりも「雇用維持」に移行⑤うたかたのバブル期⑥バブル崩壊~経済低迷期での労務費抑制施策、ということだと理解し -
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日本で長年に渡り賃金が上がらない理由を明治から戦前、戦後の歴史と合わせて解説。
定期昇給があっても日本の賃金が上がらない理由として、賃金総額ありきで制度を適用しているからとあります。定期昇給で年々賃金は個々で、賃金は増えていくが、高い賃金を得ていた高齢の労働者が定年などで抜け、新たに新卒などの賃金の低い労働者が加わることで、賃金総額は変わらないためという。
また、日本は欧米のような個々のジョブ型雇用社会ではなく、企業ごとのメンバーシップ型雇用社会のため、個人と業務を結びつける職能級よりも職務級が適用されている部分も大きい。
日本は欧米の様な契約社会とは違うので(何となくその場の空気に流されてい