北康利のレビュー一覧
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ギリシャ神話でのパンドラの箱に残っていたのは希望だと。
吉田茂、白洲次郎が戦後荒廃した国土を見て、それでも残ったのは日本人である、と。
職人の歴史。そのルーツを辿ると神話にまで遡る。石凝姥命は天照大御神を召喚する為に天香具山から採取された胴を用いて八咫鏡を作った。更に飛鳥時代、石凝姥命を遠祖として鏡作連という職人集団が形成され、彼らが鍛治をつかさどった。
本書一冊を通して、職人の歴史から、建築、紙、日本酒、刀、人形、陶磁器、車などなど各分野の現在、伝統工芸技術、後継者不足、精神性、そこから学び得るもの、行政のあり方、果ては国力と、実に壮大なるが、貫かれる主旨は職人に対する敬意である。
日本人のものづくりに対する姿勢、刻み込まれたDNAが、昨今取り沙汰されるクールジャパンの背景だ。
貴方の好きな外資ブランドの眼鏡のフレームも福井の町工場のお爺ちゃんが作っているかもしれない。レストランの料理人やパティシエが使う包丁やその道具は新潟の町工場のお爺ちゃんが作っているかもしれない。
日本に限らず、海外のギルド、マイスター、マエストロについても触れられている。
エルメスの馬具屋、フェラガモの靴屋、フェラーリの技術も元は馬車職人の技術が連綿と刻まれている。
職人たちの実直なものづくりに対する姿勢、頑なまでの追求性、精神性。
大量生産、大量消費、ファストフード、ファッション...全てを否定するわけではない。
一つの品物、作品が出来上がるまでには、数々の人の手が加わり、その裏にはものづくりに対する真摯な姿勢をもつ職人の方々がいることを忘れてはならない。良いもの、本物を長く大切に使うことの大切さを改めて実感させてくれる一冊でした。
読む人によっては、拒絶反応をされる方もいるかもしれませんが、個人的には今年読んだ本の中でベスト5には入る良書でした。 -
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サントリー2代目社長の佐治敬三氏と開高健氏の二人の生い立ちを追うノンフィクションの下巻。開高氏がサントリーに入社して宣伝部に配属され、数々の名キャッチコピーを発信し、それに呼応するようにウイスキー事業を拡大する佐治氏の活躍が描かれています。本書中に紹介されている佐治氏の次の言葉「オーナー経営者が最も自由な判断をしていると思う。親の七光りはプラス要因。それを生かせる男が世襲するなら悪いことではない。世襲でなければならないといった社会は困りますがね」は、オーナー経営者の父を持つ私としても肝に銘じたい一節でした。
上下巻を読み通してサントリーが文化事業に熱心である理由がよく分かる気がします。 -
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サントリーと言えば、商品の印象的なコマーシャルが数多くあって「宣伝が上手い」というイメージがあるのではないでしょうか。広告上手のサントリーを築いたのが2代目社長であった佐治敬三氏と、当時の宣伝部に属していた開高健氏の2人です。
佐治氏が開高氏の才能を存分に発揮させ、非上場企業でありながら日本の食品産業で巨大な存在となるまでの経緯を2人の生い立ちを追いながら描いています。
初代社長で佐治敬三氏の父鳥井信治郎氏の時代に挑んだワイン事業やウイスキー事業への参入などサントリー創業直後の状況から戦後まもなくまでが上巻で扱われています。
佐治氏と鳥井信治郎氏との親子関係など興味深いエピソードもたくさん紹介されています。 -
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20世紀を代表する偉大なる経営者松下幸之助氏の半生を書いた一冊。
松下電器を創業し、ソケットや自転車ランプの開発に始まり、家電業界そして日本のみならず世界を代表する企業へと成長させたその手腕そして、先見の明と本質を見抜く力は卓越しており、読んでいて舌を巻くばかりでした。
また、水道哲学や企業は社会の公器など考えも素晴らしいものがたくさんあり、経営者の域を超えた人格者であることや晩年まで政党の結成を行うなど第一線で活躍されていたことも本書を読んで知り、印象に残りました。
人との出会いも印象に残っていて、初期の右腕である井植歳男そして、名参謀の高橋荒太郎や好敵手であるダイエーの中内功やソニーの井深大と盛田昭夫コンビ、またトヨタの石田退三からの学びの姿勢など数々の出会いを通じての第一線に立っても謙虚な姿、そして経営者としての誇りを魅せる姿など松下幸之助氏の器の大きさや人間の深さを存分に感じることができました。
