あらすじ
経営者と従業員の利害は、どのように調整できるか。労働者の団結や労使協調、あるいは経営参加という現代の労使関係の理論はどのように生まれたか。英国のコレクティブ・バーゲニング、米国のジョブ・コントロール型労使関係やフランスの自主管理思想、ドイツ型パートナーシャフト、日本型雇用など、世界中で模索され、実践されてきた労使関係の理想と現実とは。労働イデオロギーの根源を探訪し、働くということを根本から考える一冊。
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Posted by ブクログ
タイトルは、「働き方改革の世界史」であるが、内容は、「資本と労働の対立と協調の近代史」、もっといえば「経営と組合の関係の近代史 国際比較」みたいな感じで、タイトルと内容はかなり違うかな?
本を買うまえに、いわゆる「働き方改革」の本ではないことを確認していたので、とくにそこについては違和感はなかった。
が、驚いたのは、近代史が歴史的な流れを通じて描かれるわけではなくて、この分野の「古典」の議論を紹介しながら、イギリス、アメリカ、ドイツ、フランス、いわゆる欧米型の制度や現実の歴史が議論される。
そうした欧米型のもつ問題点を考えたときに、なぜか理想として浮かんでくるのが日本型の雇用制度というのが驚き。
たしかに、日本型の雇用制度はいわゆる「日本型経営」の重要なパートということで、70~80年代には世界の注目を浴びたのだが、その後の日本経済の凋落にともなって、忘れられていく。
と言っても、世界的にこれがよいという制度があるわけではなくて、結果的には、新自由主義的な個人と企業との関係というところに帰着しつつあるのかな?
今となっては、なんだったかわからない日本型の経営というものがあって、バブル崩壊後、それは否定され、欧米的な経営への転換をずっと模索して、一部の会社はなんとかなったのかもしれないが、日本企業の大勢は良くも悪くも日本型雇用のシステムのなかでもがいているのが現状かな。
歴史とか、国の文化、企業文化のなかでできあがったものは、なかなか変えることは難しいわけで、「過去の栄光」へのノスタルジックな退行になってしまうリスクはありつつも、なんらかの形で「日本型経営」を今のコンテクストのなかで再活用しているのが大事なのかな?と思っている。
そんな日頃の考えを、労働、雇用関係という視点でもう一度確認できるような本だったな。
歴史的な記述がもう少し欲しい気はするが、「古典」を通じて、問題にアプローチすることで、理論的に問題を理解できたと思う。
ちなみに、ここで紹介されている古典は、読んだことのないもの、というか、そんな本があることも知らなかったもの。
結構、なるほど感はあった。
Posted by ブクログ
労使関係の歴史について、主に欧米の古典を紹介しながら概説した本。
数年前に「ジョブ型」に触れた時も新鮮で仕方なかったが、本テーマも初耳な事ばかり。しかしまたもジョブ型/メンバーシップ型に接続する議論になるとは(考えてみれば当然だけど)意外だった。また欧米のジョブ型と一口に言っても歴史的経緯や背景から色々な違いや時代毎の変化があって、単純に良し悪しは語れない事も痛感した。
日本の労使関係論は切れ味鋭い渾身の一冊のみ紹介となっているが、連載は更に継続中の様なので、続編にも期待したい…。
Posted by ブクログ
メンバーシップ制から最近話題のジョブ制度に変えるにも、制度の成り立ちや歴史を知らないと失敗するかもと感じた。本当に困っている人向けではなく、スキルのある人の組合成立の話なので、ある程度既得権益のある組合の人は役立つかもしれない。
Posted by ブクログ
労働・雇用の二大巨頭といえる濱口桂一郎氏と海老原嗣生氏の共著。
といっても、本文の7割程度は労働思想の古典からの引用で占められている。
内容は「働き方改革の世界史」ではなく、「労働組合世界史」「労働思想史」。売れそうなタイトルにしたのは出版社の意向だろうか。
予備知識が必要で難解、議論レベルが高く、僕を含めた普通の人は、要旨だけつかむのがやっとで、一読では消化できないと思う。
Posted by ブクログ
タイトルは「働き方改革の世界史」だが内容は組合ばっかり。
正しくは「産業革命以降の組合史」。
日本特有の一企業内にある労働組合が左翼思想と親和性を持つ理由など書かれており興味深い。