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国民生活を安定させ、経済政策が最もうまくいっていた岸時代。先見性と実行力で国民を幸せにすることこそ宰相の条件である。人気評伝作家による白洲次郎、吉田茂に続く、昭和史を築いた政治家の傑作評伝。
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Posted by ブクログ
雑誌の「選択」に田中角栄と岸信介の似ている点と違う点を論評しているコラムがあって、改めて岸について知りたくなった。そうしたところ、我らが北先生が既に岸信介の評伝を書かれているじゃないか!ということで早速読んでみた。変わらず北作品は平易な文章でサクサク読み進める、控えめだけどリアリティのある会話の風景...続きを読むが想像力を搔き立てる。あっという間に読み終えた岸信介の感想は、こういう人物は当時よりも数十年あるいは相当に距離を離れて初めて適切な評価を得られる人なんだなということ。端的に言えば、岸は2つの国(満州国と戦中戦後の日本)の経済産業、社会保障体制を作り上げた人物であり、戦後はいまにつながる日本の安全保障の体制と独自のアジア外交を打ち立てた人物である。しかも、それらを数十万人の若者が家の外を囲んでいまでは想像も付かないような圧力をかけるなかで数年間でやりきったというとてつもない叛骨心というか意思の人物であったことがこの本を通じて理解ができる。 またこの本では改めて保守合同、55年体制の裏舞台を知ることができる。吉田茂、鳩山一郎、大野伴睦、そして三木武吉と岸との虚虚実実の駆け引き、特に三木武吉と岸の大きな政治イシューを掲げ、それの達成とあれらばすべてを飲み込む柔軟さや闘争本能には底知れぬ凄みを感じずにはいられなかった。 この本で唯一残念なのは、岸のカネと女の話が少ないことである。世間的には有名なCIAと岸の関係には言及がなく、おそらくケタ外れの金が動いたであろう東南アジア外交の賠償時のことも「岸は満州人脈の一人である久保田豊にダム建設を請け負わせた。」の1行で済ませている。まあ、ここは北先生の"高度成長期の日本へのラブレター"のロマンの一環で野暮なことは書かなかったと解釈をしておきたいと思う。 いずれにしても大義に対する意思貫徹力、それを推進する上での柔軟性や闘争力、実務能力。そして大きすぎて同時代の人ではなかなか評価できないそのスケール感、どれをとっても岸の爪の垢でも飲ませてもらって、少しでも自分もそういう人物になりたいものだと思わせてくれる本であった。あ、ちなみに、この人は安倍首相の祖父。爪の垢どころか血を分けてもらった現在の宰相の手腕を今後もしばらく拝見させてもらいます。
元産経新聞の連載ということで少し偏っている感じはするが, 岸信介が確固とした理念に基づき政治に向き合っていたことが 十分に伝わってきた。
2023/08/02 読み終わった Twitterでジャーナリストの方がおすすめされていたので。 政治家の、特に近現代日本の政治家の伝記を読んだのは初めてかもしれない。 他の方のレビューで「安保闘争のイメージしか無かったが180度変わりました」などとあったが、俺は安保闘争のイメージも無かった。安倍晋...続きを読む三元首相のおじいちゃんのイメージしか無かった。そんなレベルから読んだ。 青年期〜戦時中までは歴史物として、戦後〜組閣あたりはルポルタージュとしてなんとなく勝手に頭が整理して読んでた感じ。 どちらかというと青年期〜戦時中の方が楽しんで読めた。当時の日本官僚がどんなことを考えてどう行動していたのか。当然だけど今の官僚の働き方と全く異なる。満州をどうしよう、とか。 そのようなOSで生きてきた、同じ人物が、戦後も変わらず日本を動かしている。そういう点に、当たり前だけど今の日本と戦中戦前は地続きなんだって、実感する。 戦後〜組閣はかなりドロドロの政治権力闘争で、やれ誰の顔を立てるとか、やれ誰に貸しがあるとか、そういう感じ。それが政治なのかな。今もそうなんだろう。 そんな魑魅魍魎うごめく永田町で、「国民に媚びる政治家を疑え」の帯のとおり、日本と日本国民の未来を考え、そして自らの信念を突き進んだ彼政治人生は、高潔とは言えずとも、輝いていると思う。
岸信介の誕生から岸政権の終わりまでを書いた本。 当時の政治家とのやり取りや密約などの記載も多く、彼がどのように政治的に事を進めて行ったを垣間見ることができた。 また、各所に岸信介の実際の言葉や関係者の証言などが挟まれており、彼の人柄に触れることができる気がした。 彼が生きた時代の歴史的背景を知ら...続きを読むないと流れを理解しづらいため、岸信介について最初に読む本としては少し難しい内容かもしれない。 また、本全体の構成として、 ・特に後半にかけて岸信介を賛美する記載が多くなり、内容をそのまま受け取って良いのか判断がつきづらい ・歴史的事象やそれに対する評価が単純化されすぎている傾向がある(様々な背景や文脈がある事象を「これはこうであったから素晴らしい」と一面からしか評価していないなど) と感じられる部分もあり、どの程度この本の内容を自分の解釈とするのか判断が難しいと感じた。 しかし、彼が大きなことを成し遂げた人という事自体は変わらず、長年青写真を描き続けた安保改定や憲法改正に向けて、彼が着実に手を進め、最後は死の危険を冒してまで安保改正を行った気骨に溢れる政治家だったのではと感じられる内容だった。
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