この日本において世界を代表する大企業を作り上げ、自身の哲学は書籍などを通じ後世に語り継がれた偉人と同じ時代を生きられている喜びを感じた一冊でした。 -
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雑誌の「選択」に田中角栄と岸信介の似ている点と違う点を論評しているコラムがあって、改めて岸について知りたくなった。そうしたところ、我らが北先生が既に岸信介の評伝を書かれているじゃないか!ということで早速読んでみた。変わらず北作品は平易な文章でサクサク読み進める、控えめだけどリアリティのある会話の風景が想像力を搔き立てる。あっという間に読み終えた岸信介の感想は、こういう人物は当時よりも数十年あるいは相当に距離を離れて初めて適切な評価を得られる人なんだなということ。端的に言えば、岸は2つの国(満州国と戦中戦後の日本)の経済産業、社会保障体制を作り上げた人物であり、戦後はいまにつながる日本の安全保障の体制と独自のアジア外交を打ち立てた人物である。しかも、それらを数十万人の若者が家の外を囲んでいまでは想像も付かないような圧力をかけるなかで数年間でやりきったというとてつもない叛骨心というか意思の人物であったことがこの本を通じて理解ができる。
またこの本では改めて保守合同、55年体制の裏舞台を知ることができる。吉田茂、鳩山一郎、大野伴睦、そして三木武吉と岸との虚虚実実の駆け引き、特に三木武吉と岸の大きな政治イシューを掲げ、それの達成とあれらばすべてを飲み込む柔軟さや闘争本能には底知れぬ凄みを感じずにはいられなかった。
この本で唯一残念なのは、岸のカネと女の話が少ないことである。世間的には有名なCIAと岸の関係には言及がなく、おそらくケタ外れの金が動いたであろう東南アジア外交の賠償時のことも「岸は満州人脈の一人である久保田豊にダム建設を請け負わせた。」の1行で済ませている。まあ、ここは北先生の"高度成長期の日本へのラブレター"のロマンの一環で野暮なことは書かなかったと解釈をしておきたいと思う。
いずれにしても大義に対する意思貫徹力、それを推進する上での柔軟性や闘争力、実務能力。そして大きすぎて同時代の人ではなかなか評価できないそのスケール感、どれをとっても岸の爪の垢でも飲ませてもらって、少しでも自分もそういう人物になりたいものだと思わせてくれる本であった。あ、ちなみに、この人は安倍首相の祖父。爪の垢どころか血を分けてもらった現在の宰相の手腕を今後もしばらく拝見させてもらいます。 -
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【本の内容】
<上>
日本でいちばん格好いいといわれている男・白洲次郎。
明治三五年に兵庫県で生まれ、英国へ留学。
戦後、吉田茂の側近として日本国憲法制定の現場に立会い大きく関与した。
しかし、彼は表舞台には立たずに、在野精神というダンディズムを貫き通すのであった。
初めて知る方にもお勧めの白州次郎評伝決定版。
<下>
少年のようにスポーツカーをこよなく愛した一方で、戦後いち早く日本の経済的独立を目指し通商産業省創設に奔走。
ところが創設後はすっと身を引く。
全てが次郎の「紳士の哲学」であった。
エッセイスト白洲正子とともに過ごした彼の人生を膨大な資料を基に解き明かす必読の白洲次郎評伝。
[ 目次 ]
<上>
稀代の目利き
育ちのいい生粋の野蛮人
ケンブリッジ大学クレア・カレッジ
近衛文麿と吉田茂
終戦連絡中央事務局
憤死
“真珠の首飾り”―憲法改正極秘プロジェクト
ジープウェイ・レター
「今に見ていろ」ト云フ気持抑ヘ切レス
海賊と儒学者と実業家のDNA
<下>
巻き返し
ケーディスとの最終決着
通商産業省創設
只見川電源開発
講和と独立
そして日の丸は再び揚がった
素顔の白洲次郎
日本一格好いい男
葬式無用、戒名不用
[ POP ]
日本で一番カッコイイ男・白州次郎伝。
謎の多い人ですが、それがまた好奇心をそそります。
この先こんな人は現れないでしょう。
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ] -
Posted by ブクログ
【本の内容】
<上>
日本でいちばん格好いいといわれている男・白洲次郎。
明治三五年に兵庫県で生まれ、英国へ留学。
戦後、吉田茂の側近として日本国憲法制定の現場に立会い大きく関与した。
しかし、彼は表舞台には立たずに、在野精神というダンディズムを貫き通すのであった。
初めて知る方にもお勧めの白州次郎評伝決定版。
<下>
少年のようにスポーツカーをこよなく愛した一方で、戦後いち早く日本の経済的独立を目指し通商産業省創設に奔走。
ところが創設後はすっと身を引く。
全てが次郎の「紳士の哲学」であった。
エッセイスト白洲正子とともに過ごした彼の人生を膨大な資料を基に解き明かす必読の白洲次郎評伝。
[ 目次 ]
<上>
稀代の目利き
育ちのいい生粋の野蛮人
ケンブリッジ大学クレア・カレッジ
近衛文麿と吉田茂
終戦連絡中央事務局
憤死
“真珠の首飾り”―憲法改正極秘プロジェクト
ジープウェイ・レター
「今に見ていろ」ト云フ気持抑ヘ切レス
海賊と儒学者と実業家のDNA
<下>
巻き返し
ケーディスとの最終決着
通商産業省創設
只見川電源開発
講和と独立
そして日の丸は再び揚がった
素顔の白洲次郎
日本一格好いい男
葬式無用、戒名不用
[ POP ]
日本で一番カッコイイ男・白州次郎伝。
謎の多い人ですが、それがまた好奇心をそそります。
この先こんな人は現れないでしょう。
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ] -
Posted by ブクログ
ネタバレ成功者の共通点の一つに”聴き上手”であることと、新知識の吸収に貪欲であることが挙げられる 問題は成功した後にある。成功しても自分を律し続け、謙虚さを失わないでいることのできる人間は哀しいほど少ない 銀行を救うのは関係重役や株主を救うためではない。その裏に何千何十万の預金者があり、且つまたそれには多人数の家族があるので、それを救うためである 彼らに共通していたのが、高等教育を信用していなかったことだ 一個の事業の成功するかしないかの根本原因は、一にも人物、二にも人物、その首脳となる人物の如何によって決することを言明してやまない ロスチャイルドは、今でも日銀の大株主である
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Posted by ブクログ
上巻に引き続き、下巻は1946年からスタート。戦後のGHQとのやりとりの中で白洲次郎がどんな言動をしてきたかを追いかけ、当時の政治情勢についての解説も加えつつ、次郎が息を引き取るところまで、さまざまなエピソードが記されている。
悪いことはあまり書かないのだろうと思って差し引いても、人間味があって正義感あふれる人物像が伝わってくる。この時代だからこそ通用したであろう事柄は沢山あるし、市井の人々とは違う世界に住んでいたことも事実。彼の言動の全てが正しかったなどとは勿論思わない。
しかし、現代の日本に、これくらい本気で先を見据え、国のことを考えようとしている政治家が果たして何人いるのだろう。こういう人物が輩出されない世の中の仕組みのせいなのか、そういう人は政治家にならないだけなのか・・・あるいは政治家になろうとしても総出で排除されてしまうとか。
もう少し何とかならないものなのか?現代の政治について疑問符が止まらなくなる一冊だったけれど、疑問符をつけているだけでは意思表示にならない。たとえ自分の考えにピッタリ合う政党がなくても、きちんと考えて、選挙には行かないと、ね。 -
Posted by ブクログ
彼のことを記した書物はずいぶん沢山あるけれど、これは順を追って、その時、その時の政治状況なども比較的丁寧に説明してあって分かりやすい。白洲次郎という人の、そもそもの家柄や周囲の人々の生い立ちに至るまで丁寧に記されている。
上下巻のうち上巻にあたるこちらは、1902年に彼が誕生してから、敗戦しGHQと憲法についてすったもんだのやりとりをするところまでが取り上げられている。白洲次郎という人物の数々のエピソードもさることながら、現在進行形で問題になっている政治のさまざまなことの事情が改めて理解できて面白い。
別に文部省のせいにするつもりはないが、普通に公立の学校の義務教育で歴史の授業を受けていると、小、中、高校といつも原始人からスタートして、江戸時代か、せいぜい明治にかかったあたりで卒業してしまうのだ。私が社会科の嫌いな生徒だったせいもあるけれど、近代史は未だに特に苦手で、疎い。でも、こういう歴史を知らずに選挙権を持っているというのは本当は大問題だと改めて痛感。選挙に行かない無関心さは勿論けしからんと思うけれど、これまでの日本の生い立ちや経緯を知らずに闇雲に投票する人が増えても、それはそれで、その場だけクチの巧いスタンドプレーに騙される人が増えるような気がして恐ろしい。
・・・もしや、近代史を学校で教えないのは、ワザとだったりして。